D2Cのパイオニア的企業のディスカッションを通してD2Cトレンドの本質を見つめ、これからのブランドが事業を成長させるヒントを提供するイベント「D2C最前線」。今回は、N&O Life、バルクオム、トリコの3社が登壇、「D2Cプラットフォーム戦略のリアル」をテーマに行われたパネルディスカッションの内容を前編・後編の2回に分けてレポートします!

パネルディスカッションの前半では、各社の楽天やAmazonなどのモールに対する戦略、自社ECの顧客とモールの顧客に違いはあるのか、重視している顧客データは?など、各社の「顧客への向き合い方」に関する興味深い話が紹介されました。

イベント:D2C最前線とは?

株式会社SUPER STUDIOとアライドアーキテクツ株式会社が共同で開催したセミナーイベント。2020年2月27日にWeb上でのライブ配信形式で実施された。


セッション1「D2Cプラットフォーム戦略のリアル」
パネリスト(五十音順)
・株式会社N&O Life 代表取締役 西口 征郎氏
・株式会社バルクオム 代表取締役 CEO 野口 卓也氏
・トリコ株式会社 代表取締役社長 藤井 香那氏
モデレーター
・株式会社SUPER STUDIO 共同創業者・エバンジェリスト 真野 勉氏

D2Cブランド=自社ECだけではない!各社の楽天・Amazon戦略とは?

-真野氏:本日は「D2Cプラットフォーム戦略のリアル」をテーマにディスカッションを進めていきたいと思います。まずは皆さん、D2Cブランドとして、楽天やAmazonなどのモールへの出店をどう考えているかを教えてください。

野口氏:こんにちは、株式会社バルクオムの野口です。私たちは2013年4月に創業した当初から一貫して、「BULK HOMME」を世界No.1のメンズコスメブランドにしたいという強いパッションを持っています。

弊社では、世界No.1=売上シェアNo.1を意味していますので、当然自社EC以外のチャネルも攻略していくべきと考えています。現在は、楽天やAmazonを始めとしたECモールに加え、小売・卸の拡大も積極的に行っています。

株式会社バルクオム 代表取締役 CEO 野口 卓也氏

西口氏:N&O Lifeの西口です。2013年4月に創業、「ALOBABY(アロベビー)」というベビー向けスキンケア商材から開始し、現在は女性向けのオーガニックスキンケアブランド「HALENA(ハレナ)」や、オーガニックシャンプーブランド「SINCE beaute(シンスボーテ)」なども展開しています。

私たちもバルクオムさんに考え方は近く、「ブランドをより多くの人に届けていきたい」と考えていますので、「このチャネルにしか卸さない」と言ったポリシーはありません。そこにお客さんがいれば、出していこうと考えています。現在は、ECで言うと、弊社の公式ECサイト、楽天、Amazonの3つのチャネルに力を入れています。今後も、もちろん小売で試してから購入したい方などもいらっしゃると思いますので、チャネルは増やしていくつもりです。

株式会社N&O Life 代表取締役 西口 征郎氏

藤井氏:皆さまこんにちは、トリコの藤井です。2018年4月にトリコを創業、2019年3月からカスタマイズサプリ「FUJIMI(フジミ)」を展開しています。

私たちは、お客様お一人ずつの肌診断にあわせて「パーソナライズ」したサプリメントをご提供することを特徴としており、モールとなると「新たな体験を提供する」という弊社の良さを活かせないかな…と考えていますので、現段階ではモールへの出店は検討していません。今後、蓄積したパーソナライズデータをもとに、幅広く商品展開をしていくことも視野に入れておりますので、その際にはモールも検討したいと考えています。

ただ、自社ECサイトの決済状況を見ていると、大体15-20%くらいのお客様がAmazon Payをご利用されているんですね。やはり、自社ECに色々と情報を入れるのは面倒な面があるかと思うので、モールに出店しないことによる機会損失が発生しているのかなとも思っています。

トリコ株式会社 代表取締役社長 藤井 香那氏

-真野氏:バルクオムさんとN&O Lifeさんはモールにも力を入れているとのことでしたが、各モールによる違いはありますか?また、自社ECの顧客とモールの顧客の違いはどのようなところにあると思いますか?

西口氏:弊社N&O Lifeにはブランドが3つありますが、それぞれ、各モールでの売上構成比は全く異なっています。「ALOBABY」は楽天が一番多く売れていて、弊社自社ECサイトの倍くらいもあるんですね。一方で「HALENA」は自社ECが圧倒的に多いです。「SINCE beaute」はAmazonで一番多く売れています。

自社公式、楽天、Amazonで同時発売ですし、また、特にブランドによって各チャネルへの力の入れ方を変えたわけではありません。でも、やはりブランドとチャネルの相性があり、けっこう違う動きをするんですね。商品発売後、だいたい2~3か月すると相性が見えてくるので、その結果次第で力の入れ方の配分を変えている状態です。今後は、今までの経験を踏まえて「たぶんこのブランドならこのチャネルがいいよね」という仮説をもって展開することも必要なのかなと思っています。

西口氏:自社ECとモールのお客様の違いで言えば、自社ECのお客さまは定期で購入いただく方が8~9割を占める一方、モールのお客様は単品のニーズが高いことだと思います。公式サイトとしては、やはり単品だけのご購入だけだと厳しく、定期購入いただくことがとても重要ですが、だからと言って、モールより自社ECだけを重視するわけではありません。

個人的には、いつも買い物でAmazonを利用していますし(笑)。個人の購買行動を考えれば、やはり楽天好きはいつも楽天で買い物するし、Amazon好きはAmazonを使いますよね。そのような方にとって、いつも使っているモールに欲しい商品が売っているかいないかは、とても大事なことだと思います。だから、やはりモールも自社の公式と同じようにとても重要なチャネルだと考えています。

それに、モールのお客様で、リピート購入してださる方も多いんですよ。モールだから単発購入だけというわけではないんです。楽天やAmazonがモールとしてCRMを回してくれているからだと思います。また、ここ1~2年の傾向として、GoogleのSEOのアルゴリズム上、楽天やAmazonなどのモールがかなり強くなっていると感じており、それぞれどんなキーワードで流入を期待するか、などの戦略も重要だと思いますね。

野口氏:メーカーとして、お客様に月々これくらいの量を使っていただきたいという目安はありますので、やはりサブスクリプション型/定期購入で商品をご購入いただけたらというのはあります。ですので、自社ECでの定期購入会員の獲得を一番大事なKPIにはしています。

ただ、やはりお客様によっては、いつもは使うけど「今月は使わない」など、色々な事情がありますよね。なので、一定の割合で離脱は発生していくものと思っています。そのような時に、モールや店舗などで単品で買っていただくというのも、全体の購買行動の中に必要なプロセスかなと考えています。

また、西口さんがおっしゃるように、モールからもリピート購入がありますし、商材によっても微妙に各チャネルとの相性は異なります。正直やってみないと分からないことが多いので、基本的には、各チャネルに出してみたらいいんじゃない?とニュートラルに捉えています。

各社が考える、「もっとも重要な顧客データ」とは?

-真野氏:次に、皆さんが重要視しているKPI指標、顧客データが何かを教えてください。

藤井氏:クレジットカード、Amazon Pay、後払いなど、どの決済方法でご購入いただいているかの比率を重視しています。弊社は85~90%のお客様が定期購入、残り10~15%のお客様が単品購入ですが、お客様の決済方法によって一度購入いただいた後のLTVが明確に変わってくることが分かっています。サプリメントは効果が出てくるまでに時間がかかるので、お客様にはなるべく続けていただきたいと考えています。今後も定期購入につながる指標は重視していきたいです。

また、決済画面での完了率についても重視しています。決済フォームに移ったときにAmazonなどでの購入と比較されて離脱してしまうお客様が多いので、最後の決済の過程をいかに楽にするかにはかなり気を遣っています。入力項目を減らす、ご購入金額を確認いただくタイミング、ボタンの色など、かなり細かい部分まで検証を繰り返しています。

西口氏:LTVとCTAの2つの指標が、このビジネスが成り立つかの全てだと考えていますので、この2つの指標の目標値を定めてひたすらその数値を追っています。

LTVについては、ただ表の数値を見るだけでなく、そこからどう分解していくかが重要です。例えば、LTVが目標に達していない時に、サイトのCVRが問題なこともありますし、解約率が問題なこともありますので。

野口氏:数値面ももちろんですが、弊社の場合は、「もともとスキンケアをしているお客様」と、「今回初めてスキンケアするお客様」の比率も重視しています。つまり、新しく弊社の商品を購入いただいたお客様の中で、どれくらいの方が他社からの乗り換えで、どれくらいの方が初めてバルクオムでスキンケアを始めるお客様なのか、ということです。現在この比率は、お客様にアンケートでお伺いすることで確認しています。

後編へ続く:尖らせた商品で勝つ!N&O Life、バルクオム、トリコが語るD2Cのブランド・商品戦略【D2C最前線 イベントレポート/セッション1・後編】

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