ダイレクトマーケ領域に強いと言われるLINE。国内8,400万人(2020年6月時点)という圧倒的な数のユーザーにリーチできるLINE上では、現在どのようなマーケティング施策が実施され、成果につながっているのでしょうか?

今回は、LINEが「ダイレクトマーケティング」に焦点を当て初めて開催したイベント「LINE Direct Day」(2020年7月29日開催)で語られた内容のサマリーをご紹介します。登壇した広告主はエーザイ、バンダイナムコエンターテインメント、I-ne、menu、オルビス、サードオフィスの6社。各社が現在LINEで実施している施策とその成果や、今後の活用見通しを語りました。

ひと口に「LINE活用」と言っても、その目的やステージによって施策の中身はさまざま。各社の取組みを、自社のLINE施策を考える上でのヒントとしてぜひご参考ください。

エーザイ:バーティカル動画クリエイティブが、LINE広告での新規獲得攻略のカギに

Session1には、エーザイ株式会社の佐藤 友昭氏、エーザイのLINE広告運用を支援している株式会社ワンスター若菜 良平氏が登場。LINEの三節草 昂大氏をモデレーターに、エーザイが実施しているLINE広告施策やその成果について紹介しました。

(右から)
・エーザイ株式会社 コンシューマーhhc事業部 トラスト本部 ライフタイムパートナー部 マネージャー 佐藤 友昭氏
・株式会社ワンスター 第一メディア本部 第二トレーディングデスク局 局長 若菜 良平氏
・LINE株式会社 パートナーセールス事業部 マネージャー 三節草 昂大(みせくさ こうだい)氏

エーザイは血圧サプリ「ヘルケア」、美容サプリ「美チョコラ」などの健康食品を単品通販で販売、新規顧客獲得にLINE広告を活用している。

「配信面」×「広告フォーマット」×「ユーザー属性」×「入札方法」の各種掛け合わせで広告を配信、「試せるものは何でも試す」方針であらゆる種類をフル活用している。その中から攻略パターンを素早く見出すことが重要だ。

最近で成果の上がった施策としては「動画(※1)」と「類似オーディエンス」の活用が挙げられる。

従来は静止画として使用していたクリエイティブを一部だけ動画にし、バーティカルフォーマットの静止画風動画クリエイティブに変換して配信したところ、CPAを目標水準に近い形で維持しながら獲得件数が倍増した。バーティカル動画クリエイティブを導入後、現在はLINE広告全体の配信金額の86%を動画が占める状態になっている。

また、高LTV顧客のデータを男女別に分けて類似オーディエンスを用いて広告配信したところ、男女それぞれセグメントを切っても十分なリーチ数を確保しながら効率良く新規ユーザー増につなげることが可能となった。LINEにおいてマッチ度が高かったことも成功の要因の一つと考えられる。

さらに、LINEの魅力は幅広い層にリーチができることだ。従来男性をメインに広告配信していた健康食品を新たに女性向けへの配信も強めたところ、新規獲得数を22倍に拡大できた。もともと想定していた若年層だけでなく、50代以上の顧客獲得にもつながった。

今後はLINE広告だけでなく、通販専用のLINE公式アカウントの運用やLINEオープンキャンペーンで獲得したリストを活用したクロスターゲティング配信などにもチャレンジしていく。

(※1)LINE広告における動画対応について
本イベントのKeynoteにて、LINE社マーケティングソリューションカンパニー/カンパニーエグゼクティブの菅野圭介氏は、「LINE広告において現在動画フォーマットを拡充している。全国的な外出自粛期間においてユーザーの動画反応率は顕著に上昇しており、動画広告配信在庫も10月頃までに2倍になる予定」と語りました。

LINE広告において、今後「動画クリエイティブ」の活用は非常に重要なカギになってくると言えそうです。

・SMMLab編集部追記:
LINE広告などの運用型デジタル広告で成果を上げるために、現在大変注目されているのが手軽に作れる「カジュアル動画」の活用です。以下の記事で詳細を解説しています。
コスト削減だけではない!手軽に作れる「カジュアル動画」を活用すべき本当の理由



続いて、Session2には株式会社バンダイナムコエンターテインメントの橋本 貴大氏、株式会社I-neの稲益 仁氏、menu株式会社の井上 健氏が登場、「LINEを活用したブランディングとダイレクトマーケティング」をテーマに各社の推進するLINE施策を紹介しました。モデレーターはLINEの富永 翔氏が務めました。

(右から)・menu株式会社 執行役員CFO 井上 健氏
・株式会社I-ne ECセールス部 部長代理 稲益 仁(いなます じん)氏
・株式会社バンダイナムコエンターテインメント ビジネス戦略室 NEマーケティング部 データマーケティング課 アシスタントマネージャー 橋本 貴大氏
・LINE株式会社 広告事業本部 副事業部長 富永 翔氏

バンダイナムコエンターテインメント:ブランディングにTalk Head Viewを活用、他認知系メディアと比較し2.5倍のリーチ数達成

2019年のモバイルゲーム市場が約7兆円と巨大な市場になる中、バンダイナムコエンターテインメントは「獲得したいユーザーペルソナにあわせたターゲティングができるメディア」「モバイルゲームの利用が多い若年層が多いメディア」「運営型タイトルにおけるLINE公式アカウントと連動した広告サービス」としてLINEの広告サービスの活用を開始した。

まずブランディング目的としては、目指すポジショニングの第一想起を目的に、LINEの「Talk Head View(※2)」を活用した。Talk Head Viewを導入したことで、「他認知系メニューと比べて2.5倍のリーチ数」「オーガニックと比較し5倍の復帰者を獲得」「掲載直後1時間のプレイユーザーが2倍」などの大きな効果を得られた。

もともとは新規層への認知が目的だったが、既存会員や休眠層にも届く結果となった。さらに、「サービス名の認知が非接触者と比較し+37pt」「プレイ意向が非接触者と比較し+20pt」「他SNS媒体での話題醸成」など、ゲーム外のコミュニティにも好影響が出た。

(※2)Talk Head Viewとは
1日1社限定で、トークリストの最上部に動画を掲載することができるサービス。1日で5,000万UU以上(2019年6月実績を参考)にリーチすることができる。

ダイレクト目的では、各種ゲームのユーザーデータやサイトアクセスデータなどの自社データをLINEに取り込み、拡張ターゲティング配信による新規獲得を行っている。

さらに、モバイルゲームでは初動でいかにユーザーを確保できるかが重要なため、サービスリリース前に友だち登録でハードルを低く事前登録を促し、その後サービスリリースをメッセージで送信する取り組みも実施している。今後LINEにはデータの自動連携システム構築やリサーチを掛け合わせた広告施策などを期待している。

I-ne:LINE公式アカウントを各モールへの送客装置に。LINEスタンプや店頭商品のLINEマイレージでのキャンペーンを活用して友だち数を増加。

I-neはLINE公式アカウントを中心にLINE上で各種施策を展開している。LINE公式アカウントを各モールへの送客装置と位置付け、LINE公式アカウントから各モールへの間にマルチカートLPを挟んでいる。各モールのセールのタイミング等にあわせてクーポンを付けてユーザーへの案内を配信している。

LINE公式アカウントの友だち登録を増やすために、過去に5回スタンプを実施した。毎回、似たスタンプを作らないように心がけている。LINEの友だちの新規集客をし続けることで、大きな売り上げをモールで生み出せるようになっている


「BOTANIST×自分ツッコミくま」のLINEのカスタムスタンプ配信時には、あわせてTwitterでもフォロー&リツイートキャンペーンを実施。同スタンプはダウンロード件数約380万回、スタンプ利用回数は約5,100万回に達している。

BOTANISTでは、「ボタニストジャーナル」というボタニカルライフスタイルに関するWebマガジンを発信しており、そのサイトへの現在の流入のTOPはLINEからだ。LINE公式アカウントのタイムライン上で定期的に発信し、ボタニストジャーナルに誘導している。

また、LINE公式アカウントにツールを導入し、メッセージの開封/未開封をチェックしている。メッセージが未開封でも何度か配信してみる方針で運用している。あらかじめ配信停止までの回数を定めておき、その回数に到達したら配信を止めるやり方だ。

また、店頭用の施策としてLINEマイレージを活用している。商品に貼られたシールから申し込むとLINEポイントを必ずもらえる施策で、店頭での棚取りやオフラインでの購入者のLINEの友だち化に活用している。この施策により、初めてBOTANISTを買う方へのフックになったほか、初回の展開スピードが通常商品よりも早く良い展開ができた。

今後は、小売、自社EC、自社リアル店舗、モールなど各チャネルに応じてLINEへの友だち登録を促していきたい。例えば小売ではレシート投稿で友だち登録、自社リアル店舗では商品を使ってもらいながら友だちを追加するなど、さまざまな工夫をしていく。

menu:新型コロナウイルスによりマーケットが拡大、CMやWEB広告でプロモーションを実施

フードのデリバリー&テイクアウトアプリ「menu」は、2019年4月のテイクアウト版menuのリリース以降、「フードデリバリー&テイクアウト」というマーケット時代を認知させるための施策として、サンプリングやポスティング、屋外広告などを実施してきた。今年に入り、新型コロナウイルスによる需要の拡大を受け2020年4月にデリバリー機能をリリース、そのタイミングからCMをはじめポスティング、クーポン、LINE広告をはじめとしたWEB広告などの積極的なプロモーションを実施している。

今後もブランディング、ダイレクト両方の目的でLINEをうまく活用していきたい。

オルビス:LINE のユーザーIDと自社顧客データを紐付け、LINE公式アカウントを認知から購買、ファン化にまで活用

Session3には、LINE公式アカウントの総友だち数が3,300万であるオルビス株式会社の山口 直氏が登壇。モデレーターであるLINEの見田 渉氏と同社LINE公式アカウントにおける「顧客コミュニケーション」をテーマに話を展開しました。

オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループ グループマネジャー 山口 直(やまぐち ただし)氏

オルビスのマーケティング戦略では「F4(4回目以降の購入をしたユーザー)」を優良顧客と位置付けており、獲得→育成→優良活性のそれぞれの段階でKPIを設けてマーケティング施策を実行している。

その中で、LINEは2013年に新規獲得目的に開始した。今まで、LINEプロモーションスタンプは18回以上実施、直近ではLINEセールスプロモーションも実施し、LINE公式アカウントの総友だち数は3,300万人にのぼる(有効友だち数550万人)

LINEは他のSNSメディアと比較して、「アカウント運用」と「広告機能」が分断されることなく、「認知~獲得~ファン化」までLINE公式アカウントで一貫して行うことができることが魅力だ。LINEという日常的に使うプラットフォームで全てのコミュニケーションが完結し、投資対効果も可視化される。クリエイティブ、コンテンツをリッチに見せることができインタラクティブ性もある。

現在は、LINE専任担当を置き、クリエイティブ・メッセージを作りPDCAを回している
例えば、スキンケアのステップに沿って3STEPのカルーセル用クリエイティブを作って配信したところ、クリック数は当月の平均比147%にアップ、また4枚目の画像のクリックが多く、内容を理解してもらった上でのコンバージョンにつながった。

また、ブランド配信では縦長クリエイティブを活用、惹きを持たせかつ自粛期間に寄り添った配信をしたところ、クリック数は当月の平均より320%に向上した。

さらに、オルビスの自社顧客IDとLINEのIDを連携させる取り組みも行っている。メッセージを配信する際も、通常ユーザーには「まずは試していただくこと」を中心に、ID連携ユーザーには商品についてだけでなくオルビスの考え方やご自身の肌の状態を知ってもらうためのさまざまな提案コンテンツも発信するなど工夫している。

LINEのプロモーション効果は大きく、他のSNSの効果を100としたとき、LINEセールスプロモーションでのCPFは1/10程度、LINE公式アカウント経由獲得者CPOは30.3%、LINE公式アカウント経由獲得者F2転換率は160.5%である。現在は、毎月の新規獲得構成比の中でもLINEはかなり大きい割合を占めている

また、現在オルビスのLINE公式アカウントとは別に「ORBISスキンケアチェック」というアカウントも持っており、チャット機能を活用した新規獲得施策を行っている。オルビスのLPから離脱するときにPOPアップで同アカウントのLINEの友だち登録へ誘導する取組みを行っており、現在はほぼそれだけで誘導しているが、友だち数はすでに10万人に迫る勢いだ。これからCookieの制限が予測されリターゲティングができなくなる懸念があるなか、新たなリターゲティングの進化として期待している。

今後は、LINEミニアプリ(※3)の活用、クロスターゲティングなど、LINEが1メディアですべてのユーザー体験が完結されるプラットフォームへと進化することを期待している。

(※3)LINEミニアプリとは:
LINE上で企業が自社サービスを展開できるウェブアプリケーションサービス。2020年7月に一般向けの開発申請を開始、かねてより同社が打ち出していた「スーパーアプリ構想」が本格的に進むと大きな注目を集めている。以下の記事で詳細を解説。
【LINEミニアプリの一般企業受付開始!】これから注目したい、スーパーアプリとは? 

サードオフィス:急成長アクセサリーD2Cブランド、自社でLINE公式アカウントとLINE広告を運用し友だち数10万人に

Session4には、急成長アクセサリーD2Cブランド「ROOM」を展開する株式会社サードオフィスの川口 和広氏が登壇、同社が自社で運営しているLINE公式アカウントとLINE広告の内容を紹介しました。モデレーターはLINEの松岡 亮太氏が務めました。

株式会社サードオフィス デジタル事業部 部長 川口 和広氏

サードオフィスは、2017年にアクセサリーD2Cブランド「ROOM」をスタートした。Facebook広告(Instagram広告)で新規獲得した顧客に再来訪してもらうことを重視、新規や見込み顧客の囲い込み施策としてLINE公式アカウントを開設、友だち数をKPIに置き運用している。

LINEはメールに比べてユーザーのチェック頻度が多くすぐに見てもらいやすいこと、文章でなく画像を通じてライトなコミュニケーションができることが魅力だ。LINE公式アカウントの運用から2年で友だち数は10万人を達成、売上は開始月の20倍に、CTRはメルマガの3~5倍の成果が出ている。

事業開始3年目を迎え、事業拡大を目的にセルフサーブでLINE広告の運用も開始した。LINE広告には、月間利用者数8,400万人という規模感、Facbook広告やTwitter広告ではリーチできないユーザーがいること、LINE公式アカウントとの親和性というメリットがあると考えた。

手探りで運用を開始、配信するクリエイティブは3~4本程度に絞り、さまざまなパターンを試すことで成果につなげ、他社広告の約4分の1のCPCで配信することができた。また、当初想定していた20-30代のユーザーだけでなく、40代のユーザーも多数獲得することができた。

さらに、副次的効果としてLINE広告の実施後に、LINE公式アカウントの友だち数が1.5倍に増加した。従来よりLINEの友だち数と売上がほぼ比例する状況にあるため、この際も友だち数の増加に伴い売上が1.5倍に増加している。

今後は、LINEを活用したCRMの強化を行うとともに、LINEを通じてアプリの利用促進にもつなげていきたい。また、LINEログインによるID連携から、再入荷通知やレコメント配信、またクロスターゲティングによる広告配信にも取り組んでいく。LINEに対しては、これからも引き続き、大手だけでなく中小企業にとっても使いやすいプラットフォームであることを期待している。

 

以上、今回は「LINE Direct Day」のサマリーをお伝えしました。
国内で圧倒的なユーザーベースを誇るLINE。今回の記事でお伝えした各社のLINEの取り組みを、自社ならではのLINE攻略法を見つけ出すヒントにしていただければ幸いです。

■あわせて読みたい
Facebook・LINEが語る、アフターコロナの世の中で求められる「EC企業のSNS活用」とは?
大地を守る会・マナラ・VELTRAが語る、変動が激しいデジタル市場で新規獲得施策をどう転換すべきか?
今イケてる媒体はLINE?健康食品・化粧品大手のダイレクトマーケ担当に聞いた、2020年の「新規顧客獲得向け、デジタル広告の予算投下割合」を大公開!