徹底的に定量のデータに基づくダイレクトマーケティングモデルを推進するオルビスと、顧客の熱量を高めるファンマーケティングに注力するヤッホーブルーイング。

今回は、「新規顧客獲得」という同じミッションを異なる手法で追及する両社が、顧客アプローチの仕方についてお互いに質問し合った対談の様子をたっぷりとお届けします!

後編は、オルビス→ヤッホーブルーイングへの質問の様子です。

教えて!ヤッホーさん ファンマーケティング施策において重視している指標は?

モデレーター/アライドアーキテクツ株式会社 伊藤 仁哉(以下、アライド/伊藤):後半は、オルビスさんからヤッホーさんへの質問です。ヤッホーさんは熱量の高いファンになっていただくことに注力していらっしゃいますが、どのようにKPIを持っているのか教えていただけますか?

ヤッホーブルーイング 桂馬 拓也氏(以下、ヤッホー/桂馬氏):NPS(Net Promoter Score)という推奨度を表す指標と、熱狂度という指標を持っています。

株式会社ヤッホーブルーイング 通販事業ユニット ユニットディレクター 桂馬 拓也氏

NPSについては、「このブランドを友人・知人にすすめる可能性」を「0」から「10」の11段階で評価、熱狂度については以下の5段階で評価しています。

<ヤッホーブルーイングが定義する熱狂度の指標>

  • (1:High)すっかりハマッている(夢中だ、ぞっこんだ)
  • (2:High)愛着を感じながら製品を飲んでいる(幸せを感じる)
  • (3:Middle)好きで製品を飲んでいる
  • (4:Low)悪くはないと思いながら製品を飲んでいる
  • (5:Low)なんとなく飲んでいる

オルビス 山口 直氏(以下、オルビス/山口氏):その指標はどのように測っているのですか?

ヤッホー/桂馬氏:主な測り方として、年に1~2回、我々の公式通販サイトでご購入いただいたお客様や会員登録いただいている方、SNSでつながっているファンの皆様を対象に、このNPSと熱狂度についてのアンケートを取っているんです。

その結果出てきたNPSと熱狂度を以下のようなマトリクスにして、どこに何パーセントのお客様がいるかを見ています。

ヤッホーブルーイング社のKPI「お客様の熱狂度×NPS」を表すマトリクス。熱狂度、NPSをそれぞれ3段階に分け、クロス集計した結果、どこにどれだけのお客様がいるかを測っている。

お店で製品を買われたお客様からのアンケートは取れませんので、その意味では限定的なアンケートではあります。ただ、最近はLINEでつながる方が増えており、LINEの友だち登録をしていただいている方は必ずしも我々の製品をECでご購入されているわけではないので、一般の店頭でご購入されている方に近いのかな、という見方をしています。

ヤッホーブルーイング 望月 卓郎氏(以下、ヤッホー/望月氏):弊社の製品を飲み始めたばかりの方は、熱狂度もNPSもそれほど高くないマトリクスの左下にいる方が大半なのですが、ファン度、好きになる度合いが高まると熱狂度も推奨度も上がり右上にシフトする傾向にあります。

ただ、最近はNPS=推奨度については必ずしも「好きだから人にもすすめたい」わけではないことが分かってきています。「製品は気に入ってたくさん買っているけれど、人にすすめたいわけではないよ」という方もいらっしゃるわけです。

ですから、我々にとっては熱狂度の方がより重要な指標です。どのようなステップを踏めば熱狂度の上位2つの中に入っていただけるのかをデータから分析しているところです。

株式会社ヤッホーブルーイング コンシューマー事業部門 事業統括 望月卓郎氏

熱狂度の上位2つに入るまでにどのくらいの期間がかかるのか、何の製品を飲むと熱狂度が上がりやすいのか、公式ウェブサイト上でどんなコンテンツを見ているのか。

これらのデータを分析すると、最初に製品のユニークなパッケージを見て「ジャケ買い」した方が、だんだん味にハマっていって、さまざまなジャンルの製品を試しながら特定の製品に寄って行き、最終的には我々の会社やミッションなどに愛情を感じていただく傾向にあることが分かってきました。

教えて!ヤッホーさん 熱狂度と売上に相関性はあるの?

オルビス/山口氏:我々の場合は定量の指標を重視しており、ヤッホーさんが取り組まれている「熱狂度」という定性的な指標が、売上などの定量データとどのような相関性があるのかすごく気になります。熱狂度の高まりが結果として事業に跳ね返ってくるかは、どのように測っているのでしょうか?

オルビス株式会社 CXデザイン部 AD-リテンション戦略グループ グループマネジャー 山口 直氏

ヤッホー/望月氏:先ほど申し上げたような各項目がどこまで売上に相関しているかまではまだ見れていないのですが、「熱狂度」と「売上」にだけは明らかな相関性があるんです。今は、上位2つの熱狂度に至るまでのルートをブレイクダウンすることによって、「こういうことが売上に結びつくんだな」が見え始めているところです。

オルビス 照井 真規子氏(以下、オルビス/照井氏):私たちもそのステップに乗りたい理想はあるんです。ヤッホーさんのように、我々も一度商品を使っていただければきっと納得いただける質の商品を提供している自負があります。ただ、商品を使っていただいた先に、会社のことまで好きになっていただくような施策って何だろう、適切なタイミングはどこにあるんだろうというのが難しくて悩みますね。

教えて!ヤッホーさん ファンの熱量を上げるために、どんな工夫をしているの?

アライド/伊藤:熱狂度が低い状態から高い状態への態度変容を促すにあたり、今まで具体的にどんな施策が効果がありましたか?

ヤッホー/桂馬氏:今はまだ年に1~2回しか大規模アンケートが取れていないので、お客様単位に紐づいた分析はできていません。ですので、まだ具体的にこの施策で何ポイント熱狂度が上がったというレベルまでのPDCAは行っていないんです。

熱狂度が低い人はパッケージが好き、真ん中の人はクラフトビールの味が好き、高い人は会社のことが好きという大きな違いまでは見えてきているので、現在は「クラフトビールの味を知らない方には味をご説明できないか」「味が好きな方には弊社のクラフトビールイベントでより楽しんでいただくことはできないか」など、コミュニケーションの取り方を工夫することで熱量を上げられるよう工夫しています。

ヤッホー/望月氏:最終的には個人のお客様単位で熱狂度の推移を見ていきたいという思想はあります。今は、今後それを具体的にどう見ていくかの定義が定まってきたところです。

アンケートから、「味・香りなどのビールの機能面」「ネーミング・パッケージなどデザイン面」「自分にぴったりだと思う・リラックスできるなどの自分軸」「個性的・ユーモアがあるなど製品の世界観」「価格」「お客様対応・会社のミッションなどの会社への共感」など、具体的な共感項目を探り出し、その一つ一つの項目とお客様一人一人の行動がどうリンクするかを探っていきたいと考えています。

オルビス&ヤッホーの共通項 ファンのUGCを活用して新規顧客獲得の効率を向上

アライド/伊藤:今日は、「新規顧客獲得」という同じミッションを異なる手法で追及する両社にて、大変有意義な対談が実現できました。

今回対談いただいたオルビスさん、ヤッホーさんには、弊社のUGC活用ツール「Letro」をご利用いただき、「UGCを活用してECの売上を向上する施策」に取り組んでいるという共通項があります。最後に、両社がなぜUGCを活用しているのか、その意義について一言ずつお聞かせいただけますか?

オルビス/照井氏:デジタル広告を運用する中で、私たちが広告で一生懸命メッセージをお伝えしても、やはりどうしてもそれが作り物っぽく見えてしまうことがあるなと感じています。

オルビス株式会社 CXデザイン部 AD-リテンション戦略グループ マネジャー 照井真規子氏

そのような中、実際に商品を使っていただいているお客様が、ありのままのリアルな発言をしてくださることで、信頼感を作ることができると感じています。情報過多で何が正しいか分からないような時代だからこそ、UGCの活用には大きな意義があると考えています。

オルビス:オルビス商品を使用した方のUGCをLP上に掲載している

ヤッホー/桂馬氏:お客様が弊社の製品をどう楽しんでいらっしゃるかをお見せすることに意義があると思います。実際に、弊社の定期宅配サービスにお申込みいただくことでその後どんな生活が待っているか、そんな少し先の未来をイメージできるUGCの効果が高い結果が出ています。

ヤッホー/望月氏:私たちは、ECサイトにUGCを掲載するずいぶん以前から、「UGCってすごい!」を実感していました。

以前コンビニエンスストアのローソンさんとクラフトビールを共同開発したことがありまして、その時にSNSを活用し、生活者の方を巻き込んで盛り上げる企画をしたことがあったんです。

ビールの発売当日に、23区内のどのローソンにその製品が置いてあるかをヤッホーの公式SNSで紹介する、というものだったのですが、それを見ていたファンの方々が一緒に盛り上がってくださって、あっという間にものすごい数のUGC(ローソンの前でビールを持った写真など)がSNSに投稿されました。

この時に、自社だけで情報を伝えようとするのではなく、お客様から伝えていただく方が、ずっと大きなパワーがあるなと実感しました。そのころから、UGCの活用は弊社の定番になっていたんです。ですから、今回ECサイト上にUGCを掲載するのもとても自然な流れでした。

UGCをECサイト上に掲載することで、お買い物の楽しさや、弊社の製品を楽しむ際の幅の広さを感じていただけたら、そしてそこからさらにクチコミの輪を広げていけたらいいなと思っています。

ヤッホーブルーイング:ヤッホーブルーイング製品を飲んだ方のUGCをECサイト上に掲載している

ヤッホーブルーイングのUGC活用について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ヤッホー、ファンによる熱量の高いUGCがEC売上に直結!CVR1.16倍に向上

アライド/伊藤:オルビスさん、ヤッホーさん、本日はありがとうございました!