戦略PRとは

日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?

ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。

戦略PRとは moyamoya-prof

用語説明

戦略PR

商品そのものにフォーカスしたPR活動ではなく、世の中の時流と商品をつなぐテーマを開発しそこから話題喚起し、世論をつくり出す「空気づくり」を行い、その盛り上がりを商品の販売に落とし込む手法のこと(ブルーカレント・ジャパン ホームページより)。ブルーカレント・ジャパン代表の本田哲也氏が2009年1月に発刊した書籍「戦略PR ―空気をつくる。世論で売る。」(アスキー・メディアワークス)をきっかけに、日本で注目されることになった。

戦略PRが注目される背景

2009年、本田哲也氏の著作「戦略PR」の発刊をきっかけに、PRをより戦略的に実施し単にメディアに取り上げてもらうだけではなく、その前段階からの「売れる空気作り」から取り組み、世の中での「話題作り」をすることで、認知度や影響力を高めていこうという機運が高まり始めました。
また、今年の宣伝会議新年号「2013年注目しているマーケティングキーワード」でも「戦略PR」が2位に挙げられており、今もマーケティング業界での関心事であることが窺えます。
この背景には、マーケティング環境における3つの大きな変化があると言えます。

・インターネットの普及による情報爆発
インターネットの普及により情報量がそれまでの比にならないほど増大、消費者は毎日多くのマーケティングメッセージを受け取るようになった。特にここ最近はソーシャルメディアの浸透によりそのスピードが加速、またスマートフォン・タブレット等手軽に持ち歩けるデバイスが普及することで、消費者はまさに「24時間365日」情報に接している状態が定常化。
このような背景において、多くの情報の中から消費者に見てもらい、注目してもらうための工夫が求められている。

・景気後退による消費意欲の減退
景気の後退により消費意欲が減退、製品クオリティーや価格をアピールするだけでは購買意欲を刺激することが難しくなっており、そもそもの製品に「買う理由」を与え、消費そのものを喚起していくことが求められている。

・友達の「クチコミ」への信頼度の高まり
インターネットやソーシャルメディアの普及により情報の入手経路が多様化する中で、友達の「クチコミ」に対する信頼度が増加。2011年のニールセン調査によれば、テレビ広告を信頼すると答えた人は全体の47%にとどまった一方で、知人からのお勧めを信頼すると答えた人は92%にも上った。
このような背景から、友達の間でいかに「話題」になるかという観点が重要とされる。

データに基づく「コンシューマーインサイトへのアプローチ」と「ソーシャルメディアの活用」が鍵

では、この「売れる空気作り」をするためにはどのような観点が必要なのでしょうか? その一つのキーワードは、データに基づく「コンシューマーインサイト」へのアプローチであると言えます。
消費そのものを喚起するためにまず必要なことは、「消費者の心を動かしている潜在的な欲求=真のコンシューマーインサイト」にアプローチすることです。つまり、今消費者に本当に求められていること何なのか、そしてその理由は何なのかを深堀りすることです。それを言葉に表してPRすることによって、消費者への「気づき」を与えていく空気作りをしていくのです。

そしてその過程で「ソーシャルメディアを活用」することがポイントとなるでしょう。
アンケートやインタビューと言った従来型のマーケティングリサーチでは、リサーチャーが意図する範疇を超えた回答を得ることは難しく、購買前の消費者心理を分析するデータとして十分とは言えない状況でした。それが、現在はアドテクノロジーの進化やソーシャルメディアの普及により、消費者の日常的な行動をデータ化し、会話を観察・傾聴することが可能となっているため、より深いコンシューマーインサイトへのアプローチが期待できます。

また、「ソーシャルメディア」と、PRのみならず広告を含めた「マスコミ」を組み合わせることで、より効果的な「話題作り」をすることもできるでしょう。 全世界1億ユーザーを突破し、勢いの止まらないスマートフォンアプリ「LINE」は、そのマーケティング戦略において、ソーシャルメディアを「地上戦」、マスコミを「空中戦」と表現し、いずれも、アプリの大ヒットになくてはならないものであったとしています。

これからの「PR」には、従来のマスコミ向けの「パブリシティ」にとどまらず、このような様々なマーケティング環境の変化を踏まえ、メディアのミックスも考慮に入れた「戦略性」がより求められていくことでしょう。

イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ