時代が理論に追いついた? マスメディアの一方的な情報流通から、生活者同士の情報交換によって生まれる「共感」が消費を左右する時代、生活者から「信頼」されることは企業にとって重要課題になりつつあるといえます。そのためにソーシャルメディアの活用が必然となってきている今、顧客や潜在顧客とのコミュニケーションを考えるにあたって、ぜひご参考いただきたいのが「アドボカシー・マーケティング」です。



こんにちは、SMMLabの藤田です。
「アドボカシー(advocacy)」とは、「支援」「擁護」「代弁」などの意味。顧客との強固な信頼関係を築くことを目的に、顧客の意向を最優先し、徹底的に顧客本位で接する、信頼ベースのマーケティング手法が「アドボカシー・マーケティング」です。今日は、2006年に刊行されたアメリカ・マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院グレン・アーバン教授の著書「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」で提唱された「アドボカシー・マーケティング」から、「徹底的な顧客第一主義」の本質を見直してみたいと思います。
本著が書かれたのは2006年ですが、「A理論(アドボカシー戦略)に移行するには、まだ5〜10年かかるかもしれない。だが、世界はもはや昔の世界ではない。現在ではまだ急進派とみなされるかもしれないが、近い将来、A理論はマーケティングの主流となるに違いない」として書かれた内容が、驚く程に今の時代にマッチしていることがお分かりいただけると思います。
アドボカシー・マーケティングを一言で言えば、「顧客第一主義」となりますが、それは「お客様は神様です」といった言葉で押し付ける一方的なマーケティングではなく、信頼され、選択される関係を構築するための企業努力に他なりません。『企業主導』ではなく、徹底的に『顧客主導』な考え方に転換することが必要とされるのです。まずは、「アドボカシー・マーケティング」の基本的な考え方を見てみましょう。
 
 

アドボカシー・マーケティングの7つのルール



1)顧客を支援せよ
アドボカシー理論で一番大切なのは、顧客の消費活動を支援することです。顧客利益を忠実に代弁するために、企業が顧客や見込み客に対して、あらゆる情報を包み隠さず提供することから始まります。透明性を確保し、自社ブランドを「信頼」の目印にすることを目指します。
 
2)優良製品へ重点的に投資せよ
自社が参入している分野において、まず、競合他社以上に優れた商品サービスであることが求められます。ソーシャルメディアによって「真実はいずれ顧客に知り尽くされる」ことが現実となった今、顧客に対して誠実であるには、自社の製品やサービスの欠点すら隠すべきではありません。
 
3)価値を創造せよ
もし自社の製品・サービスが大幅な値引きをしなくては売れないとしたら、それは元々の価格に見合った品質を提供していないということ。顧客が求めているのは価格に見合った「価値」であり、必ずしも一番安いものではないことを知るべきです。アドボカシー戦略によって信頼関係が築けていれば、正当な「価値」を継続して提供することで、消費者に「この企業の製品・サービスは安心して選択出来る」と評価されるのです。
 
4)顧客とともに製品を作れ
「価値」を重視するためには、顧客にとって何が「価値」なのかを理解することも重要です。そのためにも顧客との密接な協力関係を築く必要があります。自社の新製品の参入チャンスを評価する際は、既存の市場調査よりも顧客とともに活動すべきです。
 
5)完全に実行せよ
企業は、顧客との約束を実行し、信頼を守り、高めていかなくてはなりません。信頼とは、獲得するのは難しく、失うのは簡単です。出来ない約束をしてはいけませんし、信頼を維持する努力を怠ることは出来ません。
 
6)顧客にとって優良企業であれ
「顧客を自社の<優良顧客>にするには」ではなく、「自社が顧客にとっての<優良企業>になるには」を自問しましょう。目先の利益に引きずられて顧客の長期的利益を損ねてはなりません。長期的に互いの利益となる関係構築を目指しましょう。
 
7)顧客との長期的な信頼関係を測定せよ
信頼度は、長期的な利益や投資対効果と重要な相関を持ちます。アドボカシー理論では製品・サービスの「優位性」と「価値」を重視し、顧客との関係性を評価します。「信頼」や「ロイヤリティー」という長期的な指標を用いることで、継続的な利益の最大化を狙うのです。
 
アドボカシー・マーケティングでは顧客の「信頼」を得ることが最大の目的であり、(7)の信頼関係の測定は、現在ソーシャルメディアマーケティングの課題とされている「効果測定」の基礎ともなり得る指標だと考えられます。あなたの会社が今、顧客の「信頼」を勝ち得ているかどうか、ぜひ以下の8つの質問について考えてみてください。
 

自社は「信頼」を勝ち得ているか?信頼評価8つの質問



1)透明性
あなたの会社は顧客に対して、どれほど正直に情報を公開しているか
2)製品・サービスの質
あなたの会社は、自社製品を心から顧客に推薦できるか
3)インセンティブ
あなたの会社の社員には、「顧客を本気で支援する」というインセンティブ(動機)があるか
4)顧客とのパートナーシップ
あなたの会社は、顧客との間に協調的な互恵関係を結んでいるか
5)顧客との共同開発
あなたの会社は、顧客との協力を通じて、自社と顧客の双方に利益をもたらす新しい製品やサービスを生み出しているか
6)製品比較やアドバイス
あなたの会社は、顧客の製品選択に役立つような公平なアドバイスを提供しているか
7)サプライチェーン
あなたの会社のビジネス・パートナーも、あなたの会社と同じくらい信頼に値するか
8)アドボカシーの浸透
あなたの会社のあらゆるレベルや部署で、アドボカシーや信頼が生み出されているか
 
いかがでしたでしょうか? 「顧客第一主義」のマーケティングは今に始まったことではありませんが、その考え方、手法はソーシャルメディアの隆盛を迎え、さらに重要性を増しています。
SMMLabでは、過去にも「顧客第一主義」についての実例としてアメリカのネット靴店「ザッポス」についてご紹介しましたが、その「ザッポス」のマーケティングの一番のキーワードが「アドボカシー」であると言えます。
参考記事:ソーシャル時代のマーケティングに本当に必要とされること
~急成長の米ネット靴店ザッポスに学ぶ~
http://smmlab.jp/?p=174
 
このように「アドボカシー・マーケティング」は、ソーシャルメディアによって発信するパワーを持った消費者と、如何にコミュニケーションするか、自社のファンに育てていくにはどうしたら良いかといった、FacebookやTwitterで実現すべき関係性の構築にも基礎となるべき考え方であることがお分かりいただけたかと思います。
 
出典:「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」
グレン・アーバン (著), スカイライトコンサルティング (監修), 山岡 隆志 (翻訳)
英治出版 (2006/11/14)
 
 
 
ソーシャルメディアマーケティングラボでは、今日ご紹介した「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」の訳者であり、ご自身でもグレン・アーバン教授とともに研究・実践を手掛け、「顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング」を上梓されている、日本の 「アドボカシー・マーケティング」の第一人者、山岡隆志氏に「アドボカシー・マーケティング」をわかりやすく解説していただき、ソーシャルメディアマーケティングに応用する方法をご教授いただくセミナーを開催することになりました。
詳細とお申し込みはこちら
http://www.aainc.co.jp/seminar/
 
当日は山岡氏の他にも、2社の企業マーケティング担当者をお迎えし、ソーシャルメディアマーケティングを成功させるための実践的なヒントをお聞きします。また、登壇者も交え、参加者の皆様と一緒にソーシャルメディアマーケティングを語らう懇親会もご用意しておりますので、ぜひ奮ってご参加下さい!日頃SMMLabをご愛読いただいている皆様とソーシャルメディアマーケティングラボとして直接お会い出来ることを楽しみにしております。
 
ソーシャルメディアマーケティングラボ セミナー
『ソーシャルメディアで愛される企業になるための秘訣』
〜Facebookページ タイムライン化後のコミュニケーション戦略〜
■日時:2012年6月13日(水)
第一部:16:30-18:45(16:00受付開始)
・株式会社エイチ・アイ・エス 事業開発室 室長
山岡隆志氏
「ソーシャルメディア時代のマーケティング」
・チロルチョコ株式会社 取締役 松尾裕二氏
「チロルチョコのソーシャルメディア活用術」
・株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
マーケティング部 部長 中澤伸也氏
「ソーシャルメディアマーケティングの実践と現実」
第二部:18:45-20:45 懇親会
軽食とお飲物(アルコール含飲み放題)をご用意いたしております。
■場所:渋谷 FORUM8 773会議室
詳細とお申し込み
http://www.aainc.co.jp/seminar/
 
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~急成長の米ネット靴店ザッポスに学ぶ~
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・ソーシャルメディアマーケティングラボセミナーレポート
『ザッポス伝説』本荘修二氏「ザッポス流”超顧客主義”逆転発想経営とは」
http://smmlab.jp/?p=316

・SMMLabセミナーレポート:女性ブロガーに聞いた!
企業のソーシャルメディアマーケティングに対する意識・本音大公開
http://smmlab.jp/?p=2989