昨今、ファンマーケティング、ファンベースなど、自社のブランド・商品を愛用してくれている生活者とのコミュニケーションに重きをおく企業が増えています。

特に、コロナショックによる不況は長期化すると予測されており、自社を応援してくれる生活者との関係性を維持して、LTVを高めて行く施策はますます重要になってくると考えられます。

では、生活者との関係性を深めるためにはどのような施策があるのでしょうか。自社のファンはどのように作っていけばよいのでしょうか。

そこで今回は、ファンとの積極的なコミュニケーションに取り組んでいる事例を紹介しながら、こうした施策にはどんなアプローチがあるのかを見ていきたいと思います。

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SNSを活用したファンマーケティング施策

SNSは、生活者と直接的な接点をもつことができるメディアです。また、SNS上で接点を持つことができるのはコアなファンや既存顧客だけではなく、未来顧客となりうる潜在層まで様々です。SNSを活用したコミュニケーションでは、企業は生活者と継続的なつながりを維持し、相互理解しながら関係を深めていくことができます。

事例①SNS上での丁寧なコミュニケーションでファンの熱量を高める:DINETTE/PHOBE BEAUTY UP<DINETTE株式会社>

<施策内容>
ビューティー特化型動画メディア「DINETTE」を運営しているDINETTE株式会社では、公式Instagramアカウントを活用してフォロワーとの関係性を深め、熱量の高いファンを創出しています。

同社では、丁寧なDM返信やコメントバック、ストーリーの質問機能を活用したQ&A企画など、双方向性のあるコミュニケーションに注力。その結果、フォロワーからメディアを応援してくれるファンを生み出し、熱量を高めながらその関係性を維持することに成功しています。

さらに、その後立ちあげたコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP」では、メディアを応援してくれているファンの声を起点にしたプロダクト作りに邁進。ファンとともに、ブランドを育てていく姿勢を大切にしています。

<ポイント>

  • SNSの基本であるフォロワーとの丁寧なコミュニケーションを徹底してファンを作る
  • ファンの熱量を高めながら関係性を維持することに成功
  • その関係性をいかし、ファンの声を起点にしたプロダクトを作りに着手
DINETTEのInstagramアカウント(左)ではストーリーズを活用してファンの質問に丁寧に答えている。また、PHOEBE BEAUTY UPのアカウント(右)では、プロダクトを手にしたファンからの投稿をストーリーズにまとめている。
画像引用:DINETTE公式Instagram(左)PHOEBE BEAUTY UP公式Instagram(右)

事例②UGCを活用してファンとコミュニケーション|Honda 本田技研工業(株)<本田技研工業株式会社>

<施策内容>
本田技研工業株式会では、Instagramアカウント・Honda 本田技研工業(株)の運用において、UGC(※1)を活用しています。

同社では、ハッシュタグ「#MeandHonda」を用い、ユーザーに同社の車や二輪車とともにうつった写真の投稿を促して、アカウント運用のクリエイティブとして利用。「 #MeandHonda」のハッシュタグ投稿件数は2021年12月現在で13万投稿を超えるなど、人気のハッシュタグとなっています。

紹介されたユーザーからは喜びのコメントがついているほか、紹介ユーザー以外からも好意的な反応が寄せられています。UGCを通し、Hondaの製品が好き、というファンのコミュニティが形成され、コミュニケーションを深めている事例です。

同アカウントの投稿例。紹介されたユーザーだけでなく、Hondaのファンからの熱量の高いコメントが残されているのが印象的。

<ポイント>

  • ユーザーが投稿したくなるハッシュタグを設定
  • Instagram運用に活用して、フォロワーの熱量を高める
  • UGCをきっかけとしたスムーズなコミュニケーションを実施

※1)UGCとは:UGC(User Generated Contents)とは企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを言います。 最近はInstagramなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されています。

事例③キャンペーンと投稿を使い分けたダブルのコミュニケーション|サッポロポテト公式<カルビー株式会社>

<施策内容>
拡散性・即時性に優れたプラットフォームであるTwitterは、SNSの中でもリツイートキャンペーンやハッシュタグ投稿キャンペーンなどキャンペーン活用が盛んです。

そして、キャンペーンとオーガニック投稿をうまく組み合わせると、効率的に生活者との接点を増やしながら、コミュニケーションを活性化させることができます。カルビー株式会社が販売しているサッポロポテトの公式Twitterアカウントも、この使い分けを効果的に行なっているアカウントです。

同アカウントでは毎月、アカウントのフォローとリツイートで応募ができるキャンペーンを実施。この4月には10万フォロワーを達成するなど、地道なキャンペーン施策が接点創出に寄与していることが伺えます。同時に日々の投稿では、商品を使ったユニークなアレンジレシピ動画や間違い探し、アンケートなど、フォロワーが楽しんで参加できるような内容を投稿

また、商品に関連したツイートをしたユーザーの投稿を引用リツイートするなど、双方向性のあるコミュニケーションも積極的に実施し、Twitterアカウントを活発なコミュニケーションの場にしています

<ポイント>

  • Twitterキャンペーンで確実に接点を創出
  • フォロワーが楽しめるようなオーガニック投稿でエンゲージメントを高める
  • 引用リツイートを行うなど、フォロワーとの活発なコミュニケーションの場に
同アカウントで実施されているキャンペーン投稿(左)。同時に間違い探しやクイズといったフォロワーが参加しやすいオーガニック投稿を実施(真ん中)。自社商品について話している投稿は引用リツイートを行い、コミュニケーションの活性化を図っている(右)。
画像引用:キャンペーン投稿(左)オーガニック投稿(真ん中)引用リツイート(右)|公式Twitter

事例④コンテンツの伝え方をプラットフォームで使い分け|ティファール公式アカウント<株式会社グループセブ ジャパン>

SNSはプラットフォームごとにそれぞれ機能や使われ方に特徴があり、同じ情報を発信する際もプラットフォームによってアプローチのしかたを変えることでより効果的に情報を発信、フォロワーとの円滑なコミュニケーションにつなげることができます。 調理器具ブランド「ティファール」のSNS公式アカウントでも、この「使い分け」によってユーザーとのコミュニケーションを行い関係を深めています。

Twitterアカウント(@tfal_japan)でもInstagramアカウント(@tfal_japan) でも、レシピの発信を行なっていることは共通しています。
しかし同時に、Twitterでは「お料理の豆知識」をクイズ形式で出題したり、アンケートを取るなど、ライトな双方向コミュニケーションを楽しんでいます。

一方でInstagramの投稿はビジュアルを全面に押し出し、ユーザーの「作ってみたい」意欲をかきたてるようなレシピ紹介が目立ちます。UGCを活用するなど、Instagramならではアプローチを行いながら、フォロワーからのコメントにも必要に応じて丁寧な返信を行なっており、好感の持てるやりとりが見られています。

<ポイント>

  • TwitterとInstagramそれぞれのプラットフォームにあったアプローチ
  • Twitterではアンケート機能、InstagramではUGCを活用
  • ユーザーの接触態度や求める情報にあわせたコミュニケーション

ファンコミュニティを活用したマーケティング施策

事例⑤ファンコミュニティで相互理解促進と関係深化|ベースフードラボ<ベースフード株式会社>

<施策内容>
「主食をイノベーションして健康をあたりまえにする」をミッションに、1食でバランスよく栄養を含む「完全栄養食」の開発・販売を行なっているベースフード株式会社。

同社は、定期購入者限定のコミュニティサイト、「ベースフードラボ」を運営しています。このコミュニティサイトでは、全員がベースフードのユーザーという安心感から、商品についてのファン同士の自然な会話が発生しています。こうした自然な会話は、同社にとって自社のファンの理解に欠かせない要素です。

また、コミュニティメンバー向けの試食会や会社見学などのオフラインイベントの開催で、ファンに対してブランドや商品の理解を深めてもらう取り組みも実施しています。ファンコミュニティを起点に、ファンとの相互理解促進と関係深化を実現している事例です。

<ポイント>

  • ファン同士の交流を促して、活発なコミュニティ運営を実現
  • ファン同士の自然な会話によってファンをしっかりと理解
  • オフラインのイベントではファンにブランドに対する理解を促し関係深化
同社のウェブサイト。開発ストーリーを漫画で載せるなど、コンセプトや世界観を丁寧に伝えている。
画像引用:完全食 BASE FOOD(ベースフード)

事例⑥アンバサダー施策で得たUGCを積極的に活用|AcureZ<アシックス商事株式会社>

<施策内容>
働く女性のためのパンプス「レディワーカー」をはじめ、多彩なオリジナルシューズブランドを手がけるアシックス商事株式会社。

同社はファンや生活者の声を大切にマーケティングに取り組み、その1つとしてファンとの丁寧なコミュニケーションよるファンコミュニティの強化に力をいれています。同社のブランド「AcureZ」ではファンの中からオフィシャルアンバサダーを起用する取り組みも実施。月1回の商品のプレゼントや店頭での特別イベントへの招待などを通し、コアなファンとの長期的な関係構築に成功しました。

また、アンバサダーによるお店の紹介や商品の感想などのInstagram投稿は、公式Instagramでの投稿や、Webサイト、店頭販促物など幅広い施策に活用しています。

<ポイント>

  • 生活者の声を大切にマーケティングを実施
  • アンバサダー施策によってよりコアなファンとの長期的関係構築に成功
  • そこで得られたUGCを幅広い施策に積極的に活用

事例⑦店舗を体験の場と位置づける「コミュニティリテール」を実践|lululemon<ルルレモンアスレティカJP合同会社> 

<施策内容>
新型コロナウイルス感染症の拡大以降、リテール業界の変容もさらに加速しています。カナダ生まれのスポーツウェアブランド・lululemonは自らを「コトを通じて体験してもらうブランド」と定義し、店舗を「販売の場ではなく人が集う場」としています。

実際、同ブランドの店舗では、スタッフが積極的に顧客と交流を行い、商品の機能や着用するおすすめシーンなどを伝えるコミュニケーションをとっています。
また、同ブランドの店舗ではランニングやヨガ教室などがさかんに開かれ、そのほどんどが無料で参加できるものです。

2021年6月には、ブランド初となるオンラインスウェットフェス「Be You Be Well:Wellness Month」を開催。ブランドのアンバサダーなどを起用しておよそ1ヶ月間を通して新感覚のウェルネス体験を提供し、ブランドの理解促進や、好意度醸成に取り組んでいます。

<ポイント>

  • 店舗は「体験」を提供し、ブランドをしっかり理解してもらう
  • イベントを通じてブランドコミュニティを形成
  • オフラインイベントにも取り組み、ブランド理解促進につなげている

ファンミーティングを取り入れたマーケティング施策

ファンや顧客と企業とが直接的な交流ができる「ファンミーティング」は、顧客やファンから商品やブランドに対する意見や要望を聞くことや、顧客やファンに対して自社の思いやブランドの世界観を伝えることができる貴重な場です。このような、自社のファンや顧客と直接交流を行う場をもつ施策もその関係を深めるのに有効な施策の1つです。

事例⑧アウトドアメーカーならではのイベントでユーザーとの強いつながりを形成|Snow Peak Way<株式会社スノーピーク>

<施策内容>
アウトドア総合メーカーのスノーピークでは、社員とユーザーが共に参加するキャンプイベント「Snow Peak Way」を開催しています。

このイベントは1998年から開催されており、2017年からはよりコアなユーザーに参加を絞った「Snow Peak Way Premium」も実施しています。ワークショップなどのイベントに加え、「焚火トーク」と呼ばれるユーザーとスタッフとが対話を通してコミュニケーションを深める企画も実施。商品やブランドに対する忌憚ない意見を聞いたり、プライベートな会話を通して強い結びつきを作る場になっています(※2)。

<ポイント>

  • アウトドア総合メーカーならではのファンミーティングイベントの開催
  • ライト層とコア層を分けたイベント設計を実施
  • 企業とファンという垣根をこえ、そのつながりを強化。
2019年のイベント報告ページ。参加者からの感想やイベントの様子が伝わる写真が掲載されている。またアンケート結果からも参加者の満足度が伝わる。
画像引用:Snow Peak Way 2019、Snow Peak Way 2019 Premium へのご参加のお礼とご報告|スノーピーク * Snow Peak

事例⑨ファンミーティングを通してファンに愛されるブランドを育てていく|マナラ化粧品<株式会社ランクアップ>

<施策内容>
スキンケア商品を中心としたコスメ商品の開発・販売を行なっている株式会社ランクアップ。同社のコスメブランドマナラ化粧品では、ファンと直接交流をもつイベント運営に力をいれています。特に、昨年より実施された1年間で1000人のファンとの会うことを目的とした「1000 Meets Up!」では、全国各地で規模様々なイベントを実施し、ファンとの交流を行いました。こうしたイベントは、多くのファンの声を聞くこと、ファンに対してブランドや商品の理解を深めてもらうことを目的としています。

同社によると、スキンケア商材の購入には、実際に使った人の口コミや、自分の周りの人からの推奨が大きく影響していると言います。そのためこうしたコミュニケーションを通し、ファンのブランドへの理解を促し、自分の周りの人に薦めたくなるブランドを作っていくことが重要であると考えているのです。また、イベントに参加できないファンに向けてはコミュニティサイト「MANARA With」を通してイベントの様子を伝えるなどより施策効果を高める取り組みにも着手しています。

<ポイント>

  • 定量的な目標を定めてファンミーティング施策に取り組む
  • なぜファンを作ることが大切なのかを定義してイベントを運営
  • イベントに参加できないファンに対するフォロー施策にも着手
同社のファンサイト「MANARA with」。イベントへの参加応募ページやイベントレポートのほか、スキンケアやボディケアに関する読み物も掲載し、オンラインオフライン双方のコミュニケーション活性化に取り組んでいる。
画像引用:MANARA with|ランクアップファンサイト

事例⑩ランニングコミュニティで店舗スタッフと顧客がコミュニケーション|Sakura Dashers<Allbirds合同会社>

「ビジネスの力で気候変動を逆転する」を掲げ、ファッションからサスティナブルな世界を目指すライフタイルブランド「Allbirds」
同ブランドでは、ランニングコミュニティSakura Dashersを組織。定期的なランニングイベントで店舗スタッフと顧客とのコミュニケーションにつとめています。

このコミュニティはスタッフによるクローズドの取り組みとして始まり、現在は一般参加者も募集し運営されています。ランニングイベントは気軽に楽しみ自由に仲間と繋がることを目的を実施。参加費は全額社会問題に取り組む団体に寄付されるなど、小さなことから同ブランドの姿勢を示しています。

またオフラインのランニングイベントに参加するのが難しい顧客向けにオンラインコミュニティの「Strava」も展開。このコミュニティではランニングのコツやセルフメンテナンス、ライフスタイルなど毎日のランニングを充実させる豆知識を発信し、オンライン上でのコミュニケーションにも積極的に取り組んでいます。

<ポイント>

  • コミュニティを運営し、ランニングイベントでエンゲージメントを高める
  • 運営の細やかな所にも同社のブランド人格を取り入れ統一した世界観を作る
  • オンラインでの受け皿を作り、コミュニティを広げている

いかがでしたか?
ここまで、生活者とのコミュニケーションを積極的に行なっている事例をご紹介してきました。それぞれ、アプローチ方法や施策の目的は様々です。

まずはどんな目的を持ってコミュニケーションを行うのかを明確にし、そのためにはどんなアプローチが良いのかを考えましょう。ぜひコミュニケーション施策設計の際にご参考ください!