2012年12月6日に開催されたセールスフォース・ドットコム社のイベント「Cloudforce Japan」から、SMM Labが参加したセッションの内容をレポートします!


こんにちは、SMM Labの小川です。
エンタープライズ・クラウド・コンピューティング企業として、世界の「ソーシャル」をリードするセールスフォース・ドットコム社のイベント「Cloudforce Japan」が、12月6日に東京ビッグサイトで開催されました。今まさに日本、そして世界で起きているイノベーションやビジネスチャンスを共有する大規模なイベントということで、そのエッセンスをみなさんと共有すべく、SMMLabが参加したカンファレンスの内容を2回に渡ってご紹介します!
まず初回は、世界のリーダーを招いて行われた特別セッションと、米国セールスフォース・ドットコム社CEO マーク・ベニオフ氏の基調講演内容をレポートします。

 
イノベーションとグローバルリーダー ~ これからの成長に向けて ~
 
特別セッションにはトヨタ自動車社長豊田章男氏、前米国務長官 コリン・パウエル氏が登場。セールスフォースCEO マーク・ベニオフ氏との3者で「様々な変革の時代に求められるイノベーションとグローバルリーダー」についての対談が行われました。まさにグローバルリーダーと言える3者によるとても「熱い」対談となり、終了後の会場が興奮に包まれていたことが印象的なセッションでした。

 
トヨタ自動車取締役社長 豊田 章男氏(中央)
前米国務長官 コリン・パウエル氏(右)
米国セールスフォース・ドットコム CEO マーク・ベニオフ氏(左)
 
テクノロジーの進化が今後の世界やビジネスにもたらすこと
 
ベニオフ氏:
エジプトにおける「アラブの春」もTwitterによる呼びかけがもととなったように、世界中にモバイルデバイスが普及し、ソーシャルネットワークで人々がつながるようになりました。こうしたテクノロジーの進化は、世界にどんな影響を与えていると考えますか?
 
豊田氏:
1日が24時間であることは皆一緒であり、その24時間をどれだけ皆のために使えるかにかかっています。そのためにはどんな情報をいかにタイムリーに入手できるかが重要であり、そのような場面でソーシャルネットワークや、全世界の従業員をつなぐシステムが役立っています。
トヨタには全世界に32万人の従業員がいますが、そのうちほとんどにの人は物理的に会うことができない状態です。もしくは、会えたとしても年に1回が2回くらいでしょう。
そんな中、バーチャルで「あたかも会ったかのようにつながれる」ことは大変大きなことであり、これによって32万人一人一人の目線で世界が見えるチャンスを与えてもらっていると思っています。
 
ベニオフ氏:
日本には「大部屋」という発想があります。透明性高く、新しいアイデアについての意見交換ができる場とのことですが、新しい時代において、世界的な環境はこの「大部屋」のように透明性・信頼性の方向に向かっているのでしょうか。
 
パウエル氏:
アメリカ軍でも全てのコンピューターを新しくした時期がありますが、最も大変だったのは「ソフトウェア」の更新でなく、人々の意識を変えること、つまり人々の「ブレイン(brain=脳)ウェア」を更新することでした。
ところが、これからの世代、私たちの孫の世代はもはや完全なるデジタルの時代に生きています。全てが「人差し指一本」でできる時代も近いかもしれません。
そして、デジタルの世界、ソーシャルでつながる世界は透明性・信頼性の高い世界であります。
私は、これからの世界はとても「明るい未来」なのではないかと考えています。何も隠すことができない「透明性」の中で、企業や人々は正直にならざるを得ません。そして正直になれば信頼が生まれ、信頼が生まれればさらに正直になっていくでしょう。
企業や従業員もお客様に対してより正直になり、素晴らしい世界が生まれるのではないでしょうか。
 
豊田氏:
テクノロジーが自動車産業にどのような影響を与えるかについてお話ししますと、私自身は自動車において「時代が移っても変えたくないもの」と「時代の要請で変えていくべきもの」があると考えています。
「変えたくないもの」は「自動車は、移動手段の中で唯一ドライバーに自由が与えられるものである」という価値です。車というものを、単なるコモディティにはしたくありません。車には個性があります。ドライバーが思わず車と会話をしたくなる、そんな価値観はどんな時代であっても残していきたいと考えています。
ただそれ以外の部分については、「イノベーションはお客様や市場、世の中が決める」と言われるように、自ら様々なツールを探して取り入れ、ワクワクできる面白いことをやっていきたいです。
 
変革の時代に求められるリーダーシップとは?
 
 

ベニオフ氏:
変革の時代において、次世代のリーダーを創るために大切なことは何でしょうか?また、新しい企業が次世代のリーダーになるために必要なことは何でしょうか?
 
豊田氏:
まず第一に「何を目的にこれをやるのか」という出発点、ビジョンを持つことが大切です。そして、そのビジョンの実行をサポートし、「一回失敗してもまたやり直せる」仕組みが必要だと考えます。
 
パウエル氏:
人間ですから、失敗は必ずついて回ります。また、リスクを取れば必ずたくさんの失敗もするでしょう。
大切なのは失敗をしないことではなく、失敗を人のせいにせず、自分でその責任を受け止めて分析し、教訓として活かしていくことです。また、一回失敗したとしてもくよくよせずに前に進むこと、こだわらないことも重要です。
 
豊田氏:
実は私が社長になってから、トヨタにはあまりいいことが起きていません。社長でなく「謝長」とも言われるほどです。でも私は、「謝罪の謝長」ではなく「感謝の謝長」にしたいと考えています。
この3~4年で、「トップの役割とは何か」をすごく学ばせて頂き、やはり「決めること」と「責任を取ること」が重要であると感じました。そして、次世代の人に対しても、「決めること」と「責任を取ること」の意味を体を持って教えていかなければならないと考えています。
トヨタは、品質問題で世界中の人々に大変ご心配をおかけしました。アメリカの公聴会にも呼ばれ、「トヨタは潰れるのでは?」とささやかれたり、また少なくとも自分自身が社長ではいられなくなるなと覚悟しました。
私は、社長の役割とは、自分の味方が安全に逃げるまで最後まで戦う、いわゆる「殿(しんがり)」であると考えます。私自身、トヨタの中で「創業家」というレッテルがありながらも、この公聴会の場で初めて会社のために役に立つ「殿(しんがり)」になれたことをとても光栄に思いました。「例え自分が社長でなくなっても会社自身が残ればいいじゃないか」という気持ちでした。
この時に自分自身が決めたルールというのは、「誰のせいにもしない」ということです。そして、「対応が遅い」「ノロマ」という責めは甘んじて受けても、「嘘つき」や「ごまかしている」という責めには徹底的に戦うということを、社内に対しても、また全世界に対しても示せたと思っています。
このような体験もあったがゆえに、日本で3月11日の大震災が起こった時に、「人命第一、地域の復旧・復興が第二、生産活動はその次」というプライオリティが真っ先に口から出たのだと思います。また、「本社報告の会議はいらない。現場で即断・即決・即実行してくれ。ただし、皆よかれと思ってやってもうまくいかないときがある。その時は自分が責任を取る」という指示も行いました。アメリカの公聴会を経験したからこそ、自分自身もこのように成長ができたと感じています。
「決めること」については、私は直感で3秒で決めてしまうことも多くあります。ただ、3秒で決めるためには、「その決定により痛みをこうむる人」や、「その決定により苦労する人」の顔がどのくらい浮かぶかを理解していなければなりません。
このようなことが分かる教育をし、態度で示していくことが次世代リーダー育成には大切になるのではないでしょうか。
 
透明性の時代だからこそ「価値観の共有」が重要
 
 

ベニオフ氏:
次世代リーダーを創るためには現場に任せていくことが重要ですが、そのために企業は何をするべきなのでしょうか。
 
パウエル氏:
まずは責任を現場に与え、本部が承認しなくても個人が能力を持って判断できる体制にすることが必要です。そのためには、本部の人たちが部下を信じ、権限やツールを与え、お互いにつながりあう透明性の高い組織にすることです。
 
豊田氏:
人材育成がベースになるでしょう。ソーシャルの時代にあって、ただ単に「情報」として共有し合うのではなく、何かあった時にどんな行動をとるか、その「価値観」を共有しておくことが大事です。テクノロジーが進めば進むほど、人材育成や価値観教育がますます必要になってくるのではないでしょうか。
 
こちらの特別セッションの様子は、以下からご覧になれます。
 

 
 
BECOME A CUSTOMER COMPANY
Connect with your customers in a whole new way(新しいカタチで顧客とつながる)


今回のイベントの最初に行われた基調講演では、セールスフォースのマーク・ベニオフ氏が日本における3社(JAL、アスクル、トヨタ自動車)の先進的な事例を紹介しながら、ソーシャル時代の企業に求められる「カスタマーカンパニー」としてのあり方について語りました。

 
米国セールスフォース・ドットコム CEO マーク・ベニオフ氏
 
全ての企業は真のカスタマーカンパニーへ
 
従来、企業ではサプライヤーやパートナーとよりよい関係を築くための努力を続けてきました。しかし今、急激かつ根本的な変化が起こりつつあります。クラウド、ソーシャル、モバイルという潮流が一体となって、顧客、社員、パートナーをまったく新しい形で結び付け始めたのです。
今私たちは複数もの革命の真っ只中にあります。
・コンピューティング革命
Windows/Intel時代の終焉。LTE、クラウド 新しい時代へ。
・ソーシャル革命
世界中で多くの物事や情報共有が瞬時に行われるように
・タッチ操作革命
iPad、タブレット、スマートフォン
・ローカル革命
モバイルデバイスを通じてどこにいても位置情報を取得できるように
・クラウド革命
・カスタマー革命
カスタマーは企業により多くのことを求めるようになってきた
企業はカスタマーとより親密な関係を築くことができるようになってきた
 
このような背景において、これからの私は新しいカタチで顧客とつながる、真の「カスタマーカンパニー」にならねばなりません。
「社員とつながる、顧客とつながる、パートナーとつながる、プロダクトとつながる。」
全ての会社は大小問わずカスタマーカンパニーとなり、新しいアプローチでお客様とつながることが求められているのです。
 
日本における「カスタマーカンパニー」3社の事例
 
■JAL

 
・再上場し新たな出発が始まった
・一人一人がJAL
・顔の見えない企業から顔の見える企業へ
・ソーシャルでお客様とつながることで、より素早い対応を
・新生JALは、ソーシャルという翼に乗って「テイクオフ」し、よりアグレッシブでイノベーティブな未来をセールスフォースと実現していきたい
 
■アスクル

 
・お客様のために進化するアスクル
・企業が生き残るためには、些細なお客様の声も聞き逃さず、きちんと事前に対応していくこと
・セールスフォースの仕組みによって今までバラバラだったお客様の声が一つに集まった。お客様をもっと知りたい、お客様が何を思っているかをライブタイムで知りたいニーズが満たされた。
・大震災の時、情報を開示することで顧客から頑張れとの声をいただけた
・個人の力が高まっており、一人のTwitterのつぶやきが大きな変化を生むこともある
・「透明性」をもっともっと高めていかなければならない
 
■トヨタ自動車

 
・お客様に「最高」のサービスを目指す
・車が人格ならぬ「車格」を持つ。車は走る「情報端末」になりつつある。
・TOYOTA Friend:最大の特徴は車自身が「つぶやく」こと
・車を単なる「プロダクト」ではなく、年間800万台のお客様との接点を生み出している場所と考えれば、大きく可能性が広がる
・セールスフォースにより、働き方も大きく変わっている。現在は世界150カ国で資料や情報を共有し、1年に1回しか会えなかった人とも絶えずつながっている状態に。
・ディーラー、製品、工場、社員、お客さま、ソーシャルを通じて皆とつながる
 
基調講演の様子は以下からご覧になれます。

 
 
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