国内最大級の専門カンファレンス【モバイル&ソーシャルWEEK2012】 1日目の内容をレポートします。
マーケティングに携わる経営層や担当部署の責任者、そしてソーシャルメディアやスマートデバイス向けサービスの開発者、モバイルとソーシャルの提供事業者など、デジタルマーケティング業界のキーパーソンが一堂に会して行われた国内最大級の専門カンファレンス「モバイル&ソーシャル WEEK 2012」。
今回は2012年7月24日~26日の3日間にかけて行われたカンファレンスの内容を、数回に分けてレポートします。まず第一回目は、第一日目に開催された2つのKeynoteの内容をご紹介します。
Keynote1:「グリーのグローバル展開」グリー代表取締役社長 田中良和氏
まずは、グリー代表の田中氏がKeynoteに登場。今後の「モバイルの重要性」、そして「グリーの考える海外展開」について語りました。
成長の転機は「モバイル」と「ゲーム」
2004年に創業したグリーは、2012年現在全世界9拠点、ユーザー数2.3億人を擁する企業に成長していますが、その転機は2007年~2008年に実施した「モバイルサービス転換」であったと言います。
当時「モバイルサービスをやる」というと、「デコメ、着メロサービスをやるのか?」等と言われたこともあったそうですが、当初よりグリーは「モバイル」の可能性に着目していました。また、SNSが単なるコミュニケーション手段ではなく、今後もっとエンタテインメント性を帯びてくると確信しており、「モバイル」とあわせて「ゲーム性」の追求に大きく舵を切ったそうです。
その見込みは現実となり、ついに2012年にスマートフォンの出荷台数はPCを抜き、インターネットのアクセス量においても、モバイルが全体の10%を超えることとなりました。田中氏は、「これからインターネットを使うこと=モバイルを使うこと」と発想を切り替えることが重要と語ります。今までは、サイトを作るときに、まずはPCのサイトを作り、それをスマートフォンにも対応させるという順番だったものが、数年後には必ず逆になるだろうと言います。
また、ゲーム業界においても、今後は「モバイルゲーム」がトレンドになると語ります。スマートフォンが全世界的に普及していることに加え、モバイルゲームは価格が安く、誰でも利用できるものであることから、先進国だけでなく、むしろ新興国で大きく普及する可能性があると言います。まさに、iTunesによって一気に世界中に音楽が広がったように、スマートフォンによってゲームが世界中に広がる可能性を確信しているそうです。
ゲームビジネスが日本に向いている3つの理由
また、田中氏は、ゲームビジネスは「日本企業がグローバル展開しやすいビジネス領域である」と語ります。その理由として以下3つが挙げられました。
・材料が不要で資源に依存しない(人間の知的な活動だけで作ることができる)
・輸出する際に関税や輸送費がかからない
・高付加価値産業である
成熟後のローカライズを見据えて世界に拠点をおいているものの、開発のメインはやはり日・中・韓と北米だと言います。ゲームは「文化」なので、例えばインドのように優秀なエンジニアが沢山いるからといってゲームの開発は出来ない。その点で、ゲームに慣れ親しんで育ってきた日本のエンジニアのセンスはずば抜けていると語りました。
GREEのグローバル展開の現状
2012年5月、グリーは全世界向けのゲーム配信プラットフォーム「GREEプラットフォーム」を開始、グリーのパートナーは一度の開発で169カ国のユーザーにアプリを配信することが可能になりました。
これにあわせ、アメリカやフランスなどのゲーム開発会社等を積極的に買収。また、2012年7月~9月にかけて約60タイトル、2012年12月末までに数百タイトルを順次リリース予定、2012年9月を目処に14ヶ国語対応を目指しているそうです。
また、ソーシャルゲームというキラーコンテンツを武器に、ビジネス領域とビジネス地域の両面から拡大を図っていると言います。ビジネス領域においては、日本を中心に、ゲームだけでなくアニメ、ベンチャーキャピタル、広告ビジネスなどの多面展開を計画。またビジネス地域においては、日本、北米、中国、APEC・韓国・シンガポール、EU、イギリス、オランダ、ラテンアメリカ・ブラジル、中東・アラブ首長国連邦等に横展開していくとのこと。
最後に田中氏は次のように語りました。
「日本から生み出して、世界に通じるものを作りたい。今から5年、10年後には『10億人が利用するサービス』は世界に3個、5個、10個とあるかもしれない。グリーはその一つになっていたいと考えています。グリーが目指すのは、インターネットビジネスを通じて変革を起こすこと。そして、インターネットを通じて世界をより良くしたいと考えています。」
Keynote2:「ソーシャルで変わる企業のマーケティング、そのパワーと課題」
セールスフォース・ドットコム執行役員 プロダクトマーケティング 榎 隆司氏
次に、セールスフォース執行役員の榎氏が、ソーシャルメディアによって企業が求められるパラダイムシフトについて語りました。
全方面から「ソーシャルエンタープライズ化」を
セールスフォースは1999年に創業、クラウドコンピューティングやソーシャルエンタープライズ支援事業を展開しています。その執行役員である榎氏は「ユーザーのライフスタイルがオープン・ソーシャル・モバイルに変わってきている今、企業もそれに対応し、ソーシャルエンタープライズであるべき」と強調しました。
セールスフォースの考える「ソーシャルエンタープライズ」とは、「internal」と「external」の両面から全てソーシャル化することと言います。
・internal:従業員のソーシャルネットワーク化
情報の共有や、プロジェクトのコラボレーションによる人材確保や事業の拡張。
・external:顧客のソーシャルネットワーク化
マーケティング、サービスサポート、販売にいたるまで全てのプロセスでソーシャル化することが大切。(今までは聞くことができなかった顧客の声をマーケティングやサービスサポートに活かしたり、顧客のソーシャルプロフィールを販売に活かしたりするなど)
また、セールスフォースは、この「ソーシャルエンタープライズ」を実現するためのソリューションを補完するために、radian6やBuddy Media等多くの企業買収を実施したと説明します。
マーケティングのパラダイムシフト
榎氏は、ソーシャルメディアの登場により、従来は企業主導だった「商品やサービスの認知から購買に至るまでのプロセス」が、今後は全て「消費者主導」になっていくと言います。そして、このマーケティングのパラダイムシフトにより、2017年までには、CIO(最高情報責任者)より、CMO(最高マーケティング責任者)が使う予算が増えていくだろうと説明します。
また、今後のマーケティング戦略におけるキーワードとして以下のような言葉が挙げられました。
・SoLoMo革命(Social, Local, Mobile)
・クロスチャネルエンゲージメント(どのような時にどのような人をどのメディアに誘導するか)
・ゲーミフィケーション(ユーザーのロイヤリティを上げるために)
・新規広告スタイル(Video、イメージ内広告、モバイル広告etc.)
・嗜好マーケティング
そして、このパラダイムシフトを以下のような言葉で説明しました。
・企業による一方的な宣伝→個々の関心に応える
・視覚・聴覚に訴える→気持ちと心に訴える
・企業のメッセージを信頼→友人の紹介を信頼 等
榎氏は、現在の状況を「個人と企業の間にソーシャルデバイドが起きている」と表現します。そしてその原因の一つとして、企業のシステムそのものがソーシャル化できていないためと言います。
急激なモバイル化が進んでいる
また、もう一つ見落としてはいけないことは、「世界が急激にモバイル化している事実」と言います。「世界には68億人が住んでおり、その内モバイルを使っているのは40億人。歯ブラシを使っている人は35億人と言われるため、モバイル利用者は歯ブラシを使う人よりも多い」というデータもあるそうです。
そしてこのモバイルに関する「新しい技術」から生まれる「新しいマーケティング」にも注目しておくべきと語りました。
・SNS⇒ソーシャルメディアマーケティング
・GPS⇒ジオマーケティング
・ライフログ⇒行動ターゲティング、レコメンド
・AR⇒ARマーケティング
・非接触IC⇒O2O、店頭販促
以上、今回は国内最大級の専門カンファレンス「モバイル&ソーシャル WEEK 2012」第一日目に開催された2つのKeynoteの内容をご紹介しました。次回は、第一日目の専門セッションの中から、楽天、スターバックスコーヒージャパン、東急ハンズ、日経BPコンサルティング、ニッセンの内容をご紹介します。
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2020.04.03
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