勢いが止まらない「note」。ここ最近で、SNSで目にする機会が非常に増えたと実感している方も多いのではないでしょうか?

2020年6月23日、note株式会社は最新の月間アクティブユーザー(2020年5月)は6,300万で、1日あたり2.6万もの投稿があると発表しました。法人アカウントもこの半年で倍増し、累計1,600件に及んでいるそうです。(※1)

「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションに掲げるnote。企業はこれからnoteをどのように活用していくべきでしょうか?

noteとは?

note株式会社が運営するメディアプラットフォームです。同社のミッション「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」の通り、大変シンプルかつ使いやすいUIが特徴です。無料でアカウントを作り、文章やマンガ、写真、音声を投稿することができます。

また、noteでは、お気に入りの文章に「スキ」を付けて応援したり、アカウントをフォローしたり、気になるテーマの記事をフォローしたり…と、SNSと同様に人やコンテンツと繋がる機能が用意されています。同社では、そんなnoteの場を「創作をする人、それを応援する人、ものづくりが好きなみんなのための街のようなサービス」と表現、「好きなものを見つけたり面白い人に出会えたりするチャンスが広がっている」と説明しています。

noteの月間アクティブユーザー数は?毎日どれくらいの数のコンテンツが生まれているの?

2014年4月にサービス開始、約870万件の作品が誕生し、最新の月間アクティブユーザー(MAU)は6,300万(2020年5月時点※1)に達しています。

<noteに関連する主要データ>(2020年5月時点※1)
・月間アクティブユーザー(1ヵ月にnoteを訪問したアクティブブラウザ数):6,300万
・会員登録数:260万人
・1日平均投稿数:2.6万件
・今までの総投稿数:870万件
・法人アカウント数:累計1,600件
・法人の総投稿数:1.8万件

月間アクティブユーザーが2,000万を超えた2019年9月末から8ヶ月でアクティブユーザーが3倍以上増加、特に新型コロナによる外出自粛要請が本格化した2020年4月と5月に急増しています。

医療関係者、外出自粛で影響を受けたビジネスの方、その他外出自粛下で工夫する生活者の投稿が増えたこと、また自宅で過ごす時間が多くなる中、SNS経由でさまざまなnote記事が読まれ、拡散されたことが影響しているようです。

また、法人アカウントも累計1,600件に到達。2019年3月から提供している法人プラン「note pro」の契約数もここ半年で倍増したそうです。

月間アクティブユーザー6,300万は、大変驚異的な数値です。いかに急速に、人々の生活の中で「note」の存在感が高まっているかが分かります。

企業はnoteとブログをどう使い分けるべき?

このように急速に成長を続ける「note」を、企業はどのように活用していくべきでしょうか?

まずは、企業からの情報発信の場=オウンドメディアとして、noteとブログをどのように使い分けるべきか?それぞれにどのような特徴があるのかを見ていきましょう(以下2020年7月8日時点での情報に基づき、SMMLabが独自で調べたものです)。

<noteで発信する場合の特徴>

〇:note社の機能により、集客しやすい

記事のリコメンド機能(投稿した記事に近しい属性の記事ページにレコメンド表示される仕組み)、カテゴリページの拡大など、6,300万のユーザーに届きやすい仕組みが用意されています。また、note編集部からピックアップ記事として紹介されることでアクセスが伸びる期待もできます。

〇:note社からの充実したサポートあり

同社サポートチームにより、導入運営の個別相談や勉強会、コミュニティなど、オウンドメディアを続けやすくする、またより良くするための様々なサポートが充実しています(プランによってサポート内容は異なる)。

〇:HTMLやCSSなどの知識が不要、誰でも取り組める

noteの記事エディタは大変簡単で、HTMLやCSSなどの知識がなくても取り組むことができます。

〇:独自サーバーの構築やメンテナンスが不要、セキュリティ管理もnote社が実施

note社サーバーを共通で利用するため、独自のサーバー構築やメンテナンスが不要です。セキュリティ管理も同社が実施しています。

〇:サブスクリプション機能あり

月額課金制の定期購読機能を利用できます。独自のシステムを構築したり決済サービスに登録する必要なく簡単にサブスクリプションを開始することができます(プランによって課金できる金額の上限あり)。

〇:UIがシンプルなため長文でも読まれやすく、SNSシェアとの相性も良い

UIがシンプルなため、長文でも疲れることなく読まれやすいと言えます。また、ソーシャルシェアボタンの位置も決まっているため、SNSへの拡散もスムーズに行われやすくなっています。特にTwitterとの相性が良いと言われています。

△:デザインのカスタマイズをしにくい

その一方で、記事一覧画面のレイアウト変更ができない、テキストの装飾やリンクの設定、他メディアの埋め込みなどのできることが一部制限されているなど、企業オリジナルのカスタマイズはしにくいと言えます。

△:外部サービスとの連携に制限があり、アクセス解析やビジネスとの繋ぎ込みへの自由度が低い

外部サービスとの連携に制限があり、オウンドメディア訪問者をメルマガ登録や資料ダウンロードに促す、サービスサイトやキャンペーンページ、セミナーに誘導するなどのビジネスへの繋ぎ込みについても実現が難しくなっています。(アフィリエイトやアドセンスの設定もできません。)

アクセス解析については、(後述する)note proの利用で実施することは可能ですが、同社が提供するアナリティクス機能とGoogle Analyticsとの連携に限られているようです。

△:noteに向くコンテンツ、向かないコンテンツがある

noteでは、多くのクリエイターが自身の人格を前に出し「一人称」で物事を語っていることが多いため、客観的な事実を並べた記事などはシェアされにくく読まれにくいかもしれません。企業が発信したいコンテンツ内容によっては、noteには向かない場合もあります。

<ブログで発信する場合の特徴>

〇:カスタマイズ自由、企業オリジナルのサイトを構築できる

デザインを自由にカスタマイズし、企業オリジナルのオウンドメディアを作ることができます。オウンドメディアとしてのブランドを確立し、権威性を持たせていくためにはブログを利用する方が向いていると言えます。

〇:外部サービスとの連携が可能で、アクセス解析やビジネスとの繋ぎ込みに強い

外部のマーケティング関連サービスと連携、アクセス解析をしてマーケティングを最適化する、メルマガや会員登録につなげるなど、ビジネスとの直接の繋ぎ込みがしやすいです。

〇:デザインだけでなく中身も自由、あらゆる種類のコンテンツ発信に向く

あらゆる種類のコンテンツ発信に向いています。企業は自由なスタイルで、情報を選ばずさまざまな内容を発信できます。

△:集客するための知識と努力が不可欠

noteのようにメディア内で集客をサポートする機能はないため、ブログを開いただけでは誰も読みに来てくれません。SEOに関する知識を蓄え適切な運用を行うこと、またSNSからのシェアを促すための工夫は欠かせません。(noteでもSEOやSNSシェアが大切なことは同様ですが、noteの場合はnote内の機能が集客を後押ししてくれます)

△:HTMLやCSSの知識が必要な場合も

ブログをどのように構築するかによりますが、カスタマイズした記事を発信するためには、社内にHTMLやCSSの知識を有している人を置く、あるいは社外パートナーとの連携も必要になるかもしれません。

△:独自サーバーの構築やメンテナンス、セキュリティ管理が必要な場合も

同じく、独自サーバーの構築やメンテナンス、セキュリティ管理が必要となる場合があります。

以上がnoteとブログそれぞれの特徴です。こちらを踏まえたうえで、何のためにオウンドメディアを運用したいのか、オウンドメディアでどのようなコンテンツを発信したいか?によって、ブログとnoteのどちらを選ぶか、あるいは両者の使い分けをしていくことが大切です。

また、同社は法人向けの「note pro」というプラン(月額5万円/税抜)を用意しており、それを活用することで以下のような機能を利用することができます。こちらも視野に入れたうえで検討を進めると良いでしょう。

<note proでできること>

・独自ドメインの適用
・メニューやテーマカラーのカスタマイズ
・アナリティクス機能の利用

など、法人の活用をサポートする多数の機能あり(詳細はnote proのページを参照ください)。

タイプ別、企業のnote活用事例10選

では、noteは実際にどのようにビジネスに活用されているのでしょうか?活用手法や切り口のタイプ別に参考になる事例10選をご紹介します。

企業名でnote公式アカウントを運用、ブランディングやファン化につなげる

1.キリンビール

キリンビールは2019年4月に「これからの乾杯を考える場」としてnoteを開設しました。同月に開催されたnoteでの投稿コンテスト「#社会人1年目の君へ」が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?同コンテストには募集開始から1週間で600件、2ヶ月の応募期間で3,000件もの応募が集まり(※2)、大変な話題となりました。

同社は他にも「#あの夏に乾杯」「#2019年の私におくる乾杯」、出版社のポプラ社noteとコラボして「#夜更けのおつまみ」などの投稿コンテストを開催しています。いずれのコンテストも、必ずしも同社の商品と直接関係があるエピソードばかりが応募されているわけではありません。しかしながら、同コンテストに向けた創作を行う過程で乾杯のシーンを想像するたびに、キリンビールのことが思い出され、同ブランドへの共鳴が深まっていくのではないでしょうか。

同社では投稿コンテストの外にも、日頃から、一番搾り誕生ストーリーや食事とビールのペアリングの仕方など商品に関するコンテンツ、社内の「人」に焦点を当てたコンテンツなど、さまざまな角度から発信を行っています。note企業公式アカウントのお手本とも言える同アカウントからは、さまざまな学びを得ることができます。同社が1年間に渡るnote運営振り返りと今後に向けてのメッセージを記したこちらのnote記事も必見です!

note開設から1年。キリンビール公式noteの運営の裏側を公開します。

(※2)参考:「noteであれば私たちの想いを素直に伝えられると思った」キリンビールがnoteを活用する意義 #noteクリエイターファイル

2.IKEUCHI ORGANIC 公式note

ファンとのコミュニケーションを大切にしていることで知られるIKEUCHI ORGANIC社は、2018年10月より公式noteを運用しています。同社のnote公式ページのTOPには「我々がつくっているのはタオルではなく、物語である」という代表の池内氏の言葉が掲げられており、「今治でオーガニック100%のタオルを中心に語れる物づくりを志すIKEUCHIスタッフの”今”をお届けします」と説明されています。

池内代表や阿部社長が商品や物づくりについて語るコラム「イケウチな日々」、同社のファンによるSNS投稿「#イケウチな人たち」などのハッシュタグがついた声やイケウチの中の人の声を発信する「月間!イケウチマガジン」など、IKEUCHI ORGANICの中の人やブランドを応援するファンの想いが伝わってくるコンテンツが発信されています。

ブランド名やお店の名前でnote公式アカウントを運用、ファン化→購買や来店につなげる

3.Soup Stock Tokyo【公式】

Soup Stock Tokyoは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国68店舗のうちの大多数の店舗を休業にしている最中の2020年4月に公式noteを開設しました。試行錯誤を続ける中、一企業としての「姿勢」や、スープストックトーキョーの「中の人たち」の声を届けることで、「たった一人の背中をそっと押せたら、たった一人の肩に手を添えられたら」(※3)という想いで開始したそうです。

商品開発の背景についてはブランドサイトを中心に、noteでは「ブランドとして今、考えていること」「働く人にまつわること」「ブランド創りで、大切にしていること」を中心に、両者を使い分けています。

(※3)参考:「公式note」をはじめます。|Soup Stock Tokyo【公式】

4.#sio 公式

代々木上原のフレンチレストランsio等を運営するsio株式会社が運営する公式noteでは、従来より経営者のメッセージやスタッフのインタビューを中心に発信を行っていましたが、新型コロナ感染拡大により外出自粛が行われる中、新たに「おうちでsio」というコンテンツの発信を開始しました。この自宅で手軽にレストランの味を再現できるレシピコンテンツはSNSで大きな話題を呼びました。

SNSには同レシピを用いて料理した生活者から、たくさんの写真が「#おうちでsio」のハッシュタグと共に投稿されています。

社内の情報を積極発信、ブランディングや採用につなげる

5.Smart HR オープン社内報

株式会社SmartHRは、noteで社内報を公開しています。「お疲れ様です。人事総務の〇〇(担当者名)です。」「お疲れ様です。マーケティンググループの〇〇(担当者名)です。」といったスタイルの書き出しで統一されており、内容も社内向けに人事制度の説明をするもの、社内でよく聞かれる質問に対する回答、経営陣から社員へのメッセージなど、まさに「オープン社内報」そのもの。

社員にどんな人がいるのか、今どんな仕事をしているのか、何を考えて日々業務にあたっているのか…などのリアルな姿を公開することにより、採用にプラスに働くだけでなく、取引先や顧客からの信頼獲得や親近感の醸成にも役立ちそうです。

他にもさまざまな会社が社内報をnote上で公開しています。ぜひ、「#オープン社内報」のハッシュタグで検索してみてください!

6.LINEクリエイティブセンター

LINE株式会社のUI/UX、スペースデザイン、キャラクターデザイン、ブランドデザインを担当する部署「クリエイティブセンター」は、部署としてnoteを運営しています。

運営1年を超えて100記事に到達したという同社は、最近「人気記事ランキングTOP10」を公開。「LINEのUIデザイナーが参考にするWebデザインギャラリーサイト6選」「映像クリエーターがこっそり参考にしているチュートリアル(AfterEffects編)」「LINEのロゴとフォントについて」など、デザイナーなら必ずチェックしたくなるトピックがランクインしています。

自社の考え方やノウハウ、技術を公開することで、それに共感する仲間を集めることに大いに貢献するのではないでしょうか。また、これらの領域に非常に強く、力を入れているというメッセージにもなります。

他にも、mixiグループのデザイナーが発信するnote「mixi design」、ZOZOグループのデザイナー、エンジニア、アナリストなど制作にかかわる全ての技術者が集まるZOZO Technologiesによるnote「ZOZO FashionTechNews」、クラシコムのエンジニアが発信するnote「Kurashicom Engineers’ Blog」など、専門性の高い部署からの発信が多く行われています。

生活者目線で面白く新しい情報を発信することで、自社ビジネスの市場拡大につなげる

7.お金と社会のWEBメディア『FOUND』

オンライン証券ベンチャーのFOLIO社は、「投資・資産運用を生活の中に根付かせる」ことを目的に、note上でメディア運営を行っています。お金のことは「知っておきたい」ことである一方、どうしても難しいイメージがあるもの。それを分かりやすく面白く伝えることで、日本にはまだ根付いていない投資や資産運用をもっと人々の身近なものにすることを目指しているそうです。

誰もが「知りたい」けど「よく分からない」を橋渡しするコンテンツ、それにより最終的に自社のビジネスが拡大する土壌そのものを拡げていくアプローチは、大変参考になります。note上でメディア展開することにより、新たな層に自然に話題を拡げていくこともできそうです。

裏側を見せることで、本体コンテンツの購買やファン獲得につなげる

8.Hayakawa Books & Magazines(β)

ミステリ・SF・ノンフィクションを中心に出版する早川書房は2017年末よりnoteを運営、本の中身を一部公開、SNSに投稿された本の感想の紹介、本の著者へのインタビューなど、さまざまなコンテンツを発信しています。

中身を少し知ることによってさらに続きが読みたくなる…、背景を知ることでより本体のコンテンツが楽しめる。同社のnoteは、そんなユーザー心理を上手に掴んでいます。

生活者からのnote投稿を促進し、コミュニケーションにつなげる

9.NIKKEIスタッフ

日経新聞は、日経電子版に「noteで書く」というソーシャルプラグインを導入しています。ボタンを押すとnoteの投稿画面が自動的に立ち上がり、記事も引用された状態で手軽に投稿できる仕組み。自動的に「#COMEMO」のハッシュタグが投稿フォームにつくそうです(※4)。

さらに、「#COMEMO」がついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回、良い投稿については、NIKKEIスタッフ公式note内の「COMEMOマガジン」や「日経電子版」で紹介する取り組みも実施。日経側にとっては「ニュースを引用してnoteを書く人が増えることでニュースをより多くの人に見てもらう」ことにつながりますし、noteを書く人にとっても「日経を通じて自身のnote記事をより多くの人に見てもらうチャンス」が増えます。両者にとってメリットのある仕組みになっていると言えます。

(※4)参考:日経電子版に「noteで書く」ボタン搭載。記事の引用投稿が簡単になりました!

経営者名で発信、ブランディングやファン化、採用につなげる

10.野口卓也 BULK HOMME CEO

D2C企業で最も注目される企業の一つ(※5)であるバルクオム社 CEOの野口卓也氏は、noteで「ブランドを立ち上げた経緯」「ブランドに込めている想い」や、「新テレビCMリリースの裏側」などを語っています。経営者自らが発信することにより、企業のブランディング、採用面への貢献、商品やブランドヘの愛着の醸成やファンの獲得、経営者同士の交流などにつながるのではないでしょうか。

野口氏がブランド立ち上げに込めた想いを語る以下のnoteを読むと、バルクオムの今後の展開から目が離せなくなるでしょう。

この時代に世界最高のブランドをつくる

他にも、多くの経営者がnoteで発信しています。「#経営」「#経営者」などのハッシュタグで情報を見つけることができます。

(※5)参考:110人に聞いた!今話題の「D2C」、日本でベンチマークされているブランドは?

まとめ

選択肢が溢れる現代において生活者から選ばれる企業やブランドであるためには、商品のスペックなどの「機能的価値」だけでなく、その商品や企業の姿勢そのものに共感できるかという「情緒的価値」も求められます。

特に、新型コロナ感染拡大以降に人々のお金や時間の消費に対する価値観は変わってきており、「本当に必要なもの」「共感できるもの」に投資したい意向がより強まっていると言えるのではないでしょうか。

6,300万もの月間アクティブユーザーがいる「街」で企業やブランドの物語(ストーリー)、経営者やスタッフの想いを伝えることができるnoteは、まさにそんな「情緒的価値」を発信していくために最適な場の一つと言えるのかもしれません。