マスコットキャラクターである「ジャパンダ」を軸にInstagramを運営、企画性に富んだキャンペーンなどを積極展開し、20~30代の新たな顧客層との関係構築に成功している損保ジャパン日本興亜社に、同社のInstagramを通じたコミュニケーション戦略についてお話を伺いました!


損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下損保ジャパン日本興亜)は2018年9月から、マスコットキャラクターである「ジャパンダ」を主軸としたInstagramマーケティング施策を開始しました。
20~30代の若者層において認知度や想起率がまだ十分ではないことから、本ターゲット層に向けたブランド認知の拡大・深化を目的に公式アカウントの運用をスタート。マスコットキャラクターの「ジャパンダ」を通じた親しみやすく丁寧なコミュニケーション、ユーザー一体型の企画性に富んだキャンペーンなどが多くのファンの共感を呼び、新たな顧客層とのコミュニケーションに成功、ブランド価値向上へとつながっています。
今回は、同社のInstagramにおける取り組みについて、Instagramアカウントの戦略設計から運用を担当する損保ジャパン日本興亜の広報部メディアグループの久我貴大氏、西宮妙子氏、安藤梓氏にお話を伺いました。

ジャパンダを軸にしたInstagram運営を通じて、新たな顧客層との繋がりを

-今日は、損保ジャパン日本興亜のInstagramアカウントの活用戦略について、お話を聞かせてください。まずは久我様、西宮様、安藤様の所属する広報部メディアグループの役割やミッションについて教えてください。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 広報部メディアグループ 久我貴大氏

久我氏:私たち損保ジャパン日本興亜は、自動車保険や火災保険、傷害保険など、生活に関わるさまざまなリスクを補償する商品・サービスを提供する損害保険会社です。
従来の保険会社は、“お客さまに万が一事故や病気に遭ったときに、マイナスをゼロにする”、つまり原状復帰を果たすビジネスですので、日用品などを商品とするビジネスのように常にお客さまと接点があるものではありません。そんな中でも、当社は、「常に顧客と接点を持つこと。そして、マイナスをゼロにするだけでなくプラスにする、人をハッピーにすること。」をミッションとしています。
2018年から開始したInstagram公式アカウントの運用もその一環となる施策です。従来、お客さまとはテレビCMなどのマス広告をメインに接点を作ってきましたが、昨今スマホの接触時間が年々上昇し、テレビ離れが進んでいる状況ですから、それに応じて適した媒体を選択していかないと損害保険業界を認知してもらうことが難しいと感じていました。
その中で、男女問わず親しんでもらえる当社のマスコットキャラクターである「ジャパンダ」を軸にしてInstagramを運用することにより、幅広い世代、特に若年層への認知拡大とお客さまとのより深いコミュニケーションをとることを目指しています。
西宮氏:「保険」という無形サービスをInstagramの世界観においてどのようなコンテンツで表現するのか、またそれらのコンテンツを継続的に生成・発信していくことは可能なのか、また、そもそもInstagramの中でただスタイリッシュな投稿だけをしていてもなかなかリーチしないのではという懸念がありましたが、「ジャパンダ」を架け橋にコミュニケーションを取ることで、多くの方に親近感を持っていただけていると思います。

-これまで、Facebookアカウントの運用も行っていましたが、その中でInstagramを立ち上げた経緯を教えてください。

久我氏:Facebookだけでは接触できない層に、Instagramを使って接触することが開設の理由です。InstagramはFacebookと比較してよりミレニアル世代に普及している、かつ男女比率も女性の方がやや多い媒体ですので、「ミレニアル世代の女性」に対して情報を発信し、コミュニケーションを深めることで当社のブランドを認知いただけるのではと考えました。

ユーザー一体型のInstagramキャンペーンで、多数の新規ファンとの繋がりに成功

-Instagram公式アカウントの開設と同時に「#ジャパンダおいで」と題した写真投稿キャンペーンを実施されましたが、その内容と実施の目的を教えてください。

久我氏:キャンペーン実施の目的は、まずは公式アカウントを開設したことを多くの方に知っていただくことです。Instagramを開設したところで、キャンペーンを実施せずに通常投稿を行っていても、ファン数の伸びに限界はありますし、リーチも難しいのではないかと考えました。
初めてのInstagramキャンペーンのテーマは「#ジャパンダおいで」とし、”私が守りたい大切な瞬間や思い出の写真”をInstagramユーザーから募集する写真投稿キャンペーンにしました。ただテーマを伝えただけでなく「あなたの写真にジャパンダがお邪魔するかも?」という可能性を示唆し、ユーザー自身が「ジャパンダに来てほしい」という思いを持って能動的に参加してもらえるようなキャンペーン設計を行いました。
その後、集まった約5,000枚の写真の中から約100枚を選出し、1枚ごとに「ジャパンダ」を合成したオリジナルコンテンツを作成しました。被写体やシーンに合わせて「ジャパンダ」の洋服やポーズ、配置を変えたほか、クロマキー撮影したリアルな3D「ジャパンダ」を合成した動画、スタンプなどで加工したストーリーズ向けの写真など、バラエティあふれるコンテンツを公式アカウントで投稿しました。

-本キャンペーン実施後、フォロワー数は3,500人増加、キャンペーン写真投稿数も5,000投稿にものぼりました。御社の中での評価はいかがでしたか?

久我氏:これは成功なのか評価できるのかという観点では比較対象が極めて少ないです。国内の損害保険業界では、積極的にInstagramのアカウント運用を行っている企業はありません。生命保険の業界ですと、Instagramのアカウント運用を行っている企業はありましたが、アクティブに運用している感じではありませんでした。その中で、まずは国内の生損保業界でトップになろうという思いでやっていたので、初回のキャンペーンで3,000人獲得できたことは社内での評価は高いものでした。
西宮氏:「ジャパンダ」を合成したさまざまな写真や動画を発信するうちに、「私の写真にもジャパンダが来ないかな」といった期待の声や、「ついにジャパンダが来てくれた!」という喜びの声が届き、Instagramならではのコミュニケーションを生み出すことができました。特に、写真を投稿してくださった方の気持ちになってスタンプなどで加工した「ストーリーズ」向けのコンテンツは、沢山の方にご覧いただくことができました。
ファンが撮影した写真や写真内に合成するジャパンダ、投稿に付けるInstagramハッシュタグなど、どのようにしたら可愛く見えるかなど考え、工夫して投稿していたので、ファンからの反応は大変嬉しかったです。
また今回の施策では、写真とともに「女の子ママ」「3歳」「親バカ部」など育児関連のハッシュタグを付けている方が多く、私たちが接点を持ちたいと考えていた”ママユーザー”の皆さまから多くの反響があったことも大変嬉しい成果でした。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 広報部メディアグループ 西宮妙子氏

ユーザーとのコミュニケーションを重視したキャンペーンで、ファンの深化を実現

-初回のキャンペーンで単純にフォロワーを獲得するだけでなく、ファンとどういったコミュニケーションをとるかといった1つの形が出来上がったのかなと考えています。第2回目のキャンペーンでは、参加者からクイズに答えてもらうというハードルを上げたキャンペーンを実施されましたが、その背景と企画の詳細をお聞かせください。

安藤氏:2回目のキャンペーンでは、多くの方とつながるだけでなく、さらにその方たちとの交流ができたらいいな、という考えのもと「ジャパンダワールドクイズ」を企画しました。
これは、旅行先で撮影した写真や動画に「#ジャパンダワールドクイズ」というハッシュタグを付けてInstagramに投稿してもらうと、損保ジャパン日本興亜の公式Instagramアカウントのストーリーズ投稿で、その写真や動画を基にした「クイズ」が出題される、というものです。そのクイズに答えていただいた方の中から抽選で、ジャパンダをモチーフにした旅行グッズなどをプレゼントしました。

この企画のポイントは、第一弾と同じく「自らの写真にジャパンダが遊びに来てくれるかも?」という期待感に加え、それが公式アカウントでフォロワー皆に向けた「クイズ」として紹介されるかも?というワクワク感を創り出せた点だと思います。さらに、そのクイズを通常投稿でなく、ストーリーズ投稿でご紹介することにより、フォロワーの方により積極的に、頻繁に当社Instagramアカウントを見に来ていただけたのではないかと思っています。
結果として、クイズには合計で約5,000件もの回答が集まりました。なかには写真を100枚以上投稿してくださる方や、クイズに何度も回答くださる方もいらっしゃり、たくさんの方とより深い交流ができました。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 広報部メディアグループ 安藤梓氏

久我氏:今回のキャンペーンでは、初めてジャパンダとの海外旅行関連のコラボグッズを賞品にしました。当選者の中にはジャパンダとのコラボグッズ賞品のタンブラーやスーツケースベルトを写真に撮って投稿してくれた方もいらっしゃり、そういった点でもより深いコミュニケーションができたと感じています。

Instagramの運営を通じて、社員や代理店の皆様へのブランドの浸透も

-その他、Instagramの運用を通じて実現できたことや新たな気づきなどがあれば教えてください。

久我氏:私たち広報部にとって、お客さまと常につながり続けることだけでなく、弊社で働く社員や代理店の皆さまへのブランドの浸透も大切なミッションの一つです。その方たちが明るく仕事ができるように支援することが大切だと思っています。
私たちは、インターネット販売のみを行う通販型販売の保険会社ではなく、代理店の皆さまに商品を販売いただく代理店型販売の保険会社です。一般消費者向けに保険会社のイメージについてのアンケートを取ると、約半数の方が「代理店のイメージ=損保ジャパン日本興亜のイメージ」と回答されるのです。ですので、代理店の皆さまに弊社の商品・サービスを理解いただくのはもちろんですが、当社のブランドを浸透させていくことがとても大切です。そのためにも、代理店の皆さまと日常の接点を持っている全国の社員にもブランドを浸透していくことがとても大切です。InstagramアカウントやFacebookアカウントなどのSNSアカウントの運営が、こうした面でも役立っていると感じています。
Instagramで新たなキャンペーンを実施するときには、全社員が見ることのできる社内ニュースを発信しています。前回のキャンペーンのニュースに対して「ぜひこのキャンペーンを代理店の皆さまに案内したい。とても良いキャンペーンなので詳しく教えて欲しい。ぜひ今後も継続してほしい。」というようなコメントが社内から寄せられました。社員がInstagramを活用してお客さまとのコミュニケーションをリアルにやっていこうとしているということがわかり非常に嬉しい出来事でした。
また、代理店の皆さまからも、Instagramの投稿に対して「お客さまとのコミュニケーションに役立っている」「ジャパンダとのコラボグッズがほしい」などの声が寄せられており、ブランドの浸透につながっているなと実感しています。

「ジャパンダ」を架け橋に、より愛されるブランドを目指して

-今後Instagramを活用して実現したいこと、期待していることを教えてください。

久我氏:今後も、お客さま社員、代理店の皆さまに向けて、ブランドの浸透を継続して行っていきたいと考えています。よりターゲットを狭めた施策を行っていくのか、一人でも多くのお客さまに当社の取組みを理解していただくための広告を使っていくのかなど考えていかなければいけないところはありますが、運用していく上でコンセプトや想いは変わらないです。これからも、「ジャパンダ」を架け橋にファンとコミュニケーションを続けていきたいと思っています。
まずは、その場限りのフォロワーではなく、ずっとフォロワーで居続けてくれるような方々で10,000人とつながりを持つことを目指しています。規模を拡大しながらも、より深いコミュニケーションを行う場としてInstagramを大切に育て、さらなるブランドの浸透につなげていけたらと考えています。
現在は、新規の取り組みとして「ジャパンダ」と料理を絡める投稿を開始、新たなファン層の開拓に挑戦しています。また、弊社は「47都道府県ジャパンダ」という施策もやっていますので、今後Instagramと「47都道府県ジャパンダ」をうまく連動させることで、より全国の多くの方に弊社のことを知っていただければとも考えています。
これからも、私たちSNSチームがより「ジャパンダ」を愛し、「ジャパンダ」を通じて損保ジャパン日本興亜を「なんか好き」、「SOMPOってなんか面白い、楽しい、いいね」と思ってもらえたらよいなと思っています。