2013春ドラマ追跡分析(2):Twitterは視聴率の先を導く?

 
 
2013春ドラマ追跡分析(1):Twitterから視聴率を予測できるか?」に続いて春ドラマの分析を進めていく。


by  arcticpenguin

 
前回の記事では前哨戦的に冬ドラマのTwitterを追った様子をグラフにしてみた。そこで今回はいよいよ、今進行中のドラマの様子を見てみよう。

 
はい、これです!

 
このグラフは、このクールのドラマの中でもTwitterで明らかに盛り上がっているものをピックアップして、Tweetの件数を4月1日から5月21日まで追ったもの。今回もNECさんの「感°(かんど)レポート」を使わせてもらっている。
とりあげたのは「ガリレオ」「家族ゲーム」「ラストシンデレラ」「35歳の高校生」「空飛ぶ広報室」。ひと目みればわかる通り、「ガリレオ」がとにかくすごい!ダントツだ。
このグラフで見てしまうと他のドラマ、「ラストシンデレラ」だの「35歳の女子高生」だのが大したことないように思えてしまう。だが実際は、「ガリレオ」があまりに飛び抜けているのだ。
なにしろ「ガリレオ」は視聴率が20%超えをほぼ保っている、ここ数年でも珍しい展開となっている。その盛り上りがそのままTweetに現れているということだろう。
 
ただ、初回の盛り上がりぶりに比べて第二話以降が極端に下がっている。これはどこかでみたことあるなあ。そうだ、前回見た「ビブリア古書堂の事件帖」と似ている、気がする。
どれくらい似ているか。グラフを重ねてみればいいじゃないか。てことで、これを見てください。

 
ほんとうに「ガリレオ」と「ビブリア」を重ねてみたもの。水準がちがうので、2軸グラフにして初回の見た目の高さを揃えてみた。左側の目盛がガリレオで、右側がビブリア。
重ねて見ると、似てるけど違う。ビブリアの方が、下がり方が激しい。比べるとガリレオはビブリオほどすとんと下がってはいない。
そうだよ、だからガリレオはビブリアのように視聴率も下がりはしないよ。・・・そうなのだろうか?
だが気になるのは、ガリレオは冬ドラマの「最高の離婚」「とんび」のように、後半に向けて盛り上がっている感じはいまのところない。さらに言うと、いちばん右側の山はちょっと下がっている。視聴率的にはその前で20%を切ったのが、再び20%超えた回なので視聴者が減ったわけではなさそうだ。なのにTweetが盛り下がった。・・・うーん、よくない兆候かもしれないぞ。
 
次に、「家族ゲーム」「ラストシンデレラ」「空飛ぶ広報室」をひとつのグラフにした。

「ガリレオ」を外すと、この3つのドラマもTweet数がかなり高いのがよくわかる。中でも「家族ゲーム」は非常に高い水準だ。
「ラストシンデレラ」「空飛ぶ広報室」も決して負けてはいない。その上、この3作品は4話目5話目あたりからまた盛り上がってきている。これは冬ドラマにおける「最高の離婚」「とんび」のパターンだ。視聴率的にも上向く可能性が十分高いと言えそうだ。
 
もうひとつ、見てもらいたいのがこれだ。

これは「35歳の高校生」のグラフ。米倉涼子がなぜか高校に入学する設定が話題のドラマなのだが、Tweetが4話目5話目でふにゃふにゃと盛り下がりつつある。これはかなりはっきり今後盛り下がる兆しではないだろうか。
さて、こういうTweet件数の推移を見るだけでも今後の視聴率は推測できそうではある。だがここでもうひとつの角度でも見てみよう。2月に書いた記事「テレビ番組の新しい評価軸がつくれるか?〜2013冬ドラマをツイート分析で評価してみる〜」で使ってみた”感情分析”をここでもやってみよう。
 
”感情分析”は、Tweetの中で“好意好感“にあたる言葉を含むもの、”高揚興奮“にあたるもの、“否定”を示すものを抜き出して全体の中で何%かを割り出すものだ。プラスアルファコンサルティングの“見える化エンジン”を使わせてもらった結果だ。
今回、ここで取りあげた春ドラマでも”感情分析”をしてみた。

”感情分析”は胸を張って出せるほどの洗練もないし乱暴な分析結果にすぎない。だからあくまで参考出品なのだが、なんとなーくそうかもね的な大ざっぱな妥当性はあるんじゃないか、とも思っている。
そこで各ドラマの数値を見ていくと、「ガリレオ」がほとんど変化がないとか、「ラストシンデレラ」はもっと最新回が高そうなものだがとかつべこべ言いたくもなる。だが明らかなのは「35歳の高校生」がTweetの件数だけでなく感情にも現れているようだぞ、という点。それから「空飛ぶ広報室」はぐいっと上がりそうな予感がここからも感じられる。
 
具体的にどんなつぶやきが多いのかを個別に見るとまた面白い。特徴的なのが「家族ゲーム」で「怖い」というつぶやきが多い。でも決してネガティブではなく「怖いけど面白い」と、ホラー映画でも観るように楽しんでいるのがわかる。もちろん制作陣の狙い通りだろう。
などなど、Tweetからいろんなことがわかるのが、わかったかしら?「感°レポート」ではもっといろんなことがわかるし、感情分析ももう少し細やかにやってみたいので、更に書き進めてみたい。というわけで、つづく・・・
 
 


 

SMMLabでは、マスメディアの代表であるテレビが、今後ソーシャルメディアとどのように影響しあうのか、企業のマーケティング活動をどう変えていくのかに注目し、「ソーシャルテレビ推進会議」の公式サイト「ソーシャルテレビラボ」からの寄稿記事を、SMM Labが一部編集してご紹介しています。
ソーシャルテレビラボ http://socialtv-lab.org
 
<ライター紹介>
境 治 (Osamu Sakai)

メディア・ストラテジスト。1987年、東京大学を卒業し、広告代理店I&S(現ISBBDO)に入社してコピーライターとなる。92年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞。93年からフリーランスとなりテレビCMからポスターまで幅広く広告制作に携わる。
06年、映像制作会社ロボットに経営企画室長として入社。11年7月からは株式会社ビデオプロモーションでコミュニケーションデザイン室長としてメディア開発に取り組む。
著書『テレビは生き残れるのか』
ブログ「クリエイティブビジネス論」:www.sakaiosamu.com
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
 
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