D2Cのパイオニア的企業のディスカッションを通してD2Cトレンドの本質を見つめ、これからのブランドが事業を成長させるヒントを提供するイベント「D2C最前線」。今回は、N&O Life、バルクオム、トリコの3社が登壇、「D2Cプラットフォーム戦略のリアル」をテーマに行われたパネルディスカッションの内容を前編・後編の2回に分けてレポートします!

パネルディスカッションの後半では、「商品のパーソナライズ」への考え方から各社のブランド・商品へのこだわりに議論が展開、各社のブランドに対する想いが熱く語られました。

前編の記事はこちら:
D2C=自社ECだけではない!D2Cブランド3社が語るプラットフォーム戦略のリアル~楽天・Amazon活用から、KPIまで~【D2C最前線 イベントレポート/セッション1・前編】

注目が集まる「商品・サービスのパーソナライズ提供」。各社の取り組みは?

-真野氏:プロダクトを顧客毎にパーソナライズして提供する方式に近々注目が集まっています。トリコさんはパーソナライズを売りにしていますが、その背景をお聞かせいただけますか?また、バルクオムさんとN&O Lifeさんがパーソナライズ戦略をどう考えているかについても教えてください。

藤井氏:弊社はWEBで肌診断をし、その診断結果をもとにパーソナライズしたサプリメントをご提供していますが、この仕組みを取り入れることで、現在すでに40万人もの方の肌診断データが集まっているんです。

実は、この肌診断データを活かし、サプリメントの次のステップとして、新たにスキンケア商品も発売しました。今後も、一つの肌診断からさまざまなアプローチができると考えており、それによりCPAを下げ、LTVを伸ばすことに繋げることができると考えています。

また、他社商品を検討される段階でも、この肌診断があることで、「もう一度FUJIMIの処方を受け直してみよう」と思い出してくださる方もいらっしゃいます。他社商品へのスイッチする前のワンクッションキープに役立っていると感じます。

野口氏:弊社がまずやっていきたいのは「今まで美容などにまったく興味のなかった男性に洗顔、化粧水、乳液の3ステップを広めていくこと」です。

女性化粧品の場合は、もうかなり成熟した市場で、さまざまな商品を試した中で「自分が欲しいものはこれ!」という欲求からパーソナライズのニーズが出てきているのはないでしょうか。その意味では、まだ男性化粧品はその段階には早いかなと思います。

西口氏:パーソナライズのトレンドが来ていることは認識していますが、弊社はまだ手をつけていません。パーソナライズって、「100人いたら100通り」という考え方ですよね。ですので、ブランドの作り方に関して一般的な消費財とは異なり、どちらかというとサービス業としての側面もあるかと思っています。

弊社の場合は、創業当初から「日本のブランドを世界へ」をミッションとしていますので、その意味では、パーソナライズ戦略はマッチしないかなと考えています。

-真野氏:パーソナライズ戦略にはサービス業としての面があるというお話がありましたが、トリコさんはこの点についてどうお考えですか?

藤井氏:弊社の場合は、既存のブランドがすでにたくさんある中で、どのような切り口でとがっていこうかと考えた上での「パーソナライズ」でした。

弊社も、もちろんブランドを作っていきたいと思っていますが、プロダクトだけで勝つのは難しいのかなと考えています。私自身がWEB業界の出身ですので、弊社の商品をご購入いただきご使用いただくプロセス全体を通してどのような体験ができるのか、そのユーザーエクスペリエンスを武器にしたいと考えました。

現在は、肌診断をした後に商品をお送りするだけではなくて、その後にもお客様お一人おひとりに「FUJIMIビューティーコンシェルジュ」が担当として付き、季節にあわせた商品のご提案や、FUJIMIのLINE公式アカウントでのコミュニケーションを行っています。

女性が好みそうな「新しいもの」、「私だけ」、「かまってくれる」…などの要素をサービスとしてご提供することで、価値を感じていただけていると思います。

藤井氏:今はどこのコスメカウンターに行っても肌診断をやっていて、現在女性のビューティー商品で「肌診断」そのものは当たり前になっていますが、どこのブランドもまずはプロダクトがあり、後付けで肌診断を入れているので、「肌診断はリッチだけれど、それにぴったり応える商品がない」という状態です。それでは一貫性がないのではないかな、と思います。

一方で私たちは当初から肌診断を前提としてプロダクトを設計していますので、その点で他社に勝ちに行きたいですね。

尖らせた商品で勝つ!各社による、商品・ブランドへのこだわり

-真野氏:トリコさんが取り組む「パーソナライズ戦略」は、D2Cブランドとしての「商品の尖らせ方」が背景にあるとのお話がありました。各社、D2Cブランドとして「商品の尖らせ方」にどのような工夫をしているのかお聞かせいただけますか?

藤井氏:サプリメントや健康食品は、化粧品と全く異なる状況にあると思っています。化粧品は「パッケージが可愛いから買う」「持っているだけで嬉しいから買う」のような場面があると思いますが、一方で健康食品はコンプレックス訴求、マイナス訴求で「ダサい」「うさんくさい」イメージがありますよね。

私たちはそこを、「このサプリメントを飲んでいる自分が好き」、「このブランド素敵だから買ってみよう」という意識に変えていきたいんです。そのためには、パーソナライズ戦略に加えて、商品のデザイン性、シンプルさなども徹底的に追求していきブランド化していく必要があると考えています。

野口氏:数あるスキンケアのプロセスの中でも、「洗顔」「化粧水」「乳液」の3ステップが肌をつやつやにするためにもっとも重要であることが分かってからは、とにかくこの3ステップのスキンケア商品を、どの角度からとっても絶対に評価される商品に磨き上げることに力を入れてきました。試行錯誤をして欠点をなくし、いいところを伸ばす。とにかくできるだけいいものを作る、ということだと思っています。

西口氏:「メイドインジャパンブランドをグローバルブランドにしていく」のビジョンを実現するために、まずはアジアからと考えました。そしてこの市場で「メイドインジャパン」の強みは、おしゃれさよりもまずは安心・安全であり、その強みを生かせるのはベビーだな、と。

ちょうど自分の子供が生まれたタイミングでもあり、その際に「使いたい」と思える商品があまり見つからなかったことも背景にあります。そこから「本当に使いたいベビー用スキンケア商品」を作っていきました。

独自のD2Cモデルを確立し、オンリーワンのブランドへ

-真野氏:昨今「D2C」に注目が集まり、多くの新規D2Cブランドも誕生しています。このような現状について、また今後のD2Cビジネスモデルの見通しについて、皆さんのお考えを聞かせください。

野口氏:私はもともとITスタートアップを創業、その後失敗を繰り返していた時期もありました。そのような中から、ウェブサービスではなく「リアルビジネス」で世界に勝負したいと考え、「化粧品スタートアップ」として今の事業を始めたのが2013年です。その頃はまだD2Cという言葉はなく、D2Cと言われ始めたのはここ2年くらいのことだと思います。

それでも弊社がD2Cブランドとして皆さまから認識いただいているのは、他社と比較して弊社はブランド志向がとても強いからではないかと考えています。創業当初から大切にしている「長く愛されるブランドにしたい」「グローバルを狙う」、この2点が背景にあるのではないでしょうか。

西口氏:私たちが創業した時も同じく2013年で、D2Cという言葉がない時代でした。私はもともとP&Gに入社、ITベンチャー企業を経て現在に至っていますが、新規参入者の自分にとってそもそも「ECで物を売る」のは、ある意味選択せざるを得ない手法でした。

現在D2Cが盛り上がり、この業界に多くの注目を頂いているのは大変有難いことだなと思っています。ただ、最近の流れを見ていて思うのは、もともとこの「D2Cブーム」はアメリカで始まり日本に来ているものとはいえ、「必ずしもアメリカと同じ考え方」でなくてもよいのではないか、ということです。

D2Cというと、自社公式ECサイトに力を入れて、SNSをしっかりとやって商品が売れていく…というイメージがありますが、私自身は楽天やAmazonなどもしっかりとやればいいと考えていますし。変な「D2Cあるべき論」は取っ払ってもいいのではないでしょうか。

私たちは「D2Cビジネス」をやりたいわけではなく、ブランドを作りたい、プロダクトを通じて既存の常識を変えたいなど、もっと根幹の目的のためにビジネスをしているわけですから。そのための方法論として「D2C」をやってもいいし、もちろん他の方法でもいいと思っています。

藤井氏:私自身は既にD2Cという言葉が存在しているときにビジネスをスタートしていますが、特に「D2Cをやろう」という意識ではありませんでした。私自身がもともとIT業界出身であり、自然に今の形を選択しています。

最近は、IT業界の出身者がD2Cビジネスを創業していることがとても多いですよね。このように、WEBやITの力を使って新しい業界にチャレンジできるのが面白い点だと思いますし、私たちも今後、私たちならではの強みを活かしてよりサービスを進化させていきたいです。

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