ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きします。
今回は、「C1000」ブランドを中心にした機能性飲料を販売されている「ハウスウェルネスフーズ株式会社」(以下ハウスウェルネスフーズ)の丸山佳代氏です。
— まずは、ハウスウェルネスフーズのマーケティング活動の基本方針について教えてください。
丸山:ハウスウェルネスフーズは、1957年より武田薬品の食品部門の一翼を担っていた武田食品の全事業を継承し、2006年に誕生しました。その際にメインブランドであった「C1000」が、長らく「C1000タケダ」として認知されていたため、実際「偽物なのではないか」との声がお客様相談室に届くほど、社名とブランドが乖離した存在になってしまったんです。
そこで社名変更後、社名の露出認知とともに「C1000」ブランドの親和性を高める事を、マーケティング活動のメインミッションとしています。
— 「ブランド」を再構築するためのマーケティング活動ですね。実際には、どういったメディアを使っていらっしゃいますか?
丸山:武田食品時代は、テレビを中心として新聞以外のマスメディアをすべて使用していました。ネットはホームページだけでしたね。ハウスウェルネスフーズに変わってからは、紙媒体はほとんど使わなくなり、ラジオも縮小して、その分をネットでの施策に充てる形になりました。
— そうすると予算の総額自体はあまり変わっていらっしゃらない?
丸山:そうですね、むしろ減ってきていると思います。
— 減少傾向の中で、会社から求められるものというのは変わってきていますか?
丸山:やはりマスメディアが響きにくいところへのネットの効果に、期待されるところは大きいですね。メディアパワーの強い大手企業と対抗していかなかればならない弊社のような企業は、広告の絶対量で勝負するより、深く響くプロモーションという戦略に立って、お客様との直接のやりとりの中で関係性を深める施策の必要性を強く感じて、SMMへの取り組みを始めました。
— 一方で、SMMだけですべてのマーケティング活動を完結できるわけではないと思うのですが、マスメディアを使った広告とのバランスや使い分けについてはいかがですか?
丸山:テレビCMをメインとしたマスメディアへの広告出稿のボリュームは、あまり変わっていません。ただ、テレビCMが訴求しづらい層のお客様へのリーチを補完する意味で、ネットの割合は増えていると思います。
— 現場の担当者である丸山さんがマーケティング活動で目指しているイメージはありますか?
丸山:最終ゴールというわけではないですが、「C1000タケダ」と言われなくなる事です(笑)。
私は武田食品時代から「C1000」の広告にも携わっていたのですが、その当時はかなり意図的に「C1000タケダ」と認知されるような戦略をとっていたんです。それはかなり効果があったと思うんですが、今となっては少し厳しさを感じていますね…。
— 「C1000タケダ」ではなく、「C1000」と呼ばれる事が第一のゴールだと?
丸山:「C1000タケダ」というイメージが残ったままでは、私たちの「変化」をお客様に受け入れられていないということだと思うので、現在のハウスウェルネスフーズと「C1000」を、ワンセットで認識していただく努力をしていきたいと思っています。
— ブランド認知の再構築をテーマにSMMの活動を始められたのが、2008年の10月ですね?
丸山:モニタープラザ(SMMプラットフォームサービス 現:モニプラ)に出展したのは2008年10月ですが、準備期間のようなものがあって、実際に本格的に活動を始めたのは2009年の4月ですね。
— これまでの活動で「C1000」ブランドの認知は向上しましたか?
丸山:高まってきていると思います。2006年当時、100%「C1000タケダ」だったのが今は30%ぐらいの感覚でしょうか…。
— 一年弱で「C1000」の認知が70%に向上したというのは、凄いスピードですね!
丸山:武田食品は親会社が薬品会社だったこともあって、「C1000タケダ」は薬効への期待感がブランドの大きな価値軸だったんです。ブランド名から「タケダ」を外すことによって、「ビタミンC」のイメージまでも失ってしまわないように、「Cと暮らそう」というメッセージコピーを掲げているのですが、こちらはまだ伝えきれていないですね。徐々に伝えていきたいと考えているので、そういう意味でもSMMは大事な施策だと考えています。
— 広告はお金を使って広く浅く、ネットはお金をかけずにじわじわ深くですね。SMMは時間がかかり、効果が見えづらいと言われますが、社内での評価はいかがですか?
丸山:お客様を追いかけてCMを流し続けても、認知度が急激に上がるかというとそうでもない。CMも影響力という点では計りづらいと思いますよ。
その点、ウェブプロモーションは反応がとても早いし、それがどんどん好意的に変化していく様子が見えて、ある意味分かりやすいです。係る費用も大分違いますしね(笑)。
— 最終的には「売上」にどう影響していくかを求められるのでは?
丸山:そこは非常に課題で、確かにSMM活動は「売上」には直結しないと思います。
ただ、「C1000」は販売チャネルのメインがコンビニエンスストアなんですが、コンビニエンスストアに飲み物を買いに行く時、「○○を買おう」と具体的な商品を思い浮かべている方は少ないと思うんです。棚の前で「何を買おうか」と思った時に、値段やオマケ以外の選択基準があるとしたら、それが「これまでの心の結びつき」なんじゃないかと思います。消費者との距離を縮め、そこに「絆」をつくる、それこそがSMMをやる意義だと思っています。
《次回へつづく》
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丸山佳代氏 略歴
ハウスウェルネスフーズ株式会社
営業企画部 販売企画グループ 主任
1991年営業として入社。
お客様相談室、商品企画を経て1999年より自社ホームページ担当となる。
その後現在まで、WEBプロモーション及び自社サイト運営に従事。
インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)
【企業担当者に聞くSMM最前線】「SMMで消費者との心の絆を」ハウスウェルネスフーズ株式会社 丸山佳代氏(1/2)
2010.03.23
2020.04.03