CPMの高騰、Cookie規制の本格化など、2021年のデジタル広告施策を取り巻く環境は大きく変化しました。こうした状況の中、2022年デジタル広告施策はどんなことに注目して取り組めばいいのでしょうか?2021年の広告市場の動向を振り返りながらポイントを解説しました。

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2021年の広告市場の動向を総括

2022年のデジタル広告施策の成功のヒントを探るために、まずは昨年2021年の広告市場がどうであったかを振り返ってみます。

①コロナによる落ち込みから回復

2022年2月電通が発表した「日本の広告費2021」(※1)によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、2020年の広告市場は全体的に縮小しました。
しかし、2021年はその影響が徐々に緩和されたことにより、大きく回復。日本の総広告費は前年比で110.4%の6兆7,998億円と、広告市場全体に明るい兆しがみられています。

②デジタル広告市場はさらに成長し、マスコミ四媒体の総広告費を上回る

また、この広告市場の回復には、パンデミック以降急加速した社会全体のデジタル化に伴うインターネット広告費の増加が大きく貢献しています。

これは、ECの利用、オンライン接客、直接対面しない形でのコミュニケーションが一般化しているニューノーマル時代において、アナログな手法が効きづらい場面も出てきたためだと考えられます。

実際、2021年のインターネット広告費は前年比121.4%の2兆7052億円に到達し、マスコミ四媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)広告費の総計2兆4538億円を上回るほどまで成長。これは、1996年からの実績について1997年にインターネット広告費の推定を開始して以来初めてのことです。

③インターネット広告需要の増加に伴いCPMは上昇傾向

一方、デジタル広告市場の成長は、CPMの高騰を招き、広告による新規顧客獲得の難易度は年々高まっています。
アライドアーキテクツが独自に調査した結果でも、ダイレクトマーケティングに取り組む3企業のSNS広告のCPMは上昇傾向にあることがわかりました。

④クッキー規制などによって大きく転換を求められるデジタル広告施策

さらにGDPRやCCPAなどを背景に2021年はサードパーティーデータの利用規制が本格化された1年でした。特にダイレクトマーケティングの分野においては、これまで主軸となっていたリターゲティングなどCookieを利用した運用型広告による新規顧客獲得施策を続けることが難しくなっています。
同時に、消費者保護の観点から、各広告配信プラットフォームは広告クリエイティブの審査の厳格化といった対策を行なっており、これまで「勝ちパターン」として使われていた訴求文言が使えなくなる、といった企業も散見されます。

これらをまとめると、2021年のデジタル広告市場は以下の通りです。

2021年のデジタル広告市場

  • デジタル広告市場の規模がさらに拡大
  • それに伴いCPMは引き続き高騰傾向
  • さらにCookie規制やクリエイティブ審査の厳格化などこれまでの新規獲得施策の見直しが求められる

2022年デジタル広告施策で注目したい4つのキーワード

ではこうした変化の中で、2022年のデジタル広告施策ではどのような施策が注目されているのでしょうか。ここでは簡単に4つの注目キーワードをご紹介します。

注目のキーワード①ゼロパーティーデータの取得&活用

ゼロパーティーデータとは、顧客が自分の意志を持って積極的に企業と共有するデータのことです。生活者は個人情報を渡したくないと思う一方で、「パーソナライズ」された体験に対する欲求も持っています。

ゼロパーティデータは「同意のあるファーストパーティーデータ」とも呼ばれ、生活者が「この企業に」「このブランドに」自分を理解してもらいたいと思った時に取得できるもの。このデータを取得し、活用していくことは、クッキーレス時代において、パーソナライズされた顧客体験の提供を実現するために、重要度が増しています。

注目キーワード②コンテキスト広告

また、クッキー規制、IDFA変更によって加速するクッキーレスの流れの中でもう一つ注目されているのが「コンテキスト広告(コンテクスチュアル広告/コンテキストターゲティング)」です。
コンテキスト広告とは、商品やサービスにあったメディアやコンテンツの上に掲載される広告のことです。例えば、子育て情報サイトで習い事についてのページを見ているユーザーに対して塾やピアノ教室などの広告を見せる、といったイメージです。

コンテキスト広告はユーザーがみているページのキーワードや文章の意味、画像などの「コンテキスト(文脈)」をもとにそのページを閲覧しているユーザーと親和性が高い広告が配信されます。そのため、広告をみたユーザーの嫌悪感を緩和させることができ、クッキーに頼らないターゲティング技術として注目が高まっています。

一方で、コンテキスト広告は、そのコンテンツを閲覧しているユーザーが「興味関心」「購入検討」などどの段階にいるかまでは把握することができないということも多く、まだそのターゲティング精度に課題もあります。

注目のキーワード③動画クリエイティブ

成長を続けるインターネット広告市場のなかでも、特に動画広告の活用は進んでいます。サイバーエージェントの発表によると、2021年の日本国内における動画広告市場は、昨年対比142.3%となる4,205億円に達する見通し。同時に2022年には5,497億円、2025年には1兆465億円に達する見込みです。

この成長の背景としては、コロナ禍によって動画配信サービスなどインターネット上で動画コンテンツを閲覧する生活者が増え、SNSをはじめとした広告配信プラットフォーム側でも動画フォーマットに対応した広告の種類が増えていることが考えられます。

このような背景から、インターネット広告施策に取り組む上で動画クリエイティブを取り入れていくことは必須となってくるでしょう。動画配信サービスのインストリーム広告以外にも、TikTokやInstagramリールなど、短尺動画を利用するユーザーも増えており、短尺動画に対応した動画広告施策にも注目です。

注目のキーワード④UGC活用

日本国内におけるSNSの普及率は、年々上昇し、総務省の「令和2年通信利用動向調査の結果」では国内のSNS利用率は前年より4.8%高い73.8%となっています。

SNSの利用が当たり前のものとなってくるにつれ、SNSは親しい友人とのコミュニケーションではなく、さまざまな情報や意見を発信する場としても活用されるようになりました。こうしたSNS上などでユーザーが発信するクチコミコンテンツである「UGC(=User Generated Contents)は、CPMが上昇傾向にあるSNS広告のクリエイティブの一つとしても、効果を発揮しています。また広告のクリエイティブだけでなくランティングページや商品ページにUGCを掲載することで、広告の獲得効率の改善に成功している企業もいます。

UGCが生活者に受け入れられる背景としては以下のような理由が考えられます。

  • SNS上に自主的に発信された信頼できるクチコミである
  • 企業のクリエイティブのもつ「広告色」がない
  • SNS広告では配信面に馴染む(オーガニック投稿の中で違和感がない)

こうした背景を理解しながら、UGCを活用する際は

  • そのUGCがもつ「生活者目線」をしっかりと活かしているか
  • 配信面にマッチしたUGCを利用できているか
  • クリエイティブとLPの整合性はとれているか

などに注意するとよいでしょう。

2022年のデジタル広告施策が目指すべき運用の形

このように、2021年はインターネット広告市場が大きく変化した1年であり、それにともなって様々なイノベーションや、代替技術、施策に注目が集まった1年でもありました。

一方大枠では、これまでの「広告運用」に対する考え方、運用型広告をまわして新規顧客を獲得していこうという姿勢にも変化が見られています。それが、顧客体験全体をみて、顧客とのコミュニケーションや関係構築に力をいれようという流れです。

顧客との関係構築によるメリットは、新規顧客獲得に依存せず、リピート購入や定期購入などを促して継続的な利益を産むだけではありません。

例えば、日頃から丁寧なコミュニケーションを行うことによってブランドイメージを育てることで、ゼロパーティーデータの取得に寄与することも考えられます。
また、商品やブランドに愛着をもってくれたユーザーは、それらについてSNSで積極的に発信してくれる場合も多く、こうしたUGCはマーケティングにおける大きな資産として活用していくことができます。

サッポロビール株式会社の「HOPPIN’ GARAGE」での取り組みもその一つ。同社は、従来のような広告の出稿だけでは新規顧客獲得が難しくなる中で、もともとSNSアカウントで紹介していた顧客のUGCを広告LPへ活用する施策に取り組み、CVRの改善に成功しています。

2022年の広告施策は、広告運用を含めた様々な接点における顧客とのコミュニケーション施策それぞれの効果検証・改善を行うとともに、それらの施策を包括的に運用していく姿勢がますます重要となりそうです。

※1)調査レポート2021年日本の広告費|電通ウェブサイト