日本、中国、台湾、シンガポール……立ち上げからわずか2年でグローバルな人気スキンケアブランドとなった「meeth」。美肌研究家のソンミさんがたった一人で立ち上げたブランドが、なぜこんな短期間にここまで大成功することが出来たのか?

今回はSNS活用を中心に企業マーケティングを支援しようとアライドアーキテクツを創業した代表取締役社長 CEOの中村壮秀が、株式会社meethの経営者としてのソンミさんに、D2C時代のブランドの在り方について、お話を聞きました。

原体験からの強烈なこだわりが唯一無二のブランドに昇華

中村:いつもは美容家としてご活躍のソンミさんですが、今日は株式会社meethの代表取締役としてお話を聞かせてください。

ソンミ氏:meethは私が自分が本当に欲しい商品を作りたい!という一心で始めたブランドなので、最初から会社としての経営とか戦略を考えていたわけではなく、無我夢中でmeethを育てているうちに気づいたら「社長」という肩書があった、という感じなんです(笑) 最近ようやく「経営」の奥深さや面白さがわかってきて、色々勉強しているところです。

中村:まずは、meethというブランドを立ち上げたきっかけについて教えていただけますか?

ソンミ氏:meethは私のコンプレックスが始まりなんです。タレントとして活動していた時代、周りにはかわいい子やスタイルのいい子がたくさんいて、自分の外見にコンプレックスを感じていたことがあったのですが、肌は白くてきれいだと褒められることが多かったんです。それで美肌を自分の武器にしていこうと決意して美容の研究をはじめました。
さまざまなスキンケアアイテムを試し、美容成分を学んで、いいものは自身が運営していたオンラインのセレクトショップで紹介したりしていました。でも、1000以上のブランドを使ってみても、自信を持って人にお勧めできる商品は片手に収まるぐらいでした。
それで、自分が本当に良いと思えるスキンケアアイテムをとことんこだわって作ろうと思い、当時はまだサロンにしか卸されていなかった炭酸ガスパックを個人向けに製品化した「モアリッチパック」を発売したのがmeethの始まりです。

中村:なるほど。コンプレックスから脱却するための美肌への強烈なこだわりがブランドの出発点なんですね。なぜやるのかが純粋だからブランドの軸がぶれずに世界観が貫けるのだと思います。
こだわりのスキンケアブランドというだけなら他にもたくさんありますが、その中でmeethがこんなに多くのファンに選ばれているのはどうしてだと思いますか?

ソンミ氏:美肌オタクの私が妥協せずに成分や製法にとことんこだわって、自ら製作にも関わっているところが、他のブランドと少し違うところかなと思います。商売を考えたら儲からないし、プロデュース的には手間をかけすぎている。ブランドを立ち上げたばかりの頃、商品の原価をかけすぎて広告宣伝に使える予算がなくなってしまったぐらいです(笑)
それで、自分でインスタグラムのライブ配信で宣伝してたんですが、最初は視聴者が15人ぐらいしかいなくて、それでも毎日毎日配信を続けていました。私は、人がやらないような面倒くさいことを頑張るからこそ、人がまねできないような結果につながると思うんです。

こだわりへの「共感」こそがブランド急成長の推進力

中村:広告宣伝ではなく商品やコンテンツに予算を使うというmeethのやり方はそこから始まったんですね。ソンミさんは元々インフルエンサーとして活動されていたこともあって、SNSの活用がとてもお上手ですが、meethではどんな発信をされているんですか?

株式会社meeth 代表取締役 ソンミ氏

ソンミ氏:SNSでは成功も失敗もドキュメンタリーのようにすべてお見せすることで、meethの商品に込めた思い、製造に対する想いをお伝えしています。

たとえば、化粧品の製造自体は専門の工場にお願いするんですが、その工場も私が自分で見つけてきて現地に足を運び直接交渉しています。OEM生産というと普通は工場と1、2回打合せをして1ヶ月ぐらいで完成させるらしいのですが、例えばmeethのクレンジングは工場の方と相談を重ね、2年かけて一緒に開発製造しました。完成した時には工場の方が泣いてくださったんですよ。本当にいいと思うものを一緒に作りましょうということを実践したから、OEM先の工場の方々のモチベーションも全然変わって、本気のモノづくりをしていただけたんです。

こういう「メイドインジャパン」の「本物志向」な製造過程や、そこに携わってくださっている「職人気質」な皆さんを全部SNSで紹介しています。ここまで見せているのはmeethが初めてじゃないでしょうか。

meethのSNSの公式アカウントはそんなにフォロワーは多くないんですが、熱量の高いファンの方が多くいらっしゃるんです。

中村:狭いけど深い、まさにファンベース(※)ですね!meethの社員の方も全員ファンからの採用だとお聞きしたのですが?

(※)社外・社内にファンを作り、ファンを基盤にして経営やマーケティングを行っていく考え方

ソンミ氏:はい、弊社の採用はすべてインスタグラムからなんですが、2名の募集に4~500名ぐらいご応募いただいたりしました。採用したスタッフは今、リアルにmeethの世界観が体験できる「meeth touch up lab」というショールームで直接お客様と接してもらっています。彼女たちはファンからスタッフになってもらったので、もちろんmeethへの愛情が深いですし、ファンの気持ちがわかるコミュニケーションをしてくれるので、彼女たちにもファンが付き始めています。

中村:ソンミさんの美肌へのこだわりが共感を呼び、共鳴する仲間が増えていっている感じですね。

海外進出への挑戦と「広告宣伝」に対する考え方の変化

ソンミ氏:meethはまだ足元を固めていかないといけないフェーズなので、すでにファンになってくださっている方を中心に深く濃いコミュニケーションに力を入れていますが、一方でもっと多くの方に知っていただきたいという気持ちもあります。元々、日本だけでなく、アジアのすべての女性の肌を美しくしたいという思いもあるので、海外展開ももっと進めていきたいと思うと、葛藤はありますね。

アライドアーキテクツ株式会社 代表取締役社長 CEO 中村 壮秀

中村:弊社が初めてご支援させていただいたのは2020年の3月でしたが、その時は中国進出のお手伝いとして在日中国人女性に商品体験をしていただくオフ会の開催でしたね。

ソンミ氏:中国へは2019年の秋ごろからアプローチしていたのですが、日本国内向けのマーケティングとは全然違っていて、自分たちだけでは効果的な進め方がわからなかったんです。そこでまずは中国人女性に meethを知っていただき、使っていただく、好きになっていただくことから始めました。美肌へのこだわりは中国人女性にも共感していただけましたし、商品の良さもご理解いただけて、中国進出に本格的に取り組む自信になりました。

中村:弊社のスタッフもみんなmeethのファンになってましたね。ブランドに関わる人がみんなmeeth愛でつながってチームになっていってますね。

国内では広告を出稿していなかったmeethですが、中国向けには広告にもチャレンジされたんですよね?

ソンミ氏:日本と中国ではメディア環境の違いが大きく、中国SNSでの情報発信、特に立ち上げのタイミングではある程度の広告が必要だということがわかったので、こだわりのコンテンツをしっかりお伝えしたい人に届けるために「広告」も活用しました。実際に中国向けの広告出稿をしてみて、改めて「広告」の力というものを感じたこともあり、国内でも次のフェーズに行くために「広告」を使ってみることが必要なのではないかと考えるようになりました。

中村:なるほど、日本ではすでにある程度のファンベースを構築出来ていたからこそ、「広告」ならではの効果に期待することが出来たのですね。

ソンミ氏:はい、ただ、それまでmeethが宣伝広告をしてこなかったことに共感してくれているファンの方もいらしたんです。それまで成功も失敗もドキュメンタリーのようにすべてファンに見せてきたブランドなので、宣伝広告を始めることも事前にファンの皆さんにお話しておきたくて、インスタライブで「meethをもっと有名なブランドにするために、これからは広告もやっていきます!」ってご報告したんです。ファンの皆さんに怒られるかも…嫌われるかも…と思ったら涙が出てきてしまって、泣きながら配信しました(笑)
でもそんな私の姿を見て、ファンはみんな分かってくれたようで、「meethが大きくなっていくのは嬉しい、こういう風に先に言ってくれたのも嬉しい」と言ってくれました。

株式会社meethの経営者として目指す世界観

中村:先ほど「日本だけでなく、アジアのすべての女性の肌を美しくしたい」とおっしゃっていましたが、meethは今、台湾やシンガポールでも販売されて大人気ですね。2年でここまでのブランドに育て上げたら、経営者として楽しくて仕方ないのではないですか?

ソンミ氏:meethを経営していて一番幸せなのは「ありがとう」と言われることなので、そういう機会が増えているのはうれしいことです。もちろん今も楽しい瞬間はありますが、経営者としてはブランドが成長するほどプレッシャーも大きくなりますし、大きな意思決定をしていかないといけない場面も増えて、経営者は孤独と言われる意味が少しわかるようになってきました。

中村:ブランドを立ち上げてすぐに海外へも展開するなど、とても大胆な決断をされているように見えますが?

ソンミ氏:私、実は結構臆病なんです。最初の頃は商品を作るための借り入れをするのですら怖くて、自分の貯金をはたいて、足りないところは予約販売で先に入金していただいたお金を当てて…といったような状態だったので、最初は「リスクをとりたくない」という気持ちが強くて、確実に売れる物を売れる数だけを作るというのを続けていました。
売り切れる分だけを作っていたので当然毎回完売が続いていたんですが、それが結果的に渇望感につながって、気になるけど手に入らないとSNSで話題になり、自然発生的に「ほしい!」というクチコミが増えていきました。また、meethは広告を出さない、ギフティングをやらないというイメージが出来ていたので、芸能人や有名人の方のおすすめもオーガニックな情報として影響力がありました。

中村:それはとても今っぽいエピソードな気がします。経営者の在り方が変わってきていて、これからはサスティナブルな経営が求められていく時代です。臆病だからこそ用意周到になって、絶対売れるように工夫して、結果うまくいくという経営はそういう流れにマッチしていると思います。そして、先ほどの広告の件にしろ、今の生産調整の件にしろ、ソンミさんはとてもストイックだと思います。
売れるものではなく、本当に良いものを作りたいという想いからスタートして、ファンと向き合い、ひたすらに商品を磨き、妥協しない。その価値を理解しているファンがブランドの成長を後押ししてくれている…ソンミさんはD2Cブランドを作ろうとしたわけではないけれど、結果としてmeethは本当の意味でとてもD2Cらしいブランドになったわけですね。

ソンミ氏:量より質の方針を貫き通しているというのはありますが、マーケティングありきではない分、成功の再現性は低いかもしれません。今後立ち上げる新しいブランドすべてが、これまでのmeethのやり方で成功できるとは思ってないです。ブランドによってはしっかり広告宣伝に取り組んだり、やり方を変えていくつもりですが、美肌へのこだわりをアイデンティティーとして守り抜くことで、ブランドに共感していただける自信はあります。

今もちょうど「&meal(アンドミール)」という新しいフード事業を立ち上げようとしているんです。食べるものでカラダの中から美肌を作るという、meethの美肌コンセプトをコスメ領域以外に広げる新たな挑戦です。今後はmeethグループとして新しい事業に取り組み、アジアを代表するブランドにしたいと思っています。