ペルソナとは

「ペルソナ」とは? 日頃の業務で何気なく使っている専門用語。でもその言葉の意味、ちゃんと理解して使っていますか?

ソーシャルメディアマーケティングラボが、なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?!今さら人に聞くのはちょっと恥ずかしい、ウェブマーケティング用語を分かりやすく解説します。

ペルソナとは
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用語説明

ペルソナ(Persona)

1999年、『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』の中で、アラン・クーパーによりソフトウェアの開発手法としてまとめられた理論だが、Microsoftのユーザー・リサーチ・マネージャーだったジョン・S.プルーイットによる『ペルソナ戦略――マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』が刊行されたのをきっかけにマーケティング手法として注目が集まり、マイクロソフト、アマゾン、フェデックス、フォードなどの大企業に活用が広まった。
「ペルソナ」という言葉は、元来古典劇において役者が用いた「仮面」のことだが、心理学者のユングが「人間の外的側面」の概念をペルソナと呼んだことから、マーケティングにおいては、「企業が提供する製品・サービスにとって、もっとも重要で象徴的なユーザーモデル」の意味で使われている。
氏名、年齢、性別、居住地、職業、勤務先、年収、家族構成といった定量的なデータだけではなく、その人の生い立ちから現在までの様子、身体的特徴、性格的特徴、人生のゴール、ライフスタイル、価値観、趣味嗜好、消費行動や情報収集行動などの定性的データを含めて、あたかも実在するかのような人物像を設定するが、更にイメージを明確にするために顔写真などが用いられる場合もある。
参考: 『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』(アラン クーパー 著 翔泳社)
『ペルソナ戦略――マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』(ジョン・S.プルーイット著 ダイヤモンド社)

「ペルソナ」作成の意義とメリット

企業のマーケティング戦略において、ターゲットとするユーザーを明確にすることは非常に重要です。しかし広報・サービス開発・営業など、部門が違う関係者が増えると、ターゲットが絞りきれなかったり、担当者によって描く人物像がまちまちになってしまい社内の共通認識が形成されず、ターゲット像がぼやけてしまうことがあります。
関係者の思うユーザーニーズを全て取り入れたら、結果的にどのユーザーのニーズも満たせない商品になってしまったということも少なくありません。
またターゲットが曖昧なままでは、広告やWebサイトの表現、店頭での印象などがバラバラになってしまい、結果として一番伝えたいメッセージが伝わらないということにもなりかねないでしょう。

そこで、詳細に設定した「ペルソナ」という代表的な顧客プロフィールを企業内で共有し、人物像への理解を深めることでマーケティング方針を統一するのが「ペルソナ」戦略です。2割の典型的なユーザ像を浮き彫りにすることで、8割のニーズをカバーすることができるという「パレートの法則」を利用し、個人の詳細なニーズを掴むことで、マジョリティのニーズを掴むことを目指す手法とも言えます。

従来のユーザー・プロファイリングが、性・年齢・職業・居住地などの属性からグループとしての特性を明らかにしようとするのに対し、ペルソナは定量的なデモグラフィックデータだけでなく、趣味嗜好や価値観、ニーズや行動特性などの定性データも組み合わせ、具体的かつ詳細に設定した一人の顧客像に注目して、「誰が買うのか?」から「その人はなぜ買うのか?」についてアプローチする点に特徴があります。

「ペルソナ」を作成し分析することにより、担当者間の共通認識が形成され、ターゲット「顧客」の軸が定まることで、自社のゴールが明確となり具体的な戦術が見えてくることでしょう。関係者が協力して「ペルソナ」を作成することによって、顧客ニーズの理解や顧客の生活行動の考察、自社が提供するベネフィットの再確認をすることが出来、効果的な評価基準の検討も出来ます。
また、現在の主流とあえてずらしたペルソナに向けて製品やサービスを設計することで、広く浅いターゲットに受け入れられるコモデティなものでなく、画期的な製品やサービスを生み出すことが出来る可能性もあります。

「ペルソナ」導入により得られる4つのメリット

1.一人の顧客像に対するデータを徹底的に分析することで、ユーザの実態に対する理解が深められる
2. 「思い込み」や「関係者間の意識のズレ」を防ぎ、精度の高いユーザ視点を持つことができる
3. 担当分野の異なる関係者間でも、同じ顧客像を常に意識することが容易となるため、議論の質が高められる
4. 価値観の多様化とニーズの細分化が進む中、ユーザの本音を理解し、コミュニケーションを深めていくために効果的である

ペルソナ活用の注意点とソーシャルメディアとの関係

一般的なペルソナ作成手順としては、まず属性データからユーザーをセグメントし、重要なセグメントの代表的なユーザーにデプスインタビューを行います。そこから得られた心理特性データ(サイコグラフィックデータ)から価値観、趣味、ライフスタイルなどを細かく設定し、ユーザーに期待する行動(ユーザーシナリオ)を作成します。このユーザーシナリオによって、「ゴールは何か」「どのようにしてたどりつくのか」が明確になり、マーケティングプランのあらゆる領域においてユーザー視点での検討が可能になります。

しかし、「ペルソナ」の設計には定性的な部分が多く、デプスインタビューも数が限られるため、担当者の思い込みや恣意的な意図が反映されてしまい、納得感が欠如してしまうことがあります。また、「こんな人に買ってもらいたい」という作り手側の希望ばかりが反映された理想像になってしまっては、実際に市場導入した場合のターゲットとズレが生じてしまうことになりかねません。
こうした問題点を解決して的確な「ペルソナ」をつくるためには、属人性を配した客観的なデータの活用が不可欠です。

そこで、より現実感や人間味のあるペルソナの設計のために、生活者の自然な姿が反映されやすいネット上のクチコミ(BlogやSNS等での会話)を収集分析したデータから仮説を立てることが効果的だと考えられます。
また、ソーシャルリスニングによって得た「顧客の声」の優先付けや、ソーシャルメディアでのコミュニケーションを最適化する際などにペルソナを軸にして考えれば、「メッセージ」にブレがなくなるため、どのようなツールやサービスであっても、ユーザーに対して常に一貫したエクスペリエンスを提供することができます。

特にFacebookやTwitterのような高頻度のコミュニケーションを生活者と交わすチャネルでは、気持ちや想いを伝えたい相手を具体的にイメージしてコンテンツを作る必要があるため、自社のマーケティングコミュニケーションとのメッセージ統一のためにペルソナを活用することが有効です。

ユーザーのライフスタイルは今まで以上に多様化しており、従来の“広く浅い”ユーザー像を捉えるマーケティング手法では、真のニーズが掴みにくくなっている今、様々なマーケティングデータを多面的に収集し、統合分析から得た顧客集団の声を集約して代表的なモデルを人格化したペルソナの活用は、一見「たった一人」を目指すようでありながら、その背後に隠れた多くの人の心を打つことに繋がるでしょう。

ソーシャルメディアがマーケティング・チャネルでの重要性を増し、ユーザとの密接な関係による参加型の開発も多くなりつつある中で、効率的なマーケティングの手法として改めて見直す必要があるのではないでしょうか?

イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ