ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】


こんにちは、SMMLabの小川です。
今回は、「お客様の記憶に残るサービス作り」をテーマに、マーケティングや顧客対応に取り組む、株式会社スカイツアーズの釜本健太氏にお話を聞きました。
約10, 000社も存在する旅行会社。多くの選択肢がある中で、消費者に自らのサイトを見つけてもらい、選んでもらうために、そしてリピートしてもらうために、スカイツアーズが工夫していることとは?

 
――スカイツアーズの取扱商品・サービスの概要を教えてください。

スカイツアーズは、全日空の飛行機を利用したツアーを中心に、国内向けの旅行ツアーを販売する旅行代理店です。本社が沖縄にありますので、特に沖縄向けのプランを得意としています。販売は9割以上がインターネット経由ですが、お客様への人的サポートは必要不可欠と考え、コールセンターも充実させていることが特徴です。
 
 
有名ポータルサイトへのバナー出稿、リスティング広告、SEO対策…数々のインターネット施策に取り組み、見えてきた「課題」
インターネット経由の販売が全体の9割以上とのことですが、今までどのような広告・マーケティング施策に取り組まれてきましたか?それぞれの目的や取り組まれての成果も教えてください。
従来より、また今現在も多くのインターネットマーケティング施策に取り組んでおります。
まず、私たちがスカイツアーズのホームページを立ち上げ、インターネットでツアー販売を開始したのは2004年です。その頃は旅行業界でもホームページを持っているところは少なかったですし、また消費者も、旅行会社のカウンターに訪れたり、一般の書店で販売されている旅行専門誌を見てツアーに申し込むことが多い時代でした。
ですので、この頃はまだ私たちもホームページを立ち上げたといっても、旅行専門誌の出稿記事内でホームページの紹介を盛り込んだり、またせいぜい旅行ポータルサイトへの出展をするくらいの状況でしたね。
ところが、状況はどんどん変わり、お客様は「旅行に行く」ときに、まずインターネットで「検索」をするようになりました。そして「リスティング広告」というものも出始めました。私たちが初めてリスティング広告に取り組んだのは2005年頃です。その頃はまだリスティング広告が目新しい時期で、取り組む会社がそれほど多くなかったこともあり、かなりのお客様をサイトに呼ぶことができましたね。この頃の費用対効果はとても良かったと思います。ただ、当初は競合がいなかったため費用対効果の良かったリスティング広告も、競合が増えるにつれ、入札価格が上がり、効率は落ちていきました。2007年くらいの段階でその傾向は明らかになり、今までと同じように、そして他社と同じようにやっていても仕方ないと思い始めました。

また、2006年頃にはSEO対策を開始、有名検索ポータルサイトTOPページへのバナー出稿や、大学向け雑誌・交通広告等とネット施策を連動させるクロスメディア施策を実施したりもしました。
有名検索ポータルサイトのバナー出稿は、サーバーに負荷がかかりすぎて対応できないほどの大きな反響を頂きましたね。ただ、アクセスが急増する一方で、サーバー負荷の急増によるサービスの低下や、また本来のターゲットではないお客様も増え、結果的にクレームも多く頂戴しました。最終的には、得られた価値・売上と、サーバーやクレームの対応に要したコストが同じくらいだったという印象を受けています。
やはり、弊社からもきちんと質のよいサービスを継続して提供し、そして将来的なLTV(Lifetime Value=顧客生涯価値。顧客1人あるいは1社の顧客ライフサイクル全期間で、その顧客が企業にもたらした価値の総計のこと)の向上につながる質のよいお客様にご利用いただくためには、「量」を増やすだけではダメだなと感じました。
 
――なるほど。数々のインターネット施策に取り組まれる中で、「課題」も同時に感じられてきたということですね?その課題に対して、具体的にはどのような改善をする必要があると考えましたか?
私共のツアーは、「確かな安さ」をキーワードにしています。最近では「格安」ツアーも多く存在していますが、実はふたを開けると追加料金が多く発生して、最終的には「格安」でなくなってしまうものや、「直前まで飛行機の便が決まらない」などお客様に多くのご負担をおかけすることを当たり前としたプランが多いのが実情です。また、コールセンターを設けておらず、問い合わせへの対応が十分でない旅行会社も存在します。その中で、私共は、明確な料金体系や事前のフライト指定・座席指定、充実のコールセンター等をご用意しており、「納得のプラン」を最適価格でご提供していると自負しています。
ただ、本当に多くの情報がインターネット上に溢れる中で、見た目の「料金」という軸だけで比較されてしまうと、どうしても負けてしまう部分があるのです。従来のようにカウンターでご説明をさせていただければ伝わるものの、インターネット上で「一目」では、なかなか私共の商品の良さをお分かりいただけない。ですので、まずは私共の商品の良さを十分にお伝えできるサイト作りを行い、リスティングやバナー等の短い広告文を見て、「格安」に期待して訪問されるお客様にも、十分に商品をご理解いただけるようにする必要があると感じました。また、同時に「短い広告文」ではなく、私たちの商品の良さを十分にお伝えできるルートを見つけたいと考えました。

ホームページ上で「スカイツアーズはここが違う!」というページを用意し、特徴を詳細に説明。しかし、価格比較サイト等で、見た目の「価格」だけで比較されてしまうとこの点はなかなか伝わり辛い。
URL:http://www.e-myholiday.com/landing/oka.html
 
より深く、きちんとサービスを理解していただくために、ソーシャルメディアへの取り組みを始めた
――そのような中で取り組まれたのが、ソーシャルメディアマーケティングだったということですね?
はい。2008年ころからいわゆる「ブロガーマーケティング」が一般的にも注目されるようになりましたが、私たちも消費者やお客様と直接つながるマーケティングに非常に興味を持ち始めた時期でした。その後、企業がTwitterやFacebook、mixi等をマーケティング活用する状況も注視していました。しかしながら、直接お客様とやり取りすることによる炎上リスクに対する懸念もあり、なかなか開始するタイミングをつかめずにいました。
その後、実際にソーシャルメディアマーケティングへの取り組みを開始したのは2011年2月です。企業ファンサイトモール「モニプラ」に出展し、初めて消費者と直接つながる機会を持ちました。
このファンサイトの場では、まずは「ファンの方に楽しんでいただくこと」をモットーにイベントを開催しようと考えました。基本的に旅行は年に数回しかしないものであり、日常的に思い出すものや、利用するものではないと認識しています。その中で、定期的に楽しんでいただけるようなイベントを開催することで、まずは「旅」について少し思い出していただき、またサイトにも繰り返して訪れていただけるようにしたいと考えています。

スカイツアーズ×モニプラ ファンサイト:http://monipla.jp/skytours/
【 聞かせて!初めて飛行機で行った国内の家族旅行先はどこですか? 】等、ファンが気軽に楽しんで参加できるイベントを月に1回ペースで開催している
 
お題に答えてカキコミしていただくイベントや、またアンケートに回答していただくイベントを開催し、約1年間で1, 500名の方にファンサイトに登録していただきましたが、皆様から本当にたくさんのご意見を頂けていますね。良い意見も悪い意見もありますし、皆さまから本当に真剣にご意見を頂けていると感じています。
また、私たちが当初想定していた結果と異なるアンケート結果になることもありました。例えば、「LCC(Low Cost Carrier=効率的な運営により低価格の運賃で運航サービスを提供する航空会社)」と「ANA」の違いについてご説明し、その説明を聞いた後で「LCC」と「ANA」へのイメージが変わったか、どちらを利用したいと思うようになったかのアンケートを取ったことがあったのですが、私たちの想定では、違いを理解していただければ価格が多少LCCに比較して高くても、サービス・品質等で「ANA」を選んでいただけるだろうと考えていました。ところが、結果は真逆で価格を理由に「LCC」を選ばれる方が多かったのですね。このようなことはやはり直接消費者の方に聞いてみないとわからないですし、こちらからももっとお伝えしていく努力が必要だと考えさせられました。
<次回へ続く>
次回は、イベントを通じて集まったファンからの声を、社内にどのように還元して次の施策につなげているのか、またファンとのコミュニケーションで心がけていることは?など、より深く踏み込んだ内容をお聞きしています。次回もお楽しみに!
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釜本健太氏 プロフィール
株式会社スカイツアーズ 東京支店 販売部 予約販売課 商品マーケティンググループ 係長
ホームページ:http://www.e-myholiday.com/
スカイツアーズ ファンサイト:http://monipla.jp/skytours/
インタビュアー:小川 裕子(アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab)
■参考リンク:国内最大規模の企業ファンサイトモール「モニプラ」
http://socialmedia.monipla.jp/
■【企業担当者に聞くSMM最前線】
・株式会社シュクココロ 下田真美氏:
http://smmlab.jp/?p=5033
・株式会社リクルート HRカンパニー 原田芳江氏:
http://smmlab.jp/?p=6545
・株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 高橋 淑恵氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=5027
・タマホーム株式会社Facebook課 川野和義氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=2717
・ライフカード株式会社 鎌倉早佑理氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=2473
・リーデル(RSN JAPAN 株式会社) 西村 敏雄氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=681
・ハウスウェルネスフーズ株式会社 丸山佳代氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=19