半沢直樹の高視聴率にはネットの増幅力がすんげえ寄与したみたいだ

*本記事は「クリエイティブビジネス論」からの寄稿記事です。
 


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あらためて、『半沢直樹』について整理してみた

 
この週末は、『半沢直樹』に続いて『あまちゃん』も最終回を迎えてしまい、今週から”半沢ロス”と”あまロス“で途方に暮れる人びとが続出しそうだ。かくいうぼく自身がそうなりそうなのだけど。
さて先週『半沢直樹』のヒットについて書いた記事がハフィントンポストでけっこう読んでもらえたようだった。それを受けて、『新・週刊フジテレビ批評』が取材に来てくれた。
土曜日早朝5時からという徹夜明けじゃない限りリアルタイムでは観ないだろうこの番組はけっこうメディア論を題材にしていて、2年前に『テレビは生き残れるのか』を出版した時に出演して以来、時折取材を受けている。今回はもちろん、『半沢直樹』ヒットの要因をぼくなりに語ってほしいということだ。
そりゃきちんと喋れるようにしなきゃと慌てて、新たに資料を整えたり、頭の中を整理したりしたので、またあらためて記事にまとめておこうと思う。
 

ツイッターが話題の循環を促す血流となった

 
まず、”半沢直樹”という言葉が入ったツイート(ハッシュタグやローマ字なども含む)が一日に何件つぶやかれたか、そして“倍返し“が入ったツイートはどうだったかを視聴率と一緒にグラフにしたものを見てもらおう。これはあちこちで見せてきたが、これが最終回分まで入ったラストバージョンだ。
 

※クリックすると拡大してみることができます
 
当然と言えば当然だが、最終回でツイート数の水準がまた一段と上がっている。視聴率も一段と上がったのだから視聴者数が増えた分、つぶやく人も増えたのだ。だがそれにしても、一日20万件を超えたのは、ドラマのツイートを追ってきて初めてじゃないだろうか。
赤い線が“倍返し”なのだが、これがまた面白い。22日には“半沢“ツイートに迫る勢いで増えている。もはや流行語大賞候補NO.1だろう。あれだけ流行った「今でしょ!」がもはや古びて思える。
 
それから面白いのが、23日に一度下がるのだが、24日にはわずかに上がっていることだ。これは連休が終わって仕事モードになった時にあらためて「最終回見ました?」と挨拶代わりにツイートを交わしているのだろう。最終回で主人公が左遷されたことに納得できない人が多いせいもある。終わってからも話題を振りまき続けるこのドラマのすごさだ。
 
このグラフを持ってして「視聴率をツイッターが押し上げた」などと言うつもりはない。ツイッターのユーザー数やつぶやきの数と視聴率で動く人の数と、水準が違いすぎるからだ。そのことはこのブログで何度も書いてきた。
ただ、視聴率とツイート数にはっきりと相関性が見える。これはいままであまりなかった。春ドラマ『ラストシンデレラ』で「あれ?けっこう相関性あるかも?」と初めて感じとれたのだが、これに続いて『半沢直樹』ではますます相関性が見てとれた。
 
スマートフォンがいよいよレイトマジョリティにも普及し、視聴率に影響力がある30代以上の一般的な女性がツイッターを使いはじめたせいだと思う。つまり“奥さん“たちがソーシャルメディア界にやって来たのだ!
こうなると、今後もツイート数と視聴率の間には相関性がある状態になっていきそうだ。
ツイッターが視聴率を押し上げたとは言えないが、視聴率を押し上げるためのコミュニケーションを促進した、のはまちがいないと思う。
 
最近こういう図をあちこちで見せている。
 

 
テレビの話題はいろんなメディアで語られる。『半沢直樹』についても、週刊誌の見出しで何度も見たし、ネット上でニュースになったりブログ記事になったり、そしてなんと言ってもリアルな口コミで毎日のように話題にした。
ツイッターはそれ自体が話題を語る場でもありつつ、メディアからメディアへと話題をつなぐ血流のような役割を果たしている。ネットニュースの記事のURL入りで誰かがつぶやき、そのRTが流れると「この話題、ツイッターでバズってますよ」と週刊誌が記事にする。ツイッターがないと、そんな風に話題が繋がっていかないだろう。
ツイッターだけが視聴率を押し上げるのではないが、そのための重要なロールを担うようになってきたのだ。
 
 

ネット配信が“途中から追いつける“環境を整えた (違法含む)

 
もうひとつ、いまテレビ番組を取り巻く大きな環境変化が起こっていて、それが『半沢直樹』には強くプラスに働いた。
このドラマを観た人はフジテレビ批評の街頭インタビューでは44人中22人が途中から観た人だった。実際ツイッターを観察しているととくに第5話の放送後に「半沢があんまり面白いと言うのでまとめて観てみたら、ホントにすごい面白い!」という類いのつぶやきが明らかに多かった。
 
「まとめて観る」のはどうやるのか。まずはなんとなく気になって録画しておいたものを観る場合だ。いま録画機の容量はテラバイト単位になってきて、そうするとちょっと気になるものをどんどん録画できてしまう。録画したけど観ないままのものも多いだろう。そこへ「面白いよ!の声を聞くと、じゃあ観てみようか、となるのだ。
それから、テレビ局の“見逃し視聴サービス“もかなり整い、普及も進んでいる。面白いなら、ちょっとした金額を払えばまとめて観ることができる。
 
でもそれよりもっと大きいのが、ぶっちゃけて書くと違法動画だ。YouTubeにもたくさん上がっているが、もっと高画質で過去動画が探しやすいサイトがたくさんある。
年上のある知人がやはり半沢ファンで、でも途中から観たという。面白いと聞いてスマホで検索してみたらなぜか出てきたのでそのまま観てしまった。違法なのかなあとは思ったが、とにかくあまりにカンタンに出てきて、サクサク観やすかったのだそうだ。そういう人は、おそらくものすごい数いるだろう。
 
ぼくは“あやとりブログ”にも何度か書いてきたのだが、こうなるとテレビ局側が無料で視聴させる環境を用意してCMをスキップできない状態で放送後に公開した方がいいのだと思う。この話はまたの機会にするけど。
 
それから、これは最終回後に知ったのだけど、ニコニコ動画には『半沢直樹』の二次創作動画が、ものすごい数ある。しかも、ひとつひとつ凝っていて面白い。人気があるものは何万回も再生されている。これにはびっくりした。
もちろん違法行為にはなってしまうだろう。でもドラマをよく観ていないと面白い二次創作はできないので、愛してくれているとも言える。
 
『半沢直樹』はツッコミたくなるドラマだった。何しろ、強者ぞろいの役者たちが互いに負けじとキャラクターの際立った演技を繰り広げる。とくに大和田常務の強烈な表情はネットユーザーの創作欲を刺激したようだ。彼を使った二次創作は相当な数があった。
こうした二次創作は、ドラマを見てない人びとの心を強く揺さぶったはずだ。最高の予告編として機能したのだと思う。
 
 

テレビを観ない層を巻き込むことに成功していた

 
さてこうして見ていくと、今回の『半沢直樹』の高視聴率にはネットが少なからぬ影響を及ぼしていたようだ。そこで、取材を受けるにあたり調べてもらったことがある。ふだんテレビを観ていない人が『半沢直樹』をどれくらい観たのか。
 
そこからわかったこと。最終回を見た世帯(=42.3%)の中の2割程度は、7月7日にはそもそもテレビを観ていなかった、らしい。これはすごいことだと思う。そのまんま解釈してしまえば、全体の8%程度が「テレビ観ない→半沢直樹」だったということだ。(但し、7月7日にテレビを観なかった世帯がそのまま“普段テレビを観ない“のかどうかはわからないので、少々拡大解釈ではある)
数値は置いといても、大まかにはこの図のようなことが言えるのだと思う。
 

 
テレビを観ない層を巻き込むためのメディア環境は誰が意図したわけでもなく整っている。これを踏まえて番組を企画することで、視聴率獲得の戦略も変わってくるのではないか。単純にF2が動くのでどうのこうのでは限界があるが、この図をベースに考えるとまったく考え方を変えた方がいいということだと思う。『半沢直樹』は、テレビを新しい領域へ誘っているのかもしれない。
 
 
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SMMLabでは、マスメディアの代表であるテレビが、今後ソーシャルメディアとどのように影響しあうのか、企業のマーケティング活動をどう変えていくのかに注目し、「ソーシャルテレビ推進会議」の公式サイト「ソーシャルテレビラボ」及び、発起人である境 治氏のブログ「クリエイティブビジネス論」からの寄稿記事を、SMM Labが一部編集してご紹介しています。
 
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クリエイティブビジネス論 http://sakaiosamu.com/
 
<ライター紹介>
境 治 (Osamu Sakai)

メディア・ストラテジスト。1987年、東京大学を卒業し、広告代理店I&S(現ISBBDO)に入社してコピーライターとなる。92年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞。93年からフリーランスとなりテレビCMからポスターまで幅広く広告制作に携わる。
06年、映像制作会社ロボットに経営企画室長として入社。11年7月からは株式会社ビデオプロモーションでコミュニケーションデザイン室長。この7月から再びフリーランスで活動。
著書『テレビは生き残れるのか』
ブログ「クリエイティブビジネス論」:http://sakaiosamu.com/
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
 
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