世界最大級のデジタルマーケティングイベント「ad:tech tokyo 2012」2日目からSMMLabが参加したセッションの内容をレポートします!
こんにちは、SMM Labの藤田です。
10月30~31日に東京国際フォーラムで開催された日本最大級の国際的デジタルマーケティングカンファレンス、第4回「ad:tech Tokyo(アドテック東京)」。
2日目のセッションから、「オウンドメディア」、「ブランドとエージェンシー」、「マルチスクリーン」というキーワードについて、マーケター、エージェンシー、メディアがそれぞれの立場で語った、Aトラックの3セッションをご紹介します。
[A-7]3つのメディアとスクリーン戦略:ブランドが自社メディアにシフトする理由
パネリスト(写真右から)
今田 素子氏
株式会社メディアジーン 株式会社インフォバーン
代表取締役 最高執行責任者
笹間 靖彦氏
株式会社資生堂
国内化粧品事業部 デジタルビジネス開発部長
モデレーター(写真左)
野口 嘉一氏
株式会社電通
第十営業局 プランニングディレクター
まず、モデレーターの電通 野口氏は「近年、自社のホームページをオウンドメディアとして情報発信に活用しようとする企業が増えているが、一方的に発信するだけではマスメディアと同じ発想。様々な人とネットワークしていく、コラボレーションのプラットフォームとして捉え直した方がWEBとして自然なのではないか?」という背景とともに、「オウンドメディアのその先へ~成熟市場ニッポンにもまだ潜在市場は、ある!?」というテーマを提案しました。
「日本の市場は成熟している。こういう成熟した市場では普通に発信しているだけでは、もはや新しい需要を創造する事は出来ない。そこで、ネットワーキングというのがクローズアップされるんじゃないか?異質な人同士が新たに出会って化学反応を起こすと、そこに新しい価値が生まれる。そうするとそこに新たなる欲求とか『欲しくなる気持ち』が出来ていくんじゃないでしょうか。」と語り、企業と企業が出会う事例として、「ビックロ」を紹介しました。
「え?ビックカメラとユニクロが組むって、どういうこと?」という興味関心から新しい需要喚起を実現した事例
このコラボレーションからは4つの新しい欲求が生まれたのでは?
1)話題性、にぎわい
2)相互ポイント、値引き
3)ライフスタイル提案
カジュアルでカラフルなユニクロの楽しい世界の中で家電を見ていると、カラフルで可愛い家電が欲しくなる。カジュアルライフスタイル家電みたいなものがいいのではという新しい価値観を創造したのでは?
4)ユニクロは競合にない「未来感」、ビックカメラは競合に奪われた「メジャー感」を手に入れた。ウルトラライトダウンがWindows8の隣に展示してあると、「未来のテクノロジー」がイメージされ、相互ブランディングの効果があった。
野口氏は次にもう一つの可能性として、「消費者と企業のコラボ」の事例を紹介しました。
電通総研の今年のヒット商品候補
・ステテコ
・塩麹
・グリーンスムージー
・フリクション
・JINS PC
「これらはオウンドメディアで消費者と企業がコラボレーションした結果出来た商品ではないが、『言われてみれば、実は欲しい』は、消費者に注目してその声を拾っていかないと出来ないものではないか?」といい、「オウンドメディアを企業と消費者とのコラボレーションのためのプラットフォームとして捉え直すと、企業がもっと消費者とコラボして、「言われてみれば、実は欲しい」というのがもっと出来てくるのではないか、そんな可能性があるんじゃないかと思っています。」と続けました。
そして改めて、「オウンドメディアのその先にあるのは、素晴らしい出会い。それを通して『欲しくなる』をつくるコラボレーション。全体需要を喚起するコラボレーション・プラットフォームこそがオウンドメディアのその先の姿なんだというテーマ設定で進めていきたいと思います。」とパネリストのお二人へバトンを渡しました。
資生堂の笹間氏は、「情報に時間や場所の制限がないボーダレスの時代。消費者も化粧品を買おうと思って検索しているうちにエステや旅行に関心が移る、そういったカテゴリーにとらわれない自由な購買行動に変化している。
化粧品業界は元々店頭に来たお客様に美容部員が商品を選んだり、使い方を説明したり、無料でカウンセリングして商品を買っていただくという商売だったが、発想を転換して、何が合っているのか、ちゃんと使いこなせているのかというソリューションの提供に焦点を当てる事で、今まで出会えなかったお客様に出会えたり、そこに需要創造が起きる可能性があることが分かった。
そこで、自社メディア「ワタシプラス」では、WEBカウンセリングに注力したが、WEBカウンセリングを受けたユーザーがその後商品を購入したのは、圧倒的にリアル店舗であり、初回購入単価はWEBショップに比べて大幅に高額だった。情報がきっかけになったとしても、その先に満足度を高めるソリューションがあることが大事であることが分かったので、カテゴリーを超えたソリューション提案が出来ないかということで、女性の美しく豊かな生活を実現するという企業理念を共有出来る企業と新しい取り組みを始めている。」と、自社オウンドメディアのコラボ戦略について語りました。
「美しく豊かな人生を送るために企業・専門家・ユーザーが仲間となって協力し合う」をコンセプトにした『Beauty&CO.』は、最終的にユーザーとの共同で商品・サービスを開発することを目指し、様々なコラボ企画に取り組んでいます。
インターネットでのメディア運営を数多く手掛け、企業のオウンドメディアの構築・運営の支援もしているインフォバーンの今田氏は、企業がメディア化することで、一番大きく変わったこととして、消費者とのコミュニケーションの形を挙げました。
「これまではペイドメディアで広告しても、その後すぐにユーザーは違う場所に移ってしまい、データも残らず、もう一回集めようと思ったらまた広告を打たなければなりませんでした。そういう関係性やデータがメディア化する事によって蓄積していけるようになった。ユーザーだけでなくコンテンツもためることができるようになり、コミュニケーションの形が変わったのです。今までは単純に広告を出稿するだけだった既存メディアとも、新しいコラボレーションが生まれてくるというのが大きなビジネスチャンス」
今田氏はさらに、企業が自社の技術や知識、知的財産を公開する事で、ユーザーや識者、他社、社内のスタッフやチームとコラボレーションし、新しいイノベーションを生み出すことが出来るようになったと話し、正田醤油やサッポロビール、富士通など、ユーザーのアイディアを集め、商品開発などに活かす「コ・クリエーション」の取組み事例を紹介しました。そして、企業がオウンドメディアでユーザーとコミュニケーションする際のポイントを5つにまとめました。
1)企業が提供する情報コンテンツ、自社発のストーリーが重要で、それによって共創を促進する。
2)ユーザーをやる気にさせて、いろんな意見が出てくるように導くモデレーションが必須。スゴいユーザーを見つけ、アイディアラッシュをゲーム化させることでコミュニティを活性化する。
3)全ての声を聞く必要は無く、良いアイディアの原石をエスカレーションする。
4)透明性を設け、オープンの力を使う。イノベーションの進行自体がメディア化されていて、プロモーションになっている。それをオープンにする事で人々の興味を喚起していくことが重要。
5)根幹的なコンセプトは自社から与えないと想定した方向からズレてしまう。
[A-8]
ブランドとエージェンシー:
変わり始めた広告主と広告会社の関係性?事例から見る理想的なタッグとは
パネリスト
平野 義孝氏
株式会社トヨタマーケティングジャパン
プロデュース局 WEBマーケティング室 室長
西口 一希氏
ロート製薬株式会社
マーケティング本部 執行役員 本部長
モデレーター
小西 圭介氏
株式会社 電通
ブランドクリエーション・センター チーフコンサルタント
モデレーターの電通 小西氏は、「今日、ますます複雑化・高度化する課題解決と、“広告”コミュニケーションを超えた幅広いビジネスのイノベーションを実現していくために、従来の企業や組織の枠を超えた個人とチームのあり方、新しい仕事の仕方やプロセスが求められているのではないでしょうか。
・メディア、コミュニケーション手法の多様化、生活者へのパワーシフト
⇒「広告」を超えたコミュニケーションデザイン
・多様な専門性と能力の必要性:
マーケティング×クリエイティブ×テクノロジー×メディア・・・
⇒総合力:インテクレーションによる成果達成
・拡大するブランド自体の「メディア化」:
単発キャンペーンから、継続的な関係プラットフォームへ
⇒ブランド&エージェンシーのパートナーシップ変化
こうした背景から、“Dream Team”、すなわち、異なる領域の個(タレント)を結集した、新しいコラボレーションチームを編成し、共通のゴールを目指して協働を機能させていくことが、成功の鍵になりつつあります。
このセッションでは、パネリストからさまざまな最新の実践例(や失敗例)の紹介も交えながら、ブランドやエージェンシーの立場を超えた本音の議論、枠を超えた取り組み、“Dream Team”を機能させる、これからの協働のあり方についての新しい提案ができればと思います。」とセッションをスタートしました。
「マスとデジタルのマーケティング活動をいかに融合していくのか?」という最初のテーマに、トヨタマーケティングジャパンの平野氏は、「マスマーケティングの補完としてデジタルコンテンツを使うのではなく、ブランドをより理解してもらうためにデジタルが必要」と答え、興味関心喚起から商品確認行動への誘導に成功した「オーリス」の事例を紹介しました。
社内では当初物議を醸したというCM動画ですが、
・YouTubeでのCM再生回数:1000万回(うち海外約600万回)
・商品のビデオカタログ映像の再生回数:約20万回(通常の10倍以上)
・車種TOPページへの流入:約5万件
と、マスを凌駕するだけのリーチとなり、かつ商品にも興味を持ってもらえたという結果から、平野氏は「能動的・受動的に放映されるTVCF」に対して、「積極視聴態度媒体としてのYouTube」での配信とデジタルだからこそ出来るリアクション測定によって、優良な動画を安価に、数多く、お客様別に配信する時代だと語りました。
「クルマに対するマインドシェアが低下している時代に、いかに振り向いて(興味関心をもって)もらうか。クルマの広告が話題にならない時代。媒介、アイディア、コンテンツをつかって、オーディエンスによる話題・共有を増幅し、目的の対象に誘導する事が非常に重要。そのためには、顧客視点の購買プロセスの導線を描き、興味と商品情報体験の行動をシームレスにつなげなければならないのです。」(平野氏)
サイトのKPIと訴求アプローチに関して「今まではリーチをとってカタログサイトの入口に連れてくればいいとしていたが、購買プロセスそれぞれの段階でお客様の行動や意識は変わっているはず。クルマを買うためにより必要な事に特化した情報を提供しなくてはいけないのでは?
マーケティングのプロとして、この相関関係が分かっている広告主が、クリエイティブや表現の内容についてエージェンシーにもっと具体的にリクエストしていく、そういう意味でのマスとデジタルの融合を提案していきたい」と締め括りました。
「計画購買のクルマと違い、衝動買いが多いCPG(日用消費財)では、店頭にあるかどうかが重要。メディアの効果は変わらなくても役割は違う。」というロート製薬の西口氏は、商材のファン化を目指し、複数回のキャンペーンを計画的に実施した「肌ラボ」キャンペーンの事例を紹介しました。
2009年 第一弾キャンペーン
CM量は少なかったが、店頭ではボードやステッカーでロゴを大量露出。
Twitterなどで参加出来るインタラクティブなキャンペーンサイトを展開。
GRP 1500
WEB/TwitterーTVから流入
売上 対前年 +24%
化粧水売上本数 No.1に
2010年 第二弾キャンペーン
ディズニーデザインボトル 限定36万本
6種類のボトル展開で存在感
短期集中出稿一気に話題化、
週間POSが3-5倍となり、店頭で品切れしたところ、
「あそこにはミッキーが居る」「ミニーをどこ?」などWEBで話題となり拡散した。
売上 対前年 +33%
「CPGのカテゴリはトライアルのハードルが低いので、TVの効果が絶大。デジタルは拡散とロイヤリティー形成、コミュニティー形成の力に期待している。現時点ではデジタルが利益を生んでいる状況ではないが、将来的にデジタルがより拡大していくのは確実なので投資は続けていく。」(西口氏)
「エージェンシーは従来、横(トリプルメディア)に展開してきたが、今、より求められているのは縦(継続的なマーケティングプロセス)の統合の実現ではないか?」という小西氏の問いには、「縦軸と横軸を結ぶ取り組みは相当長期的な理解がないと出来ない。現在ロート製薬では、2年、3年単位での商品計画、事業戦略プラン、週単位の売上もエージェンシーと共有している。単発の取り組みではこういう成果に繋がらなかったと思う。
デジタルの活動は目的ではなく手段。ゴールを事業成果としたところでいうと、マスかデジタルかということではなく、様々な領域の施策を統合し、事業成果(売上・利益)に責任を持つプロデューサーの役割が重要になってきている。」と答え、ロート製薬では、過度な専門性を廃し、マーケティング全体を見ることで多様な能力・経験を持つプロデューサーを育成していく方針を明らかにしました。
「商品を売るためにどうするかという大きな課題に向かって突き進んでいて、社内チェックによってPDCAに取り組んでいるメーカーの方が、プロデューサーを育成しやすいかもしれない。エージェンシーは個々の専門性が高いがゆえ、必要以上に担当が細分化され分業されてしまっているのでは?専門の部分だけでなく全体像を一緒に考えてくれるパートナーになって欲しい。
今後は、多様化する施策を、キャンペーンの目的を達成するのに本当に必要かどうか、という全体俯瞰でチェックする人が絶対必要。エージェンシーにもそういう役割の人が欲しい。でもトリプルメディアのうちペイドメディアだけを担当しているエージェンシーではなかなか難しいのでは?」という平野氏の質問には、
小西氏がエージェンシーの立場から「単発のコンペは成り立たない状況になってきている。確かに専門領域が広くなり過ぎてしまって、全部知っていないとソリューション営業は出来ない。それぞれが統合力を持ってプロデューサーになっていかないといけない。エージェンシーサイドからも、事業戦略や事業成果にもっとコミットしていきたいと思っているし、戦略レベルから一緒にパートナーシップを組んでいくことで、チームとしてやっていくことが出来る。」と答え、「エージェンシーはクライアントの鏡。クライアントが変わるとエージェンシーも変われる。新しいチャレンジを行うためには従来のやり方を抜本的に変える必要がある。」と締め括りました。
[A-9]スクリーン戦略:
3スクリーンか4スクリーンか?事例から見たベストプラクティス
パネリスト
今谷 秀和氏
株式会社電通(関西支社)
テレビ局 局次長
磯貝 直之氏
日本マイクロソフト株式会社
Xbox カテゴリー マーケティング ディレクター
齊藤 浩史氏
株式会社毎日放送
経営戦略室 マネージャー
津毛 一仁氏
アディダス ジャパン株式会社
ブランドマーケティング/デジタルマーケティング シニアマネージャー
モデレーター
味澤 将宏氏
Twitter Japan株式会社
ディレクター
テレビ局、プラットフォーム、ブランド、広告代理店、それぞれの立場からマルチスクリーンに精通する4人のパネリストが、現在取り組んでいる事例を基に、今後どのように放送、コンテンツ提供のあり方が変化して行くのか、またどのように消費者とのエンゲージメントを高めて行くのかを語ったセッション。
まずモデレーターのTwitter 味澤氏が、スマホ、タブレットがTVを視聴しながら楽しまれているセカンドスクリーンである証拠として、TVとTwitterの親和性の高さを物語る二つのデータを紹介しました。
米ニールセン社が発表した、シリーズドラマの視聴率とツイートの数の相関性データ
・シリーズ開始直後はツイートが9%増えると視聴率が1%上がる。
・シリーズ中盤ではツイートが14%増えると視聴率が1%上がる。
Twitter社発表のTPS(Tweet per Second)ランキング
2位のあけおめ2012と10位のジョブズ以外はすべてTVに関する話題。
「現在メディアランドスケープが、生活者のデジタルプラットフォームとTVを融合した視聴、コンテンツ消費の広がりにより、急速に変化している。スマートフォン、タブレットによるデバイスの多様化と、SNSの普及によりこの変化が加速する中、マルチスクリーン戦略はブランドにとって非常に重要なテーマ」だとし、それぞれの取組みについて話題を進めました。
毎日放送 齊藤氏はマルチスクリーン型放送研究会が取り組んでいるテレビの新しいアプローチについて紹介しました。
「今年の夏、神戸のレンタル店で『GTO』、『イケメンですね』という作品が、それぞれTVでの関連番組のオンエアによって品切れになるという事象があった。これは、膨大なストックの中で放送という一つのフローによって、実際の消費行動が起こっているという事実。消費者はいつでも決めれるものはなかなか決められない。決断にはある時間軸上の必然性が重要。消費を促す処方箋として“ストック”と“フロー”をシームレスにハイブリッドすることが必要。
しかし今は、消費者がテレビで知った情報をネットに繋いで手入力で検索しているのは、情報を「知る」ことと「得る」ことが途切れてしまっている状態。そこで、番組を送出するだけでなく、番組内容と精緻に同期する関連情報を手元デバイスに送り届け、そこからネットサービスにシームレスに連携していくことで、テレビとネットの良さを兼備えたメディアを作ろうとしている。」(齊藤氏)
基本的な考え方
・テレビ広告モデルに影響を与えず、現状のビジネスと競合しないことで円滑に普及促進を図る
・一つ目の手元の画面、スマートデバイスの第一画面までを放送局が責任をもって、情報の信頼性を保つ。
・手元に届いた情報にユーザーがアクセスすることで、インターネット広告の領域にテレビ側からアプローチすることが出来る。クライアントに広いリーチと深い関係性の両方を提供出来るサービスになるのではないか。
齊藤氏は今後の展開について、「番組とソーシャルの連携や、ネットユーザーを視聴者として取り込むというコンテンツレイヤーのアプローチはもちろん大切だが、その基盤となるシステムや広告モデルのレイヤーでも良い形で連携させることを、両輪で進めていくことが重要だ。視聴者にとってプラットフォームが一つであることが必須であり、インフラとして日常的で継続的な統合システムを作ることが、TVを軸としたマーケティングシステムの土台になると考えている。」と語りました。
磯貝氏は、リリースしたばかりの新機能「SmartGlass」を通じて、Microsoft社が近年取り組んできた「3スクリーン+クラウド」について紹介しました。
「『SmartGlass』では、ユーザーアクション、コンテンツがクラウドに集約されることで、どのタッチポイント、どのスクリーンを使っていても一貫したコンテンツやサービスなどが利用出来る。スマホがゲームのコントローラーになったり、タブレットで視聴中のDVDのチャプターサムネイルを確認したり、コンテンツの続きを移動中にスマホで視聴したり。クラウドを利用することによって、シームレスなデバイス連携を実現した。」
磯貝氏は「『SmartGlass』はMicrosoft社製品に限らず、iOSやAndroidにも提供する。これは、消費者が普段使っているタッチポイントをTVと連携させたいというMicrosoftの意気込みの現れ。TVはPCやスマホに比べてネットやクラウドの力を活用出来ていない。今流通しているTVのほとんどがインターネットに接続出来るにも関わらず、実際に接続しているのは20%に満たない。TVのスクリーンをもっとインターネットが活用出来るプラットフォームとしてバリューを高めていきたい。」と語り、シームレスな視聴体験によって、ユーザーとのエンゲージメントを中断すること無く、続ける、深める、広げることが出来るという「SmartGlass」のメリットが、今後新しい広告モデルに繋がる可能性を示唆しました。
ブランドの立場からマルチスクリーンに取り組むAdidasの津毛氏は、「どのスクリーンということではなくユーザーとタッチ出来るポイントを増やしていって、そこで生まれる対話をループさせることを目指してコミュニケーションを設計している。ドイツ本国に右にならえではなく、ローカルユニークで強いチャネル、メディアに注力していくことを積極的にやっているので、新しい体験が生まれるスクリーンがあれば積極的に取り組んでいきたい。」と語りました。
Adidasのコミュニケーション設計については「コンシューマーファースト。ブランドが主語で発信するのではなく、消費者、ファン、プレーヤーが主体となって語っていただきたいので、ソーシャルでの対話やエンゲージメントを中心に持ってきています。」といい、テレビを見ながらソーシャルログインをしてサッカー日本代表を応援しようというアプリを事例に、マルチスクリーンによる潜在ユーザーへのアプローチに期待を寄せました。
また、今後の課題として、「今までアディダスはプロダクトを提供して、そこに対して価値を体験してもらうということだけだったんですけれども、今後はそこからのフィードバックをどう探知していって、体験に繋げていくもしくは製品をイノベーションしていくかが大切になると思う。」と語り、「デジタルスポーツ」という考え方を元に、心拍や足下のセンサーを使って、走った距離や消費したカロリーがデータ化される「MiCoach」という取組みを紹介しました。
電通 今谷氏は、2007年に携帯とテレビを連携させるシステムを考案、それ以来ずっとテレビ番組と広告の連動について考えていると言います。
「出来るだけ広くリーチして、そのうちの何パーセントかのターゲットを見つけるという従来のコミュニケーションモデルは、ターゲットが自らアクションを起こすのを待たなくてはならず、効率が悪いのでは?そもそも自らアクションを起こす能動的な人は、わざわざ便利なツールを用意しなくても自発的に来てくれる目的客。みずからアクションを起こすほどではない、“ゆるい”興味度のユーザーこそ新規開拓顧客になるうるのでは?」という疑問を投げかけ、そこにリーチ出来るのがマルチスクリーンだという考えを語りました。
今谷氏の考えるマルチスクリーンの効能は3つ、「深さ」、「リーチ」、「拡散」だと言います。
1)深化
リアルタイムにサブスクリーンやサイトへ誘導することで、コミュニケーションの深化を図る。
あるいは、通販や申し込みなどのダイレクトコミュニケーションが出来ることで、目的客を逃さない。
ウェブに向かない商品でも、15秒、30秒のCMが通り過ぎていくだけではなく、クイズに答えたり、ゲームに参加することでブランドに対するエンゲージメントの深化が期待できる。
2)リーチ
大型テレビの前に座ったままでは、もはやなかなかリーチは広がらない。
テレビ自体をスマホ・タブレットで見ることが出来れば(実現性検討中)、テレビメディア自体のリーチそのもの拡大するはず。
3)拡散
テレビを見ている友人の情報シェアにより2つメリットがある。
・テレビを見ていないスマホ・タブレットユーザーをテレビ視聴に呼び込む効果
・テレビを見ていなくとも友達のシェアを見て、商品サイトに誘導する効果
ソーシャルへの拡散によるリーチ数の拡大が期待できる。
「マルチスクリーンによってテレビは今後どのように変化するか?」という最後の質問に、毎日放送の齊藤氏は、
「ユーザーのみなさんが持っているデバイスが変わってきて、生活習慣も変わってきている中で、テレビは2003年にデジタル化されて以来、なにも変わっていない。スマートテレビという言葉で語られているハードウエア的な変化だけでなく、テレビ局側からも変えていかなきゃいけないのは確実だと思っている。
ツイートしながらみんなで一緒にテレビを楽しむという光景が、既に一般化しつつある日常の中で、実態としてのソーシャルと、象徴としてのテレビというものが、仕組みとしてもビジネスのエコシステムとしても、上手く共存出来るようになっていかないとならない。」とし、放送局自身もマルチスクリーン型視聴に積極的にかかわっていくことで、新しい視聴形態やビジネスモデルを作る試みの一つとして、放送同期型IPDC(IP Data Cast)コンテンツの提供を目指していると語りました。
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