健康食品や化粧品をECで販売する業界大手3社に、過去2年間のデジタル広告予算投下割合と2020年の見込みを聞きました!
業界大手3社による、過去2年間(2018年・2019年)の新規顧客獲得目的のデジタル広告への予算投下実績(内訳)と、2020年の見込みは?
今回は、健康食品や化粧品業界を代表する大手企業3社のダイレクトマーケティングご担当者に、過去2年間(2018年・2019年)の実際の新規顧客獲得向けデジタル広告予算投下先の内訳と、2020年の見込みを伺いました。
まずは1社ずつ、回答内容を詳しく見ていきます。
■A社:主軸のアフィリエイト予算を、徐々に運用型広告へ移行
2018年から2019年にかけて、アフィリエイトへの予算割合を55%→63%と大きく増やしたA社ですが、2020年はその割合を2018年時よりもさらに減らし、51%程度に留める予定と回答しました。
その理由として、アフィリエイトにおける景表法や薬機法違反などのリスクを挙げています。アフィリエイトを減らす代わりに、SNS広告やGDN/YDNなどの運用型広告の比率を伸ばしたいと答えました。
SNS広告の内訳を見ると、2018年から2019年にかけてLINE広告とInstagram広告が大きく伸長、またFacebook広告は大きく減少していることが分かります。効果の良い媒体としてはLINE、Facebook/Instagram、今後伸びしろのある媒体としてはLINE、Facebook/Instagramと回答しました。
■B社:各媒体にバランスよく予算を投下、効率の良化/悪化にあわせて各媒体に予算を振り分け
各媒体にバランスよく予算を投下、2018年から2019年にかけてはあまり全体傾向に変化の見られなかったB社。2020年は、2019年度の効率の良化/悪化にあわせて、GDN/YDNとSEMの割合を伸ばし、SNSやその他に振り分ける予算を減らす計画と回答しました。
SNS広告の内訳を見ると、2018年から2019年にかけてInstagram広告が1.5倍の実績、2019年から2020年にかけてはLINE広告を2.5倍に伸ばす予定であり、その一方でFacebookとTwitterの割合が減少していることが分かります。
■C社:SNS広告の効率化が順調に進行、2020年も引き続きSNS広告を伸ばす見込み
運用型広告に新規獲得デジタル予算の90%を投下するC社。2018年から2019年にかけてSNS広告の効率化が進んでいること、また、今後サードパーティーCookieに関する規制変更の可能性からリターゲティング広告の動向などが読みづらいことから、2020年は引き続きSNS広告の割合を増やす予定と回答しました。
SNS広告の媒体別実績では、2018年から2019年にかけてLINE広告の伸長と、Facebook広告の減少が見られます。2020年はFacebookの予算をTwitterに振り分けるようです。効果の良い媒体としてはFacebook、LINE、Yahoo!と回答しました。
デジタル広告全体:運用型広告伸長の傾向、その背景にはアフィリエイトやリタゲ広告リスクへの懸念あり
次に、新規顧客獲得向けデジタル広告予算に関し、3社に共通する傾向があるか見ていきます。
各社とも2020年に運用型広告を重視、2019年までの実績に応じて堅実に獲得できると見込めるSNS広告、あるいはGDN/YDNへの予算振り分けをすると回答しています。
その中で特に注目すべき点としては、「アフィリエイト」「リターゲティング広告」など、昨今見られる変化による影響を考慮し、2020年の予算振り分けは運用型のSNS広告への移行を考えているとの回答が得られたことです。
・近年のアフィリエイトに関する変化とは?
薬機法・景表法が厳格化し、広告審査に関する条件がますます厳しくなっている。
また、Googleによる検索アルゴリズムの変更、Yahoo!による広告掲載基準の変更が実施されたことにより、アフィリエイト広告のあり方を揺るがすほどの大きな影響があった。
具体的には、Googleの検索アルゴリズムの変更により、特定キーワードにおいて今まで検索結果上位に表示されていたアフィリエイトサイトの順位が大幅に下落。Yahoo!の広告掲載基準の変更により、Yahoo!プロモーション広告にて一部サイトを除きアフィリエイトサイトと判断されたサイトの広告掲載ができなくなった。
これらプラットフォーム側のポリシー変更の背景には、「ユーザーの保護」と「サービスの品質向上」があると考えられる。
・近年のリターゲティング広告に関する変化とは?
EUの一般データ保護規則(GDPR)の施行など世界的な個人情報保護の流れを背景に、2017年9月下旬にAppleがサードパーティのCookieを対象にSafari上のトラッキングを制限するITP(Intelligent Tracking Prevention)を発表。
それ以来ウェブブラウザ各社がCookie利用の規制に乗り出しており、2020年1月には、Googleより、Chromeでターゲティング広告のために使用されるサードパーティーCookieの提供が今後2年間で段階的に規制されることが発表された。
Googleの発表では、Cookieに変わる安全なデータ取引の仕組みが開発中とされているため、これにより広告主が直ちに大きな影響を受けることはないと考えられるものの、AppleのITPでは、ファーストパーティーCookieについても一部制限されることになるなど規制が進んでおり、リターゲティング広告を中心に、Cookieを利用した広告配信手法はこれからも大きく変わっていくとみられる。
SNS広告:各社ともLINE広告が急伸、FB→Instagram広告への移行も顕著
では、SNS広告に関する、3社共通の傾向は何でしょうか?
2018年には各社ともFacebook広告にもっとも多くの予算を投下していましたが、2019年以降にはその割合を大きく減少させたと回答しました。
理由は、Facebook社が、Facebook・Instagramをミックスした広告配信(効率の良い面に自動配信される方式)を推進したこと、それにより、「広告媒体」としての進化が進んでいるInstagramに予算が流れたためと考えられます。2020年以降もこの流れは今後も加速すると予測されます。
また、Facebook→Instagramへの流れと並行して目立つのがLINEに投下する予算の急伸です。各社とも2020年に向けて大きく割合を伸ばす(あるいは予算の多くを投下する)見込みであり、現状の効果の良さと伸びしろへの期待値がうかがえます。
なお、2019年にLINEへの予算投下が伸びた要因として、3社中2社が「LINE広告にあてる商品の変更を行ったこと」「クリエイティブの変更を行ったこと」と答えました。LINEは利用者属性が幅広く、その他のSNSにはいないユーザーも多く含まれるため、LINEにあわせた商品価格のオファーや、見せるクリエイティブやコンテンツの調整により大きな効率化を図る余地があると言えます。
まとめ
今回の調査結果のポイントは以下の通りです。
・アフィリエイトの比重が高い企業は、薬事法/景表法の厳格化、及びプラットフォームによるアフィリエイトに対する規制の強化に伴い、運用型広告への予算シフトが重要になっており、その分の予算を運用型広告であるSNS広告とGDN/YDNに投下している。
・アフィリエイトなど特定の広告手法に偏らない運用をしている企業は、法律の厳格化などではなく、あくまで媒体効率の良し悪しに合わせて予算を動かしている。
・SNS広告ではFacebook広告からInstagram広告やLINE広告への予算の振り替えが顕著。媒体の特性にあわせた商品内容の提供、クリエイティブの調整により効率化を図っている。
以上、今回は健康食品や化粧品をECで販売する業界大手3社に聞いた「過去2年間のデジタル広告予算投下割合と2020年の見込み」の調査結果をご紹介しました。
今回の調査の結果、各社とも関連する法規制やプラットフォームによる規制の変更を注視、特定の広告手法や媒体に頼りすぎず長期的にバランスを取れる体制の構築を目指していることが印象的でした。
また、そのためには、媒体にあわせた商品の選定やクリエイティブの調整を行い広告効率を向上させることはもちろん、そもそもの商品力・サービス力を強化し、引き上げ率の向上を図ることが重要と考えられます。
<調査概要>
・調査方法:3社にメールおよび電話で個別に調査を実施
・調査時期:2020年2月