Withコロナ時代の販促においてInstagramなどデジタル上の接点を活用した施策の重要性が増しています。一方で、その重要性を感じながら活用方法や成功ポイントがわからないとお悩みのご担当者様も多いのではないでしょうか。
そんなご担当者様のヒントになるべく、Instagram×EC施策の成功ポイントについて掘り下げる連載企画「2021/Instagram×EC・最前線」。2回目の今回は、アパレルブランド「WEGO」のマーケティング本部PR宣伝部部長・篠原圭介氏のインタビューをお届けします。
若年層をターゲットにインフルエンサーの起用やコラボ商品の発売によってたくさんのファンを作っている同社がInstagramに感じる価値は?施策成功のために大切にしたいポイントとは?同社のInstagram活用術についてたっぷりお伺いしました!
ブランディングから販促までInstagramを幅広く活用
ーまずは御社の事業内容と、篠原様の業務内容について教えてください。
篠原氏:弊社・株式会社ウィゴーは、プライベート商品、古着衣料など、ファッション商品全般の製造、輸入販売を行なっている会社です。そのなかで私はティーンをメインターゲットとした業態で、「WEGO」というブランドのPR全般を担当しております。
ー具体的にどういった業務内容になるのでしょうか。
篠原氏:WEGOに関連するビジュアル制作や、PRキャンペーン・協業コンテンツなどの企画開発、SNSの運用などを担当しています。PR担当ではありますが、企画制作に携わる業務が割と多いですね。
ー業務内容が幅広いんですね。
篠原氏:そうですね。PRを効果的に行うためにはそもそもの企画開発時点から関わった方が一気通貫してできるという考えのもと、積極的に携わるようにしています。
ー御社は販売チャネルとして実店舗とECサイトをお持ちです。それぞれどんな役割がありますか?
篠原氏 ECサイトは、シンプルにショッピングサイトとしての機能はありますが、お客様に商品を身近に感じていただいたり、お買い物を楽しんでいただけたりする場を目指して運用しています。一方、実店舗に関しては、もちろん販売は行いますが、より実体験の場にしていきたいという意識が強いです。
ー例えばショップのスタッフさんとのコミュニケーションなどがそれにあたるのでしょうか?
篠原氏:はい。WEGOには、各店舗のスタッフに会いに来てくださるお客様も多くいらっしゃいます。また、弊社ではアーティストさんやクリエイターさんなど、人をベースにした協業のコンテンツや商品も数多く販売しています。こうしたスタッフやクリエイターさんが持つ魅力は、WEB上で表現しようとするとどうしても限界があります。実店舗やイベントは、こうしたWEB上で伝えきれない部分を、お客様に経験・体験していただく場として活用しています。
ー御社はInstagramを積極的に活用されています。Instagramに注力されるようになった背景について教えてください。
篠原氏:WEGOのお客様の大半が、Instagramを日常的に使っているということに尽きると思います。ターゲット層としているお客様と接点をもち、PRや販促につなげていくためには、その方々の可処分時間が長く使われているところに入り込むことが必要です。そのため、必然的にTwitterやInstagramを活用した施策に取り組むようになりました。そして、なかでも今はInstagramが圧倒的にアクティブに利用されている、という考えのもとにInstagramに注力しています。
ーInstagram活用の目的はどんなものなのでしょうか?
篠原氏:最初はブランディングを目的として使い始めました。Twitterが完全に情報発信の場であったのに対して、Instagramはビジュアルにまず目がいく導線設計になっていますので、こうした特徴も踏まえてブランディングに活用したのが最初です。
ー今はブランディングだけではなく、フィードやリール、IGTVなど、かなり様々な投稿にショッピングタグをつけて販促にもご活用されていますよね。
篠原氏:そうですね。これに関してはストーリーズのリンク誘導機能や、ショッピングタグ機能が実装され、販促と連携しやすくなった、というイメージです。
ーもともとブランディングだけではなく販促にも使いたいという意識はあったんですね。
篠原氏:もちろんです。今まではECサイトへ誘導できる機能がありませんでしたが、ショッピングタグ機能の実装によって販促目的でも使用するようになりました。
Instagramのを活用したショッピング施策の詳細とポイントについて解説しています。
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ーInstagramを活用したマーケティング施策におけるKPIやKGIについて教えてください。
篠原氏:KGIとしては売上や客数を追っています。一方でKPIに関しては基本的にリーチ数やエンゲージメント数などを参考にしています。実は、WEGOの場合売上の比率は実店舗が圧倒的に高いんです。そのため、ECへの流入数ばかりを気にすると、Instagramの投稿内容自体がECに偏りすぎて、実店舗にいらっしゃるお客様の来店動機を無視しかねませんので、そこは気をつけています。
ーKPIであるリーチやエンゲージメントが高い投稿に特徴や傾向はありますか?
篠原氏:弊社はアニメ・漫画とのコラボ商品が多いので、こうしたコラボ商品の中でInstagramのフォロワー層にマッチした商品の投稿は、リーチ、エンゲージメント数ともにとても高いです。
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ー御社のアカウントはフォロワー数も多いですよね。こちらはどのように増やしてきたんでしょうか?
篠原氏:Instagramのアカウント自体かなり長く運用していますので、本当に着実にとしか言いようがないです。もちろん要所要所ではプレゼントキャンペーンも実施してきましたが、主には積み重ねの結果だと思っています。
ーすごいですね!
篠原氏:新規のフォロワーさんが増える要因として1つあるのは、弊社はインフルエンサーさんなど人を軸として商品を紹介する場合が多いので、その方経由でフォロワーが増えていく面はあります。これは協業商品についても言えることで、コラボするコンテンツのファンの方にフォローしていただくことは多いです。
ー起用するインフルエンサーさんや協業コンテンツを選ぶときに、選ぶポイントや条件にしていることはありますか?
篠原氏:メイン客層の方々が見て興味をそそられるものか、その方々に伝えたら面白いと思ってもらえるか、というのを軸に考えています。逆に言えば、年齢層以外はほとんど縛りはないと思っています。ファッションじゃなくても良いですし、アイドルでもグループでも特に条件は設けていないです。
ECへの誘導を最大化するために徹底したい「導線作り」
ーECへの集客や来店促進といった販促施策を行う上で、Instagram活用にどういったメリットをお持ちですか?
篠原氏:Instagramは公式アカウントをフォローしていないライトユーザーの方にも情報を届けられる点が良いと感じています。例えば先日、アニメ作品とのコラボ商品を発売しました。この商品のPRでは、Twitterでは主に作品の公式アカウントをフォローしているコアな方にリーチすることができ、一方Instagramでは、作品の公式アカウントをフォローするほどではないけど興味はあるというライトユーザーの方に商品認知を促すことができました。
ーこの違いはどうして生じるのでしょうか?
篠原氏:Instagramというプラットフォームの特徴によるところがあると思っています。Instagramでは、ハッシュタグの付け方の工夫をしたり、あなたへのおすすめにあがってくることによって、比較的ライトなユーザーの方にもコラボ商品についての投稿を届けることが可能です。
効果的なハッシュタグの付け方やハッシュタグ投稿の増やし方について徹底解説している記事はこちらです。
▶Instagramのハッシュタグを徹底解説!効果的な付け方・増やし方・事例まとめ
ーおすすめに表示されるなど、「投稿を発見してもらえるアカウント」にするためにどんなことに気をつけて運用していらっしゃいますか?
篠原氏:すごく細かいことばかりですが、我々は日頃からどれだけフォロワーさんとのエンゲージメントを高められるかを考えて運用しています。具体的には、コメントやDMにきちんと返信したり、いいねをこまめに押したりなど、本当に小さなことをコツコツやっていくしかないと思っています。
ーフォロワーを増やすのと同じように、コツコツとした積み重ねが大切なんですね。そのほかInstagramの特徴や感じているメリットはありますか?
篠原氏:他のプラットフォームと比べると情報が流れづらいという特徴があると思います。Twitterはタイムラインが流れるのが早く、ちょっと見逃すとすぐ情報が追えなくなってしまいます。比べてInstagramは、プロフィール欄から簡単に過去のフィード投稿を見ることが可能です。プロフィール欄を見ていただくことで、WEGOが過去に出したコラボ商品や、ご出演頂いたインフルエンサーさんを知ってもらうことができ、ブランドにより興味をもっていただけると考えています。
ー確かに過去の投稿を遡りやすいプラットフォームですよね。
篠原氏:はい。また、WEGOのターゲットに人気のある方々は、Instagram上でたくさんのフォロワーを抱えている方が数多くいます。こうしたインフルエンサーの方々にお洋服を着用頂くことも多いので、それを機にWEGOを知って頂くことができていると捉えています。同時に、その方々から誘導やタグ付けをして頂くことで、WEGOの公式アカウントやオンラインストアをご覧いただくきっかけにもなっているのではないかと思います。
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ーありがとうございます。Instagramを活用したマーケティングにおいて、特にEC集客や販促施策を成功させるポイントについてはどうお考えですか?
篠原氏:とても初歩的な話ですが、ECへの誘導を目的とするのならECまでの導線設計を徹底するのが一番だと思っています。実際、売りたい商品について投稿しているのに、商品購入のための入り口がない投稿もよく見かけます。これではせっかく商品について知ってもらっても購入にはつながっていきません。売りたい商品を投稿するのであれば、
①投稿にショッピングタグをつける
②同時にURLリンクをつけたストーリーズを投稿する
③そのストーリーズをハイライトに格納する
④フィードの投稿文にはハイライトへの誘導文を入れる
など、Instagramのどこを見ていても、その商品ページにアクセスできる状態にしておくのがマストだと考えています。
ー確かに、いざ買おうと思ってもどこから買っていいか分からないと離脱してしまいますよね。
篠原氏:はい。Instagramはプロフィールに貼れるURLも一つだけです。それがECサイトのトップページに誘導するものなら、トップページから目当ての商品をもう一度探し始めるのは大変です。大切なのは紹介する商品ごとに購入先へ誘導することの徹底だと思っています。
商品からSNS投稿まで、お客様が何を求めているのかを考え続ける
ーその他に施策成功のためのポイントはありますか?
篠原氏:私はマーケティング本部PR宣伝部に在籍していますが、データを分析してマーケティングに活かすというよりは、PRから逆算した企画開発の方に重きを置いています。そのため、InstagramでのEC集客・販促施策のポイントを問われると、様々な工夫ポイントはありながらも、そもそも商品企画や投稿するコンテンツの設計をきちんとすることが必要だと考えています。お客様に全く必要のない情報を投稿しても見る側に何のメリットもありませんし、購入には結びつきにくいです。投稿内容や商品企画という根本の見直しから行わないと、どれだけ広告などブーストとなるような施策を頑張ったとしても一時的な改善にしかならないと思います。
ー根本の見直しは確かにとても大切ですね。
篠原氏:WEGOの場合、扱う商品のテイストの種類も多く、投稿コンテンツもカルチャーからライフスタイルまで幅広いのが特徴です。そのため、1つのアカウントだけでそれを全部表現しようとすると「結局このアカウントは何を紹介しているのか?」と思われてしまいますので、いくつか別のアカウントを派生させて運用しています。
篠原氏:そして、投稿や商品の企画の見直し同様に、こうした派生アカウントの一つ一つについて、「そもそもこのアカウントはお客様にとって必要か」を考える視点は常に持っています。この視点が欠けてしまうと、成果につながりにくく、結果運用担当者も疲れたり辛い気持ちになってしまいます。このアカウントはお客様にとって必要か、この情報はお客様に喜んでもらえるかを考えながら運用を行うことはInstagram活用における成功の鍵だと考えています。
ーまず、お客様にとって本当に必要な情報やメリットのある情報を定めたうえで、そうした情報の投稿からショッピングへの導線を作っていくのがポイントなんですね。
篠原氏:はい。お客様自身日々、見るもの触れる情報がものすごく多いと思うので、不要な情報を発信するアカウントはどんどんフォローからはずされてしまいます。商品からSNSでの発信する内容まで、お客様が必要とするものは何かを見極めていく姿勢は大切にしたいです。
ーありがとうございます。御社のようにコツコツとInstagramの運用を続けていくための秘訣はありますか?
篠原氏:弊社の場合、商品やコンテンツの企画からPR・販促までを一気通貫で行う組織体制が成果を出すポイントになっています。WEGOでは扱っている商品数やコンテンツ数がとても多く、また、Instagram以外にもTwitter、TikTokなど様々なプラットフォームを活用してお客様に情報をお伝えしています。たくさんのプラットフォームでたくさんの情報を発信していかなければならないなか、各プラットフォームごとに商品やコンテンツの魅力を最大化できるような最適な投稿内容を考えるためには、PR・販促と商品企画を切り離してしまうと大きなタイムロスが発生してしまいます。また、本当に伝えたいこと、伝えるべきことが、PR・販促担当と商品企画担当者との間で食い違ってしまうこともあります。やはり一気通貫して実施できる組織体制によって、より成果をだし、結果として長く運用を続けていけるのだと思います。
ー企画から携わるからこそ、スムーズかつ的確なコミュニケーションができるんですね。
篠原氏:もちろんみなさんそれぞれ業種や業態が違いますので、この形が全ての企業さんに当てはまるわけではありません。しかし、我々の場合は商品やコンテンツ企画段階から携わることでその魅力を効果的に伝えることができ、売上という成果につながっていくのだと思います。
ライブショッピングから決済まで、Instagramの今後のショッピング機能充実に期待
ー最後に今後Instagramを活用してやってみたいこと、実現したいことについて教えてください。
篠原氏:まずはInstagramのフィードやリール、ストーリーズなどの各機能の表現方法の最適化をしていきたいです。各機能の特徴をいかせる表現方法によって、効率的にお客様との接点を増やし、EC・実店舗ともに来店客数を増やしていければと思っています。
ー現在はそれぞれどう使い分けをしていらっしゃるのでしょうか?
篠原氏:日々改善を行ないながら運用していますが、フィードに関してはブランディング目的、ストーリーズに関してはお客様とのコミュニケーションの場として使っています。またリールでは、商品のディティール紹介などフィードで紹介しきれないものを紹介しています。フィードと比較してフランクなコミュニケーションで、フィードを補うようなものとして使っています。IGTVは長尺動画コンテンツの発信の場です。
篠原氏:また現在はInstagramを大きく「ブランディング」、「販促」、「コミュニケーション」という3つの目的で使っていますが、それぞれの適正なバランスについては今後見極めていく必要性があると感じています。おそらく、単純にECの売上だけを求めるアカウントだったらもっと情報的なアカウントになっていくと思います。ただ、WEGOのInstagramアカウントはそれだけではなく、お客様はもちろん、協業してくださる取引先の方やインフルエンサーの方に、WEGOらしさを知ってもらう役割もありますので、このあたりのバランスをうまくとって運用していきたいですね。
ーInstagramライブ機能の活用についてはいかがですか?
篠原氏:Instagramライブに関しては基本的にはお客様とコミュニケーションをとるための機能として使うのがいいのではないかと思っていますが、正直まだ取り組めてはいません。
ーこれから取り組んでいきたい、という段階なんですね。これまで積極的に取り組まれてこなかったのはなぜでしょうか?
篠原氏:現段階ではライブ配信上でショッピングタグをつけることやリンクへ飛ばすことができず、着地点が弱いという点が大きな理由です。SNSのプラットフォームはInstagramの他にもたくさんあり、また各プラットフォームごとにたくさんの機能があります。そして、それぞれ適正な素材や表現方法をとっていくことを考えると、リソースは有限ですので、やはり効果があまりでないものから淘汰されてしまいます。
もちろんInstagramライブを実施すれば、たくさんの人にご覧いただけると思いますので、効果がないわけではないと思っています。Instagramのように一般の方に広く浸透しているプラットフォームで、タグ機能やリンク誘導機能がつけば、それはとても強いことだと思いますので、そうなれば活用する優先順位は高くなると思います。
ー実装されるのが待ち遠しいですね。
篠原氏:はい。WEGOにはお客様に人気のショップスタッフやコラボしてくださるクリエーターさんもいらっしゃるので、そういった人たちを巻き込んで実施したいですね。また、チェックアウト機能(決済機能)にも期待しています。今のように購入のために外部サイトへ遷移しなくてはいけないのは多少の煩わしさがあり、実際、その段階で離脱する方も多くいらっしゃると思います。これらの機能の実装を待ちながら、今後はもっとお客様の購買体験の場としてInstagramを活用していければと思っています。