前編_Pinterest

全世界で毎月4億人以上のユーザーに利用されているPinterest。日本での広告提供の開始など注目が集まる同プラットフォームの特徴とは?今回はPinterest Japan ビジネスマーケティング統括責任者の石井恵子氏にお話を伺いました。

Pinterestは生活を豊かにするポジティブなインスピレーションとの出会いの場

ーまずはPinterestというプラットフォームの概要について教えてください。

石井氏:
Pinterest は、画像や動画を発見・保存・整理できるビジュアル探索ツールです。ユーザーの皆さまに、暮らしをさらに豊かにするインスピレーションと出会い、実現へと導く生活を彩るアイデアを見つけていただくことを目標としています。

実際、ユーザーの方の多くは、他人の暮らしを見るのではなく、自分の暮らしをさらに豊かにするアイデアをビジュアルで探索・発見するために Pinterest を利用し、そのアイデアを実現するために計画や行動を起こしています。

ーPinterestというプラットフォームの特徴はどんなところですか?

石井氏:
Pinterestの特徴の1つに、情報を見つけるためではなく、インスピレーションに出会うための主観的な探索が行われているという点があります。
Pinterestは独自の機械学習により、ユーザーの方がPinterestを利用すればするほどに、その方の好みを学び、一人一人にパーソナライズされたアイデアを提供する仕組みを持っています。そのため、これまで気づいていなかったけれども、やってみたいと思うような新しいアイデアの発見につながるのです。

また、ソーシャルよりはパーソナルというのも大きな特徴です。Pinterestは「いいね!」やシェア数など、プラットフォームを利用している他のユーザーからの評価にとらわれず、主観的な視点でこれから実現したいアイデアを探すために活用されています。

ユーザーのなりたいイメージや夢のライフスタイルなど、オンラインで見つけた理想をオフラインで実現するためのアイデア探索ツールとして利用されているのです。

ーその中で石井様はどのようなミッションを担っていらっしゃるのでしょうか?

石井氏:
私はビジネスマーケティング統括責任者として、Pinterestが「ひらめきを行動へ繋げることのできるプラットフォーム」であることの認知向上と理解促進に取り組んでいます。また、より多くの企業のご担当者の方に、Pinterestをビジネスに活用するメリットや弊プラットフォームがもつユニークな価値を理解いただくため、様々なアプローチでPinterestのストーリーを伝えています。

ーありがとうございます。早速ですが、Pinterestの基本的な使い方について教えてください。

石井氏:
Pinterestユーザーは、3つの機能を利用して、好みのアイデア(ピン)を発見することができます。

1つ目は「検索」。これは検索キーワードに対してアイデアが表示されるものです。

検索
検索バーに検索したいキーワードを打ち込み、アイデアを検索すると、キーワードに沿ったアイデアが表示される。複数ワードを組み合わせた検索もできる他、キーワードからおすすめの検索ワードがサジェストされる機能もついている。

石井氏:
2つ目は「ホームフィード」。ここには、ユーザーの興味に合わせておすすめのアイデアが表示されるようになっています。

ホーム
ホームフィードには、初回のプロフィール設定時に興味があると答えたジャンルや、ユーザーのPinterest上での行動に基づき、それぞれのユーザーにカスタマイズされたおすすめアイデアが表示される。

石井氏:
3つ目はユーザーが閲覧しているピンに似たアイデアを表示する「関連ピンの表示」です。

似ているピン
閲覧しているピンの下に、似ているアイデアが「似ているピン」として表示される。また閲覧しているピンから導きだされた「おすすめのアイデア」も表示され、ユーザーに新しいインスピレーションとの出会いの場を提供している。

石井氏:
これらの3つの機能を通して発見したアイデアは、ユーザー自身の「ボードに保存」して整理することができます。加えて、保存されたピンに紐づいているECサイトを含むリンクへ遷移し、より詳しい情報を調べたり、そこから商品を購入するといった行動も見られます。

ボード
気に入ったピンはボードに保存して整理する。ボードはピンの保存時に新規で作成したり、表示されたおすすめのボードを選択することも可能。

ー近年はSNSを始めとしたあらゆるプラットフォームで情報が探されています。Pinteretが他のSNSプラットフォームと特に異なっているポイントはどういった点なのでしょうか?

石井氏:
Pinterestはビジュアル探索プラットフォームであり、SNSとは大きく3つの違いがあります。

1つ目は、Pinterestが「ユーザー自身の未来にフォーカスしたプラットフォーム」であるという点です。
例えばSNSでは、過去もしくは現在起きている出来事や、それに対する自分の意見、考えを”人と人とのつながり”の中で発信していくものです。これに対してPinterestは、ユーザーが未来の自分の生活を豊かにするヒントを発見するために利用されています。

ー次はどんな髪型にしよう、とか、部屋の模様替えをどのようにしよう、など、これから「やりたい」「やろうとしている」ことのアイデアを探す場所なんですね。

石井氏:
はい。そのため、Pinterestはその他のSNSのように次々と新しいことが更新されていくタイムライン型ではありません。アイデアを探しているユーザーが、ボードにビジュアルをストックしていき、そのストックされたアイデアをもとによりユーザーひとりひとりに関連性が高い良質なコンテンツを提供していくことができるのもユニークな点です。

ーありがとうございます。

石井氏:
2つ目は、ビジュアル「探索」プラットフォームであることです。我々はユーザーの方がPinterestの中でアイデアを探すことを「検索」ではなく「探索」と呼んでいます。これは、Pinterestが提供しているのが、 “答え”を見つける検索体験ではなく、”新たな興味に出会える探索体験”であるためです。

ー指名検索よりも少し手前、というイメージでしょうか。

石井氏:
はい。実際Pinterestの上位検索の97%が、「スニーカー 白 レディース」などのように、ブランドや商品名の指定のない2〜3語の掛け合わせキーワード)となっており、大部分のユーザーがPinterest上でアイデアを探す際に特定のブランドや商品名を入力していないという特徴があります。
具体的にブランドを決めているわけではないけれど、これから欲しいもの、やりたいことを探しにきているユーザーが多い、というのがPinterestの特徴です。

※)Pinterest の分析、英語による検索(2020 年 4 月)

ーSNSで行われているようなクチコミ検索とはまた違うんですね。

石井氏:
そして3つ目はPinterestが「ポジティブ」で「ひらめき溢れる」プラットフォームであり続けていることを目指している点です。我々は、ユーザーのみなさまに安心してご利用いただくために、ダイエット広告をいち早く禁止するなど、広告のポリシーを厳しく制限しています。同時に、コンテンツの安全性を確保することに関しても注力しており、COVIDなど健康に関する誤った情報の排除や、政治的な広告の中止など、業界内でも先進的な取り組みを行なっています。

ー目指すプラットフォームの世界観を守るために徹底されているんですね。

石井氏:
その通りです。こうした取り組みもあり、今年9月にはJICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)が定める第三者検証の認証基準に基づき、広告会社(広告購入者)事業領域の「ブランドセーフィティ」分野において「JICDAQ認証」も取得しています。

思いやり検索機能
10月には「思いやり検索機能」が日本でも提供開始。ユーザーがPinterestをウェルビーイングのリソースとして活用できるような取り組みに力を入れている。
画像引用:Pinterest 思いやり検索機能の日本展開を開始

日本のPinterestユーザーは商品購入頻度や金額が高い

ー現在のPinterestの利用状況について教えてください

石井氏:
現在Pinterestは世界で毎月4億人以上のユーザーに利用されており、日本を含む米国以外のユーザーはそのうちの75%となっています。国別のユーザー数や属性は公表していませんが、ニールセンの調査によると日本では毎月870万人の方がPinterestを利用していると言われています。

ー年齢や性別の分布についてはいかがですか?

石井氏:
PinterestはZ世代やミレニアル世代からベビーブーマー世代まで幅広いユーザーに利用されているプラットフォームです。日本においては、特にZ世代・ミレニアル世代の利用が増加しており、これらの世代を中心としたユーザーによって、1日におよそ300万件のアイデア(ピン)がPinterestに保存されている状況です。

ーPinterestユーザーの行動傾向や心理など定性的な特徴はいかがでしょうか?

先ほども申し上げましたが、Pinterestユーザーは何か行動を起こす前、そのためのアイデアや商品を探しにPinterestを利用しています。そのため、探したアイデアから購入などの実際の行動に移すユーザーが多い傾向があります。
実際、Pinterestで検索を行なっているユーザー10人のうち9人が商品の購入意欲を持っているという調査結果もあります。

ー特に人気のあるカテゴリはどういったものなのでしょう?

石井氏:
日本では特に「ファッション」「ビューティ」「インテリア」「フード」が人気です。具体的には夕飯のレシピや服のコーディネートの参考にするアイデアを探したり、リフォームや旅行といったライフイベントのプランニングを行なったりしています。

ー最近のトレンドはありますか?

石井氏:
最近は国内の旅行の緩和に伴い、「旅行ファッション レディース」の検索数が5倍)になっています。また、アウトドアレジャーの人気が高まる中「アウトドア 部屋 インテリア」の検索数は8倍)となっています。

※)Pinterest内部調査データ:2022/4/1〜2022/6/1を昨年同時期と比較

ーそのほか、日本のPinterestユーザーについて特筆すべき傾向や特徴はありますか?

石井氏:
日本のPinterestユーザーは、商品の購入につながるようなアイデアを探している傾向が強く、Pinterestをきっかけにした商品購入の金額や購入頻度が高いという特徴があります。実際、ビデオリサーチ社の調査()では、日本のPinterestユーザーの83%が買い物をすること自体が好きだという結果も出ているんです。

※)ビデオリサーチ社 ACR/ex 2021(東京・大阪・名古屋), 過去1週間にPinterestを利用

ーPinterestで得たインスピレーションがその後の消費購買行動に繋がっているんですね。

石井氏:
その通りです。またいわゆる衝動買いのような行動が少ないのもPinterestで生まれる消費購買行動の特徴だと考えています。Pinterestには購入までの検討期間が長いユーザーが多く、色々なアイデアを見て保存、比較し、1週間ほど検討したあとに購入される傾向があるんです。この点からPinterestユーザーは本当に買いたいものを買うためにPinterestを利用している、と言えます。

Pinterestでは企業の広告が好意的に受け止められている

ー消費購買行動に積極的なユーザーが多いPinterestですが、企業がマーケティングに活用するにはどのような方法、手法があるのでしょうか?

石井氏:
Pinterestの企業公式アカウント運用、広告キャンペーン運用を行うことができます。

ーこれらの施策をPinterestで行うことについてのメリットはどのような点にあるのでしょうか?

石井氏:
まず先ほど触れたとおりPinterestの検索上位の97%は特定のブランド名を入力せずに行われています。そのため、大手企業も中小企業やD2Cブランドも、企業の規模を問わずにPinterestでは同じオーディエンスにリーチすることができます。こうした他のプラットフォームでは困難と思われる新しい顧客に働きかけることができるのがPinterest活用のメリットのひとつです。

ー企業にとって平等にチャンスの場が生まれるんですね。

石井氏:
また、Pinterestはそこで得たアイデアを行動に移したいという意欲的な思考の強いユーザーがたくさんいます。実際に、一般的なプラットフォームと比較して 1.3 倍の日本ユーザーが、「情報収集は自ら積極的に行う」と回答しています。(
こうした積極的なユーザーにリーチできる場所ですので、Pinterestは認知獲得にとどまらず、売上を生み出すことにつながり、フルファネルのマーケティング利用が可能となっています。

※)ビデオリサーチ社 ACR/ex 2021 東京、大阪、名古屋、過去1週間に Pinterestを利用

ーPinterest上のアイデアは、ユーザーが商品を購入するための大切な判断材料なんですね。

石井氏:
はい。商品購入前のインスピレーションを得る目的でPinterestを利用したことがあるユーザーは89%にのぼるというデータもあり、こうした数字からもPinteretがユーザーの消費購買行動に近い存在であることが伺えます。

ーオーガニックの投稿と広告を比較してユーザーの捉え方や印象は変わりますか?

石井氏:
実はこれが変わらないのもPinterestの強みです。Pinterestユーザーは商品購入前のアイデアを探している傾向がありますので、商品やサービスについての広告も購入検討に役立つインスピレーションとしてポジティブに捉えられているんです。

モバイルでみた広告の掲載イメージ
モバイルでみた広告の掲載イメージ。広告はその他のピンと同様にユーザーの好みや閲覧傾向に応じてホームフィード上に馴染んだものが表示される。

ー親しい人の近況をチェックしたり交流したり、といったプラットフォームよりも「購入に役立つ情報が欲しい」というモチベーションが強い分、広告が違和感なく受け取ってもらえるんですね。

石井氏:
そうなんです。SNSなどインターネットで友人と交流する場合や、ニュースを読みたい場合には広告が不要だと思うユーザーも多い中、Pinterestの企業コンテンツは、ユーザーにインスピレーションとして好意的に捉えられています。

インタビューの後半では企業活用のポイントについてお話しいただきました
【ユーザーと企業双方が幸せになれる新しい購買体験の提供を】企業がPinterestを活用するために大切なコト