「ゲーミフィケーション」とは? 日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?
ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。
用語説明
ゲーミフィケーション(Gamification)
遊びや競争など、人を楽しませて熱中させるゲームの要素や考え方を、ゲーム以外の分野でユーザーとのコミュニケーションに応用していこうという取り組みで、ゲーム独特の発想・仕組みによりユーザーを引きつけて、その行動を活発化させたり、適切な使い方を気づかせたりするための手法。
ゲーミフィケーションという言葉は「日常生活の様々な要素をゲームの形にする」という意味の単語「ゲーム化(Gamefy)」から派生。2010年から使われはじめ、2011年7月に米国の大手調査会社であるガートナーが発表した「テクノロジーハイプサイクル」に取り上げられた頃から、頻繁にメディアに登場するようになった。
ガートナーは「2014年までにグローバル2000企業の70%が少なくとも1つ、ゲーミフィケーションに関する取り組みを実施する」と発表。そして、2013年以降のテクノロジーにおける重大な展望の1つとして「2015年までに、グローバル1000企業の40%が、ビジネス・プロセスを変革する中心的な仕組みとしてゲーミフィケーションを採用する」とのリリースを出している。
プレスリリース: 「ゲーミフィケーション」の面白さと革新が人々の参加を促す 「2013年以降にIT部門およびユーザーに影響を与える重要な展望」
概念自体はポイントプログラムなどの形で従来からもあったが、インターネットの普及・スマートフォンの登場、さらにソーシャルメディアの流行で、ゲーミフィケーションの発想をより実践しやすくなったため、Webサイトやサービスへの応用はもちろん、企業の人材開発や従業員向けサービス、さらには社会活動の手段としても使われるようになり、改めて注目を集めている。
情報過多により動機の希薄化が進み、関与の醸成が難しくなっている
消費行動モデルのAIDMAやAISASの先として「SIPS」が提唱されたことに見られるように、情報過多の時代、ユーザーは瞬間的・表層的にしか情報に触れないため、長期的に継続して関与を高め、購買行動へと動機付けるための機会が減ってきています。
社会心理学では、「人間は関与度を深めた対象の価値を無意識に高く感じる」と言われており、企業にとって動機付けの機会減少は大きな問題であると言えます。
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そのため、人に行動を起こさせ興味を持たせ続け、関わらせ続ける心理的な引き金として、報奨、認知、達成感、競争の要素、熱心に取り組む対象、純粋な楽しみといった「ゲーム」の要素を上手く活用することが考えられるようになりました。
すなわち、人々が「ゲーム」を楽しむ際の「心理」を理解し、そこに作用するゲームの設計技法、考え方、メカニズムによって、ユーザーの興味・関心を獲得し、モチベーションやロイヤリティを高め、エンゲージメントを獲得することが、ゲーミフィケーションに取り組む目的だと言えます。
適切な「動機付け」でユーザー行動をデザインし、ソーシャルメディアを活用してロイヤリティを維持する
ゲーミフィケーションは、ユーザーの「行動」を生み出し変化させ目的まで導く、行動デザインの手法ですので、ユーザーを理解し適切な動機付けすることによって、行動を変化させ調整することで自社に望ましい目標を実現することが出来ます。
さらにユーザーデータを収集するためのコンテキストを提供することで、行動データから利用者の「動機」を可視化したり、収集したデータを分析することで新たな利用者像を想定することが可能になります。
また、これまでのポイントプログラムに代表されるロイヤルティ・マーケティングの概念が、ソーシャルメディアの活用によってブランディングや動機、心理面からも強化されたため、企業が環境と遊び方を提供するだけで、消費者は参加者同士でコミュニケーションをとりながら、ライバルやサポーターを得て、自分流に楽しみながらモチベーションを高め、維持・継続することが出来るようになりました。
熟考すべきはゲーム要素ではなく、その後の長期的なモチベーションに繋がる「価値」
しかし、単にゲームそのものを作ったり、ゲーム要素を導入するだけでは有効に機能するものではありません。バッジやポイント、レベルといった表面的な要素は外発的な動機付けの要因にはなりますが、報酬だけが目当てのユーザーは、その報酬がなくなれば行動をやめてしまいます。
ゲーム要素による「きっかけ」作りだけでなく、その後の長期的なモチベーションに繋がる「価値」について、あらかじめ設計しておくことを忘れてはいけません。最初は報酬が目当てだったとしても、参加する過程でユーザー自身に、その行動によって得られる本質的な価値に気付かせることが必要なのです。
ですから、ゲーミフィケーションに取り組むためにはまず
- ユーザーは誰か
- ユーザーにどんな行動をさせたいのか
- それぞれのユーザーにとって何がきっかけとして有効なのか
- 離脱や停滞の原因はなにか
この4点についてしっかり考察したうえで、興味・関心を持たせる「モチベーション」、行動を促す「愛着心」、その商品・サービスだけを繰り返し購入する「忠誠心」を獲得するための、「インストラクション」「レベルとバランス」「インセンティブ」を設計することが、本質的なゲーミフィケーションへのアプローチとなります。
米国のオンラインゲームデザイナーであるジェーン・マクゴニガル氏は、以下の4点を「ゲーミフィケーションを機能させる要素」と提言しています。
- 自発的に達成したいと感じさせるための「しつこいまでの楽観性」
- あまり負荷をかけずに新しい能力が得られ、幸せ・至福を感じる「生産性の体験」
- ユーザー同士が共に時間を過ごし、互いを認め合い、それが次のモチベーションを生み出す「ソーシャル構造」
- 未来や世界といった壮大なスケールを持ち、関わることが楽しくなる「ストーリー性」
これらの要素を上手く取り入れ、ユーザーに楽しんでもらいながら、「製品・サービスが持つ本来の価値」を正しく理解してもらい、関与度を高めていく効果的なプロセスを設計することが重要なのです。
イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ