日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?
ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。
第三回は「ジオフェンシング」です。

用語説明

ジオフェンシング(Geofencing)

地図上にバーチャルなフェンスを設置する技術のこと。
特定のフェンスの中に特定のユーザーや特定のモノが出入りした時に、システムからメッセージを送るなど、「モバイル端末のGPS機能」を活用し、予め決めた処理を自動的に行うシステム。例えば、この技術を使えば、行動範囲として定めたフェンスの外に子供が行くと自動的に親にメールを届けることも可能となる。

解説

スマートフォンの急速な普及にあわせて期待が高まる「位置情報のマーケティング活用」。その中でも、ユーザーの負担がなく、実用性が高いとして注目を集める技術が「ジオフェンシング」です。

企業による位置情報のマーケティング活用が進む

スマートフォンの普及にあわせ、企業による位置情報のマーケティング活用が進んでいます。

従来よりGPS等のモバイル位置測定機能を活用した「位置情報サービス」は多数存在しており、代表的なサービスはFacebookのチェックインや、モバイルアプリケーションである 『foursquare(フォースクエア)』です。
いずれも、ユーザーによる「チェックイン」を通じて、その周りの友人に今自分がいる場所を知らせたり、店舗から割引クーポンを入手する機能を備えています。
また、『foursquare(フォースクエア)』には、同じ場所に何度もチェックインすることでバッジをもらえるゲーミフィケーション要素もあります。

これらの機能は、企業のマーケティング活用の観点から考えると、自分の店に来店したユーザーにチェックインしてもらうことでその周囲の友人への認知を広げる効果や、チェックインクーポンをきっかけにした新規の来店効果、またチェックインしたユーザーの属性を把握できるというメリットがあると言えます。

また、そもそもの「位置情報」をゲームにしているサービスも存在します。
チェックインでポイントをため、オリジナルの街を作れる『MYTOWN』や、『コロプラ』がそれに該当します。
これらも企業とのタイアップが進んでおり、バーチャルのゲームと、企業によるリアルイベントを連動させた試みが行われています。

「自動化」が特徴のジオフェンシングに注目が集まる

一方で、これらの従来からある位置情報サービスは、基本的には「チェックイン」等、ユーザーによる何らかの能動的なアクションが必要とされていました。また、ユーザーがサービスを利用する目的としては、友人とのコミュニケーションや、個人的なライフログとして、またゲームを楽しむこと等がメインとなっています。
これに対しジオフェンシングは、ユーザーがある特定の場所(フェンス)の中に出入りすると、「自動的に」アクションが起こるシステムであるため、より実用的なシーンで活用できると期待されているのです。

例えば、ジオフェンシングの技術を使うと以下のようなことが実現できるとされています。(はてなキーワードより)

  • 自動車の盗難防止(自分の自転車がフェンスの外に持ち出された場合に自動的にアラートを出す)
  • 社員の勤怠管理システム(社員がフェンスの中に入ったら自動的に出勤扱いとする)
  • 最寄り駅の改札を出ると自宅のエアコンを作動させる
  • 家を出ると自動でマナーモードになる
  • 店舗の近くにいる顧客に販促情報を送る(顧客が店舗付近フェンス内に入ったら、自動的に販促情報を送る)

尚、先にご紹介した『foursquare(フォースクエア)』にも今年の初めに”Explore”というリコメンデーション機能が追加されています。これは、ユーザーの過去の行動履歴を参照し、他の嗜好が似たユーザーや友達のデータベースと照らし合わせ、あるスポットに近づく等の条件がそろった時に、「自動的に」リコメンド通知を行うというもの。
また、『shopKick』というサービスでは、ユーザーが店の中に入ったり、また試着をしたりすると自動的にポイントを付与し、実際に購入したらポイントを獲得できる機能が提供されています。(追記:こちらのサービスはジオフェンシングとは異なり、店舗に人の耳には聞こえない超音波を発信するデバイスを設置、モバイル端末のアプリがその音を拾うことによって実現されているものですが、ジオフェンシングと同様「自動化」されているものとしてご紹介します。)

このように、ユーザーによるライフログとしての利用や、友達とのコミュニケーション、ゲームという枠を超えた位置情報の活用に注目が集まっています。

プライバシー保護や、そもそものGPS技術の問題も

しかしながら、そもそも位置情報はきわめて高度なプライバシー情報であり、取扱いを間違えるとプライバシーを侵害する恐れや、ユーザーから「常に監視されている」と嫌悪感を抱かれる可能性があります。
また、ジオフェンシングを活用するためには常に位置情報をonにしなくてはならないので、端末の電池の消耗が激しく、現在のモバイル機器ではなかなか対応しきれないという問題もあります。さらに、そもそものGPS技術の精度がそこまで高くなく、どこまでマーケティングに活用できるのかという議論もあるのが現状です。

モバイルマーケティングはますます重要度を増す

以上のような課題・懸念点がありながらも、誰もがモバイル端末を持ち歩き、特に、高度な技術を持つスマートフォンが急速に普及してきた現在、「ジオフェンシング」を始めとした位置情報のマーケティング活用には大きな可能性があると言えます。

今後は、モバイル端末を用いた決済システムもより高度に成長していくでしょう。例えばジオフェンシング技術と連動して、「あるお店に入り、食事のメニューを頼んだ後、お店から出る際に自動的に決済される」といったシーンも出てくるかもしれません。また、位置情報を始めとした「モバイル端末から得られるデータ」も「ビッグデータ」として解析が進んでいくでしょう。
企業にとって「ジオフェンシング」を始めとした「モバイル」ならではの新しい技術が、今後のマーケティングの重要なテーマになることは間違いなさそうです。

イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ