こんにちは、SMMLabの小川です。
ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】。今回はFacebookで常に先進的な取り組みをしているタマホーム株式会社の川野和義氏にお話を聞きました。

―― まず、SMMの運用はどちらの部署が担当されているのですか?
広告宣伝部のFacebook課が担当しています。広告宣伝部には、その他に、チラシやホームページの制作・管理を行うマーケティング課、CMや雑誌出稿、看板、イベント協賛などを行うブランディング課があります。
―― 広告・マーケティング施策全体の中でSMMはどのように位置づけられていますか?

今まで、集客ツールのメインはチラシ、ブランディングのメインはCMでした。でも、それはあくまで企業側からの一方的なコミュニケーションなんですね。タマホームがソーシャルメディアに取り組んだ一番の理由は、「興味を持ってくれた人と直接双方向のやりとりができる」という点です。
マーケティング課が与える情報を作る、ブランディング課が会社のイメージを作る、そして恐らくそれらの情報やイメージからソーシャルに入ってきてくれた人と直接コミュニケーションを行う。タマホームにとってSMMとは、チラシやCMなど、従来からの広告・マーケティング施策でフォローしきれない「コミュニケーション」を行うものだと位置づけています。現在、それぞれの課が、それぞれにフォローしきれない部分をフォローしあい、とてもよい体制になっていると思いますね。
―― ソーシャルメディアへの取り組みは、Facebookが初ということですが、Twitterやブログなど他のソーシャルメディアに取り組む予定はありますか?
現在のところ予定はありません。なぜ最初の取り組みとしてFacebookを選んだかは、Facebookが「実名制」であり、ファンの方と真剣にやり取りできる場だと思っているからです。実名だからこそ、たとえクレームであろうとも真摯に受け止めていきたいと考えています。
―― Facebookページはいつ開設したのですか?そしてその目的は?
Facebookに参加したのは今年(2011年)の3月8日です。目的は、先に述べたとおり「お客様と会話をしたい」ということですね。
今までは、住宅展示場やショールームに来ていただいた方との関係は、その時だけで終わっていたこともあったと思うんです。でも、その後にソーシャルでつながっていれば、後々、タマホームってこういう会社なんだ、タマホームの商品ってこういうものなんだ、社員の人たちはこういう人なんだとわかって頂けるチャンスがあります。そしてそれが興味につながり、最終的にタマホームを買ってみようかと、思っていただけるのかな、と。
―― 現在Facebookページはどのような体制で運用されているのですか?
現在は、Facebook課に属する私が一人で運用しています。
―― 川野様がご担当者になられた経緯を教えてください。

実は、私がタマホームに入社したのは今年(2011年)の8月なんです。前職では、新聞社系の印刷会社に営業として10年勤めていました。前職の時に、現在のタマホーム常務取締役、広告宣伝部が属する本部の本部長であり、そして親友でもある玉木に勧められて個人的にFacebookを始めたところ、面白いなと思い、「プライベート+仕事」に活用してみようと思いました。Facebookは、仕事という面から考えると、普通に営業マンが営業しているのとあまりかわらないな、という感覚を持ったんです。実際に人に会って営業している感覚。それが、多くの人と一気にできる。すごくメリットがあるな、という印象を受けました。ですので、前職でも自分で会社のFacebookページを作って運用を開始しました。すると、たった1週間運用しただけで実際に問い合わせがきたり、仕事になることがあったんです。それこそ、毎日異業種交流している感覚ですよね。これってすごいなぁと思いました。
そんな時に、「タマホームで本格的にFacebookを運用していこうと思うから」と玉木常務に声をかけてもらったんです。前職でも10年来の付き合いがあったタマホームだったので、思い切って8月に転職してきました。
―― 8月に川野様がFacebookページを担当し始めた際、タマホームのFacebookページはどのような状況でしたか?
私が担当し始めた時点で、タマホームのFacebookページ開始からすでに5カ月近くたった状態だったのですが、ホームページのリンクを貼って紹介するだけのような状態でしたね。誰からもいいね!やコメントがされていない状態でした。
―― なるほど。そこから約4カ月でファン数は1万人以上にまで成長するわけですが、まずどのようなことから取り組んでいかれたのですか?
まずは、ただリンクを貼るだけではなく、きちんとタマホームのことが分かるような記事を掲載するよう試みました。
タマホームには、日本全国に213の店舗があるんですね。まず最初に、その全国の店舗の店長にメールを送って、お店の写真と紹介を送ってもらうようにお願いをしました。まずそれを紹介していくようにしました。
それと並行して、Facebookの広告や、モニプラファンアプリをはじめとしたキャンペーンアプリを利用して、キャンペーンも開催しました。キャンペーンを開催したことで、弊社のターゲット層のファンの方々を増やすことができたと思っています。まず何をやるにも一定のファン数が必要だと理解しているので、今後もキャンペーンは期間が空きすぎない程度に続けていきたいとは思っています。

(補足説明:イメージキャラクターである木村拓哉さんのプレミアムボックスをプレゼントするキャンペーンを開催し、約1, 400名が参加した)
また、ホームページやブログなどにも、すべていいね!やシェアボタンを設置し、ソーシャル化を済ませました。折込チラシや、住宅展示場前のタペストリにも、「Facebookでつながりましょう」というメッセージを入れています。実際の店舗にご来店いただいたお客様に、Facebookにも参加してもらう仕掛けはまだ過渡期の段階ですが、これからもっとリアルと連動させていきたいと考えています。
―― 現在の毎日のウォール投稿内容や時間はどのように決めていますか?
Facebookは、すごく柔軟にやっていくものと捉えていますので、ウォールの投稿内容について、例えば1カ月間の投稿プランを作ってそれに沿って運用する、等の施策は特にやっていません。ただ、たまたま、その週末にグランドオープンする店舗が7店舗あったとしたら、その店舗の紹介を集中的にやっていくようにはしていますけどね。投稿する前に、明日何しようかな、と思って、「あ、これにしよう」という感じで載せています(笑)。ダメだったら、ダメと掲載後に玉木常務から連絡が来ますから(笑)。掲載前の確認は特にしていないですね。常務との信頼関係で成り立っているのだと思います。
ただ、投稿時間については、毎日2回くらい、何時くらいと何時くらい、と決めて運用しています。当初、投稿時間帯の検証もしていて、投稿時間をずらしてみたりもしていたのですが、やはり時間は決めたほうがファンの方に受け入れて頂きやすいのかな、という結論に至りましたね。営業していてもそうですけど、「何時になったらこの人が来る」という方が物は頼みやすいじゃないですか?新聞配達と一緒ですよ。朝の6時になったらポストに新聞が入っているという。そういう存在になりたいですね。
―― 現在は川野様お一人で運用されているとのことですが、今後チーム運用していく計画はありますか?
今現在で言えば、まだそこまでは至っていませんが、今後は恐らくそういう風になるかもしれませんね。ただ、複数人といってもそんなに多数はないと思います。もう1人2人増えるとか・・それくらいですね。なるべく省力化でやっていくものだと考えています。他社の例を見ても、大きな企業で広告宣伝担当が70~80人いるようなところでも、ソーシャルメディア担当は1人とか2人ですから(笑)。そのあたりは、今後他社さんの例も参考にしながら決めていきたいですね。
―― お一人の運用で、社内での孤独を感じることや、困ることはないですか?社内からソーシャルメディアへの理解は得られていますか?

幸いにも、私の場合は周りの理解も協力もありますので、孤独を感じることも、困っていることもあまりないですね。
実は、現在タマホームではFacebookを通じて社員間で色々な意見を言い合ったりしているんです。社員3, 000人の会社ですから、全員の顔が一致するかといったら無理ですよね。むしろ、入社してから退職するまで会わない人だっていると思うんですよ。例えば、鹿児島と北海道の店舗で採用された方は、定年退職するまで会わないという可能性もあります(笑)。
でも、Facebookがあるおかげで、今まで交流がなかった人でも、たまたまいいねを押しましたとか、たまたま共感をしたりすると、そこから交流が始まり、活性化してきているんです。営業マンも積極的に活用していますよ。例えば雪が降る所と降らないところの家の作りの違いについて、情報交換をするとかですね。
ただ、私がFacebookの担当になった当初、店長にメールを送ったときはまったく「無反応」でした。全然返ってこなかった。まだFacebookを理解できていない状態でしたから。でも今は、むしろ店舗毎にFacebookページを持ちたいという話まで出始めています。そして、初めて会う店長でも、「先日はネタありがとうございました」から会話が始まるときもあります(笑)。

(補足説明:タマホームFacebookページでは、このように全国の店舗紹介を定期的に投稿している)
また、同じように、全国の事務員さんにもメールを送って、”Facebook課の特派員”として取材をお願いしているんですよ。ネタに困ったらメールをして、「ネタください!」と(笑)。もちろんネタが潤うので、運用担当者としても有難いですし、何より社内でのコミュニケーションをとるのにとても役立っていますね。
そのような具合で、現在タマホームではだいぶ社内での理解が深まってきたな、と思っています。また、「何もせずに待ちの営業ならばいつまでたっても売れないかもしれないけれど、自分がすることで何かが生まれる」という積極性が現場に出てきたんじゃないでしょうか?
また、タマホームの場合は、何よりもFacebook最高責任者である玉木自身がFacebookを楽しみ、理解しているという点が大きいと思います。
―― ソーシャルメディアが社内の活性化に役立っているというエピソード、素晴らしいですね。現在、ソーシャルメディアについて、社内での研修もしているのでしょうか?
現在はまだしていませんが、今後はやっていこうと思っています。今後、もし仮に店舗毎のFacebookページを運用していくのだとしたら、やはり社内でのきちんとした研修は必要だと思いますね。例えば、A店舗とB店舗が全く逆のことを言っているとか、A店舗はルールを守っているけれど、B店舗は守れていない、等となってしまうと、ブランドイメージが悪くなりますよね。その点は、今後十分検討していきたいと考えています。
それに、Facebookはこれから急速なスピードで日本に定着し、日本人の2人に1人はユーザーになるとも言われていますね。これは個人的な意見ですけど、もし日本がそのような状況になってきたら、今後は住宅展示場で個人のFacebook URLが入った名刺をお渡しし、個人としてもお客様とやりとりするようになるかもしれませんね。そのような時代が来ることを見据えて、社内での準備も進めていきたいと思っています。
《次回へ続く》
前半はSMM取り組みのきっかけと、現在に至るまでの経緯を中心にお聞きしました。後半は実際の運営方法と、今後の取り組み・展望についてお聞きします。次回もお楽しみに!
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川野和義氏 プロフィール
タマホーム株式会社
わくわくドキドキ本部 広告宣伝部Facebook課
タマホーム株式会社公式サイト http://www.tamahome.jp/index.html
タマホームFacebookページ https://www.facebook.com/tamahome.jp
インタビュアー:小川 裕子(アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab)
■参考リンク
モニプラファンアプリ
http://fan-app.monipla.jp/
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