急速に進化する中国のネットショッピングを理解するための基礎知識として、中国にはどんなショッピングモールやオンラインショップがあるのか、主要なものをまとめてご紹介します!

 

 
「写真通りで偽物ではない商品がちゃんと届く」
「購入者が速やかに支払いを履行してくれる」
そんなショップと顧客の信頼関係が築きにくい中国でネット通販が果たして成立するのか?
──中国滞在時、毎週のようにネットショッピングをしていたという話をすると、そんな質問が投げかけられます。確かに性善説に基づいた「後払い」も普通に存在する日本とはビジネス環境は異なるでしょう。でも実際には、中国のネットショッピングの流通量は既に日本を凌駕しており、利用者も急激な勢いで伸びています。
「ECにおいて、中国のほうが進んでいる点も多数ある」
中国インターネット事情に詳しい人の中にはそう断言する人も少なくありません。確かにユーザー側の立場からの経験でも、売り手や商品に対する不安を払拭する仕組みが各所に盛り込まれていることに驚かされます。また支付宝(アリペイ)はじめオンライン決済サービスの利用が定着しており、売り手・買い手双方にとってリスクのない取引が実現しています。こうしたオンライン決済サービスの普及は今、街中での少額ショッピングから友人間での飲食代金の割り勘に至るまで、キャッシュレスで簡単にストレスなくできる利便性につながっており、この点でも一歩先を進んでいると言えます。
顧客の信頼を獲得するためには日本以上の企業努力が必要とされる中国のECサイト。そこから私たちが学べることは結構ありそうです。
まずは基礎知識として、どんなショッピングモールやオンラインショップがあるのか、見ていきましょう。
 

世界最大の流通総額を誇る「淘宝」

 

 
●淘宝(タオバオ)
https://taobao.com/

中国のECサイトと言えばやはりまずはここでしょう。アリババグループが運営する中国最大のオンラインショッピングモールで、世界最大の流通総額を誇るサイトです。もともとBtoBプラットフォーム「アリババドットコム」を展開していたアリババが、2003年にオープンしました。淘宝の「淘」という字には、砂金など粒状のものを水の中でより分け流し取るといった意味があります。
アリババグループの運営サイトのうち、「タオバオがCtoC(個人間売買)、天猫がBtoC(企業が販売)」と説明されるため、「日本のヤフオクのようなもの→ネットオークションサイト」と勘違いしてしまっている人もいます。
でも実際にサイトを見ればわかるよう、ヤフオクとは全く異なるタイプのサイトで、楽天市場同様の総合ショッピングモールです。「個人間売買」というより「個人商店が主のショッピングモール」ととらえたほうがより正しい理解になるかもしれません。
「見つからない物はない」と言われる圧倒的な品揃えで、個人向けの商品だけでなく、牧畜用飼料から家政婦派遣などのサービスまであらゆるものを取り扱っています。
●淘宝カテゴリー一覧(中国語)
品揃えの豊富さと、出店者の多さによる売り手間の価格競争激化で、街中の店舗で購入するよりはるかに多い選択肢の中から、リーズナブルな価格で買い物をすることができます。送料も日本と比べ非常に安価です(扱いはかなり雑ですが)。広大な中国では、一部都市部を除けばまだまだ流通小売が未成熟なエリアもあり、なおさらタオバオをはじめとするネットショッピングの優位性が際立つのです。
一方「偽物や低クオリティの商品が多く混じる」ショッピングモールとしても認知されており、それを嫌うユーザーは、タオバオより高くても、より安心して利用できる「天猫」の店舗や京東、Amazonなどで買い物をしています。それでは「タオバオでの買い物は常にリスキーなのか」というと、実際はそんなこともありません。
 

 
 
各店舗のトップや商品詳細ページの右上には、店舗情報のコーナーがあります。その一番上の「〇〇卖家」の文字、あるいは「信誉」の横に並ぶアイコンをクリックしてみましょう。ちなみにこのショップは「皇冠」という格付を得ている店舗です。
●银之行 购买心得评价(「銀之行」というタオバオ出店店舗の評価情報/中国語)
するとこの店舗の信用に関する情報が非常に細かく表示されます。時期によって店舗のサービス状況や商品の質などが変わってくることも踏まえているのでしょう、評価は半年以前・半年以内・最近一か月・最近一週間のそれぞれの状況を見ることもできます。
こうした情報をチェックしながら「信頼できる店舗」で、販売実績もクチコミ数も多く好評な商品を探して注文すれば、大きく外すことはありません。中国ではさらに、購入前にチャットを利用し、商品に関する疑問や不安点などを投げかけ、納得いくまで回答を得ます。このあたりも日本と違う点のひとつでしょう。
 

日本企業も出店するBtoC最大手モール「天猫」

 

 
●天猫(ティエンマオ/Tmall)
https://www.tmall.com/

淘宝と同じくアリババグループが展開するBtoC中国最大のショッピングモールで、日本企業が多く出店しているのもここです。もともとは淘宝商城という名称でしたが、2012年に「天猫」と改名しました。
個人商店の集まりであるタオバオと異なり、法人であることなど厳しい条件があり、そう容易には出店ができません。タオバオよりは全体的に高めですが、安心して利用できるショッピングモールとなっています。ブランドものや比較的高額の商品を購入する場合は、タオバオではなく天猫を利用するという使い分けも多いようです。タオバオと天猫はURLも異なりますが、タオバオでカテゴリー別の商品一覧を表示させると、そこに天猫で販売されている商品も混じるため、気付いたら天猫に飛んでいたということもあります。
ちなみに中国では11月11日(双11)が「光棍节(光棒節)」と呼ばれる独身の日で、2009年にタオバオがセールを仕掛けたのが定着し、今ではあらゆるネットショップがこの日に大規模なセールを展開するようになりました。年々ヒートアップし、さながらアメリカのブラックフライデーのような盛り上がりとなっています。天猫では毎年総流通額をリアルタイムに発表しており、2016年は1,207億元(約1兆8600億円)に達しました。楽天市場の2016年1~12月期の流通総額は3兆円。その約6割を天猫が単日で達成してしまうというのだから驚きです。
●楽天の年間流通額を1日で超えた中国の「独身の日」まとめ[EC流通額は約2.7兆円](ネットショップ担当者フォーラム)
なお「タオバオと天猫の流通総量の比率」が気になって検索してみたところ、こんな資料がありました。
●Alibaba Group Announces March Quarter 2016 and
Full Fiscal Year 2016 Results(PDF/英語)

この中の2016年1~3月期の数値を見ると、タオバオと天猫は6:4となっておりタオバオのほうが5割ほど多いのですが、この差は年々じわじわと縮まっています。
 

安心・翌日配送で高い支持「京東」

 

 
●京东(京東/ジンドン/JD.com)
http://www.jd.com/

タオバオと比べ日本での知名度は低いですが、利用者も多く、信頼度も高い直販型の総合オンラインショップです。「電化製品やブランドものを買うなら、偽物リスクがない京東が安全」「配送も早い」と、タオバオ・天猫より京東を愛用するユーザーも結構います。
スタートは2004年でタオバオとさほど変わらず、もともとはPC・家電の専門オンラインショップでした。その後、取扱カテゴリーを広げ、現在はファッションから食品、書籍まで販売する総合オンラインショップとなっています。
タオバオ・天猫が「ショッピングモール型サイト」で、実際に販売をしているのは出店している企業や「売家」と呼ばれる個人セラーであるのに対し、京東は基本直販が主(第三者の販売もある)。そのため、商品詳細ページのスタイルやトーンも統一されており見やすく、中国各地にくまなく設置された京東配送センターからの出荷となるため、注文翌日出荷で都市部ならその日のうちに届くことも。さらに大都市中心部など、注文から数時間での配送が可能なエリアもあり、急ぎの時に大変重宝します。購入後の返品・交換・アフターサポートもしっかりしており、その点も高い信頼度につながっています。
2016年にはヤマトホールディングと提携し、「京东全球购(京東全球購)」という越境ECモールへの日本企業の出店を促進しています。
●中国への越境直販モール「京東全球購」に「日本館」オープン(ECzine)
余談ですが、天猫のキャラクターが「黒猫」なのに対し京東は「犬」。双11セールの際には「猫狗大战(猫狗大戦)」といった見出しがニュースサイトに登場します。
 

世界共通のインターフェイスで信頼も厚い「中国Amazon」

 

 
●亚马逊(ヤマシュン/Amazon)
https://www.amazon.cn/

米国発のネット企業で中国で成功しているところがほとんどない中、Amazonは例外的な存在と言えるでしょう。書籍を中心に家電、生活用品など広範囲の商品を取扱う総合ショッピングサイトとして高い支持を得ています。その理由は京東同様、「必ず本物商品が届く」商品の品質とサービスクオリティ、そして配送の速さでしょう。トラブルもなく安心して買い物ができるショップのひとつです。
全世界共通のデザインとなっているため、日本人にとっても馴染みやすいサイトです。ただしアカウントは日本・アメリカと共通ではないため、新たに登録する必要があります。Kindle本も多数出版されていますので、中国語が読める方であれば日本からでも利用可能です(ただしKindleアカウントも日本と共通ではないため、購入したKindle本をダウンロードする場合には中国版Amazonのアカウントでのログインが必要)。
日本のAmazonになくて中国のAmazonにはあるもの、それが「海外購」です。現在「美国(アメリカ)」と「英国」があり、英国はまだ昨年秋に始まったばかりです。中国ではここ数年、インターネットを通じて海外から商品を直接購入する「海淘」が盛り上がっており、Amazon以外の各社も、「天猫国際」「京東全球購」など専門サイトをオープンして品揃えの強化を図っています。
 

オンライン書店から総合通販サイトに進化「当当網」

 

 
●当当网(当当網/ダンダンワン)
http://www.dangdang.com/

現在の中国の主要総合ショッピングサイトの中でもっとも歴史が長いのが「当当網」です。オープンは1999年で、当初は書籍のみを販売するオンライン書店でした。中国版Amazonと呼ばれていた頃もあり、今では書籍以外の商品も幅広く取り扱う総合ショッピングサイトになっています。
23時前に注文すれば翌日配送を約束しており、またエリアによりますが、午前中の定められた時間までに注文を完了すればその日のうちに発送するサービスもあります。
 

オンライン書店から総合通販サイトに進化「一号店」

 

 
●一号店(イーハオディエン)
http://www.yhd.com/

総合オンラインショップの中でもちょっと毛色が異なるのが、2008年にオープンした「一号店」です。サイトの左側にあるサイドバーのカテゴリー一覧を見ると、上から2行が食品関連となっており、その下にベビー用品やおもちゃなどがきています。
ここはいわゆる「ネットスーパー」要素の強いサイトで、「自営超市(超市はスーパーマーケットの意味)」をクリックすると、野菜に果物、海産物まで少量から注文が可能です。
そうした日常生活での買い物利用も多いからなのでしょう、配送時間を非常に細かく指定できるのも特徴です。午前・午後といったざっくり指定だけではなく、1時間単位で「9時から11時の間」などと配送指定時間の頭とラストを自由に選ぶことができます。配送指定時間の幅によって追加オプション料金がかかる仕組みも面白いですね。
 

家電量販店のオンラインショップ

 
ここまで総合ショッピングモール・サイトの主要どころをいくつか紹介してきましたが、他にもまだまだあります。
シェアでは、アリババグループのタオバオ・天猫、そして京東の2強には遠く及びませんが、中国のネットショッピング市場自体が大きいため、個々のサイトの売上高も決して少なくありません。まずは家電量販店系から。
 

 
●苏宁易购(蘇寧易購/スニン イーゴウ)
http://www.suning.com/

 

 
●国美在线(国美在線/グオメイ ザイシェン)
http://www.gome.com.cn/

どちらも全国展開している大手家電量販店のECサイトです。日本でいうところの「ヨドバシ.com」「ビックカメラ.com」といったところでしょうか。実際のリアル店舗の名前も「蘇寧電器」「国美電器」と同じ名前で、中国家電量販店業界のトップ2です。
家電製品が中心になっていますが、家具や食品、ファッションに本まで扱っており、ほぼ「総合オンラインショップ」と言っていいラインナップです。またそれぞれ上部ナビゲーションの「超市」をクリックすると、食品・日用品を中心としたネットスーパーが展開します。
なお蘇寧易購はラオックスを買収した会社でもあり、ラオックスは蘇寧易購に「海外購─日本館」として出店しています。
 

ファッション・コスメ関連

 
ネット通販の主ターゲットは中国でもやはり消費志向の強い女性。
以下は、ファッション・化粧品などを中心としたショッピングサイトです。
 

 
●唯品会(ウェイピンフイ)
https://www.vip.com/

期間を区切ったセールを行うという他とはちょっとスタイルの違うショッピングサイトです。「この価格で買えるのはあと4日10時間」など表示して購入を煽る手法は、共同購入クーポンサイトとも共通しています。商品詳細ページにはサイズもわかりやすく明記されており、解像度も高い大きな写真を並べ、生地や細部の拡大写真など、実物を見ないと少々不安も残る洋服を買いやすくしてくれる工夫が凝らされています。
 

 
●蘑菇街(モーグージエ)
http://www.mogujie.com/

蘑菇とは「キノコ」という意味です。いわゆる「ソーシャルショッピングサイト」で、10代から20代の若い女性をターゲットにしたファッションを中心に販売しています。
 

 
●聚美优品(聚美優品/ジュメイヨウピン)
http://bj.jumei.com/

化粧品を中心としたショッピングサイトで、唯品会同様、タイムセール方式で販売を行っています。近日開始予定のセール情報を事前に見ることができ、日本や韓国のメーカーの商品も多数取り扱われています。
 

 
●凡客诚品(凡客誠品/VANCL/ファンクチャンピン)
http://www.vancl.com/

無駄な装飾を省いたシンプルでスタイリッシュなデザイン。クオリティもまずまずで価格はリーズナブル。そんな中国版ユニクロとも称されるファストファッションのブランドです。サイトの作りも他とは一線を画したすっきりしたものとなっており、根強いファンもいます。個人的にも好きで中国滞在時はよく購入していました。
 
+ + +
 
タオバオ以外にも、それぞれ特徴のある総合ショッピングサイトが多数あることをご理解いただけたかと思います。家電専門サイトやファッションサイトも、商品カテゴリーを増やして総合ショッピングサイト化しているのが日本とひとつ異なるところです。それを可能にさせるのも、市場の大きさゆえかもしれません。
また「当日・翌日配送」の導入も進んでいます。
「海淘」「超市」もここ数年のトレンドになっており、ソーシャル連携など新しいものを次々取り入れて進化をしています。
時間があれば、タオバオや天猫、そして京東あたりで、カテゴリーページや商品詳細ページなどまで潜って内部をじっくり見てみてください。海外配送もほとんどのサイトで行われており、試しにアカウントを作成して注文してみることも可能です。複数のショップで買い物をするなら、代理で商品を受け取り、まとめて日本に向けて配送してくれる第三者のサービスもあります。
タオバオについては、後日さらに詳細に見ていきたいと思います。
 
 



和田 亜希子(Akiko Wada)
都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。
 


 


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