D2Cのパイオニア的企業のディスカッションを通してD2Cトレンドの本質を見つめ、これからのブランドが事業を成長させるヒントを提供するイベント「D2C最前線」。今回は、MEJ、DINETTE、 BASE FOODの3社が登壇、「D2C型マーケティング戦略」をテーマに行われたパネルディスカッションの内容を前編・後編の2回に分けてレポートします!

後半では、デジタルとリアルをつないで事業をスケールするための施策や、ずばりD2C企業にとって顧客の声とはどんな価値があるのかなど、D2C型マーケティングの本質にせまるエピソードがたくさん飛び出しました!

前半の記事はこちら:顧客の声こそD2Cのエッセンス。3社が語る顧客との接点をいかしたマーケティング戦略【D2C最前線 イベントレポート/セッション2・前編】

オフラインとオンラインをつなぐ「UGC」

-村岡:ここまで商品企画、事業の拡大、改善のサイクルの中で、顧客との接点をどう活用していくかお話を伺ってきました。ここからはそのサイクルを次のスケールにどう繋げていくかということをお伺いしたいと思います。MEJさんは「C COFFEE」の販売に際してポップアップカフェを実施していました。もともとデジテルマーケティングに注力されているイメージが強かったのですが、あえてリアルに接点をもつ施策に踏み切った背景や意図について教えていただけますか?

大槻氏:実施した一番の理由は、お客様とのリアルな接点をもち、反応をしっかりみたいと考えたからです。また、新商品リリースですのでメディアさんに取材をいただいて認知拡大にも繋がればと思っていました。一般のお客様にも、Instagramで投稿をしていただきたかったので、ラテアートマシーンを導入し、ご購入いただいたお客様の好きな写真や絵をラテアートにしてご提供するという取り組みも行いました。

大槻氏:結果として、実際のお客様の反応をみることで、組織としてもブランドを一緒に育てていこうという意識が強くなりとても良い機会だったと思います。
また、多くの方にSNSで投稿していただき、多くのUGC(※)を生み出すことができました。こうしたUGCは、今後LPなどの様々な素材としてデジタル施策に活用ができます。

組織の意識を高めるという大きな成果から、マーケティングにとっては素材を生み出すことができたということまで、実りの多い施策だったと評価しています。

-村岡:ありがとうございます。さきほど、斎藤さんがオフィスにBASE FOODを導入するサービスのお話をされていましたが、これもちょっと一風変わった取り組みですよね。

斎藤氏:そうですね。このサービスの提供で良かったのは、もともとの定期購入のお客様が自分の周りの人に自然にBASE FOODを紹介する場を作ることができたということです。普段の会話でいきなり「健康的なパスタがある」って薦められてもちょっと怪しい印象もありますよね。ですがオフィスで普通にパスタを食べていて「それ何?」と聞かれることによって、BASE FOODのことを色々語っていただけるのはとても良いなと思っています。

尾崎氏:知人から紹介されたほうが確実に買いたくなりますよね。その点でもやはりUGCはとても大切ですよね。

-村岡:SNSでファンを作って来たDINETTEさんや、ファンのコミュニティ作りに注力しているベースフードさんはあえてそのUGCをダイレクトマーケに使われる取り組みをしていらっしゃいます。

斎藤氏:われわれはブランドのトップページやプロダクトの詳細ページにUGCを掲出しています。食品ですのでやはり「美味しそう」と思われないと話がすすみません。我々メーカー側が撮影した写真も良いのですが、実際に商品を利用されているお客様のUGCは、「作って美味しかった」、「簡単に作れた」というのがリアルに伝わります。

結果としてCVRもかなりアップしましたし、UGCは「おいしそう」と「これなら作れそう」をバランスよく見せられるコンテンツなのかなと思っています。

-村岡:DINETTEさんやベースフードさんはインフルエンサーの方の活用にも積極的に通り組みをされている印象ですが、一般のUGCとの違いなどはどうお考えですか?

斎藤氏:インフルエンサーの方にお金を払って投稿してもらう施策は最近はあまり実施していません。もちろん商品を送ることはありますが、気に入ったら投稿してくださいというスタンスです。なので、投稿してくださる方は本当に気に入っていただいている方なので、そういう意味では実際に商品を購入して投稿してくださるお客様と明確な区別はしていません。

尾崎:弊社の場合も概ね同じ感じです。ただ、インフルエンサーさんはフォロワー数などから「この人はインフルエンサーなんだ」というのが分かってしまいますよね。加えてやはりインフルエンサーの方の投稿は、Instagramらしい写真や、ご自分の世界観に沿った感じの写真が多い印象です。他方、一般のお客様の写真は本当に様々で、飾らずに投稿してくださるので、よりリアルに商品を使っている様子などが伝わるなと思っています。

UGCとは

UGC(User Generated Contents)とは企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを言います。最近はInstagramなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されています。

オフライン施策の成果はどう測っていくべき?

-村岡:ありがとうございます。残り時間が少なくなってきましたのでここで質問タイムに入りたいと思います。みなさまデジタル以外の施策も実施されていますが、オフラインの施策の成果をどのように測っていらっしゃいますか?

大槻氏:今回のポップアップストアの場合、商品をどれくらい売ろうということは考えていませんでした。ただ結果的には露出でいうと億単位の広告費をかけたくらいの露出はあったと思います。どちらかというとリリースイベントとして経営判断に近い感じで実施した施策なので、厳密な成果とか価値換算ということはあまり深く考えていません。

尾崎氏:私たちも過去2回ポップアップストアをやりましたが、そこでの売り上げよりはお客様と実際にお会いし、実際に商品を手にとっていただくことを重視しました。弊社はプロダクトに「ディレクター」という役割の人がついています。もともとヘアメイクアーティストをやっていてファンも多くいらっしゃるような方です。ポップアップストアにくると、ディレクターに会うことができ、ますますブランドに対しての熱量をあげることができたと考えています。

斎藤氏:コミュニティを育てていくことを大切にしていますが、同時にCPAやLTVについての計測は行なっています。

たとえば、ポップアップストアを実施する時は固有のクーポンをだし、そこからどれだけ定期購入に引き上がったかという数値を計測し、検証しています。ポップアップは新商品発売のタイミングに実施することが多いので、初速できちんと獲得に繋げていくことも大事だと思っています。

D2C企業にとって「顧客との接点」の価値とはなにか?

-村岡:ありがとうございます。それでは最後にまとめとして、お客様との接点が事業にとってどのような価値をもっているとお考えか、お聞かせください!

大槻氏:良い製品を作りそれをよりいっそう売れ続けるように価値を創造していく為に、大切なものだと思っています。特にこれからのD2Cは、単純に良い商品とそれが売れる仕組みを作るのはもちろんとして、そこからお客様が理想とする体験価値に繋げていき、継続して使っていただくことがとても大切になると考えています。

こうした売れ続ける仕組み作りにおいても、お客様との接点は、お客様を深く理解をしていくために大切なものです。

商品を通じてお客様がどんな自己実現をしたいのか、それは普通の質問では聞くことができませんし、様々な角度からお客様の声を拾っていく必要があります。こうした商品ごとのサクセスポイントを発見し、企業側がお客様を支援していくコミュニケーションをとる事が、企業もお客様もお互いがいい形になれるお声の活用方法なんじゃないかなと思っています。

尾崎氏:私たちはまだ立ち上げて1年くらいの新しいコスメブランドですので、ファンの方やその声は一緒にブランドを育ててくれる大切な存在だと思っています。みなさまからSNSの投稿をしていただけないと思うように売り上げもあがりませんし、声をいただかないと実際に商品を使ったときにどう思っているのかがわかりません。

こうした関係を大切にし、これからも声をいただけるようなブランドでいるために、今後もSNSを活用していきたいと思います。

斎藤氏:「お客様との接点の量×その質」が事業の成長にも直結すると思っています。これからも色々な方法でお客様との接点をもちながら、その質を高めていくような取り組みを実施していきたいです。我々の場合はそれがいまは、広告だけではなく、コミュニティサイトやリアルイベントやオフィスへのご招待といった施策にあたります。

ひとりひとりのお客様の生活のなかで質のよい接点をたくさんもつことで、新しい主食であるベースフードを世の中に広めて定着させて行きたいです。

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