こんにちは、SMMLab研究員の藤田です。
9月22日(現地時間)サンフランシスコで開催された開発者イベント「F8」で、Facebookはいくつかの新しい機能を追加し、これまでの仕様を大きく変更することを発表しました。一番の注目は「プロフィール」が、基本データと合わせて、日常で起こる出来事を、まるで人生の年表のように時間軸にそって表示できる、「タイムライン」という機能に進化するということでした。また、「ティッカー」という右サイドに表示されるリアルタイムフィードの登場により、アプリが存在感が増します。そして、「いいね!」は心情的な共感の表現だけにとどまらず、読む、聞く、見る、食べる等の動的な活動に対する興味関心の意思表示としても、その役割を担うこととなります。

「F8」の様子は、「ソーシャルメディア 研究所」の熊坂仁美さんが大変分かりやすく纏めていらっしゃいますので、そちらをご参考下さい。
→ マーク・ザッカーバーグが発表した新しいFacebook(2011f8まとめ)
http://kumasakahitomi.com/archives/767.html
さて、新しいFacebookに対してあなたはどんな感想をお持ちになりましたか?
個人のユーザーとしては、自分の情報があまりに多く露出することに対する不安感と、オープングラフによって描かれる未知なる世界への期待感が混在しているではないかと思いますが、Facebookのコンセプトが大きく変化するかもしれない今回の刷新で、企業が本当に注目しておくべきことは何なのでしょうか?
「Mashable」の「あなたはFacebookで月に8時間費やしている(You Spend 8 Hours Per Month on Facebook)」という記事によると、アメリカで、いまなお一番多くのトラフィックを集めるウェブサービスはGoogleですが、ユーザーの利用時間は月に2時間だそうです。しかし、FacebookはGoogleほどのトラフィックがないにも関わらず、ユーザーはGoogleの4倍にもあたる8時間をFacebook上で費やしています。


via nielsen wire
調査会社「ニールセン」の8月の調査結果では、サイトを訪問者数でランキングすると、Google(1, 762万人)、Facebook(1, 632万人)、YouTube(1, 280万人)の順でした。しかし、利用時間順になると、平均7時間46分もの時間が費やされているFacebookがダントツの一位となります。視聴に時間がかかりそうな動画が大量にアップロードされているYouTubeが1時間41分で、ポータルサイトである「AOL」(2時間53分)やYahoo(2時間12分)よりも少ない事実を考えると、ユーザーがFacebook費やす時間はケタ違いであることに驚きます。

via “Facebook in tracking suit”
 
ユーザーがFacebookに対する愛着を深め、滞在時間が長くなればなるほど、その存在感とともに、個人情報やプライバシーをめぐる問題も大きくなってきています。つい最近もユーザーからの訴訟で「ログオフしていてもFacebookがデータを取得し続けている」という事実が明るみになり物議を醸しています。http://www.smh.com.au/technology/technology-news/facebook-in-tracking-suit-20111002-1l3yf.html
さらに、経済誌「Forbes」によると、FacebookはPoke(日本語では「あいさつをする」)をはじめ、右フィードに通知される機能の全データを蓄積しているそうです。あなたが「いいね!」をした対象、友達リストはもちろん、よくコンタクトをとる相手から、メッセージ、チャットの内容、さらに、誰のページをよく見て、誰の写真をチェックして、誰のステータスを確認しているのかまで、あなたがFacebookで活動して記録された全ての情報は、ダウンロードしようとすると880ページもの量になるといいます。
※こちらはアメリカではかなり話題となっている記事ですので、原文へのリンクもご紹介します。
“Facebook Keeps A History Of Everyone Who Has Ever Poked You, Along
With A Lot Of Other Data”

こうした問題に戸惑いと懐疑心を感じるユーザーは少なくなく、新しい「タイムライン」に対しても「オーバーシェアリング(過度な情報共有)」に対する懸念の声が上がってきています。
アメリカと日本では、Facebookの普及度や活用度に大きな違いがあるため、日本では今はまだFacebookでのプライバシー問題がここまで議論されることは少ないですが、企業がFacebookマーケティングでの活動を通じて扱える、個人情報の種類が増えるということは、新たなリスクになりうるということを認識しておいた方がよさそうです。
■参考記事
The local network: Experian analysis highlights which countries spend longest on Facebook