YouTubeのチャンネル登録者数約330万人を誇る大人気の宅トレクリエイター竹脇まりなさんと、夫のダーウィンさんが監修する宅トレブランド「MARINESS(マリネス)」が破竹の勢いで成長中です。
2021年12月に発売したMARINESS Protein(マリネスプロテイン)は全国7,500の小売店舗に展開、わずか7か月間で25万個もの販売を記録しています。
さまざまなモノや情報があふれ、選ばれるブランドになることが難しいこの時代に、MARINESSはなぜここまで急激に成長できているのでしょうか?
今回は、その裏側に迫るべく、MARINESS株式会社代表取締役のダーウィンさんと、ブランドの成長を支援しているP2C Studio株式会社代表取締役重本隆之さんにインタビュー。急成長の背景には、竹脇まりなさん・ダーウィンさんの宅トレ事業にかける熱い想いと、P2C Studioとのパートナーシップによる緻密なマーケティング戦略がありました。
宅トレをブームから文化へ。宅トレブランド「MARINESS」スタートの背景
-宅トレブランド「MARINESS」を立ち上げた背景を教えてください。
ダーウィン氏:MARINESS株式会社は、YouTubeチャンネルをメインとした宅トレのコンテンツ発信、トレーニンググッズや健康食品を提供する宅トレブランド「MARINESS」など、複数の宅トレ事業を展開している会社です。
私たちのミッションは「宅トレを当たり前の世界に」すること。例えば10年前にはまだあまり市民権を得ていなかったヨガやランニングが、現在はカッコいい趣味として多くの人に楽しまれているように、宅トレも一次的なブームではなく文化として定着させることを目指しています。
我々は、宅トレを文化にするために必要な要素として、「コミュニティ」「情報」「モノとサービス」があると考えています。宅トレブランド「MARINESS」を立ち上げた理由もそこにあります。
竹脇まりなをはじめ、フィットネスのインフルエンサーが増えてきているので、宅トレの「コミュニティ」はでき始めています。さまざまな方が宅トレについてSNSで語ってくれたり、メディアに取り上げていただいたりすることで「情報」も増えてきました。ところが、宅トレに関する「モノとサービス」は極端にない状態なんです。
日本の現状に目を転じてみると、フィットネスジムに会員登録している人は約260万人で、人口のわずか2.5%です(2022年5月に経済産業省が発表した「フィットネスクラブの動向」を参照)。欧米では人口の10-15%にのぼることに比較するとまだまだ少ない状態ですが、それでも国内のフィットネスジムの市場規模は約4,000億円あると推計されています。
一方で、我々のYouTubeチャンネルの登録者数はありがたいことに約330万人います。他のフィットネスインフルエンサーも含めると、重複を除いても恐らく500万人くらいの登録者数がいると推測されます。宅トレは気軽にできてお金がかからないことがメリットではありますが、仮に一人が年間1万円を宅トレに投資すれば、それだけで500億円の市場になるのです。
宅トレはブームから文化になるポテンシャルがある。そう信じて、本気で宅トレ市場を作っている最中です。
MARINESS=竹脇まりなのためのブランドではない
-世の中からは、「P2C=有名な人が立ち上げたブランド」で、個人の人気に依存した一過性のビジネスだという見方をされることもあると思います。そこを脱して、MARINESSが「宅トレをブームから文化に昇華させるブランド」になるために、どのような工夫をしていますか?
ダーウィン氏:YouTubeのチャンネル登録者の方々が「竹脇まりなのために」動画を見て、グッズも買うビジネスモデルだと思われがちですが、MARINESSのビジネスモデルは全くそれとは異なります。
SNSやテレビで活躍する方の動画をYouTubeで見るのは「あなたのために=YouTuberのために」する行動ですよね。
一方、竹脇まりなの宅トレ動画を見るのは「自分のために」する行動です。例えばYouTubeで「部品の組み立て方」の動画を探す行動と同じように、「スクワットの仕方」「プロテインの飲み方」「自宅でのトレーニング方法」と検索すると、竹脇まりなの動画がヒットする。「竹脇まりなのために宅トレをする」のではなく、宅トレに関する情報を検索していて竹脇まりなの動画にたどり着き、「自分のために宅トレをする」という問題解決の側面が強いと言えます。
MARINESSは、竹脇まりなのためのブランドではなく、「宅トレを頑張る自分のため」のブランドなのです。
竹脇まりながこのブランドのアンバサダーであることに間違いはありません。でも、そのインフルエンス力だけで物を売ろうとしても、継続して愛されるブランドにはならないと考えています。
宅トレ事業を拡大させるために工夫していることは、宅トレそのものをストーリー=ウェルネス(健康)のエクスペリエンスとして提供することです。
例えば、私はサウナに行くのが好きで、サウナから出た後に毎回フルーツミルクを飲むのが習慣になっているのですが、この一連の行動そのものが「サウナ」というストーリーであり、エクスペリエンスになっていますよね。同じフルーツミルクを家で飲むのとは感覚が全く違うと思います。エクスペリエンスとセットになっているから、より物の付加価値が出るのです。
MARINESSがあるから「宅トレ」というウェルネスエクスペリエンスがより楽しくなる、そんな世界観を創り、コンテンツとブランドを一緒に成長させていくことを目指しています。
MARINESS Proteinは、発売7ヵ月で25万個を販売し大ヒットに
-P2C Studioさんが、MARINESSの成長をどのように支援しているのかお聞かせください。
重本氏:P2C StudioはUUUMの子会社で、P2C(Person to Consumer, PtoC)=ヒトを起点としたブランドやモノづくりを行っている会社です。
P2Cには大きく2つのステージがあります。一つ目は自分が持っているインフルエンス力でフォロワーの方向けにブランド・モノを作って売っていくやり方です。SNSの市場はこの数年で大きく拡大しており、今はフォロワー数で1,000万人規模を実現できる時代ですから、それだけのフォロワー数があれば自分のファンの方だけにブランドを展開しても事業として成り立つ規模感になっています。
ただ、MARINESSが目指しているのはその一歩先のステージなんです。ファンに届けるためのP2Cブランドではなく、ファンを起点としながらもフォロワー以外の方にも広く利用いただけて愛してもらえるコンシューマーブランドを目指しています。
ナイキの「エアジョーダン」が、当初マイケルジョーダンのファンを起点に売れていたところから、今はマイケルジョーダンのファン以外にも広く親しまれるブランドに成長しているように。MARINESSも、竹脇まりなさんのファンの方だけでなく、宅トレを楽しむ皆さんに寄り添うブランドに成長させるべく挑戦を続けています。
たくさんの物があふれる今の時代に、継続的に愛してもらえるコンシューマーブランドに育てるためには、マーケティングの4P(製品、価格、販促、流通)の全てにおける緻密な戦略設計が欠かせません。
2021年12月に発売したMARINESS Protein(マリネスプロテイン)は、わずか7か月間で25万個を販売し大ヒットとなっていますが、世の中に無数にあるプロテインブランドの中から選んでもらうために、さまざまな工夫をしています。
他のプロテインと差別化するために、メインターゲットを運動頻度が軽めの30−50代の女性に設定し、そのターゲットにとって差別化要素を検討し、ソイ×ホエイのWプロテインに加えて1日分のビタミン11種類を配合する、乳酸菌で菌活も同時に実現できる、甘すぎず毎日飲みやすい味にするなど、製品づくりに徹底的にこだわり抜きました。
また、プロテイン=筋肉でマッチョなイメージから脱却するために、パッケージデザインを洗練させ、「もっと自分を好きになる」というMARINESSのブランドメッセージを添えることで、ウェルネスエクスペリエンスの一環として位置づけていただけるようにしています。
価格戦略では、市場優位性がある価格にすることも重要です。一般的にP2Cブランドというと、ファン向けに限定すると製造数量が限定されるために市場の2~3倍の価格帯となってしまうことがあります。それでも熱量あるファンがある程度買ってくださるイメージがあると思いますが、それでは継続的に愛されるコンシューマーブランドとしては成り立ちません。
MARINESSでは、大規模流通さんと連携することで一回の生産ロットを大きくし、原価を下げることによって続けていただきやすい価格を実現しました。現在は、全国のドラッグストアやバラエティショップ7,500店舗にMARINESS Proteinを置いていただいています。
コンシューマーブランドへの成長のカギは緻密なマーケティング戦略
-こうした世界観をファン以外の方にも伝えてMARINESSをより拡大させていくために、販促・プロモーションではどのような工夫をしていますか?
ダーウィン氏:さまざまなタッチポイントでコミュニケーションを取ることです。今はYouTubeだけでなく、テレビ番組、CMなどメディアへの露出もしていますし、また全国の店頭にもタッチポイントがあります。
そのおかげで、宅トレをしばらく止めていた方が、テレビや店頭で竹脇まりなを見かけて再度宅トレを始めてくださったり。逆に店頭でMARINESS Proteinを知って、竹脇まりなの動画に辿り着き、宅トレを始めてくださったりと、よい循環を生むことができています。
重本氏:こうした循環を生むことも、「結果的に上手く連動が取れて良かったね」ではなく、当初からのマーケティング戦略として設計・実行した成果なんです。テレビ番組やCMも含めたさまざまなタッチポイントでいつ頃露出が増えるかが分かるから、大規模流通さんにも交渉しやすい。大規模流通さんに商品を置いていただいているから、新規も増えるしリピーターも戻ってきてくれる。そこで生まれた利益を広告費や在庫に投資することで、より大きなチャレンジもできます。
重本氏:もう一つ、MARINESS拡大の原動力になっているのがファンの皆さんのお声ですね。SNSでのポジティブな共有が周囲に与える影響力は大きいと感じています。
ファンの皆さんが、MARINESS Proteinが届いたことを喜んでくださって、配送箱と一緒に写真を撮って投稿いただけることがとても多いです。
本来、筋肉意識が特別高いわけではない方たちにとって、プロテインをわざわざ写真に撮ってSNSに投稿するハードルは高いものだと思いますが、洗練されたパッケージや、「もっと自分を好きになる」というMARINESSからのメッセージをウェルネスエクスペリエンスとして体験していただけているから、ワクワク感があって自然と投稿していただけるのかなと。
通常、D2Cのマーケティングではブランドを知ってもらうために多額の広告費が必要ですし、継続購入してもらうためにはCRM施策を打ち続けなくてはなりませんが、私たちはブランド体験を上手く設計し購入者さんの声を味方につけることでブランドのファンが増え、継続購買の後押しや商品の魅力発信を購入者さんが行ってくれているからこそ、多大な広告投資をしなくても事業成長を実現できていると思っています。
-ダーウィンさんのビジョナリーな世界観、330万人に愛される竹脇まりなさんの圧倒的な感性、P2C Studioさんの緻密なマーケティング設計の全てが重なることで、多くの方が自然と語りたくなるブランドに成長しているんですね。
MARINESS×P2C Studioのパートナーシップで「宅トレを当たり前の世界に」
-最後に一言ずつ、今後の意気込みや展望をお聞かせください。
ダーウィン氏:我々の目標は、宅トレをきっかけに運動人口の底上げをすることです。私たちのYouTubeチャンネルの視聴者さんやMARINESSのお客様の中には、今までほとんど運動をしたことがないような方も多くいらっしゃいます。宅トレをきっかけに運動が習慣になることで皆がもっと健康になれば、生活習慣病などのリスクも減り、究極的に日本の健康保険料を引き下げることができ、大きな社会貢献になると確信しています。
多くの視聴者さんやお客様が私たちのミッションに賛同し、普及活動を手伝ってくださっていることには、本当に感謝しかありません。YouTube、Instagram、Twitterなど、我々のSNSに1日約500-1000件ものコメントをいただけるんです。そうしたお声がとても励みになっています。
また、私たちのミッションを推進するためにP2C Studioさんは欠かせないパートナーです。P2C Studioさんが製品や価格の設計、大規模流通さんとの連携などの実行部分を全て推進してくださるからこそ、私は宅トレの普及に集中することができます。これからも、二人三脚で「宅トレを当たり前の世界に」を追及していきたいです。
重本氏:多くの人に愛されるコンシューマーブランドとしてMARINESSを成長させるために、楽天やAmazon、自社サイトなどWeb上での購入可能店舗の拡大や、竹脇まりなさんを知らない方へのブランド認知拡大を実現するための広告投資や、店舗でより手に取ってもらいやすくするための店頭販促への投資も加速させますし、サブスクリプション形式での定期コースの販売やスポーツ量販店さんとの取引開始など、新たな取り組みにもチャレンジしていきます。
P2Cを事業として推進していく中で、協業のご提案をした際などには「所詮YouTuberのブランド」「売れているのは今だけでしょ」という見方をされることもありますが、MARINESSを必ず成功させてP2Cモデルがこれからの時代のブランド・モノづくりの新しい一つのモデルとなることを世の中に提示していきたいです。想いを持ったクリエイターや個人が「MARINESSみたいなことをしたいんだよね」と言ってもらえるようなブランドに育てることができれば、世の中に新しい価値を提供できたと言えるようになるのではないかと思います。