ソーシャルメディアを活用してネット通販の顧客を開拓するには、どのような施策が有効なのでしょうか?
サンスター、シンクロがSNSマーケティングで成果を上げる為のポイントを徹底討論!

 

 
ソーシャルメディア・マーケティング支援を行うアライドアーキテクツでは過日、「SNSマーケティングを成功させるために広告主が身につけるべきスキル」と題するパネルディスカッションを開催しました。登壇したのは日用品大手サンスターの通販事業を主管するダイレクト営業部のEC担当を務める兒嶋 仁視 氏とEC事業者向けのコンサルティング事業を展開する株式会社シンクロで代表を務める西井 敏恭 氏、アライドアーキテクツ株式会社アドテク事業部の鬼山 真記 氏の3人。SNS広告やSNSマーケティングを成功させるポイントについて、自社の取り組みや事例を踏まえて語りました。
 
 

パネルディスカッション
「SNSマーケティングを成功させる為に広告主が身に付けるべきスキルとは?」

 
・モデレーター
株式会社シンクロ代表取締役 兼
オイシックス株式会社CMT(Chief Marketing Technologist) 西井 敏恭 氏
 
・パネラー
サンスターグループ ヘルス&ビューティーカンパニー
ダイレクト営業部 兒嶋 仁視 氏
アライドアーキテクツ株式会社
アドテク事業部 セールスマネージャー 鬼山 真記 氏
 
 

サンスターがWebマーケティングを強化している理由

 
冒頭、サンスターの兒嶋氏は通販事業の概要やWeb事業の業績、SNSマーケティングを強化している背景などを説明しました。
 
通販部門ではコレステロールを下げるトクホ飲料「緑でサラナ」や、サンスター独自の有効美白成分を配合したスキンケア化粧品「エクイタンス ホワイトロジーエッセンスW」など、健康食品や化粧品を中心に約40種を展開しています。
 

サンスターのオンラインショップ。健康食品やスキンケア化粧品など約40種を扱っている

 
サンスターがWebマーケティングの本格強化に乗り出したのは2010年のこと。当時は新聞折込チラシなどオフラインの広告媒体が中心で、純広告やリターゲティング広告を活用した2ステップマーケティングなどにも取り組んでいたものの成果は不十分でした。
 
こうした中、「弊社のWeb売上の伸び率が、国内EC市場の成長率に比べてあまりにも低いと感じていた」(兒嶋氏)ことから、Webマーケティングを強化する方針に舵を切り、さまざまな方針の見直しに着手しました。
 

サンスターの通販事業について説明するサンスターグループ・ヘルス&ビューティーカンパニー
ダイレクト営業部 兒嶋 仁視 氏

 
 

Webの売上比率が前年比190%の理由とは?

 
近年のサンスターのWeb売上は急成長し、2017年は前年比190%を見込んでいるそうですが、伸び悩んでいたECの売り上げが一気に伸びた理由の一つは、SNS広告のクリエイティブを改善したこと。サンスターのSNS広告の運用を支援しているアライドアーキテクツの鬼山氏は、クリエイティブ改善のポイントについて次のように説明しました。
 
「サンスターさんが以前使っていたSNS広告のバナーは、商品のスペックや割引キャンペーンを訴求するもので、SNS上ではあまり好まれない内容だった。そこで、SNSのタイムラインになじむユーザーコンテンツ(UGC)風のバナーに変えた」(鬼山氏)
 
クリエイティブを改善した結果、CPAを下げながら獲得件数を約7倍に増やすことに成功。また、広告であるにもかかわらず、「いいね」が約1,000件、コメントやシェアも10件を超えるなど高い成果を上げたそうです。さらに、Web広告の課題だったサンプルから本製品への引き上げ率も「従来比約1.5倍に上昇した」(兒嶋氏)ことを明かしました。
 
広告のクリエイティブはABテストを繰り返してブラッシュアップしているとのこと。例えば、「緑でサラナ」のバナーは、「入れ物は普通のコップがいいのか、それともボトルがいいのか。また、氷を入れたほうがいいのか、コップに汗をかかせたほうがいいのかを検証した」(鬼山氏)と試行錯誤したことを説明。
 
兒嶋氏はバナーに商品名やスペックなどを記載せず、まるで素人が撮影したような写真を使うことについて、「正直、これで大丈夫か不安だった」と本音を打ち明けながらも、広告運用を開始してみるとUGC風バナーのCPAやCTR は、「YDNやGDNで成功したクリエイティブをことごとく上回り、SNS広告のクリエイティブの成功パターンは他のWeb広告とは異なることを実感した」と語りました。
 
最近は動画のクリエイティブにも力を入れており、SNS広告経由の顧客獲得件数の約4割を動画が占めているそうです。「静止画で効果の高いクリエイティブの雰囲気を、動画にも生かすことが成功のポイント」(鬼山氏)と述べ、動画広告のクリエイティブにもUGCの要素を取り入れることが有効だと強調しました。
 
 

Web広告の代理店契約と社内組織を見直し

 
サンスターのWeb売り上げが急増した理由の二つ目は、Web広告運用の外部委託の方法を見直したこと。従来は商品ごとに広告代理店を選んでいましたが、2016年からは「広告媒体別」に代理店を選定する方法に変更したそうです。
 
その理由について兒嶋氏は、「商品ごとの広告の成功パターンを、別の商品に横展開するため」と説明。また、広告代理店ごとに広告媒体の得意不得意があるため、代理店を使い分けていることも明かしました。
 
こうした取り組みについて西井氏は、自身の経験を踏まえ、「広告の運用方法やクリエイティブのあり方はGDNやYDN、Facebook、LINEなど媒体によって大きく違う。インターネット広告という枠でくくってしまうのではなく、広告媒体ごとに委託先を変えて運用したほうが効果は高いと思う」と述べ、兒嶋氏の考えに賛同しました。
 

株式会社シンクロ 代表取締役 兼 オイシックス株式会社 CMT(Chief Marketing Technologist)西井 敏恭 氏

 
また、サンスターは広告代理店の選定方法を変えたことに合わせて社内体制も変更。従来は商品ごとに担当者を配置していましたが、現在は広告媒体ごとに担当者を付けているそうです。
 
 

広告主が身につけるべき4つのスキル

 
兒嶋氏はSNS広告の運用経験などを踏まえ、SNSマーケティングで成功するために広告主が身につけるべきスキルとして次の4つを挙げました。
 
・ユーザーの理解(リテラシーの変化/情報収集の仕方等)
・メディアの理解(ネットワーク系/SNS/メール等)
・分析の方法(CV定義/AB検証等)
・社内説得(新規性の高い媒体や手法の有効性等)
 

(1)ユーザーの理解(リテラシーの変化/情報収集の仕方等)

 
SNS広告をめぐる現状について兒嶋氏は、「メディアに馴染まない広告は淘汰されていくと思う」と述べ、SNS上で広告に出会うユーザーに不快感を与えないようにするなど、SNSユーザーについて理解し、ユーザーの感情に配慮した広告運用が重要だと強調しました。
 
この指摘に対して鬼山氏は、「SNSを使うユーザーのモチベーションをしっかり理解しておかないと、クリエイティブが媒体に合わなくなる」と述べ、兒嶋氏の意見に賛同。西井氏は、「現在はスマホに最適化された広告メニューが増え、獲得効率が上がっている。アドテクノロジーの側面からも媒体にマッチした広告を運用しやすくなっており、テクノロジーを上手に活用することが成果をあげるポイントではないか」と述べました。
 

(2)メディアの理解(ネットワーク系/SNS/メール等)

 
身につけるべきスキルの2つ目は、広告主も広告媒体や広告運用の基礎知識を身につけること。兒嶋氏は「広告運用を代理店に丸投げするのではなく、自分たちも知識を身につけることで、代理店とのコミュニケーションのレベルも劇的に上がる」と強調しました。
 
サンスターのWeb広告担当者はリスティング広告の基礎知識を身につけるため、キーワード選定や広告文の作成といった運用業務を一通り経験。その結果について、「広告代理店との打ち合わせの際に具体的な施策について議論できるようになり、会話のレベルが格段に上がった」(兒嶋氏)と説明しました。
 
また、今までWeb広告のクリエイティブを全てパートナー任せにしていて訴求のPDCAが決してスピーディーではなかったところに対して、「クリエイティブ選手権」と題した社内企画を実施。パートナー側とサンスター側が双方で「自分がSNSにアップするなら」をテーマにクリエイティブ案を持ち寄り(スマホのブツドリ撮影画像など)、集まったクリエイティブを検証をして分析をおこなったところ、施策のスピード感が増し、比例してSNS広告の効果が上昇しました。
兒嶋氏が社内メール等を駆使して関係者に定期的にクリエイティブ募集の告知をしたこともあり、本企画では合計50枚程度のバナー案が集まり、検証をおこなうに十分な量を確保することができたそうです。
 
広告主側の担当者が自ら広告運用を経験することの重要性について鬼山氏は、「企業ごとに事情は異なると思うが、広告の効果を伸ばしていくには、広告主と代理店が同じ目線で、同じ課題感を持って取り組めたほうがいいと思う」と私見を述べました。
 

(3)分析の方法(CV定義/AB検証等)

 
続いて兒嶋氏はSNS広告の効果測定の重要性にも言及。サンスターはバナー広告のABテストなどはもちろんのこと、SNS広告の飛び先のランディングページを「ソーシャルらしく」することで、どのくらい効果が上がるかを検証したそうです。
 
例えば、Facebook/Instagram広告をクリックしてからランディングページに移動した後までのユーザー体験に一貫性を持たせるため、ランディングページに使うテキストの書体や画像、背景などをFacebook/Instagramの世界観に合わせて制作。その結果、CVRは1.83%から4.63%へと大幅に上昇したそうです。
 

(4)社内説得(新規性の高い媒体や手法の有効性等)

 
新しい広告媒体を試す場合の社内に対する説得については、「ある程度まずはやってみる。そして、実績が出てくれば、それが社内への説得材料になる」(兒嶋氏)と述べ、事前に社内を無理に説得するのではなく、少しずつ実績を積み重ねることで説得材料を増やしていると説明しました。
 
 

聴講者はSNSマーケティングのポイントについて熱心に耳を傾けた

 
 

サンスターが目指すSNS戦略とは?

 
パネルディスカッションの終盤、サンスターのEC事業の展望について聞かれた兒嶋氏は、「健康食品のInstagramマーケティングに挑戦していく。健康食品ジャンルでInstagramマーケティングに成功している企業はまだ少ないので、うちが最初に成功させたい」と意欲を示しました。
 
最後に西井氏は、広告成果を高めるために広告主に求められる姿勢について、代理店の立場からの意見を鬼山氏に質問。鬼山氏は、「タイムラインに流れるクリエイティブだけを最適化するのではなく、ランディングページなども含め、広告の入り口から出口まで広告主と代理店が一緒に考えることができると、SNS広告の効果は伸びていくと思う」と述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。
 
 

セミナー「売上に直結するSNS広告の最新手法とは?」

 
パネルディスカッションに先立ち、アライドアーキテクツ株式会社アドテク事業部の伊藤 仁哉 氏による「売上に直結するSNS広告の最新手法とは?」と題するセミナーも開催されました。SNS広告の運用やクリエイティブ制作のポイントについて多数の成功事例を挙げて解説しました。
 

アライドアーキテクツ株式会社・アドテク事業部 伊藤 仁哉 氏

 
伊藤氏はSNS広告やSNSマーケティングにおいて最も重要なポイントは「質の高いユーザー体験を提供すること」と指摘。SNSの利用シーンは通勤中や食事中、就寝前、ちょっとした待ち時間など、いわゆる「ながらスマホ」の状態が多いため、「 『ながらスマホ』のユーザーが思わず親指を止め、前のめりになるようなコンテンツを提供するには、SNSの世界観にマッチしたコンテンツや、ユーザーに役立つ情報を届けることが重要」と説明しました。
 
また、「ながらスマホ」のユーザーは①売られること②何度も現れること③騙されること--を嫌うため、そのことを理解した上でコミュニケーションを図るべきだと強調しました。
 
 

効果的なSNS広告のケーススタディー

 
続いて伊藤氏は、SNS広告で効果的なクリエイティブについて、成功事例を踏まえて解説しました。
 
飲料大手のカゴメはSNSのタイムラインになじむUGC風の写真をバナー広告に使用した結果、CVRが2.81倍、獲得件数が25倍に上昇。「ブランド名や商品のスペックなどは記載せず、野菜ジュースに氷を入れるなど、カゴメのブランド担当者では思いつかないような写真が高い成果を上げた」(伊藤氏)と説明しました。
 

SNSのタイムラインになじむUGC風の写真をバナー広告に使用し、CVRなどの改善に成功した

 
別の化粧品会社では、広告クリエイティブにモデルを起用せず、ブロガーや商品モニターなどが投稿した写真(UGC)を使うことで一般消費者に親近感を与える試みを実施。その結果、CTRが1.14倍、CVRが3.37倍、CPAが69%低下するなど成果を上げたそうです。
 
このほか、比較的長文の記事風なクリエイティブを使い、Facebookの関連度スコアの大幅な改善に成功した事例や、広告をクリックした先のランディングページに工夫を凝らし、広告からランディングページまでの世界観に一貫性を持たせることでCVRなどの改善に成功したオイシックス等の事例も紹介しました。
 
 

SNS広告のコンテンツを改善する「Letro」

 
伊藤氏はセミナーの終盤、ユーザーコンテンツをInstagram上などから自動で収集するシステム「Letro」を紹介しました。例えば、Instagram上に投稿されたコンテンツをハッシュタグやキーワード検索などで収集し、投稿者に使用許諾のメッセージを送ることができます。
 
使用した画像のCTRやCVRを管理画面で測定できることなどを解説。成功事例として紹介したカゴメも「Letro」を使って広告効果の改善に成功したことなどを説明しました。
 
最後に伊藤氏は、「UGCなどを活用してユーザーに好まれる広告クリエイティブを作り、さらに、ランディングページの世界観もSNSにマッチさせることで一貫性のあるユーザー体験を提供することが、SNS広告の成果を高めるポイント」と強調し、セミナーを終えました。
 

当日は企業のSNSマーケティング担当者を中心に約50人が聴講した

 
 
■取材・執筆
ライトプロ株式会社 渡部 和章
http://writepro.co.jp/
 


Facebook、Instagram、Twitter等のSNS広告に関して
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