昨今、ECの市場規模は拡大しており、各社は競合と差をつけ自社で購入してもらうための様々な施策に取り組んでいます。今回はECの顧客獲得につながる施策として注目の「メディアコマース(ECサイトのメディア化)」について解説していきます。
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メディアコマースとは?
メディアコマースとは、メディアサイトとコマースを組み合わせた造語です。生活者に向けて情報をとどけるためのメディアと、オンラインで商品を購入するECを組み合わせ、生活者に情報を届けながら商品購入までを促す施策であり、メディア化したECサイトは「メディアEC」と呼ばれることもあります。
メディアコマースが注目される背景
ここ数年で、生活者の中でECを利用した消費購買行動が浸透しました。経済産業省が行っている「電子取引に関する市場調査」によると、2021年のBtoC ECの市場規模は20兆6,950億円で対前年比で1兆4,171億円の増加となっています。
EC市場の規模が拡大する一方で、多くの企業がECを立ち上げ、ECによる商品・サービスの販売を行うようになると、ただECを立ち上げただけでは自社のECへの集客や顧客獲得が難しくなってきます。
株式会社ネオマーケティングが行った調査ではEC担当者の抱える悩みの中で「新規顧客獲得」や「サイト集客」を挙げている担当者が多いことがわかります。EC化が進むなかで、自社のECを選んでもらえるため、競合他社のECと差別化を測ったり、集客の工夫をすることが求められているのです。
また、選択肢が増えることによって商品価値そのものだけではなく、多様な付加価値を求めた消費購買行動をとる生活者も増えています。
具体的には、イミ消費(商品、サービスのもつ社会的・文化的な価値に重きを置く消費行動)やエモ消費(感情を揺さぶられるなど精神的な満足度を目的とした消費行動)などがその一例であり、こうした消費購買行動は特にZ世代を中心に多く見られるようになっています。
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このように
- 他社ECサイトとの差別化や集客の工夫が求められている
- 商品そのものだけでなく、付加価値を伝えることが求められている
といった観点から、メディアコマース、ECサイトのメディア化が注目されているのです。
メディアコマースのメリット&デメリット
メディアコマースを行う、ECのメディア化施策に取り組む場合には、そのメリット&デメリットを正しく理解することが大切です。
<メディアコマースのメリット>
①SEOによる自然流入からの集客効果が期待できる
調べたいことがある時、生活者はインターネットを使って検索を行います。そのため、自分たちの商品やサービスに関連するお役立ち情報やティップスをまとめたコンテンツを公開し、それが検索上位に表示されれば、そこから「指名検索は行っていないけど顧客に繋がる可能性のある生活者」のECへの流入を見込めるのです。
②商品やブランドのストーリーを伝えファン作りにつながる
商品やブランドのもつストーリーなど、購買に際して付加価値を求める顧客に対して、ただ商品をならべただけでは満足して購入してもらうことは難しいでしょう。
しかしECをメディア化し、商品誕生秘話や商品に込めた思いなどをコンテンツとして掲載することで、サイト訪問者により深く商品を知っていただき、購買を促すことができます。
またこうしたコンテンツに触れてもらうことは、企業やブランドに対する理解を深め、ファン作りへつなげる効果も期待されます。
③商品購入前に商品の使い方や使用感などを事前に伝えることができる
実店舗と違い、ECでは実際に手にとって商品を確かめることができません。しかし、メディア化したECサイトでは、商品の使用感、テクスチャー、使い方など購入者が事前に知りたいであろうことをコンテンツを通して伝え、理解を深めてもらえることができます。そのため、「購買への後押しにつながる」、「購入後にギャップが生じるのを防ぐ」といったことが可能となり、結果として満足度の高い顧客体験に繋がると考えられます。
<メディアコマースのデメリット>
①効果が出るまでに時間がかかる
メディアコマースのメリットである「自然流入からの集客効果」を求めるために必須になっていくのがSEO対策です。
公開したコンテンツがきちんと検索上位に表示されるためにはSEOの知識が必要であるとともに、Googleから評価を受けることも必要であり、評価を受けるためには時間がかかります。
また、正しいコンテンツを公開したからといってすぐに軌道にのるわけではなく、長期的な目線で施策に取り組む姿勢が求められます。
②コンテンツ制作に関するコストやリソースの負担が増える
メディアコマースで成果をあげるためには良質なコンテンツを作り続けることが必要。ターゲットに刺さりそうなコンテンツや見込み顧客の獲得が見込めそうなコンテンツの企画を練り、記事なら執筆、画像や動画なら編集などの作業を経てコンテンツを作っていかなくてはなりません。
そのため、ECサイトのメディア化に取り組むためには、あらかじめある程度の人員やコストを確保しておかなければなりません。
メディアコマース(ECのメディア化)に取り組んでいる事例
では実際に、メディアコマース(ECのメディア化)に取り組んでいるものにはどのような事例があるのでしょうか?
①商品理解から購買促進、そしてファン作りへ【よなよなの里|ヤッホーブルーイング】
まず最初にご紹介するのは、株式会社ヤッホーブルーイングの運営する「よなよなの里」です。このサイトは、同社の「よなよなエール」のオフィシャルウェブサイトという位置付けで、商品説明やオンラインストア、イベント情報、クラフトビールに関するコラムなど、「よなよなエール」にまつわるあらゆる情報を届けています。
よみもの(コラム)は、「よなよなアウトドア部」「よなよな料理部」「世界のビール図鑑」など、コラムのテーマによって分類して配置。また、「はじめましての方」、「よなよなファン」、「イベントが好きな方」と、ユーザーのタイプ別におすすめ記事をまとめ、クラフトビール初心者からよなよなエールのファン層まで、幅広いユーザーに楽しんでもらえる工夫もしています。
初期段階の商品理解からファン作りまで、メディア機能でユーザーとの関係性を構築しているメディアECの事例です。
ヤッホーブルーイングのEC戦略についてのインタビューはこちら
▶ヤッホーブルーイングの新EC戦略。クラフトビール「サブスク型販売」における、新たな挑戦とは
②SEO対策、Instagramアカウントからの流入施策【ワタシプラス|資生堂】
株式会社資生堂が運営しているワタシプラス。美容に関する様々なティップスが詰まったコンテンツとEC機能が合わさったメディアECです。
ワタシプラスで注目したいのは適切なSEO対策がなされているという点。「就活メイク」「日焼け対策」など、自分たちの商品との関連が高く、検索されやすいキーワードを選定してコンテンツとして公開しています。これらの記事はそれぞれのキーワードで検索上位を獲得しており、安定的な自然流入を獲得できていると言えます。
また、ワタシプラスではInstagramアカウント(@watashiplus)も運用中。Instagramアカウントでも美容に関する知識を発信し、ストーリーズやハイライト機能を活用してワタシプラスへの導線を作っています。
ECにメディア機能をもたせることで広告以外でのECへの効率的な集客に成功している事例です。
③コンテンツからの自然な商品誘導に成功【ヒントマガジン|東急ハンズ】
東急ハンズのウェブサイトは、ヒントマガジンという記事コンテンツとEC機能を併せ持ったサイトになっています。
ヒントマガジンはその名の通り、生活のヒントになるような知識を紹介しているコンテンツです。実生活に役立つ身近なノウハウをわかりやすく解説することで、そのために必要な商品を自然にPRすることに成功しています。
また「バタートースト評論家」「シールマニア」などユニークな肩書きをもった専門家を迎えたインタビュー記事や体験型ギフトの体験レポートなど、コンテンツとして楽しむことのできる読み物も充実。
コンテンツの形をとることで嫌味なく商品を紹介し、そこからEC機能でダイレクトに購買につなげている事例です。
東急ハンズのInstagram運用についてインタビューした記事はこちら
▶【共感をよぶアカウントを目指して】東急ハンズがInstagram活用で大切にしているコトとは?
④動画を活用して商品の使い方を解説して購買促進【DADWAY】
ベビー用品や知育玩具などを扱っているDADWAYのECサイトでもメディア化に取り組んでいます。
同社のECサイトでは子育てや子育てにおすすめの玩具、また出産祝いのマナーなどベビー用品、知育玩具に関連した知識をコラムとして発信。子育て用品、知育玩具を選ぶ時に必要なノウハウを共有することで、ベビー用品、知育玩具の購入先としての信頼感を創り出しています。
また同時に、商品の使い方や店舗の情報を紹介した動画も掲載。実際にECサイトに来て購買を検討しているユーザーに対し、商品の使用イメージを的確に伝え、購買を促すことに成功している事例です。
メディアコマースで成功するための4つのポイント
ここまでメディアコマース(ECのメディア化)に取り組んでいる事例を見て来ました。ではメディアコマースで成功するためにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?最後に4つのポイントをご紹介します。
①ペルソナ設定とインサイト発掘
メディアECで発信するコンテンツ作りにおいて、どのような顧客層に情報を届けてECヘ集客したいのか、そのペルソナを設定することは重要です。特にSEO対策などを行って自然流入を狙う場合には、コンテンツのテーマや流入を狙うキーワード選定のためにも、「誰に届けたいのか」をより明確にする必要があります。
そしてもう一方で、自分たちの思い描く顧客像に対して実際の顧客のインサイトを照らし合わせることも大切です。顧客のインサイトからは、企業が気がつけなかった商品の魅力や商品利用シーンなどを知ることができます。
- ペルソナ像をしっかりと持つこと
- インサイトと照らし合わせながらそのペルソナ像をブラッシュアップしていくこと
この作業を繰り返すことで、より効率的なメディアEC運用が実現するのです。
②SNSと連携させる
また、SEO対策のほかにも各種SNSアカウントと連携して情報発信を行い、流入を狙う施策も効果的です。日頃からSNSアカウントでユーザーとコミュニケーションをとり、その積み重ねの中でサイトへ訪問してもらう、というパターンも考えられます。
さらに、SNSアカウントをアクティブ運用し、自社商品やブランドに関するハッシュタグ投稿を自然に促すようにすれば、UGCから顧客のインサイトを探ることにも繋がるため、インサイト発掘の観点でもメリットとなる場合があります。
UGCマーケティングについて、基礎から解説した記事はこちら
▶UGCとは?マーケティングにおける活用手法・事例・注意点を徹底解説!
③デザインの自由度が高いものを
文字と写真だけのシンプルな記事コンテンツ、動画を組み込んだものなど、コンテンツの表現の仕方は多様です。そして届けたいコンテンツの種類や目的によって、どのようにコンテンツを設計すればよいのかを考えることが大切です。
WEBサイトのデザインはテンプレートを利用する場合も多いですが、できるだけ表現の幅を狭めずに自由度の高いサイト作りができるようにするとよいでしょう。
④収益を意識する
ECサイトのメディア化には、他社ECとの差別化、集客、顧客とのコミュニケーションなど様々な利益があり、KPIとしては流入数や回遊率などの数値を見ていく必要があります。しかし、メディアコマースの最大の目的は「収益をあげる」ことであり、そのため最終的にはどのような顧客に、どのようなコンテンツで集客し、どのようなコンテンツで理解促進すると売り上げに繋がるのかという意識を持たなくてはいけません。
たとえばいくら流入数が多いキーワードであっても、実際の商品購入とは関与度の低いキーワードであれば収益に結びつくとは言い難く、収益を意識したコンテンツ作りのさじ加減が成功のポイントとなってきます。
また、効果が出るまでに時間がかかり、長期的に取り組まなくてはいけない施策である故に、この収益に対する意識が欠けてしまうと、ただコンテンツを作り出すだけの施策となってしまうので注意が必要です。
いかがでしたか?今回はメディアコマース(ECサイトのメディア化)について簡単に説明してきました。ぜひ今後の施策にご参考ください!