これからの企業の成長においてDX推進が欠かせない課題と認識される中、デジタル人材開発としてのリスキリングに注目が集まっています。

そこで今回は、グロース X マーケティング編(with コラーニングアプリ)を通じてデジタル人材の育成を支援する株式会社グロース X 代表取締役社長の津下本耕太郎氏と、SaaSプロダクトの提供を通じて企業のマーケティングDXの推進を支援するアライドアーキテクツ株式会社 取締役CPOの村岡にインタビュー、DX時代のリスキリング:デジタル人材に求められるスキルと、その伸ばし方について聞きました。

爆発的に成長中!グロース X マーケティング編(with コラーニングアプリ)は、8,000名のマーケターが学ぶ土壌に

-グロース Xの事業概要について教えてください。

津下本氏:マーケティング人材育成サービスを展開しています。具体的には、グロース X マーケティング編(with コラーニングアプリ)、ビジネス側のAI人材、通称文系AI人材をつくるAI編を提供中です。2020年8月にサービスを本格開始して以来、大きな反響をいただいており、現在は約260社・8,000名のマーケターが「コラーニング」で学んでいます。

-マーケティング人材育成サービスを始めたきっかけは?

津下本氏:日本の社会人は諸外国に比べて勉強に割く時間が少なく、日本企業も社員の育成にあまり時間やお金をかけないと言われています。

でも、世の中の流れが大きく変わりゲームチェンジが起きるこの時代、自分の知識やスキルをアップデートし続けていかないと、あっという間に後れを取ってしまいますよね。

特に、マーケティングは顧客体験やビジネス全体に深く関わる領域であり、学び直すこと、学び続けることが大切であるにも関わらず、実際は局所的な理解に留まってしまっているのが現状です。

グロース Xのサービスを通じて、マーケターにマーケティングの心・技・体を体系的に学んでほしい、そして学んだことを実践しマーケティングの現場が強くなれば、必ずビジネスが伸びる。そんな信念で事業を展開しています。

株式会社グロース X 代表取締役社長 津下本耕太郎氏
システムエンジニア、アライドアーキテクツ株式会社の取締役を経て、2019年に株式会社シンクロに新規事業コラーニングアプリの事業部長として参画。2020年8月に法人化し、代表取締役社長に就任。

EC・デジタル販促・クリエイティブ制作の領域でSaaSプロダクトを展開。テクノロジーを通じて、企業のDXを支援

-アライドアーキテクツの事業概要について教えてください。

村岡:アライドアーキテクツは、SaaSツールやSNS活用、デジタル人材により企業のマーケティングDXを支援する会社です。なかでも、僕はテクノロジーを通じた企業支援に注力しており、2018年からEC・デジタル販促・クリエイティブ制作という3つの領域でSaaSプロダクトを提供しています。

-マーケティングDXの手段としてなぜSaaSなのでしょうか?

デジタル広告市場は毎年右肩上がりに伸び続けている一方、生活者からは広告が嫌われてしまっている現状にアンバランスさを感じていました。

これらの背景には、超労働集約型になっている業界構造の課題があると考えたんです。

ここ数年、媒体はどんどん増え、マーケターの業務は複雑化し続ける一方です。施策の実行に費やす時間があまりにも長く、顧客インサイトを考えたり戦略設計に使う時間を十分に取れないという調査データもあります。こうした現状が、生活者のニーズとはかけ離れた広告につながってしまっているのではないでしょうか。

僕らは、僕らの提供するサービスでマーケターが本来の業務により多くの時間を使えるようにしたい、テクノロジーの力で業界構造の課題を解決していきたいという想いでSaaSツールを提供し、日々磨きつづけています。

アライドアーキテクツ株式会社 取締役 CPO 村岡 弥真人
動画マーケティング支援ツール「LetroStudio」、UGCを活用しECの売上向上に貢献するツール「Letro」、SNSプロモ―ションツール「echoes」を提供している。

いま、デジタル人材に求められるのは「デジタルを乗りこなし、使いこなすスキル」

-DX時代に必要なデジタル人材の定義は?

津下本氏:デジタル人材としては2種類ありますよね。「そもそものデジタル化を推進できる人材=作る人」と「デジタル化されたインフラを乗りこなして最大化できる人材=使いこなす人」です。

各企業でオンライン・オフラインの統合や、色々なところに散在していたデータを統合・一元化するなどのデジタル化が着実に進んできている今は、「デジタルを乗りこなし、使いこなすスキル」がより求められるのではないかと考えます。

作る人は全員じゃなくてもいいけど、使いこなす人は多ければ多いほどいい。デジタル化というと、その言葉だけでアレルギーを起こしがちですが、別に全員がコードを書ける必要はないんです。デジタルの基礎的な構造が分かっていて、システムやツールがどう動くかの感覚を持っており、それを自分たちのビジネスにどう生かせるか。そんな感覚があれば大丈夫だと思います。

-「デジタルを乗りこなし使いこなすスキル」が育つと何が起きる?

津下本氏:今までアナログ中心だった会社がデジタルの勘所を掴むと、とんでもない変化が起きる可能性があります。

例えば、普段から店頭でお客様と接していて、お客様の機微をつかむのがうまく、商品のことをよく分かっているスタッフがデジタルを使いこなせるようになったら、CRMの質がものすごく改善したり。店頭で日々蓄積しているコミュニケーションのノウハウをチャットボットで再現したら、成果が改善したり…。

デジタルにちょっとしたアレルギーがある人が、一歩その壁を乗り越えると、すごいパフォーマンスを発揮したりするんです。

道具としてのDXがハマると、めちゃくちゃ大きな化学変化が起きる。日本は、この分野にまだまだ社会的なポテンシャルがあるのではと思っています。

村岡:DXというと、専門職・エキスパートに任せるものというイメージがありますが、本来は、以前からずっとやっていたビジネスにインフラとしてデジタルを入れようね、という話なんですよね。だから、デジタル人材って、どちらかというとジェネラリストに近いのではと感じます。

今のデジタル、特にマーケティングの分野においては、SEO、リスティング、SNS…など言葉が先行しすぎて、変にアレルギーを起こしやすい状況になってしまっているのかな、と。

津下本氏:どんどん新しい手法が出てくるから、「またかよ、疲れるなデジタル」になりがちですよね(笑)。でも、本来はビジネスとしてやりたいことを力強く推進するためのhowが生まれましたよっていう話のはず。

逆にバズワードに振り回されたり、手法自体が目的になってしまっている人は、いつか成果が頭打ちになるのではないかと考えます。ABテストをいくらやっても、そもそも良いクリエイティブを作れなかったら成果には繫がりませんよね。今は、スキルが無くても色んなテクノロジーがかなり高精度に最適化を行ってくれるので、そもそもの土台となる知識や勘所を持てるかが大事だと思います。

顧客が見えないマーケティングなんて、つまらない

-デジタル人材の「本来のあるべき姿」に対して、現状はどうなっている?

津下本氏:現状は、細分化された組織の中で目の前の業務以外をみる機会がないことが多いと思います。「木を見て森を見ず」だと、どうしても成長が鈍くなってしまいやすいのではないでしょうか。

村岡:逆に、現場の20代の若手がめちゃくちゃいいことを考えていても、トップがそれを理解できなくて「うちはそのやり方じゃない」とストップしてしまうケースもありますよね。人々の生活スタイルは確実に変わっているのに、過去の成功にとらわれてしまって顧客の今に目を向けられなくなってしまうのかな、と。

津下本氏:トップも現場も顧客から離れて心が読めなくなってしまう‥そんなのつまらないですよね。

-マーケティングはこれからどんな方向に向かうのか?

津下本氏:マーケティングの分野にデジタルの波が来て、プロモーション領域を起点に色んなhowが生まれましたが、10年かけてまたマーケティングは本質に戻ってきていると思っています。

これからのマーケターに必要な能力は、目の前の数値改善だけでなく、価値観や生活スタイルが変わった顧客をもう一度捉え直してビジネスチャンスを見つけるプロデューサー能力。「こんな面白いことしたったで!」と言いたいですよね。

「トップのコミット」と「正しい支援」の両輪で、DXは上手くいく

-DXを成功させるために、必要なことは?

村岡:デジタル化をゴールにしないこと、何のためにそれをやるのかを常にセットで考えることが必要だと思います。

例えば、テクノロジーを入れることで「今まで1時間かかっていた業務を5分にします」だけだと、最大のメリットは1時間の人件費カットだけになってしまいますよね。

マーケティングは上流から下流工程の全体を通して成果が生まれるものだから、ツールを入れて業務フローの一部だけを効率化しても、本質的なDXにはならないんです。

津下本氏:本当にそうですね。コストカットや効率改善のDXを推し進めても、空けたリソースで何を投資するか、仕掛けるかとセットにすることが大切なのであって。そうじゃないと、結局短期的に目の前の業務が改善するだけで、事業のトップラインを伸ばすことはできない。

村岡:トップがこの点を理解せず、「ツール入れたから後はうまくやっといて」と現場に投げてしまうと、誰も幸せにならないんですよね。

ここは企業のDXを支援する側の課題でもあると思っていて、
例えば、僕らが提供しているSaaSツール LetroStudioは「誰でも15分で動画が作れるツール」であり、直接的に提供する価値は「動画を作るコストや時間のカット」ですが、どんなに動画をコスパ良く早く作れたとしても、それによって事業の何を解決したいのか?顧客にとってどんな価値を生み出したいのか?がセットでないと、「動画制作ツールを入れたけど効果が出ませんでした」になっちゃうのかな、と。

だから僕らは必ず「動画制作ツールを入れることで、どんな課題を解決したいんですか?」をセットで問いかけるようにしています。

津下本氏:グロース Xも同じです。これで勉強したら必ず全員にバラ色の未来が待っているわけではないですから。「魔法の杖」としてサービスを提供するのではなく、サービスを導入して活用し継続いただくことで、どういう未来が待っているかを正しく伝えること。そしてサービスを利用する方の頭の中に絶え間なくそれをインプットし続けられるかどうかで成否が変わってくると感じています。

ツールやサービスを入れる企業のトップによるコミットと、支援会社側によるトップや現場への正しい支援の両方が揃うことが大切なんだと思います。

DX時代のリスキリングに不可欠なのは、マーケティングの本質に対する理解

-DX時代のリスキリングを、どう支援していく?

津下本氏:今はまだ、マーケティングの本質を理解してDXを推進できる人材が圧倒的に不足している状態だと感じています。だからこそ、自社のプロダクトに想いがあるけれど、まだデジタルにアレルギーがありDXを上手く推進できないような方にスキルをお渡しし、事業をバリューアップさせることで、豊かな社会づくりに貢献していきたい。みんなが幸せになって成長していけるあったかい社会を作りたい。それが自分たちの役割だと考えています。

村岡:デジタルマーケティングの領域であらゆる会社がまっとうな形でやれる世界を作りたいです。デジタル広告においては運用型=PDCAを回して改善を継続していくモデルが定着していますが、広告以外のマーケティング領域でも同じように運用型のモデルを取り入れ、顧客の反応やフィードバックをもとに改善し続けることが大切だと思うんです。

SaaSツールを通じて表面的な数値の改善を支援するだけでなく、それを通じてどんな価値向上ができるのかの本質を提案し続けること。これからもこの軸は決してブラさずに、支援を続けていきたいです。