クリエイティブの成果は、見えづらい。何が刺さったのか、なぜ反応されたのか——それをなんとなくの感覚や経験に頼って作り続けても、視聴者の目に留まる保証はなく、成果への道筋も見えてきません。かといって、VOC(顧客の声)やCEPs(カテゴリーエントリーポイント)などのデータをそのままクリエイティブで表現しても、広告っぽいと思われてスキップされる。その両方の壁を越えるのが、データと感性の掛け算です。

クリエイティブチームは世の中に数多くある。しかし「データだけ」では心が動かず、「感性だけ」では再現性がない。その両方を掛け合わせるのが、アライドアーキテクツの「3℃1(サンドイッチ)」です。起点に置くのは、VOCとCEPs——生活者のリアルな声から導き出したデータ。そのインサイトを、感性と遊び心で「思わず反応してしまう仕掛け」へと昇華させるクリエイティブ設計を、一気通貫で担います。

データと感性が交わる現場で、何が生まれているのか。チームを率いる山口氏・戸塚氏に、その思想と設計の核心を聞きました。

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“データ×クリエイティブ”を体現するための81のボツ案と、紙ナプキンに残っていた温もり

——クリエイティブチーム「3℃1(サンドイッチ)」を立ち上げの背景を教えてください。

山口:
クリエイティブの制作って、どうしても担当者の経験や感覚に依存しがちなんです。
「なんとなくこれが刺さりそう」という判断で作り続けても、なぜ成果が出たのか出なかったのかが説明できない。その課題感を社内でもクライアントからも感じていました。ちょうどそのタイミングで、アライドアーキテクツで顧客の声を独自AI技術で収集・分析するデータプラットフォーム「Kaname.ax®」が誕生し、「これをクリエイティブと掛け合わせられないか」という話が持ち上がりました。UGC(生活者がSNSに投稿するクチコミや体験談などのコンテンツ)をはじめとするVOC・SNS起点のデータドリブンという強みに、ブランドの魅力が伝わり生活者の心が動く「クリエイティブ」まで一気通貫で届ける力を掛け合わせたい——そうしたチーム構想が、どどどっと一気に形になっていきました。 個人的にも、会社としてのクリエイティブチームのブランディング活動をもっと強化して「このチームだからこそ生み出せる価値」を明確に打ち出したいという想いがありました。なんせ、愉快な仲間たちが勢ぞろいな集団なので(笑)

戸塚:
私はその少し前の入社なのですが、面談で「今後アライドアーキテクツはデータ×クリエイティブに力を入れていく」と聞いて、そこに魅力を感じていたこともあり、チームの立ち上げにジョインしました。世の中にクリエイティブエージェンシーは数多くある中で、アライドの強みはUGC×SNS起点、そしてKaname.ax®を軸としたデータドリブン。そういう強い軸がある分、クリエイティブやブランディングの部分では自由に構想させてもらえた気がします。

企業と生活者をつなぐ「具材」として、データ分析・インサイト発掘・クリエイティブ設計の3層が積み重なる。3℃1の名前に込められた構造。

——チーム名「3℃1(サンドイッチ)」に込めた想いを聞かせてください。

戸塚:
3℃1は、クリエイティブを担う私たちだけで完結しているチームではないと思っています。生活者の声をデータにするアナリストの冷静な分析(Calm)、生活者に寄り添って隠れたニーズを見つけ出す人間らしい温度(Warm)、そしてクライアントの想いを受け取り最後まで届ける情熱(Passion)——アライドアーキテクツのさまざまな力が結集してクリエイティブが出来上がっていく、それを表現した結果、3つの温度になりました。サンドイッチの構造のように上下のパンが企業と生活者だとすれば、私たちはその間をつなぐ具材の役割。SNSやUGCに詰まった生活者のリアルな声をクリエイティブで調理して、企業の想いと重ね合わせる。そうすることで「おいしい関係」が生まれます。AIがクリエイティブを作れる時代だからこそ、人間がそこを担う意味を込めたかったんです。

冷静さでデータから市場の本当の熱量を読み取る。温もりで生活者が「思わず見たくなる」インサイトに寄り添う。情熱で企業の想いを心を動かすクリエイティブへと紡ぐ。3つの温度が、3℃1の名前の由来となっている。

——チーム名が決まるまでのエピソードをおしえてください。

山口:
かなり悩みましたね。コピーライターの花井さんにも加わっていただきながら議論を重ねて、会議に上げなかったお蔵入りも含めると、全部で81案メモってありました。

戸塚:
考えているときにお腹が空いていると、食べ物系のネーミング方向が強くなったり…でもいざ会議に上げるとなると、真面目な案を入れたりして(笑)
何度も議論を繰り返して最終的に「3℃1」に決まったのですが、実はこれ、一番最初にぱっと舞い降りてきた案なんです。表参道のカフェでプロジェクトの話をしていたときに、紙ナプキンにボールペンで書いていたロゴで。散々データの話をしていましたが、その瞬間は完全に直感でした。

山口:
今ではチームメンバーも、企画づくりから日常の議論まで、さまざまな場面で「これ(データ)とこれ(仕掛け)をサンドイッチしよう」という言葉を使ってくれたりしていて。このネーミングにして良かったなと思います。

ロジックと仕掛けの掛け算——「刺さるクリエイティブ」をつくる3℃1の思想

——3℃1が考える「データ×クリエイティブ」とは、具体的にどういうことでしょうか。

山口:
データ分析で出てきたものを、ただそのまま表現してしまうと、どうしても広告感の強いクリエイティブになってしまって、「あーこれ広告だなー」ってスキップされちゃうんですよね。特にSNSでいうと、生活者にとっては日々の趣味の時間や娯楽の時間じゃないですか。そこに私たちはお邪魔するわけなんです。だから、どう表現したら生活者の指を止めて見てもらえるのか、どういうビジュアルにしたら手に取りたくなるか——インサイトを「伝わる形に昇華させること」が、私たちの考えるクリエイティブの本質です。

戸塚:
データを、分析結果にとどめず「アイデアの燃料」として育てていくことだと考えています。インサイトを発掘してアイデアを生み出すこともあれば、逆に先にアイデアがあって、その裏付けとしてデータを使うこともできる。どうやってデータをアイデアの燃料にしていけるか、それがクリエイターの腕の見せ所かなとも思います。

——他社のクリエイティブ制作との違いはどこにあるのでしょうか。

山口:
大きく2つあります。1つは、Kaname.ax®でVOC(顧客の声)をを収集・分析し、CEPsだけでなく、そのカテゴリーを買う目的(カテゴリー便益)や、そのブランドならではの購買理由(ブランド便益)まで導き出せること。クリエイティブに、売りに繋がるロジックの裏付けができます。もう1つは、そのデータを私たち3℃1が「思わず反応してしまう仕掛け」へと昇華させること。この2つの掛け算が、他社との違いだと思っています。バズればいい、クリエイティビティが高ければいい、という発想ではなく、データが示す本質的なインサイトから出発して、はじめて「刺さるクリエイティブ」が生まれる。そこにこだわっています。

戸塚:
Kaname.ax®では、購買のきっかけとなる「CEPs(カテゴリーエントリーポイント)」だけでなく、購買の障壁となる「CExPs(カテゴリーイグジットポイント)」も分析できます。「なぜ選ばれないのか」を把握することで、クリエイティブで取り除くべき不安や誤解が見えてくる。ポジティブな訴求だけでなく、離脱要因を潰す設計ができるのも、データ起点ならではだと思います。

思わず反応してしまう感情の起点——三ツ矢サイダーで実証された「CoEPs」設計

——データから「刺さるクリエイティブ」が生まれる流れを、具体的に教えてください。

山口:
アサヒ飲料 三ツ矢サイダーのショート動画制作を例にお話しします。まず、Kaname.ax®を活用して三ツ矢サイダーと競合他社のSNS投稿データを収集し、どのCEPsが自社ブランドの強みになっているかを分析するCEPsリスニング®で、自社ブランドの強みを明らかにしました。その結果「アレンジ用途」というCEPsが他社と比べて明確に突出していることがわかりました。ここが、売りに繋がる起点なんです。「そのまま飲む」だけでなく、「何かにアレンジして楽しみたい」——そんな使い方が、データとして鮮明に浮かび上がってきたわけです。

ただ、これをそのまま「アレンジを楽しもう!」というクリエイティブにしても、ありきたりですよね。だから「思わず見てしまうフックとなる切り口ってなんだろう?」と考えたときに辿り着いたのが「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」という動画。可愛くて、食べられる保冷剤——データが示したインサイトを、感性と遊び心で仕掛けに昇華させた一例です。

https://service.aainc.co.jp/hubfs/kaname/Kanameblog/case-interview-asahiinryo/case-interview-asahiinryo_mp4.mp4
CEPsリスニング®で発見した「アレンジ用途」の強みを、「可愛くて食べられる保冷剤」という仕掛けに昇華させた動画。TikTokで400万回再生を記録した。

——そのショート動画の反響はいかがでしたか。

山口:
TikTok、Instagram合計で400万回再生を記録しました。すごいのがこれ完全なオーガニックだけの成果なのです。さらにこのバズを受けて数時間後には店頭POPの制作が決定し、営業部門の商談ツールとしても活用されることになりました。SNSの一投稿が、店頭施策まで波及した形です。

——データ起点のクリエイティブと、感性や遊び心。その2つをどう組み合わせているのですか。

山口:
CEPsが示すのは「消費者の購買起点」です。でも、それをそのままクリエイティブにしても人は動かない。私たちが大切にしているのは、そこに「思わず反応してしまう感情の起点」を重ねることなんです。これを私たちは「CoEPs(コミュニケーションエントリーポイント)」と呼んでいます。「保冷剤が食べられる、しかも可愛い」って、思わず「え!?」って見ちゃうじゃないですか!保冷剤って食べれるの?って(笑)データが示した強みの文脈に、感性と遊び心で仕掛けを重ねる。この掛け算が、3℃1のクリエイティブ設計の核心です。

データ分析の結果をもとに、施策反応を得るための「コミュニケーションエントリーポイント」という「思わず反応してしまうこと」を、クリエイティブへブリッジ(橋渡し)させることを体系化している

冷静に、情熱的に、人間らしく——3℃1が掲げる、心を動かすためのレシピ

——チームのキャッチフレーズ「Stay calm. Stay passionate. Keep your humanity.」に込めた想いを教えてください。

戸塚:
データ×クリエイティブは、冷静と情熱の両方を行き来するようなことだと思っています。そして、やっぱり人の心を動かすのは「人間らしさ」だと。AIの時代だからこそ、データドリブンのクリエイティブを謳うチームだからこそ、あえて言いたいと考えました。

——チームとして、それをどう体現していますか。

戸塚:
人間らしいというのは、体現していますね(笑)。冷静な人もいて、パッションのある人もいて、個性の溢れるメンバーが絶妙なバランスで揃っているんです。SNSの投稿ひとつとっても数字だけじゃなくて「この人、どんな気持ちでこれを書いたんだろう」って想像する。どんなに忙しい時期でも、おもしろい投稿を共有する社内チャットに誰かしら投稿してたり、週の会議では「最近良かったこと・面白かったこと」をみんなで共有する時間を設けたり。AIに任せられることは任せながらも、最後に「これ、本当に心が動くかな?」って問いかけるのは必ず人間——そういう「人間らしくいられる空気」があります。

——今後の展望を聞かせてください。

山口:
データとクリエイティブの掛け算ならここ!といわれるチームにしたいですね。

戸塚:
クリエイティブで困ったとき、面白いものを作りたいと思ったとき、真っ先に3℃1を想起してほしいです。私たち自身が、クリエイティブ領域における「カテゴリーエントリーポイント」になりたいです(笑)。

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https://service.aainc.co.jp/3do1