インバウンドや越境ECが活況な中国市場において、日本企業が成功するにはどのようなプロモーション手法が有効なのでしょうか。中国SNS上などのクチコミから、2017年の消費トレンドを探るとともに、中国人に刺さる最新のプロモーションのあり方を紐解きます。

 

株式会社トレンドExpress濱野氏(左)とアライドアーキテクツ株式会社の趙氏(右)

 
アライドアーキテクツ株式会社は、ソーシャルビッグデータ解析やマーケティング支援を行う株式会社トレンドExpressと共同で「クチコミから探る中国人に『刺さる』キーワードとプロモーション最新事例」と題するセミナーを開催しました。中国SNS上の投稿や在日中国人の生の声といった「クチコミ」に基づき、中国の消費トレンドや中国人に刺さるプロモーション手法を解説したほか、中国におけるクチコミマーケティングのノウハウや成功事例も公開。中国事業を手掛けているメーカーや小売企業から高い注目を集めた同セミナーをレポートします。
 
 

「クチコミから探る中国人に『刺さる』キーワードとプロモーション最新事例」
プログラム

■第1部 「クチコミから探る、中国人に『刺さる』プロモーションのヒント」
スピーカー 株式会社トレンドExpress代表取締役社長(兼 株式会社ホットリンク執行役員COO)濱野 智成 氏
■第2部 「中国向けプロモーション手法の潮流/最新トレンド」
スピーカー アライドアーキテクツ株式会社 事業企画室 中国SNSコンサルタント 趙 会娟 氏
 
 

第1部 クチコミから探る中国人に刺さるプロモーションのヒント

 
セミナーの第1部は、ソーシャルビッグデータの解析やマーケティング支援を行うトレンドExpressの濱野氏がスピーカーとして登壇。中国におけるクチコミの重要性や、クチコミを活用したプロモーション手法などについて成功事例を交えて解説しました。
 

スピーカーの濱野 智成 氏。ビッグデータ解析や海外でのマーケティング支援に強みを持つ
株式会社トレンドExpress(株式会社ホットリンクの100%子会社)の代表取締役社長を務めている

 
 

中国の消費者はクチコミに基づいて意思決定する

濱野氏は冒頭、中国では10代から60代まですべての年代の消費者が買い物の際にクチコミを最も重視することを独自の調査データを使って示し、「中国の消費者はクチコミに基づいて意思決定する」と強調しました。特に30代以下はSNSでクチコミを検索し、KOL(Key Opinion Leader、インターネット上のインフルエンサー)が発信する情報を信用する傾向が強いそうです。
 

10~30代が買い物の際に最も信頼する情報は、ネット上のクチコミ

 
クチコミをマーケティングに活用するもう一つのメリットとして、「インターネット上のクチコミを分析することでターゲティングの精度が高まる」(濱野氏)と指摘。同社が支援している企業の事例を踏まえ、「商品に関するクチコミを収集し、さまざまな角度から分析することで、顧客のペルソナの輪郭が浮かび上がってくる。また、ターゲットが接触しているメディアや、ターゲットに刺さるプロモーション施策なども見えてくる」と説明しました。そして、「『敵を知り己を知れば百戦危うからず』の諺通り、自分たちの商品に対する消費者のイメージや、自社商品の市場における立ち位置を知ることが重要」と強調しました。
 
 

中国クチコミ施策の成功事例

続いて濱野氏は、クチコミを活用してマーケティグの成功事例として、同社が支援しているダイエット食品メーカー(A社)の中国における取り組みを紹介しました。
 
【A社の取り組み】
■現状分析:まずはA社の商品の認知度やブランドイメージ、顧客のペルソナなどを調べるため、商品に関するSNS上のクチコミを分析した。その結果、商品の機能性に対する消費者の評価は高かったものの、商品の認知度が低いために売り上げが伸び悩んでいることがわかった。
■施策:商品の認知度を高めるプロモーションを行った。例えば、ウェブメディアに対して商品に関するニュース記事の掲載を働きかけ、商品情報をウェブ上に増やす施策を実施。一つのメディアに記事が掲載されると、他のメディアも後追い的に記事を掲載し、それらにKOLが言及してSNSを通じて拡散するというソーシャルメディアの構造を利用した。
■結果:上記のプロモーション施策を一定期間継続的に実施した結果、施策開始から4ヶ月後に商品に関するSNS上のクチコミ数が競合製品を逆転。商品に関する記事は約1年で合計4億ページビューを達成し、数百万円の投資にもかかわらず広告費換算で1億6000万円相当の効果を発揮した。
 
 

ウェブメディアとSNSを活用してウェブ上に商品情報を増やしていった

 
濱野氏によると、トレンドExpressでは中国で約2,000のウェブメディアとのネットワークを持ち、商品ごとに最適なメディアに対して記事掲載を交渉するとのこと。「日本の商品に関する特集を組みたいというメディアのニーズがあるため、記事掲載を打診すれば掲載される確率も高い」(濱野氏)と説明しました。プロモーションを実施する際は、①ターゲットは訪日中国人に限定せず、日本に興味がある中国人全体にアプローチする②認知拡大の取り組みは一定期間、継続的に行うと効果が上がりやすい③SNSで情報拡散を狙う場合、1次情報を発信するウェブメディアへの働きかけが重要--の3点がポイントになると強調しました。
 
 

ベビーやキッズが成長分野

濱野氏は最後に、2017年の中国市場のトレンドとして、「消費者ニーズの多様化・分散化が進んでいる」「広告やSNS運用など複合的なプロモーション施策が必要になってきている」「『春節』『国慶節』『労働節』などに合わせた短期的なプロモーションだけでなく、中長期を見据えたプロモーション施策に投資することが必要」「インバウンドの需要は今後も伸びていく」ことなどを説明しました。
また、中国では日本製のベビー用品やキッズ用品を「買いたい」と考える中国人が近年急増していることを示す独自の調査結果も紹介。中国市場には成長分野がいくつもあることを指摘し、セミナーの第1部を締めくくりました。
 

セミナーには大手メーカーや小売企業の担当者ら60人以上が参加した

 
 

第2部 中国向けプロモーション手法の潮流と最新トレンド

 
セミナーの第2部では、ソーシャルメディアマーケティングを支援するアライドアーキテクツの趙 会娟 氏が登壇。独自に構築した在日中国人約3,000人のネットワークから吸い上げた「中国人のリアルな声」を踏まえ、中国人向けの最新のプロモーション手法を解説しました。
 

アライドアーキテクツ株式会社・事業企画室 中国SNSコンサルタントの趙 会娟氏。
SNS上で約3,000人の在日中国人ネットワークを持ち、リアルな声をマーケティング支援に生かしている。

 

中国人のECはソーシャルメディアが中心に

趙氏は、中国のオンライン消費を牽引しているのは1980年代以降に生まれた若者であると述べ、「中国でECを成功させるには、消費の中心である若者にアプローチする施策が必要」と指摘しました。中国では消費の多様化が進んでおり、特に若年層は、ファションは有名ブランドよりも個性の表現を重視し、団体旅行よりも個人旅行を好むなど「個人」を重視する傾向が強まっているそうです。
また、30代以下の世代の特徴について、「比較的経済的に余裕があり、消費意欲も旺盛で、新しいものを積極的に取り込み、さまざまなニーズや新しい市場を生み出している。微博(Weibo)や微信(WeChat)などのSNSを介して商品を見つけ、電子決済で買い物をするのが当たり前で、ECはソーシャルメディアが中心になっている」(同)と説明しました。
 

中国ではモバイル端末からの決済取引額が153兆円(2015年時点)を超えるなど、
オンライン決済が広く普及している

 
趙氏は訪日中国人観光客のインバウンド消費が「モノからコトへ」と変化していることにも言及し、「多くの在日中国人がこの変化をビジネスチャンスと捉えている」(趙氏)と明かしました。在日中国人が中国人観光客に対して「ガイド」「送迎」「撮影」などのサービスを提供したり、お薦めの医療機関や美容整形クリニックなどを紹介したりする動きが広がっており、これらのサービスは微信(WeChat)のグループトークなど、SNS上で情報を提供し、支払いも微信(WeChat)上の決済機能で完結するなど、SNSを中心とした仕組みが確立されているそうです。
 

中国人の消費は多様化が進み、「モノからコトへ」と変化していることが
在日中国人の動向からもうかがえるという

 

プロモーションのトレンドは「網紅(ワンホン)」のクチコミマーケティング

ECがソーシャルメディア中心に変遷したことで、プロモーションにおいてもSNSの重要性が増しており、「特に『網紅(ワンホン、インターネット上のインフルエンサー)』を活用したプロモーションに注目が集まっている」(張氏)と指摘しました。多くのフォロワーを持つ「網紅(ワンホン)」が微博などで商品を紹介すると、フォロワーが一斉に注文したり、情報を拡散したりすることから、こうしたインフルエンサーの影響力を活用したプロモーションが中国で広がっているそうです。「2016年からはマイクロムービー(短尺の動画)や生放送(ライブ配信)が高い成果を上げている」(趙氏)と最近のトレンドも紹介しました。
 

中国を代表する網紅の「papi醬」。影響力の強いコンテンツ制作と高い拡散力に強みを持つ

 
 
企業がプロモーションに「網紅(ワンホン)」を活用する動きが広がっている理由について、趙氏は「中国人は(消費のチャネルが変わっても)クチコミを重視する文化は変わらない。中国人はクチコミを知りたい、検索したい、情報にたどり着きたいと思っている」と説明。また、中国ではGoogleやFacebook、Twitterなどが利用できないため、「日本の企業が中国の消費者にアプローチするには、中国のソーシャルメディアで網紅(ワンホン)を活用するしかないことも押さえておく必要がある」(同)と指摘しました。
 
 
 

網紅(ワンホン)を起用した日本メーカーの成功事例

「網紅(ワンホン)」を活用してプロモーションを行った日本企業の成功事例も紹介。二重まぶたを作る整形テープのメーカーは、網紅(ワンホン)が商品を体験している動画を微博に投稿し、その動画を他のインフルエンサーが拡散するプロモーションを実施した結果、動画の視聴回数が合計122万回を超える成果を上げました。動画拡散のプロモーションには、微博と連携したインフルエンサーマーケティング・プラットフォーム「WEIQ」を活用。「WEIQ」は80万人以上のインフルエンサーが登録しており、プロモーションのターゲットや予算に応じて最適なアカウントを選択することで効果を高めることが可能です。
趙氏は最後に、中国進出を検討する企業に対し、「中国市場では全世界の企業がライバルになる。その市場でどのようなプロモーションが有効なのか、まずは試してみることが大切だと伝えたい」とメッセージを投げかけ、第2部を終えました。
 

質疑応答では参加者から次々と質問が上がり、中国市場への関心の高さが窺い知れた

 
 
講演後の質疑応答では、参加者から「中国人が日本の企業に求めていることは何か」「2017年のプロモーションのトレンド予測を教えて欲しい」「歌舞伎のシートマスクが中国人にヒットしたのはなぜか」といった質問が次々と上がりました。セミナー終了後も多くの参加者が趙氏や濱野氏との名刺交換の列に並び、中国の動向やマーケティングのトレンドについて質問する姿が見られるなど、中国市場の注目度の高さが改めて伺い知れる一幕でした。
 
 
取材・執筆:渡部 和章
ライトプロ株式会社
http://writepro.co.jp/
 


 


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