視認性が高く、優れたパフォーマンスが期待できる「動画コンテンツ」。昨今そのマーケティング施策への活用が進んでいます。
特に、ショートムービー特化型SNS・TikTokの台頭、Instagramリール機能のリリースなど、各種プラットフォームの動画化も加速。SNSを中心として、動画はユーザーにとって馴染みのあるものとなっています。

今回は、そんなSNSの動画マーケティングについて、注目企業の成功事例・活用事例をご紹介しながら、SNSアカウント運用における動画活用に焦点を当ててそのポイントを解説していきます。

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いま動画コンテンツをSNSアカウント運用に活用すべき3つの理由

SNS投稿に、動画コンテンツを活用すべき理由は大きく以下の3つです。

①動画コンテンツそのものの優位性

そもそも、動画コンテンツにはマーケティングコンテンツとして優れている点がいくつもあります。

ⅰ)伝えられる情報量が多い

動画は静止画やテキストと比較して、圧倒的に伝えられる情報量が多いフォーマットです。例えば1分間の動画の場合、文字にしておよそ180万ワード、WEBページにすると実に3,600枚分の情報量を詰め込むことができると言われています(※1)。

ⅱ)目をひきやすく、記憶に残りやすい

動画は動きのあるコンテンツなので、人間の本能として静止画よりも視覚的な注意をひきやすい、視認性が高いフォーマットです。
そして、動画は一般的に人の記憶に残りやすいと言われています。これはアメリカの国立訓練研究所による「ラーニングピラミッド」という理論でも提唱されおり、人の学習の定着率は、オーディオビジュアル(動画)を用いた場合、テキストの場合の2倍高いと言われています(※2)。

ⅲ)拡散されやすい

視認性が高く印象が残りやすい動画は、SNSでの拡散も期待できます。2013年にイギリスで行われた調査では、動画は記事コンテンツと比べて、シェアしたことがある人の割合が高いという結果になりました。同時に、知り合いによってシェアやいいねされた動画の方が、より視聴する可能性が高いという結果も出ています(※3)。

②動画接触環境の変化

スマートフォンの普及やインターネット通信環境の改善により、生活者のモバイルでのコンテンツ接触機会は増え、動画の様な通信負荷の高いコンテンツの視聴ストレスも軽減されつつあります。
その結果、生活者のスマートフォンを利用した動画視聴時間は年々増加。ニールセンデジタル株式会社によると、2015年6月から2019年6月までの5年間で、スマートフォンからの動画視聴は約4倍に伸びています(※4)。

スマートフォン上での「ビデオ/映画」カテゴリー 1人あたり月間利用時間の推移
画像引用:ニールセンデジタル株式会社

また、この動きは、5G時代の到来によって今後益々加速すると予測されます。

5Gとは、第5世代移動通信システムの略称で、携帯電話などに使われる最新の通信規格のことです。5Gが広く浸透すれば、インターネットの通信速度は速くなり、ゲームや動画など容量が大きいデータのやりとりを、よりスムーズに行えるようになります。

通信に負荷が高い動画コンテンツも、5Gの完全普及によって今以上にスムーズに視聴できることが期待されており、ますますそのニーズは高まっていくと予想されます。

③メディアの動画化による動画コンテンツの浸透

またこうした時代の流れに応えるように、各種SNSプラットフォームでも、動画化の動きを強めています。
例えば、ショートムービー投稿に特化したSNSプラットフォーム「TikTok」の台頭は周知の通りでしょう。グローバルでのユーザー数は2020年4月の時点で8億人となっています(※5)。

また、今年の5月にはFacebook社はInstagramにおいて、ショートムービーに特化した新機能「リール」の提供を正式に開始しました。この「リール」は15秒の短尺動画を、様々なエフェクトを駆使して編集、投稿ができる機能です。 「リール」を使えば、よりエンターテイメント性の高いオリジナルムービーを投稿することが可能です。

Instagramリール機能の概要はこちらの記事で解説しています。ぜひご覧ください!
【Instagramのショートムービー特化機能】Instagramリールとは?

LINEでは、動画を活用した広告フォーマットの拡充に力をいれています。LINE株式会社によるイベントLINE Direct Day」(2020年7月29日開催)では、同社のマーケティングソリューションカンパニー/カンパニーエグゼクティブの菅野圭介氏が、「LINE広告において現在動画フォーマットを拡充している。全国的な外出自粛期間においてユーザーの動画反応率は顕著に上昇しており、動画広告配信在庫も10月頃までに2倍になる予定」と語っています。

「LINE Direct Day」の詳細はこちらからお読みいただけます!
【LINE×ダイレクトマーケ】オルビス、エーザイ、I-ne、バンダイナムコエンターテインメントなど6社が実践、成果につながるLINE活用法とは ~「LINE Direct Day」イベントレポート~

このように、情報伝達や視認性、ブランド想起・拡散性などの点から優れたフォーマットである動画は通信環境の改善や各種デバイスの進化によって、そのニーズが高まっています。
そして、各種SNSプラットフォームでも動画化の動きが進み、SNSユーザーにとっても動画は馴染みのあるクリエイティブとして浸透しているのです。

そのため、SNS公式アカウントの投稿に「動画」を上手に取り入れることによって、ユーザーに対して効果的な情報伝達や、商品・ブランド理解などを行うことができ、より充実したアカウント運用施策に繋がると言えます。
SNS公式アカウント運用に、今動画コンテンツを活用したいのはこのためです。

動画コンテンツをSNSアカウントに活用している注目事例10選

では実際に動画コンテンツをSNSアカウント運用に活用している注目の企業アカウントをご紹介していきます。

1.商品の使い勝手やポイントをわかりやすく解説:コクヨのぶんぐ(コクヨ株式会社)

大手文具・事務用品メーカー、コクヨ株式会社のInstagramアカウント「 コクヨのぶんぐ」では、フィード投稿に効果的に動画を活用しています。

商品の使い勝手や、その特長を伝えるのは、写真だけでは難しいこともあります。コクヨのぶんぐの公式アカウントでは、商品紹介の投稿に写真と一緒に動画を掲載。実際に商品をつかってみた様子や、商品の特長について分かりやすく伝えています。

2.静止画を動画にすることで:共立食品株式会社(共立食品株式会社)

動画活用を考えた時に、動画をどのように撮影するかについて頭を悩ませる企業も少なくないでしょう。
しかし、たとえば既に持っている静止画のクリエイティブでも、つなぎ合わせて動画化することで、コンテンツに動きを持たせ視認性を高めることができます。

製菓用材料やパン材料などを販売する食品メーカー 共立食品の公式Instagramアカウントでも、公式アカウントの投稿コンテンツに動画を使っています。

同社は料理写真をつなげた動画で躍動感を持って伝え、よりユーザーの興味や「作ってみたい」という気持ちを刺激した投稿をしています。
また、例えば「重曹とベーキングパウダーの違い」など製菓に関する知識も、静止画を組み合わせた動画にすることでより分かりやすく伝えることに成功しています。

3.UGCを活用しながら効率的な動画コンテンツ運用:ロゼット(ロゼット株式会社)

また動画制作に使用する静止画クリエイティブは、自社で撮影した素材を用意しなくても、動画を作ることが可能です。

洗顔などスキンケア商品などを中心に展開している化粧品メーカー・ロゼット株式会社のInstagramアカウントでは、顧客の投稿した静止画UGCを素材として使用した動画を投稿しています。(注※投稿した顧客に対し動画の使用許可を取得しています。)

UGCを動画の素材に使うことで投稿制作の負担を軽減するだけでなく、静止画UGCを動画に活用することで、興味喚起や共感性の向上にも成功。リアルな口コミにを活用した効果的な商品・ブランド訴求を実施している事例です。

4.ユニークな動画コンテンツでファンを作るアカウント運用:ドミノピザ公式(株式会社ドミノ・ピザ ジャパン)

また、親しみのある動画の投稿によって、フォロワーを楽しませ、アカウントのエンゲージメントやブランド好意度の向上に繋げることができます。

同社の商品の写真やイラストなどの投稿を促す「#映えドミノ」キャンペーンの実施など、ユニークなInstagram活用施策を行なっている株式会社ドミノ・ピザジャパン。
同社の公式Instagramアカウントに投稿されている動画コンテンツもそのセンスがひかるユニークなものです。

例えば、食べ残して冷凍したピザのアレンジ方法を紹介する動画や、ピザの視点で上からチーズが降りかかる様子を撮影したものなど、ユニークな発想で親近感のある動画を投稿。
作りこんだ動画でなくとも、手軽に撮影した動画で、SNSアカウントを通じてユーザーのエンゲージメントを高め、ブランドのファン作りに繫げられている事例です。

5.各種プラットフォームで動画コンテンツをフル活用:LOVOT(GROOVE X株式会社)

「ロボティクスで、人間のちからを引き出す」をミッションに、LOVEをはぐくむ家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発・販売を行なっているGROOVE X株式会社。同社ではInstagram、Twitter、LINEなど各種SNSプラットフォームにて動画コンテンツをフル活用しています。

同社の商品である「LOVOT」はこれまでになかった新しい商品であり、「LOVOTがいる生活」のイメージを喚起して購入意向の引き上げを効果的に行うためのマーケティング施策は重要です。その点において、同社は動画コンテンツが高いパフォーマンスを発揮することを実感し、ユーザーとのあらゆるタッチポイントで動画コンテンツを活用しているのです。

GROOVE Xの動画コンテンツ活用施策についてはこちらのインタビューもご覧ください!
「LINE上で商品理解を促すには動画が最適」静止画を上回る成果を実現した、次世代家族型ロボット 「LOVOT」の動画施策とは?|Letro Studio

6.企業姿勢を動画にして分かりやすく訴求:株式会社 明治 / meiji(株式会社明治)

また、昨今は顧客との繋がりを維持し、その関係性の中で売り上げを最大化していくLTV(=顧客生涯価値)の大切さについて注目されています。
そのLTVの向上につながる施策として無視できないのは、顧客に企業姿勢や企業理念を理解してもらうことです。

LTVって何?どうして大切なの?を分かりやすく解説しています。
「LTV」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!

大手食品メーカー株式会社明治のTwitter公式アカウントでは、動画を企業姿勢や理念を伝えるためのコンテンツとして活用しています。

動画では同社の食に対する考え方や、取り組みについて紹介されています。テキストや静止画だけでは硬い印象できちんと読んでもらいにくそうなコンテンツでも、キャッチーな動画の体裁にすることで効果的に伝えている事例です。

7.社員でつくる動画、1000投稿を達成:株式会社カスタネット

「動画を投稿すること」そのものを企画とし、自社のブランド訴求や印象につなげている企業アカウントもあります。

法人向けにオフィス家具・事務用品、防災用品、専門工具等を販売している株式会社カスタネットの公式Twitterアカウントでは、同社の社員自らが作った動画の1,000投稿を達成しました。

動画は、同社の商品を紹介するものや企業情報、社員の日常など様々。しかし、自分たちの手で1000個もの動画を作り、継続的に投稿し続けるという真面目さが伝わるこの企画は、オフィス用品という信頼が大切な商材を扱っている同社のブランドイメージ向上も寄与しています。

8.アイキャッチになるGIF動画を活用して掃除の知識や商品情報を発信: 花王 マジックリン(お掃除全般):花王株式会社

静止画をつなぎ合わせて作られたGIF動画をTwitterアカウント運用に活用することも有効です。GIF動画は、通常の動画よりも手軽に制作でき、再生不可が少なくスムーズに動くため、すぐにスクロールされてしまいがちなTwitterのタイムライン上においても視認性が高く、ユーザーの興味関心ひきやすいメリットがあります。

大手消費財メーカ花王が運営している、同社のおそうじ用品をまとめた公式Twitterアカウント・ 花王 マジックリン(お掃除全般)でも投稿にGIF動画を活用した投稿を行なっています。

商品に関する情報やお掃除の豆知識などを発信する同アカウントでは、商品に関連した投稿に、GIF動画を使用。
サクサク動いて目に止まりやすいGIFを使うことで、商品の使い方のポイントや、優れている点などをわかりやすく、効率的に伝えています。

9.商品の使い方やレシピをSNSに適した動画で発信:ストウブ(ツヴィリング J.A. ヘンケルス ジャパン株式会社)

動画クリエイティブは、静止画と比較して、商品の魅力や利用イメージを具体的に伝えることができます。そして、それを適切に届けるためにには、ユーザーがSNS上で目をとめ、視聴してもらえるような動画コンテンツにすることが大切です。

鋳物ホーロー鍋とセラミック製品などを販売している調理器具メーカー・ツヴィリング J.A. ヘンケルス ジャパン株式会社のブランド 「ストウブ」の公式Twitterアカウントでは、SNSにあった動画構成によって、商品の魅力を効率的に伝えています。

例えば、同アカウントが投稿するレシピ動画にはレシピ名や完成イメージ、どんな商品紹介なのかがわかる要素が動画の冒頭に置かれています。コンテンツの流れが早いSNSのタイムライン上において、「どんなレシピを紹介しているのか」について一目で伝え、ユーザーの興味を喚起し、動画視聴につなげている事例です。

10.キャンペーンのクリエイティブにも動画コンテンツを活用|カンロPR【公式】(カンロ株式会社)

また、SNSアカウントへのフォロワーを増やす目的や、ユーザーとのコミュニケーションを目的として、自社のアカウントを起点としたSNSキャンペーンに取り組んでいる企業も多いでしょう。このSNSキャンペーンのクリエイティブにも動画コンテンツは有効です。

飴やグミなどを中心とした商品の販売を行なっている大手食品メーカーカンロ株式会社では 同社の公式Twitterアカウントで実施しているフォロー&リツイート型のインスタントウィンキャンペーンのクリエイティブに動画コンテンツを使用しています。

思わず拡散したくなるようなひとひねりある動画コンテンツをキャンペーンビジュアルに使用することで、キャンペーンの参加を促進。また拡散先での話題化も見込め、商品やブランドについての強い印象を持たせるキャンペーン設計を実施しています。

動画を活用したSNSアカウント運用を成功に導くポイント4つ

ここまで、公式SNSアカウント運用に動画を活用している事例をご紹介してきました。 これらの事例からもわかる通り、SNSアカウント運用への動画活用を成功に導くためには、大きく4つのポイントがあります。

①静止画を組み合わせたクリエイティブでも動画として効果を発揮する。

動画と聞くと、動きのある映像を撮影し、それを編集して制作するイメージがあるでしょう。しかし、SNSアカウント運用で使用する動画は必ずしも、その限りではありません。
持っている静止画や、自社のブランドや商品についてのUGCを繋げて動画化をするだけでも、十分に動画コンテンツとして機能し、投稿の視認性や訴求力を高めることができます。

②必ずしも「リッチな動画」が求められているわけではない。

また、テレビCMのような画質のよい作り込んだリッチな動画でなくとも、SNSの投稿コンテンツとしてはその役割を果たしてくれます。
実際、SNSは一般のユーザーが自分たちのスマホで撮影した動画を投稿する場です。こうした場において、テレビCMのようなクリエイティブは必ずしもユーザーにとって歓迎されるものではありません。

Facebookによると、ストーリー用に制作した動画と既存動画の転用した場合で比較すると、前者の方が2.1倍成果に繋がりやすいというデータも出ています(※6)。つまり、作り込んだクリエイティブを目指すよりも、ユーザーが違和感を感じにくい動画を定期的に投稿していくことの方が大切なのです。

③SNSで視聴されることを意識した動画構成にする。

そして、SNSなどのモバイルで接触する機会が多いメディアにおいては、モバイルで視聴されることや、スクロールされやすいタイムラインの中で埋もれない動画コンテンツにする必要があります。そのためにも、冒頭の数秒にいかにアイキャッチになるものを持ってくるか、一目見てどんな動画かが伝わるような工夫をし、ユーザーの興味を惹きつけて動画の完全視聴を促すような構成にすることが望ましいでしょう。

④プラットフォームごと、また視聴される面に応じて有効な動画が異なることを認識する。

SNSとひとくくりに言ってもプラットフォームごとにユーザーの接触態度は異なります。
同時に同じプラットフォーム内においても、コンテンツが配信される面によってユーザーが求めるコンテンツや、ユーザーが発信するコンテンツの内容は違ってきます。効果的なSNSアカウント運用には、動画であれ静止画であれ、こうしたプラットフォームや配信面にあわせたコンテンツ設計が必要となります。

こうした企業のSNSアカウント運用への動画コンテンツ活用を効果的に行う上で注目されている「カジュアル動画」です。

カジュアル動画とは、いわゆるテレビCMのような「リッチ動画」に対して、クラウドサービスやツールを活用して手軽に作ることができる動画コンテンツです。

SNS公式アカウントで動画を効果的に活用するためにはまず、投稿するプラットフォームに馴染む動画を投稿する必要があります。
その点で、作り込んだリッチ動画よりも簡易な動画であるカジュアル動画はメディアに馴染み、SNSユーザーに違和感を与えにくいコンテンツであると言えるでしょう。

そして、もちろん、手軽に自社制作が可能であるという点もSNSアカウント運用には適しています。

例えばプラットフォームごと、投稿する面ごとのトンマナに合わせた動画を複数作る場合にも、カジュアル動画ならよりコストを抑えて制作することができます。
また、SNS投稿という継続的に一定数のクリエイティブを作っていかなくてはいけない状況下においては、自社内でその制作ができるということは大きなアドバンテージになるのです。

事例も紹介しながら、カジュアル動画に取り組むべき理由についてのインタビューはこちらです!
コスト削減だけではない!手軽に作れる「カジュアル動画」を活用すべき本当の理由

いかがでしたか?
今回は企業のSNS公式アカウント運用において動画コンテンツを活用した投稿の価値や活用事例、そしてポイントについてご紹介してきました。
SNS以外においても、今後ますます世の中の「動画化」は進むと考えられます。その流れに取り残されることなく効率的な公式アカウント運用やマーケティング施策を実行するためにも、ぜひ動画活用やカジュアル動画の採用を検討しましょう。