Twitterのアルゴリズムが変化し、従来のようにフォロー&リツイートキャンペーンでフォロワーを集め、オーガニック投稿でエンゲージメントを高めていく方法だけでは、Twitterマーケティングの成果を高めにくくなっています。

また、新たなSNSの普及や動画コンテンツの発展により、各コンテンツ提供者が「生活者のデジタル上で過ごす時間」を奪い合うような状況になっており、その中で企業コンテンツをユーザーに届けるには今までにない工夫が求められます。

そこで今回は、フォロワー数が約50万人のTwitterアカウント「dマーケット」で、新たなTwitter運用法に挑戦中の株式会社NTTドコモ コンシューママーケティング部 光山拓哉氏をお招きし、「Twitterの進化に適応し、成果を上げる戦略・施策・運用」をテーマにセミナーを開催しました。今回は、その内容をお届けします。

※セミナー概要:
「2023年のTwitter攻略法」
アライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナーイベント。2022年11月29日にWeb上でのライブ配信形式で実施された。

登壇者

スピーカー

株式会社NTTドコモ 光山 拓哉氏
スマートライフカンパニー コンシューママーケティング部 ポータル推進担当

2015年入社、ICTを活用した地方創生案件の創出・推進を担当後、社内研修制度にて大手外食企業に出向し、CRM・WEB広告・データ分析業務に従事。現在はdマーケットにおけるマーケティング業務全般を担当。

モデレーター

アライドアーキテクツ株式会社 木嶋 諄
プロダクトカンパニー echoes事業部 SaaSチーム マネージャー

2017年に新卒としてアライドアーキテクツへ入社。入社後は自社サービスのSNSプロモーションディレクター、カスタマーサクセスを担当。2020年より現在のechoes事業部で活動し、新サービスである「echoes on Instagram」の立ち上げや、「echoes on Twitter」の既存営業を経験。現在は既存営業部門のマネージャーを担当。

Twitterアカウントを通じて、ドコモ経済圏ポテンシャル利用層の拡大を目指す

ー木嶋:
本日は、Twitterの変化に適応し、マーケティングにおける成果を上げるためのTwitter運用方法をテーマに、dマーケット担当の光山さんにお話を聞いていきたいと思います。まずはTwitter運用の背景・目的をお話しいただけますか?

光山氏:
dマーケットは、dポイントを楽しくためながら、「映画」「マガジン」「音楽」など、20種類以上のサービスやコンテンツに出会える総合ポータルサイトです。各サービスの横断メディアという位置づけで運営しており、dマーケットで集客し各サービスに送客を図っています。

dマーケットのTwitter公式アカウントは、普段ドコモの携帯電話をお使いでない方やdマーケットをご利用でない方との接点を持つための手段として運用しています。Twitterアカウントからの投稿内容を通じて、dマーケットやドコモのサービスの魅力をお伝えし、ドコモ経済圏のポテンシャル利用層を拡大することが目的です。

株式会社NTTドコモ 光山 拓哉氏
スマートライフカンパニー コンシューママーケティング部 ポータル推進担当

マーケティングファネルのフェーズを意識してコミュニケーションを続け、Twitterフォロワー数は約50万人に

ー木嶋:
日頃、Twitter上でのコミュニケーションはどのような方針で行っていますか?具体的な投稿の種類や目的を教えてください。

光山氏:
dマーケットのアカウントをフォローいただいた後、ドコモの各サービスのロイヤルユーザーになっていただけるように、マーケティングファネルのどのフェーズの方に届けたい投稿なのかを意識して、コンテンツの内容を作り分けています。

まずはアカウントを知っていただくための施策として大量当選するフォロー&リツイートキャンペーンを定期的に行い、その後定着いただくための施策として毎週月曜日にdポイントをプレゼントするキャンペーンを行っています。

続けて、アカウントへの好意や愛着を持っていただくためのコミュニケーションとして、モーメント系の投稿やクイズなどの面白い切り口の投稿、dポイント・おトクな情報やサービスをご紹介する投稿を行っています。

そして最終的にドコモのサービスを推奨してくださるユーザーを増やすために、UGCを増やす仕掛け(※詳細は後述)や、ドコモのサービスに対するポジティブな声を投稿してくださった方とのコミュニケーション(お客様のUGCを引用ツイートで紹介する投稿)を積極的に実施しています。

このように、フォロー&リツイートキャンペーンやdポイントが当たるキャンペーンを継続的に行い、マーケティングファネルのフェーズ毎のコミュニケーションを意識したTwitter運用を行うことで、フォロワー数は堅調に伸び、2022年10月に47万人に到達しました(※2023年2月1日現在は約51万1千人まで成長)。

マーケティングファネルのフェーズを意識した継続的なキャンペーンの実施と投稿により、順調にフォロワー数が増加。キャンペーンの実施にはTwitterキャンペーンツール「echoes」を活用。

フォロー&リツイートキャンペーンやdポイントが当たるキャンペーンの支援をしたechoesとは?
Twitterキャンペーンの支援内容、UGC収集・検索、投稿・広告クリエイブ管理の支援内容についてはこちら

ー木嶋:
各フェーズを意識してコミュニケーションを継続することで、フォロワー数を約50万人にまで増やしてこられたんですね。これだけのコンテンツを作り続けるのは大変だと思いますが、どのような体制で運用しているんですか?

光山氏:
dマーケットのTwitterアカウントは6名で運用していますが、メインで動いているのは3名です。各サービス側が投稿したい内容を我々宛に入稿してもらい、それを我々Twitter運用担当がチェック・ブラッシュアップしてから投稿するサイクルで運用を回しています。

お客様のUGCは皆で定期的にチェックしており、紹介する投稿をピックアップしています。何らかの著作権に違反していないか?などのガイドラインを用意しており、社内の複数名でクロスチェックしてからお客様のUGCを紹介する引用ツイート投稿をしています。

フォロワー数が増えるも、インプレッションとエンゲージメントの伸び悩みが課題に

ー木嶋:
とても順調にTwitterを運用されているように見える一方で、2022年頃からはTwitterアルゴリズムの変化により従来の運用方法ではインプレッション数やエンゲージメント数が伸びにくくなってきたと伺いました。この点について詳しくお聞かせいただけますか?

アライドアーキテクツ株式会社 木嶋 諄
プロダクトカンパニー echoes事業部 SaaSチーム マネージャー

光山氏:
企業として人的リソースやコストをかけてTwitterを運用していますので、やはりそれだけの投資に見合う効果が得られないと続けることが難しくなってきます。

フォロー&リツイートキャンペーンを継続的に行うことでフォロワー数は堅調に増えていましたが、2022年頃からはTwitterのアルゴリズムが変化し、フォロワー数に比例したインプレッションやエンゲージメント数の伸びを得られなくなってきてしまいました。

「フォロワー数を増やす=情報をお届けできる人が増える」という前提に立っていましたが、ただフォロワー数を増やすだけではダメなのだと認識を改める必要がありました。

キャンペーン以外の通常投稿のパフォーマンスを月毎にプロットしたグラフ。フォロワー数の増加に比例して、1投稿あたりのインプレッション数やエンゲージメント数は伸びていないことが分かる。

ー木嶋:
私たちはさまざまな企業様のTwitterマーケティングを支援していますが、他社様でも同じような傾向が見られています。「ただフォロワー数を増やすだけではダメだ」と認識されてから、どのような方針転換を図ったのですか?

光山氏:
通常投稿のインプレッション数やエンゲージメント数が伸び悩む一方で、お客様のUGCを引用ツイートする投稿だけは、その他の通常投稿よりも平均インプレッション数、エンゲージメント数が1.5倍まで伸びていることが分かりました。それ以降、フォロワー数は1つの指標として追いかけつつも、お客様の発話量(UGC数)も重視する戦略に切り替えていきました。

「UGC数」をメインKPIに置く「Twitter運用2.0」へ

ー木嶋:
UGC数を重視した運用に切り替えてからの具体的な取り組み内容を教えてください。

光山氏:
フォロワーの方がドコモのサービスに対するポジティブな投稿をしたくなる仕掛けや工夫を施すことでUGC生成数を増やし、生成されたUGCに公式アカウントが反応するサイクルを回すことができれば、
より多くの方にドコモのサービスの魅力をお届けすることができてインプレッション数やエンゲージメント数も回復するのではと考えました。

具体的な施策の一つが、指定のハッシュタグを付けて引用ツイートすることで参加する形式のキャンペーンです。木嶋さんにご相談し、キャンペーンをお知らせする投稿の内容にサービス訴求の要素を入れることで、ユーザーの声と共にサービスの内容が拡散されていく仕組みにしました。

サービス訴求+サービスに言及した発話を促すキャンペーン形式で、顧客の声とともにサービス内容が拡散されていくように設計。クリエイティブにはカルーセル形式を採用し、キャンペーン参加方法やサービスについて画像で分かりやすく訴求した。

ー木嶋:
キャンペーン後、数えきれないほどたくさんのUGCが生成されましたね。御社ではこの施策をどのように評価していますか?

光山氏:
元の投稿を引用してツイートしていただけるので、サービス訴求の画像クリエイティブをユーザーの言葉と共に広げていただくことができてとても良かったです。我々がサービスのことを伝えるよりも、ユーザーの言葉と共に伝えていただけることで、説得力が増したと思います。また、私たちサービス提供側としても「ユーザーは日頃こんな風に楽しんでくださっているんだ」というのが分かり、大変勉強になりました。

さらに、UGC生成によって、インプレッション数やエンゲージメント数などアカウント指標の向上効果も得られました。

ー木嶋:
引用ツイートの際に添えてもらうハッシュタグを何にするかも、一緒に考えていきました。「#可愛すぎる秋アイテム」「#食欲の秋」「#お気に入り雑誌」「#dミュージック90年代推し曲」「#dマーケットで何してる」の5つでキャンペーンを開催しましたが、ユーザーさんからはどのような反応が得られましたか?

光山氏:
結果として反応が良かったのは「#食欲の秋」「#dマーケットで何してる」の2つでした。多くのユーザーにとって、Twitterはリラックスして見たい場所だと思いますので、深く考えずに投稿できるハッシュタグの方が良かったのかなと思っています。

ー木嶋:
今回の結果を踏まえて、今後どのような取り組みをしていきたいとお考えですか?2023年のTwitter運用の展望をお聞かせください。

光山氏:
今回の施策により、引用ツイートUGCは再現性をもって増やせること、それによってアカウントの各種KPIを向上させることができることが分かりました。今後はもっとこの規模を拡大し、さらにサービスサイトにまで訪問してもらえるような仕掛けを創っていきたいです。

2023年も、ドコモのサービス情報をお届けできる接点の拡大のために、これまでと変わらずフォロー&リツイートのキャンペーンは大事にしていきます。それにプラスして今回のようなUGCが生まれる仕組みや施策を取り入れ、それに公式アカウントがリアクションするサイクルを回すことで、ドコモのサービスに対するポジティブなお客様の声を増やしていきたいです。

私たち自身がサービスのことを語るだけでなく、実際のお客様の声をお届けすることで、Twitterマーケティングの新たな可能性が開けると期待しています。

ー木嶋:
これからも一緒に、さまざまな変化に適応した新たなTwitter活用方法を開拓していければ光栄です。光山さん、貴重なお話をありがとうございました!