
昨年のイーロン・マスク氏のTwitter・CEO就任以降、Twitterでは様々な変化が起きました。今回はそれら一連の出来事についておさらいし、TwitterユーザーやTwitterを活用している企業に対してどんな影響があったのかをまとめてご紹介します。
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そもそもイーロン・マスク氏ってどんな人?
イーロン・マスク氏は南アフリカ共和国出身、アメリカ合衆国で活動する実業家、エンジニアです。Twitterの他にも、PayPalの共同創業者、スペースXファウンダー兼CEO、テスラ共同創業者兼CEOなどとして知られており、2019年にフォーブスが発表した「アメリカで最も革新的なリーダー」ランキングではAmazon.com(アマゾン)CEOのジェフ・ベゾスと並び第1位の評価を受けています。
TwitterCEO就任から現在までに起きた主な変化
ここからはイーロン・マスク氏がTwitterのCEOに就任してからの主な出来事について、時系列で振り返っていきます。
▶︎2022年10月27日 イーロン・マスク氏によるTwitter買収が完了。TwitterのCEOに就任
イーロン・マスク氏は2022年1月からTwitter株の購入を開始。4月4日にはTwitterの株式の9.1%を26億4000万ドルで購入し、4月14日にはTwitterの株式の100%を440億ドルで取得する買収を提案しました。
その後、Twitterのなりすましアカウントに関する調査不足を理由にTwitter買収を保留するなど紆余曲折がありながら、2022年10月27日に買収が完了。TwitterのCEOに就任しました。
なお、CEO就任以降マスク氏はTwitter上で行ったアンケートの結果からCEOの座から退く意向を表明しています。ただし、これは「後任が見つかり次第」という条件付きのものであり、仮に辞任した場合でも「ソフトウェアとサーバーのチームを運営する」と明言していることから、事実上は続投と変わらないと捉えて良いでしょう。
I will resign as CEO as soon as I find someone foolish enough to take the job! After that, I will just run the software & servers teams.
— Elon Musk (@elonmusk) December 21, 2022
▶︎2022年11月4日 Twitter社における従業員大規模レイオフがメディアに報じられる
マスク氏はTwitter買収を発表した当初、現在は利益が出ている状態でありレイオフはしないと発言していました。
しかしCEO就任後の11月3日夜、社内メールでレイオフにて言及。翌日メディアにその内容が報じられました。レイオフに乗り切った理由として同氏は「現在1日あたり400万ドルの損失を出している状態でありレイオフはやむを得ない」と自身のTwitterで説明しています。
Regarding Twitter’s reduction in force, unfortunately there is no choice when the company is losing over $4M/day.
— Elon Musk (@elonmusk) November 4, 2022
Everyone exited was offered 3 months of severance, which is 50% more than legally required.
▶︎2022年12月8日 モーメントの作成機能が停止
Twitterモーメントはブラウザ版でのみ利用できる機能で、複数のツイートをまとめることができる機能です。他のユーザーにあるカテゴリについてのツイートをシェア、シリーズ化しているツイートをまとめる、気になるツイートをまとめて後から振り返る、といったことが可能。企業公式アカウントのなかには、キャンペーン情報やある特定の情報に関するツイートをまとめるなど、モーメントを活用した運用を行っているアカウントもありました。
Twitterでは、この機能停止について他の機能の改善に注力するためと説明しています。
▶︎2022年12月13日 認証マークの変更開始
認証マークによるなりすましアカウントの増加によってサービスを停止していたTwitterのサブスクリプションサービスである「TwitterBlue」が受付を再開。なりすましアカウントの発生を防ぐためにTwitterアカウントの認証マークの種類が以下の4種類となりました。
Twitter Blueについての詳しい説明はこちらでしています
- Twitterが認証した企業アカウントに付与される金バッチ
- 政府・メディア関係のアカウントに付与される灰色バッチ
- 有名人など従来の認証アカウントに付与される青色バッチ
- 有料サブスクリプションサービス「TwitterBlue」に 課金しているユーザーに付与される青色バッジ
それぞれの認証マークをクリックすると、その認証の詳細が表示されます。

(2023年4月14日追記)、なお、イーロン・マスク氏は、旧来のブルーバッジについては、4月20日で削除するとコメントしています。
Final date for removing legacy Blue checks is 4/20
— Elon Musk (@elonmusk) April 11, 2023
▶︎2022年12月16日 Twitterラベル廃止
それぞれのツイートに表示されていた、「Twitter for Android」「Twitter for iPhone」のように、どの端末やアプリを使って行われたツイートであるかを示すツイートソースラベルが廃止されました。これについては、かねてよりイーロン・マスク氏が「表示スペースの無駄遣いである」と発言し、廃止する予定であると発言していたことから、その意向が反映されたと考えられます。なお、アップデートのスピードはアカウントによって異なり、2023年1月現在では、まだ表示されているアカウントもあるようです。
And we will finally stop adding what device a tweet was written on (waste of screen space & compute) below every tweet. Literally no one even knows why we did that …
— Elon Musk (@elonmusk) November 14, 2022
▶︎2022年12月19日 Instagram等,他SNSへの誘導禁止のポリシー変更(※現在はポリシーページ閲覧不可)
「Instagramもフォローしてください」「TikTokでチャレンジやっています」などの文言と他SNSへのリンクをツイートし、他のSNSへの誘導することを禁止する旨がポリシーページに記載されました。
しかし現在のところポリシーページ自体が閲覧不可となっており、このポリシーが適用されているか否かを確認することはできません。今後見直される可能性が高く、注意が必要です。
▶︎2022年12月23日 ツイートインプレッション「View Count」の提供開始
ツイートの下部にそのツイートのインプレッション数(そのツイートが見られた総数)が表示される機能である「View Count」の提供が開始されました。
これは一部のツイート(コミュニティツイート、Twitter サークルツイート、提供開始以前のツイート)を除く全てのツイートに適用され、これによって全てのユーザーがインプレッション数を見ることが可能となりました。

▶︎2023年1月11日 「For you」「Following」タブでツイートを表示させることを発表
Twitterのタイムラインはこれまで「Home(優先的にトップツイート※を表示させる)」と「latest(最新のツイートを時系列で表示させる)」の2つの表示方法を選ぶことができました。今回のアップデートでは、今までの2つの表示方法に代わり「For you(時系列に関係なくトップツイートが表示される)」「Following(フォローしているアカウントからのツイートを時系列で表示)」の2つのタブから選ぶようになっています。
※トップツイートとは:ユーザーがTwitterで日頃やりとりするアカウントや、反応したツイートの傾向に基づき、ユーザーが強い関心をもつとTwitterのアルゴリズムが推測したツイートのこと

▶︎2023年1月12日頃 「Twitter Blue」が日本でも受付開始
Twitterのオプトイン方式の有料制サブスクリプション「Twitter Blue」の受付が日本でも受付開始されました。
このサービスは月額980円(iOSの場合は1,380円)で利用が可能。
申し込むと、
- ブックマークフォルダ:ブックマークに追加したツイートをフォルダに分けて整理できる機能
- カスタムアプリアイコン:スマホに表示されるTwitterのアイコンの見え方をカスタムアプリアイコンで変更ができる機能
- ツイートの取り消し:送信後のツイートを、他のアカウントに公開される前に取り消すことができる機能。取り消し可能な時間が経過するとフォロワーに表示される。
- 長尺の動画のアップロード:最大で長さが60分まで、ファイルサイズが2GBまでの動画(1080p)をアップロードすることができるように(ウェブのみ)
など多様な機能が利用できるようになります。
また、Twitte Blueに申し込みをしたユーザーに付与される青い認証バッジは、すべての要件を満たしているかどうかをTwitterが審査した後に付与されるため、表示されるために時間がかかる場合があります。
▶︎2023年1月20日 広告のカスタムオーディエンスに関するアップデート
TwitterID(@ハンドル)を利用したカスタムオーディエンス(※)についてアップデートを実施。
これまですべての広告アカウントで利用可能だったTwitterIDを利用したカスタムオーディエンスですが、アップデート以降利用するための権限申請と付与を広告アカウントごとに行うことが必須となりました。
※)カスタムオーディエンスとは:自社が保有しているリストなどをもとにターゲティングする方法。メールアドレスやTwitterのID(@ハンドル)などのリストをアップロードしてターゲティングすることができる。
▶︎2023年2月2日 APIの有料化を発表
▶︎2023年3月30日 API新プランの詳細を公開
2023年2月2日に、これまで無料で公開されていたAPIについてバージョン1.1、2両方の有料化を発表。3月30日には新プランの詳細を明らかにしました。
APIとはソフトやアプリケーションの一部を公開し、外部のソフトウェアとその機能を共有できるようにするもの。例えば診断結果をツイートする診断系のアプリやTwitterのログを残すアプリなどはこのAPIを利用して開発されたものです。また、TwitterアカウントでログインできるサービスもこのAPIを利用しています。
プラン発表後、数日でアクセスが停止になったというアプリの情報も複数出てきており、今後Twitterと連携した様々なサービスに影響が見られると考えられます。
Today we are launching our new Twitter API access tiers! We’re excited to share more details about our self-serve access. 🧵
— Twitter Dev (@TwitterDev) March 29, 2023
APIプランの変更について、詳細はこちらの記事にまとめました。
▶TwitterのAPIが有料化。各種ツールへの影響とは(echoesブログ)
▶︎2023年3月31日 「おすすめ(For You)」タイムライン表示に関するアルゴリズムを公開
2023年3月31日、Twitterは「おすすめ(For You)」タイムライン表示に関するアルゴリズムを公開しました。
アルゴリズムとは、Twitter社が考える「一人ひとりのユーザーに向けて、どのようなコンテンツを表示をするか?」という仕組みのこと。
今まで詳細は不明でしたが、今回どのような仕組みでおすすめタイムラインへの表示が決定されているかのプロセスが明らかになりました。
公開されたTwitterアルゴリズムについて、詳細はこちらの記事にまとめました。
▶Twitterのアルゴリズムを攻略。企業のTwitter担当者が今取るべき施策とは?
▶︎随時:スパムアカウントの大量削除
イーロン・マスク氏によるTwitter買収で大きな障壁となったTwitterのスパムアカウント問題。これはウェブサイトの解析ツール・SparkToroとTwitter向けの解析ツール・Followerwonkが、共同で行った調査によって「Twitter上での活動が確認されているアクティブなTwitterアカウント」のうち、19.42%がスパム・偽アカウントであることが明らか(※)となったことにより、Twitter社が発表していた「アクティブアカウントにおけるスパムアカウントは5%である」という数字と大きく矛盾したために問題化されました。
マスク氏はTwitterのスパムアカウントの取り締まり強化を掲げており、随時スパムアカウントの大量削除が行われています。
一連の変化による影響範囲まとめ
続いて、こうした一連の変化による影響範囲を「広告主」と「一般ユーザー」の2つの視点から見ていきます。

社員の大量レイオフの直接的な影響は今のところ散見されません。しかし、これまでの従業員の半数近い人員を削減したことで、今後大きな技術的トラブルに見舞われた場合に適切な対処ができるのかどうかを懸念する声も聞かれます。
また、公式マークの変更、スパムアカウントの大量削除は健全なプラットフォーム運営につながる変更であり、広告主、一般ユーザーともにマイナスな影響はないと捉えられています。
一方、現在はプライバシーポリシー自体が閲覧不可となっており適用されているかどうかが不透明となっている「他SNSへの誘導禁止」については、チャネルを横断した施策(InstagramやTikTokへ誘導するキャンペーン、YouTube動画やライブ配信の告知)に対する影響が大きく、今後の変更を注意深く見守る必要があります。
同様に今後の動きに注意が必要なのが「APIの有料化」。有料化がどこまでの範囲に及ぶかの詳細は不明ですが、外部アプリケーションとTwitterを連携させて利用していたユーザーは、今まで通りのサービスの利用が難しくなる可能性があります。またTwitterAPIを利用したマーケティングツールを活用している企業も、自社で活用しているツールへの影響について確認する必要が出てくるでしょう。
そして、広告のカスタムオーディエンスのアップデートは、活用している広告主は今後の施策について注意確認が必要です(変更前にアップデートされたリストについては適用外)。ユーザーに対しては直接的なマイナス影響はないものとみられます。
ユーザー、企業ともにメリットデメリットを含んでいたり、評価が分かれている変化には、モーメント作成機能の廃止、View Count機能、「For You」「Following」タブの表示があります。「Twitter Blue」についても、主に一般ユーザーへ向けたサービスなので企業への影響はなく、また利用しなくてもデメリットはないため、マイナスの影響はないとみられます。
「Twitter2.0」にも注目。今後も変革の動きを見逃せない
そもそもイーロン・マスク氏はTwitterの買収の理由について「言論の自由を包括的に実現できる場」が必要であると主張していました。
また、イーロン・マスク氏がTwitter買収合意後に掲げた目標は「Twitterの売上を2028年までに5倍にする」というもの(※)。売上の内訳については「広告収入」の比率を下げ、「サブスクリプション」による売上の割合を増やす目標であることも明らかにしています。
同氏のCEO就任後に行われてきた変更やアップデートはTwitterを「言論の自由が実現できるプラットフォーム」へと導き、利益目標を達成するためのTwitter改革の始まりであると捉えられます。
しかし、一連の施策については、様々な懸念や批判の声も上がっています。そのひとつが「投稿管理」の問題。言論の自由を守ることで「無責任に何を発言してもよい」という考えが強まれば、Twitter上でのヘイトや差別的な発言を助長させることにも繋がると主張する専門家もいます。さらに、従業員の大量解雇によって、「健全な発言かどうかを管理する機能が損なわれる」という見方もあります。
これに対しTwitter社は2022年11月30日ブログで「Twitter2.0」を発表。
Twitterのミッションをマスク氏のTwitter買収理由に倣い「公共の会話を促進・保護し、インターネットの広場のような存在となること」であると掲げ、このためのアプローチとして機能改善、アップデートのためのテストを今後も迅速に進めていくという方針を打ち出しました。
そしてその履行をするうえで、
- ポリシーの変更はしない
- ヘイトや差別的発言を含むTwitterのルール違反に対する監視体制(自動検出など)のためのリソースについては十分に確保できている
といった事柄などを「保証する」と宣言しています。
実際、プラットフォームの利用率が増えているにも関わらず、ヘイトなど違反コンテンツのインプレッションは過去1ヶ月で減少していると言及。これについてはイーロン・マスク氏が自身のTwitterで根拠となる資料の画像を公開しました。
Slides from my Twitter company talk pic.twitter.com/8LLXrwylta
— Elon Musk (@elonmusk) November 27, 2022
なお、このツイートには「Longform Tweet(長文ツイート)機能」や「暗号化DM(メッセージの送信元で暗号がされ、送信先でしか復号できないようにする技術)」をはじめとした、「Twitter2.0」の今後の開発・アップデートの方針について触れたスライド画像もアップされており、Twitter社の方向性を示唆したものとなっています。
いずれにせよ、イーロン・マスク氏によるTwitter改革はまだスタートしたばかり。今後も様々な変更やアップデートが行われる可能性が大きく、Twitterを活用している広告主、公式アカウント運用担当者は、その動きに注目していく必要がありそうです。