自社ECサイト運用担当者が抱える課題のひとつである「集客」。この記事では、自社ECサイトへの集客方法の基本やポイントを事例を含めて解説します。
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自社ECサイトへの集客はEC事業者にとって大きな関心事
インターネット環境の向上、コロナ禍などを経て、生活者の消費購買行動のなかでEC利用が広く浸透。これまでEC事業に取り組んでいなかった企業の新規参入や、ECをメインの販売チャネルとした企業やブランドの立ち上げが進むなど、EC市場は拡大し続けています。
このようにECが積極的に利用されるようになった一方で、EC事業者には悩みや課題も生じています。IRISデータラボ株式会社がEC事業者へ行なったアンケート調査によると、「現在のECサイト運営の課題」について、60%以上が「サイトへの集客」と回答。
多くの企業がEC運営に取り組む現在において、たくさんある選択肢のなかから自社のECサイトにどのように訪れてもらうか、「サイトへの集客」が大きな課題となっていることがわかります。
自社ECサイト集客における3つの代表的手法
自社ECサイトへの集客方法は大きく3つの手法があります。
1:WEB広告
インターネット広告を出稿し、広告経由での集客をする方法。様々な種類の広告から最適なものを選び、ターゲットに対して確実に情報を届けることができるというメリットがあります。しかし一方で、インターネット広告市場の成長によるCPMの高騰化や、プライバシー保護の観点からのデータ活用規制など、その環境はめまぐるしく変化をしており、柔軟に対応していく必要があります。
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WEB広告には主に次のような種類があります。
- リスティング広告:検索エンジンを利用した検索結果に表示されるテキスト広告。自分たちの商品と親和性や関連性が高いキーワードに対して狙って出稿ができ、効果的なターゲティングができるのが特徴。
- バナー広告:WEBページに画像やアニメーションを使ったバナーを表示する広告。視覚的な要素が多く、ユーザーの注意をひきやすいのが特徴。
- SNS広告:Facebook、Instagram、Twitter、TikTokなどSNSプラットフォームに表示される広告。それぞれのプラットフォームが独自のアルゴリズムや配信面、広告フォーマットを保持しており、ターゲットや商品と親和性の高い媒体やフォーマットを選択することがポイント。
SNS広告についてはこちらの記事で解説しています。
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- アフィリエイト広告:成果報酬型の広告手法。広告枠に掲載されたりクリックされるだけではなく、成果(商品購入やサービス申し込み)が出た場合にのみ、アフィリエイト料が紹介者(アフィリエイター)に支払われる広告。
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2:SNSの活用
Facebook、Instagram、TwitterなどSNSプラットフォームを利用して情報を発信し、ECサイトへ集客する手法。
昨今は商品購入前にSNSで情報検索を行う生活者も増えており、ハッシュタグなどをうまく活用することで、購買意欲の高い生活者にリーチすることができるというメリットがあります。
また、商品情報だけではなく企業のノウハウや知識などを定期的に発信することで潜在顧客とのつながりを作ることもできます。ニーズが顕在化していないため、実際の購買までの時間はかかってしまいますが、コンテンツマーケティングと同様の考え方で中長期的にECへの集客の安定化を測る効果がある施策です。
SNSを活用する場合は、自分たちの商品や購買層の特徴を把握し、コンテンツ設計を行なって継続的に運用を行なっていける体制作りがポイントとなるでしょう。
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3:SEO対策によるコンテンツマーケティング
検索エンジン最適化(SEO)対策を行い、検索エンジンの検索結果上位に自分たちのコンテンツを表示させることで集客に繋げる手法です。
調べたいことがある時、気になるものがある時、生活者はインターネットの検索エンジンを利用して情報を調べます。自分たちの商品やサービスと関連性があるキーワードに基づく有益な情報をインターネット上に公開することで、これらの検索時にその情報が表示され、そこからサイト集客へと繋げることができます。
商品情報以外のコンテンツの拡充を行なうこの手法は「メディアコマース」とも呼ばれ、競合他社との差別化などの観点から注目されています。
一方で、成果が出るまでに時間がかかる、コンテンツ制作の負担が増えるなどのデメリットもあるため、取り組む際にはこれらの懸念点をきちんと理解した上で実施する必要があります。
ECサイトのメディア化について事例とともに解説しました。
▶メディアコマースとは?ECサイトのメディア化のメリットやポイントを解説【事例あり】
お手本にしたい自社ECサイトへの集客方法事例5選
では、次に具体的にこれらの手法を活用しながら自社ECサイトへの集客を成功させている事例をご紹介します。
事例①ユーザーの投稿したUGC動画をリール投稿に|BASE FOOD(ベースフード)
1食で必要な栄養素を摂ることができる「完全栄養食」を掲げ、パンやパスタを提供しているBASE FOOD。Instagramの公式アカウント(@basefood_tokyo)では運用のなかでリール投稿を活用しています。
Instagramのリールは、リールタブから視聴でき、フォローしていないアカウントからの投稿も表示されるため、企業アカウントがリールを活用することは認知拡大や新規フォロワー獲得につながるというメリットがあります。
Instagramリールについてはこちらの記事もご参考ください
▶【Instagramのショートムービー特化機能】Instagramリールとは?
ECサイトへの集客という観点でみても、継続的な投稿によって認知拡大の安定化を測ることができる施策であると言えます。一方で、動画コンテンツの制作にかかるリソース不足といったことに対する懸念から十分に取り組めていないという企業も少なくありません。
BASE FOODではリール動画に、ユーザーがアップした動画UGCをリポストしたり、静止画UGCを動画風につなぎ合わせて1本のリール動画に仕立てるなどの工夫を行い、安定的なリール投稿を行なっています。
また、UGCの利用は工数の削減だけでなく、ユーザー目線の商品訴求ができるというメリットもあります。「どんな風に商品が届くのか」、「どんな風に商品を利用しているのか」といった内容をユーザーの立場で伝えられている同社のアカウントは、EC集客におけるInstagram活用の効果的な事例のひとつとなっています。
InstagramでのUGCマーケティング施策についてはこちらの記事もご参考ください。
▶InstagramマーケティングにおけるUGC活用とは?メリット、活用ポイントを解説【事例あり】
事例②Instagramショップ機能と連携してECヘ送客|ワタシプラス watashi+ by shiseido
Instagramショップ機能と連携してEC送客を行なっているのは、資生堂の公式オンラインショップ「ワタシプラス」のInstagramアカウント(@watashiplus)。
Instagramのショップ機能は、ショッピングタグを利用し、投稿や広告で紹介した商品をタグ付けすることでそこから商品購入をダイレクトに促す機能です。日本では決済機能(Instagram内で決済を完了する機能)は未搭載のため、ショッピングタグから商品詳細ページを閲覧し、実際の商品購入はそこから外部ECサイトへ遷移して行います。
Instagramのショッピング機能活用のポイントを紹介
▶【InstagramでEC売上をアップ!】ショッピング機能を効率的に活用するための5つのポイント
ワタシプラスの公式Instagramアカウントでは日々美容やメイクに関するティップスを発信していますが、その投稿内で使用している商品にショッピングタグをつけることでそこからECサイトへの導線を作っています。
投稿には「メイクの仕方」「毎日メイク」「初心者メイク」など、メイク情報や美容情報を探しているユーザーが検索、フォローしそうなハッシュタグを採用。写真や動画をうまく活用してわかりやすく美容情報やメイク術を伝えながら、ECサイトへ集客している事例です。
事例③お役立ち情報をYouTubeで発信して集客につなげる|アカチャンホンポ
現在は、私たちの生活のあらゆる場面において動画が活用されるようになっています。動画には
- より多くの情報を歌えることができる
- 言葉や静止画では説明しにくいことをわかりやすく説明することができる
- ユーザーの目をひきやすい
などのメリットがあり、ECサイトへの集客施策においても
- 広告クリエイティブとして動画を活用(WEB広告施策)
- SNSの投稿に動画を活用(SNS)
- ノウハウやお役立ち情報などを紹介した動画を公開(コンテンツマーケティング)
など様々な活用方法が考えられます。
動画マーケティングのポイントをおさらい
▶動画マーケティングとは?基本から成功ポイントまでを徹底解説【事例あり】
そんな動画をうまく取り入れて集客につなげているのが、アカチャンホンポ(赤ちゃん本舗)の公式YouTubeチャンネル。
このチャンネルではベビー用品や出産準備品の購入時に参考にしたい情報、離乳食の作り方など役立つ情報を発信しています。商品説明については動画で見せることでよりわかりやすく、商品のポイントや使用感を発信。また、知識やノウハウを共有することで信頼感を作り出すことができているチャンネルです。そして、動画の説明欄にはオンラインでの商品購入先リンクと店舗情報も掲載。オンライン・オフライン双方への集客につなげている事例です。
事例④UGCを広告LPに掲載してCVRを改善|ZENB JAPAN(ミツカングループ)
UGC(=User Generated Contents)は、ユーザー(一般生活者)によって作られたコンテンツの総称のこと。具体的にはSNSやブログ、各種投稿サイトやレビューサイトなどへの投稿や、それに対するコメントなども含まれます。
こうしたレビューやクチコミに対する生活者の信頼度は高く、アライドアーキテクツが行なった調査では、「商品やサービスを購入する際に、生活者のクチコミやレビュー(UGC)を信頼しますか?」という問いに対して全体の64.6%が「信頼する」と回答。購買行動におけるUGCの影響力の高さが伺える結果となりました。EC集客においても、顧客の購買を後押しするコンテンツとして高い注目を浴びています。
そんなUGCを活用して、自社ECへの集客施策の改善に成功しているのはミツカングループの「ZENB JAPAN」。
同ブランドの新規獲得向けLPでは、商品の機能を訴求するコンテンツの下に、訴求内容を強化する目的でアンサーコンテンツとしてレビューを掲載。レビューの掲載位置や内容の検証など、レビュー掲載施策を運用していくことで、CVRを1.32倍まで改善することに成功しています。
事例⑤Twitterキャンペーン経由で新規会員獲得&クーポン利用促進|株式会社DINOS CORPORATION
株式会社DINOS CORPORATIONでは、SNSキャンペーンを活用してECサイトへの集客に成功しています。
同社ではもともとTwitter経由での集客数が少なく、CVRも低いという悩みがありました。そこで購買に対して積極的なTwitterユーザーの大量送客を目的としたTwitterキャンペーンを実施。Twitterでフォロー&RT後、ECサイトでログインまたは会員登録することで抽選結果がすぐにわかるインスタントウィン形式を採用し、キャンペーン参加を促しました。
また、キャンペーンのインセンティブは同社のECサイト上で使用可能なクーポンとなっており、購買意欲がもともと高いTwitterユーザーを効果的に送客することに成功。さらに、クーポンは「あたり」「はずれ」の両方の場合に配布されるため、購買の更なる後押しにも繋がっています。
結果、過去平均を大きく上回る送客数を実現し、クーポン利用数も過去平均比1.8倍と高い成果をあげました。Twitterキャンペーンを活用して、EC集客と購買促進に成功している事例です。
短期的な視点と中長期的な視点を合わせもつことが大切
ここまで、自社ECへの集客方法について、代表的な手法と参考にしたい集客事例を見てきました。動画の活用、UGCの活用、SNSとの連携や、SNSキャンペーンなど、それぞれアプローチの仕方は様々です。
しかし大きく見ると、広告やInstagramショップとの連携、Twitterキャンペーンなど比較的成果が見えやすい「短期的な施策」と、SNS投稿などの「中長期的な施策」に分けられることがわかります。
自社ECサイトを運営していく上で、広告などある程度成果を試算しやすい集客施策を実施していくことは必須です。同時にそれらにばかり依存せずに、検索からの流入など施策費用を抑えながら安定的に自社ECサイトへ集客させることも、また重要となってくるでしょう。
短期的な成果と中長期的な成果を両立させて、それらを目指す視点をあわせ持つことが、これからの自社EC集客のポイントとなりそうです。