ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】

 
 
こんにちは、SMMLabの藤田です。
今回は夏休み特別編として、テーブルマーク株式会社が開催した『夏休み親子パン教室』にお邪魔して、主催のテーブルマークファンサイトを運用されている鈴木 崇史氏にお話を聞きました。
 

テーブルマーク株式会社
商品本部マーケティング部
ベーカリーカテゴリ マネージャー 鈴木 崇史氏


 
 
 

O2Oイベント開催でスタッフとファンが“体験”を共有

 
――今回のイベントはテーブルマーク株式会社のグループ企業であるベーカリーチェーン、サンジェルマン本社横浜工場のスタッフ研修用キッチンに初めて一般の消費者を招いたということですが、このイベントはどんな意図で企画されたのですか?
テーブルマークファンサイトの運営を担当するようになって半年が経ったので、いつもオンラインでコミュニケーションしているファンの方と、そろそろ直接お会いしてみたいと思ったのがきっかけです。ちょうど夏休みのタイミングだったので、親子パン教室なら参加者の方にもきっと楽しんでいただけるだろうと考えました。
 

鈴木氏が運営するテーブルマークファンサイト
http://monipla.jp/tablemark/

 
――本社工場での開催ということで現場のスタッフの方が多数お手伝いされていましたが、日頃は一般消費者の方とこうして交流することはあまりないのではないですか?
そうですね、でも元々「パン屋」ですので、目の前のお客様をおいしいパンで喜ばせたいという気持ちはみんなが持っていると思います。今回のイベントは4回開催したのですが、初回こそ少し戸惑っていた様子だったものの、回を重ねる毎に直接お客様と触れ合うことが出来る貴重な機会だと感じてくれたようで、どんどん積極的に参加してくれるようになりました。
 

 
普段、催事などで店頭でのパン教室を開催することはあるのですが、今は企業が、食品業界は特に、透明性を求められる時代だと思いますので、実際に製品が作られる現場を直接見ていただくのが一番良いと思い、本社工場内で開催することにしました。今回は通常一般の方はご案内していない工場内も見学していただいたのですが、いつもは入れない場所に入れるというのも、参加したいと思っていただけるポイントになったと思います。
 
――参加者の皆さんにとって普段は見ることのできない製造現場を体験できる機会となっただけでなく、企業側のスタッフにとっても消費者と直接触れ合う良い機会になったのですね。
 

当日は5組の親子参加者に多数のスタッフが親身になってパン作りを指導。4種類のパンの成形・焼成を体験した他、工場内の見学やレジ打ちの販売体験など盛り沢山の内容でした。また、スタッフ手作りのパン作りマニュアルや修了証書、お土産に至るまで、「おもてなし」の限りを尽くしたといったイベントで、参加者の皆さんの満足気な笑顔が印象的でした。また、後片付けをするスタッフの皆さんからも充実の達成感が伝わってきました。
 
 

ブログモニターで見えてきたリアルな消費の現場

 
――さて、今回のイベントは日時場所指定のイベントにも関わらず多くの参加希望があったようですね。また、地方から参加できない方のためにモニター企画も用意するなど、鈴木さんが企画されるイベントはどれも「ファンに楽しんでもらいたい」という想いを感じます。
そうしたイベントが人気となって、テーブルマークファンサイトには、現在約15, 000人のファンが登録されているのだと思いますが、運営上の目的や趣旨を教えていただけますか?
 
私はテーブルマークで2011年から展開し始めた冷凍パンのマーケティングを主に担当しています。日本では「冷凍パン」自体の認知がまだあまりないので、ファンサイトの担当になった当初は、冷凍パンの認知拡大を目指していました。
しかし運用しているうちに、そもそも「テーブルマーク」自体がまだまだ知られていないのではないかと感じるようになったのです。旧社名の「カトキチ」は2010年の社名変更後も冷凍うどん等のブランド名としてお馴染みいただいていますが、冷凍の米飯や惣菜、冷凍パンを、店頭で「『テーブルマーク』の商品だから」といって、手にとっていただけているわけではない。
ですから、まずはテーブルマークの製品を知っていただく機会を作っていこうと、様々な商品を対象に、定期的にモニター企画を開催するようになりました。すると、商品を体験した方のブログからどんどんリアルな消費の現場が見えるようになってきたのです。
 
例えば、「冷凍パン」は半調理の段階で冷凍されているので、最終的にご自宅で調理していただかなくてはいけないのですが、ご家庭のトースターはどれも一緒ではないので、「商品パッケージの記載どおりに焼いたのに黒焦げになってしまった」というブログが投稿されたことがありました。そこで商品自体を改良したり、パッケージの記載を修正したのですが、こうした意見はアンケートではなかなか知ることが出来ません。
 
また、モニターしていただいた方のブログに掲載された日常の食卓の画像をじっくり観察していると、様々なインサイトが浮かび上がってきます。そこを汲み取って凝縮することで、製品訴求の新たなポイントが見えてくるようになりました。
 

via.“*のんびり♪ふたり暮らし*”byひろ
http://hiyokkohiro.blog.fc2.com/blog-entry-160.html

 
 

一人ひとりと深く繋がるためのファンサイト運営

 
――確かにテーブルマークファンサイトには美味しそうな食卓の画像が掲載されたブログが沢山投稿されていますが、そのブログに鈴木さんは全てコメントを付けていらっしゃるんですね!
適度に匿名性のあるブログだからこそ、アンケートやグループインタビューでは知り得ない、リアルな日常の風景を見せていただくことが出来るのだと思います。モニターの方には「ぜひ食卓に並べた時の写真を撮ってください」とお願いしているので、投稿してくださったブログにはお礼の気持ちを込めてコメントを書き込んでいます。そうするとブロガーの方もやはり喜んでくださってお返事をくださるので、そうした対話から次のイベントの企画を思いついたりと、沢山の気付きがあるんです。「知っていただく」だけなら手っ取り早い方法はいくらでもありますが、ここまで深く「繋がれる」ツールはないと感じています。ですから、今は一人ひとりの方と「深く繋がる」ことを目指して、ファンサイトを運営しています。
 

 テーブルマークファンサイトに投稿されたブログでのコメントのやりとり

 
――なるほど、テーブルマークという企業が消費者の一人ひとりと深く繋がる。ソーシャルメディアだからこそ実現した新しい関係性ですね。しかし担当者としては負荷が高いコミュニケーションなのではないですか?
確かに、深いコミュニケーションを目指せば目指すほど、属人的になってしまうという課題は感じています。しかし、本来企業というのは個人の集団であり、私自身も会社員であると同時に一人の消費者です。自分が消費者としてどう思うか?ということを一番の基準に考えれば、「お客様に嘘をつかない」という企業姿勢と自ずとリンクする行動が取れるはずです。テーブルマークの社員は全員私と同じようにコミュニケーション出来ると考えていますし、そうであるべきだと思います。ですから今後は徐々にファンサイトの運営に関わる人間を社内で増やしていこうとしています。
 
――企業としては「効果」という点も気になるところだと思いますが、どのように測定、評価されていますか?
ブランド認知度の調査は定期的にしていますが、具体的な影響が現れるのはまだこれからだと思います。また、認知だけが上がればいいというものではないと考えていますので、ファンサイトでのコミュニケーションを定量化してもあまり意味がないとも感じています。
 
 

ファンサイトのコミットメントでサポーターを生み出す

 
――今では毎回のイベントに100名のモニターが100以上の記事を投稿するほど反響を得ていらっしゃいますが、これも地道なコミュニケーションの積み重ねの賜物なのですね。
おかげさまで最近は新しいイベントの開始をお知らせするメールを配信すると、直後にかなりの参加があるので、楽しみに待っていただけているという実感があります。モニターしてくださった方が、その後も継続的に商品を購入してブログで紹介してくださることも増えましたので、徐々に手応えを感じてきているという段階です。
 
――今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?
毎回のイベント参加者数規模も昨年に比べて3倍から4倍と広がってきていますし、愛着を感じていただけている感覚が出てきましたので、このファンサイトを基盤に、今後はファンの皆さんに「テーブルマーク」というブランドを委ねてみたいと思っています。ファンの皆さんだったらどんな風にテーブルマークの商品を周りの皆さんに広めてくださるのか?私たちはそのために出来る限りの支援するという取り組みを考えています。
 
――消費者が能動的に価値を見出し拡散する手助けに企業が取り組む。これまで積み重ねてきた信頼関係にブランドを委ねるというのは、新しいチャレンジとなりますね!今日はありがとうございました。
 
 
<インタビュー後記>
これまで外食事業や小売ベーカリーチェーンの営業領域で活躍されてきたという鈴木さん。営業現場でお客様と直接触れ合ってきた経験が、メーカーのマーケティングという枠にとらわれない“個客”コミュニケーションに活かされていると感じました。「お客様の期待を超えるのは当たり前。驚きを与えるぐらいでなければ“おもてなし”とは言えない」という鈴木さんのポリシーが、今回のイベントに限らず、ファンサイト全体に「コミットメント」を生み出しているのだと思います。そしてそのファンの「コミットメント」が、どんな新たな「価値」を創りだすのか…テーブルマークファンサイトの今後のチャレンジに期待が膨らむインタビューでした。
 
 


 
鈴木 崇史氏  プロフィール
テーブルマーク株式会社
商品本部マーケティング部
ベーカリーカテゴリマネージャー
テーブルマーク株式会社ホームページ
http://www.tablemark.co.jp/
テーブルマークファンサイト
http://monipla.jp/tablemark/
 
インタビュアー:藤田 和重(アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab)
 
■参考リンク:国内最大規模の企業ファンサイトモール「モニプラ」
http://socialmedia.monipla.jp/
 
■関連記事
【企業担当者に聞くSMM最前線】
・ネットショップのソ−シャルメディアマーケティング担当者大集合!
EC事業者がソーシャルメディアを活用する意義とは?
http://smmlab.jp/?p=21583
・株式会社くもん出版 小山衆氏・ 宮本友紀子氏
〜『心の窓』を開くブランド体験の提供を目指す
前編:http://smmlab.jp/?p=14713
後編:http://smmlab.jp/?p=14820
・株式会社スカイツアーズ 釜本健太氏
~お客様の記憶に残るサービス作りを
前編:http://smmlab.jp/?p=7381
後編:http://smmlab.jp/?p=7428