ソーシャルテレビラボ
今後テレビ事業の変化の一端を担うソーシャルメディア時代のテレビの在り方を考え、建設的な提言を行っていくことを目的とした「ソーシャルテレビ推進会議」の公式サイト、「ソーシャルテレビラボ」からの寄稿記事をご紹介します
ソーシャルテレビラボ
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ソーシャルオリンピックは、サッカーが盛り上げた!
〜ロンドンオリンピック総括レポート「大会期間ツイート推移」〜

 
ここではこれまで、5回に渡って特定の競技の進行中に、オリンピックに関するツイートがどう推移してきたかをお見せしてきた。
その1「7/25:なでしこジャパン・カナダ戦」
http://socialtv-lab.org/?p=25371
その2「7/28:開会式」
http://socialtv-lab.org/?p=25808
その3「7/31:体操男子団体決勝」
http://socialtv-lab.org/?p=26438
その4「8/6:男子100m決勝&ハンマー投げ決勝」
http://socialtv-lab.org/?p=27332
その5「8/12:男子マラソン」
http://socialtv-lab.org/?p=27809
大会期間が終了したいま、今度は大会全体を分析して何かわかったら発表したいと考えている。
今日は総括レポートの第一弾として、大会期間中のツイート推移をグラフ化したものをお見せしよう。
 
 
このデータは、これまでお見せしてきたデータとは別に、オリンピック関連のキーワードが含まれているツイートを収集したものだ。競技ごとに選手名や放送するテレビ局名のハッシュタグを加えたりすると、期間全体の水準が整わなくなるので、キーワードの数はあまり広げていない。
今回のこの分析のためのデータ収集は、ソーシャルメディア分析ツールで躍進中のデータセクション株式会社の方々のお力を借りている。手弁当で、一定の基準できちんと収集してくれた貴重なデータだ。
ではグラフを見てみよう。
 
ロンドンオリンピック・大会期間中ツイート推移
まず、開会式の時に大きな山ができている。日本選手団入場で盛り上がったわけだが、今回の開会式はよくできたショーになっていたし、ローワン・アトキンソンがコメディを見せてくれたり、英国ポップス界のスター達が唄ったりと、つぶやきたくなる要素満載だったと言えるだろう。
その後は、ほぼ毎晩、多かれ少なかれ山ができている。とにかく多くの人びとが遅くまで頑張って日本の選手達を応援していたということだ。
ただ、大きな山ができている部分ほど、実に様々な言葉が飛び交っている。主流はもちろん、競技を楽しみ日本選手を応援するツイートだが、全部が全部そうかと言うと単純ではない。
 
例えば開会式では、様々な英国のアーティスト達が登場したのを見て、「日本だと誰々や誰々が出ることになるだろうけど・・・」とシニカルにツイートしている人も多かった。英国のアーティストだからいいけど、日本のアーティストだと世界に知られてなくて盛り上がらないんじゃないかと言っているわけだ。そういうツイートほどRTされることも多く、ツイート数を増やす大きな要因になっているようなのだ。
つまりスポーツ番組のソーシャル観戦では、「がんばれ」とか「よくやった」といった類いのツイートが中心とは言え、「面白いこと言った!」と思わせてくれるツッコミ型ツイートも多いし、RTもされやすい。競技としての面白さダイナミックさだけでなく、”ツッコミポイントの多さ”も、ソーシャル視聴を盛り上げツイート数を増大させるのに影響するのだ。
 
 
もうひとつ、今回のオリンピックで特徴的だったのが、女子も男子もサッカーが大健闘した点だ。ツイートの山も高く出る時は日本チームのサッカーの試合がある夜が多かった。史上初のソーシャルオリンピックを迎えた時に、期せずして日本のサッカーが男女ともに勝ち進んだことは、良い巡り合わせだったのかもしれない。
サッカーほど、ソーシャル視聴に向いている競技もないのだと思う。オリンピック観戦は基本的にまず日本人選手が参加しているかどうかが大きい。男子マラソンでは中本や藤原が画面に登場するとツイートも盛り上がったが、日本人選手が登場しない間はツイートもほとんど山ができなかった。競泳や陸上は、実際の競技の時間はせいぜい数分。それまでの間はあまりつぶやくこともなく待ってるだけになってしまう。
サッカーは、45分ずつの各ハーフの間中、何らかの動きがある。そして基本的に日本人選手が出場している(そういう試合だけを観るわけだが)。主要選手それぞれの顔と名前もよく知られている。点が入った時に大きな山ができるが、点が入らなくても惜しいシュートやゴールが脅かされるとツイートも盛り上がる。サッカーの試合はソーシャルメディアユーザーにとって、試合中ずーっとなんらかつぶやくネタを提供してくれる格好の題材なのだ。
そしてさらに、ツイッターを使うのは若者に多く、またサッカーは若者世代に人気のスポーツであることも大きいにちがいない。
ロンドンオリンピックのソーシャル観戦にとって、サッカーは重要な役割を担っていた競技なのだと言えるだろう。
 
さて、我々ソーシャルテレビ推進会議は、上のグラフのもととなっている、収集されたツイートをさらにいくつかの軸で分析するつもりだ。その成果もまた少しずつ紹介していこうと考えている。乞う、ご期待!
 
 
<ライター紹介>
境 治 (Osamu Sakai)
ソーシャルテレビラボ 境 治氏 プロフィール画像
メディア・ストラテジスト。1987年、東京大学を卒業し、広告代理店I&S(現ISBBDO)に入社してコピーライターとなる。92年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞。93年からフリーランスとなりテレビCMからポスターまで幅広く広告制作に携わる。
06年、映像制作会社ロボットに経営企画室長として入社。11年7月からは株式会社ビデオプロモーションで企画推進部長としてメディア開発に取り組む。
著書『テレビは生き残れるのか』
ブログ「クリエイティブビジネス論」:www.sakaiosamu.com
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
 


SMMLabでは、マスメディアの代表であるテレビが、今後ソーシャルメディアとどのように影響しあうのか、企業のマーケティング活動をどう変えていくのかに注目すべく、「ソーシャルテレビラボ」から定期的に寄稿していただくことにいたしました。今後の掲載をどうぞお楽しみに!