日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?

ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。


用語説明

O2O(Online to Offline)

オンライン(インターネット)の情報がオフライン(実世界)の購買活動に影響を与えたり、オンラインからオフラインへと生活者の行動を促す施策を指す、主にEコマースの分野で使われていた概念。オンラインマーケティングの黎明期にはクリック・アンド・モルタル(Click and Mortar)という言葉で、オンラインと実店舗との連携・融合を示していたが、2010年頃から「O2O」という表現が使われ始めた。さらに昨今はEコマースに限らず幅広い分野で、「オンラインとオフラインが融合し相互に影響を及ぼす」仕組みや状況を表す言葉として使われるようになっている。

解説

現在、国内において約110兆円あるリアル店舗での購買行動のうち、「インターネットからの情報収集に基づく消費」、すなわちO2Oによる消費規模は約22兆円(およそ2割)と言われています。これに対し、Eコマースの市場規模は、2ケタ成長を続けながらも、7兆8000億円にとどまっているため、O2Oへの注目が高まっています。(数字は野村総合研究所発表の2011年「インターネット経済調査報告書」より)

スマートフォンとソーシャルメディアが後押し

それまでも、メールマーケティングやオンラインキャンペーンを、実店舗での来店促進や購買促進のためにも活用したり、オンラインの会員やインターネット閲覧者を店舗や実際のオフラインの消費行動につなげようとする取り組みはありましたが、オンラインにアクセスできる場所が限定されていたため、インターネットでのショッピングと実店舗でのショッピングとは、消費者の目的や利便性にあわせて別々に行われていました。
しかし、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアによって、生活者同士のコミュニケーションが活発になると、オンライン上で欲しい商品の情報を検索し、実店舗へ出向いてその商品を購入、その使用感など商品レビューをSNSに投稿するなど、オンラインとオフラインを行き来する消費行動をとる生活者が登場しました。
そこにスマートフォンが爆発的に普及したことで、街にはWi-Fiスポットが増加し、パケット定額制が当たり前となり、生活者はいつでもどこでもインターネットとつながり、情報を駆使する消費者となりました。
スマートフォンとソーシャルメディアにより、ネットとリアルがシームレスに連携したことで、オンライン上の情報収集から実際のアクションまでの時間が大幅に短縮されました。そしてオンラインの情報がオフラインの行動につながり、オンラインで共有され、さらに新たなオフラインの行動につながるO2O2Oという動きも加速しています。
また、スマートフォンに搭載された小型高性能カメラや、加速度センサー、GPSなどの位置情報、近距離無線通信規格(NFC:Near Field Communication)、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、新しい技術によって位置情報サービスや決済、ポイント、クーポンなどプロモーションの手法にも新たな可能性が生まれています。

O2Oによって懸念される問題点

Nielsen社の調査によるとスマートフォン利用者の89%が、実店舗において他店との価格比較を行った経験があると答えています。消費者がスマートフォンで価格情報を簡単に入手できるようになったことで、実店舗はオンラインとの価格競争に直面することになりました。そのため、店頭で商品を手に取りながら、スマートフォンで価格やクチコミを調べ、結果的にはオンライン店舗で購入するという「ショールーミング」という購買スタイルに頭を悩ませている小売店が増えています。
また、常時携帯デバイスであるスマートフォンによって得られる行動履歴、購買実績などのパーソナル情報をはじめとしたいわゆる「ビッグデータ」は、上手く活用すれば新たな消費の喚起に繋がる資産となりますが、一歩間違えるとプライバシーを侵害してしまう危険性も孕んでいます。

O2Oの効果的なプランニングとは?

消費者の購買活動がO2Oというプロセスを経るようになった今、ブランドイメージや顧客情報、マーケティングデータを持つメーカーと、販売の現場での接客に基づく経験や所感を持つ小売店が、共に課題を共有しオンラインとオフラインの融合に取り組むことで、より豊かな消費体験を提供することが求められています。
様々な情報を簡単に手に入れられるオンラインと五感を直接刺激されるオフラインを同時に体験出来るO2Oによって、生活者は消費活動に新たな楽しみを見出しました。企業や店舗はこうした生活者の心理を理解し、「新しい出会いの機会を演出する」「ゲーム要素を導入して購買意欲を高める」「友人に伝えたくなるような体験を提供する」ことを意識して、コミュニケーションプランを考えることが大切なのではないでしょうか。
マーケッターにとっては、オンラインからオフラインだけでなく、オフラインからオンライン、そして更に共有・伝播に繋げる「O2O2O」のスパイラルを想定したマーケティング施策の検討が必要です。

イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ