
CEPs(カテゴリーエントリーポイント)について調べるうちに、「概念は理解できたが、実務でどう活かせばいいのか、もう一歩踏み込んで知りたい」と感じたことはないでしょうか。あるいは、「CEPsは購入のきっかけのことだろう」という理解のまま、次の一歩に進めずにいる、ということはないでしょうか。
その理解のまま分析を進めてしまうと、見よう見まねのCEPs分析にとどまり、実務の成果にはつながりにくくなってしまいます。本記事は、CEPs分析を正しく理解し、実務の成果につなげるための全3回ガイドの1回目です。CEPsの正しい理解と、実務者がつまずきやすいポイントを、実際の分析事例とあわせて解説します。
この記事でわかること
- CEPs(カテゴリーエントリーポイント)の意味と、実務で使える粒度
- CEPsとVOC(顧客の声)・アンケート調査・ソーシャルリスニングとの違い
- CEPsの分析方法・分析ツールを選ぶ際の考え方
- CEPsの対概念「CExPs(カテゴリーイグジットポイント)」とは何か
CEPs(カテゴリーエントリーポイント)とは?意味をわかりやすく解説
CEPs(Category Entry Points/カテゴリーエントリーポイント)とは、生活者があるカテゴリーやブランドを想起し、選ぶきっかけとなる「利用シーン」や「状況」の集合を示すマーケティングの考え方です。
「どんな場面で選ばれるか」に着目する点が特徴で、CEPsを幅広く押さえているブランドほど、さまざまな場面で想起されやすくなり(メンタルアベイラビリティ)、結果として選ばれる機会が増えていきます。
本記事では、複数の利用シーンの集合や分析行為全体を指す際は「CEPs」「CEPs分析」、個別の利用シーンを指す際は「CEP」と表記します。
よくある誤解:CEPsは「暑いから」「喉が渇いたから」だけではない
CEPsの説明として、たとえば飲料であれば「暑い時」「喉が渇いた時」といった例がよく使われます。これらは決して間違いではなく、CEPsの入り口としてはわかりやすい例です。ただ、この粒度のままCEPsとして実務に持ち込もうとすると、手が止まりやすいというのが現場でよく起きることです。
なぜなら、「暑い時」「喉が渇いた時」は、誰にでも当てはまる気象・生理現象の説明にとどまり、そこに特定のブランドが入り込む余地(具体的な生活シーン)がまだ描けていないためです。
実務で使えるCEPは、もっと解像度の高い、具体的な生活シーンです。たとえば、次のようなものです。
- 「好きなスポーツチームを応援している時」
- 「サウナから上がって、スッキリしたい時」
- 「仕事終わりに、自分へのご褒美がほしい時」
「誰が、いつ、どんな気持ちで」まで含んだ、光景として思い浮かぶ解像度まで具体化できて初めて、CEPsはクリエイティブや施策に落とし込める ”使える” ものになります。
実例:バスカーの飲用シーン発見に見る、CEPs分析の具体性
この「具体性」の重要さがよくわかる事例が、アイリッシュウイスキー「BUSKER(バスカー)」です。
バスカーがそれまで想定していたCEPは、海外のブランドイメージに基づく「パーティーやバーベキューで、みんなでワイワイ楽しむ」という社交的なシーンでした。飲み方としても「ハイボール」を強く訴求していました。
ところが、アライドアーキテクツ社が提供するデータプラットフォーム「Kaname.ax®︎」でSNS上の自然な発話データを分析したところ、次の2つのズレが判明しました。
- 生活者はバスカーをハイボールとして飲んでいても、「ハイボール」という言葉をあえて使っていないケースが多く、バスカーとハイボールが結びついていない
- メーカーが想定していた社交的なシーンへの言及は、想定していたほど多くなかった
この気づきをもとに制作されたクリエイティブでは、海外由来の華やかな社交シーンではなく、日常に溶け込んだ家庭的な晩酌シーンと、「帰宅したら夫がバーテンダーをやっていた」という設定のインパクトを描きました。結果、新規層からの反響を獲得し、通常投稿の50倍の再生数を記録しています。
ここから見えてくるのは、ブランドが想定していた華やかな社交シーンではなく、日常のちょっとした特別感の中にこそ、生活者の実際の利用シーンがあったということです。CEPsは「メーカーが想定する利用シーン」ではなく、「生活者が実際に使っている言葉・文脈」の中から見つける必要があります。
なぜ、ここまで具体的でなければ効かないのか(メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ)
「メンタルアベイラビリティ」——購買を検討する瞬間に、自社ブランドがどれだけ想起されやすいか、という考え方があります。ブランドが想起されやすいかどうかは、認知度の高さだけで決まるわけではありません。「どれだけ多くの具体的なCEPとブランドが結びついているか」が大きく影響します。
「暑い時」のような曖昧なシーンでは、無数のブランド・カテゴリーが同じ土俵で競合してしまい、記憶に残る差別化ができません。一方、「サウナから上がってスッキリしたい時」のように解像度の高いシーンであれば、そこに入り込めるブランドは限られ、想起の優先順位を獲得しやすくなります。
あわせて押さえておきたいのが「フィジカルアベイラビリティ」です。これは、生活者が買いたい・使いたいと思った瞬間に、その商品を物理的に手に取りやすい状態にあるか、を指します。どれだけ具体的なCEPsでブランドが想起されても(メンタルアベイラビリティ)、その場面で実際に商品を見つけられなければ購買にはつながりません。CEPsを幅広く押さえることと、そのCEPsが実際に発生する場所・チャネル(店頭・ECを問わず)で商品を見つけやすく、買いやすい状態にしておくこと は、両輪で考える必要があります。

CEPsとVOC(顧客の声)の関係、アンケート調査・ソーシャルリスニングとの違い
ここまで読んで、「それってアンケート調査やSNS分析でも見えてくるのでは?」と思われた方もいるかもしれません。
CEPsは、VOC(Voice of Customer/顧客の声)を分析することで見えてきます。ただし、VOCには複数の集め方・読み解き方があり、それぞれ得意なこと・向いている目的が異なります。代表的な3つの方法を、CEPsという「具体的な利用シーン」をどこまで解像度高く発見できるかという観点で整理すると、次のようになります。
-
1.アンケート調査(企業側が設問を設計して尋ねる手法)
2.ソーシャルリスニング(SNS上の自然な発話を収集・分析する一般的な手法)
3.CEPsリスニング®︎(アライドアーキテクツ「Kaname.ax®︎」が行う独自の分析手法)
まず、アンケート調査を例に考えてみましょう。多くの企業が実施しているアンケート調査では、次のような設問が使われます。
- 「この商品にどの程度満足していますか」(5段階評価)
- 「この商品のどのような点が良かったですか」(自由記述)
この回答から、「いつ、どんな場面で、この商品を思い出して手に取ったのか」という利用シーンは見えてくるでしょうか。おそらく見えてこないはずです。回答は用意された設問の枠内に収まるため、企業が想定した評価軸に沿ったものになりやすく、また面と向かって尋ねられることで、本音というよりかしこまった回答になりやすいという特性があります。もちろん、満足度やブランドイメージを定量的・継続的に把握したい場合には、アンケート調査は有効的な手法です。ただ、「どんな場面でその商品が選ばれているか」についてのリアルな利用シーンや本音の発見には、あまり向いていません。
これに対して、SNS上の自然な発話を収集・分析する「ソーシャルリスニング」は、生活者が自発的に発した言葉を扱うため、設問による制約を受けません。この点で、アンケート調査よりも本音に近い情報が得られやすくなります。
ただし、一般的なソーシャルリスニングの多くは、ブランドや商品への言及数、感情がポジティブかネガティブかといった集計が中心です。ブランドの認知状況や評判のモニタリングには適していますが、その発話が「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ」使われた場面のものなのかという前後関係の深掘りは、通常のソーシャルリスニングの主な守備範囲ではありません。発話を集めるだけでは、大量の”つぶやきの山”が残るだけで、そこからどんな利用シーンが読み取れるのかがわからず、CEPsとして使える情報にはなりにくいのです。
ここに、CEPsリスニング®︎との違いがあります。「CEPsリスニング®︎は、SNS上の同じVOCデータを扱いながらも、一つひとつの投稿を「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ・どんな気持ちになりたいか」といった要素まで含めて構造的に読み解き、ひとつの具体的なCEPとして特定します。この深さがあるからこそ、「暑い時」ではなく「サウナから上がってスッキリしたい時」のような、具体的で使えるCEPまで解像度を上げて発見できるのです。
つまり、CEPsを発見するには、単に自然な発話データを集めるだけでは不十分です。その発話がどのような文脈で発せられたのかまで構造的に読み解けるかどうかが、精度を大きく左右します。

CEPsの分析方法・分析ツールとは
CEPsの分析方法には、大きく分けて次のようなアプローチがあります。
- SNSの投稿やECレビューなど、生活者の自然な発話データを分析する方法(ソーシャルリスニング/CEPsリスニング®︎)
- 利用シーンを起点に設問を設計したアンケート調査
- 個別の生活者に深く話を聞くインタビュー調査
- 購買データ・検索データを分析する方法
これらは手作業で行うと、データ量の多さや分類の難しさから、実務では大きな負荷になります。SNSやレビューのような自然発話データは量が膨大なため、目視での分類には限界があります。加えて、プラットフォーム側の制約により、外部からのクローリング(自動収集)で継続的に大量のデータを取得すること自体が難しいケースもあります。
そのため近年は、AIを活用してVOCデータを収集・分類し、CEPsを継続的に発見できる分析ツールの活用が広がっています。CEPs分析ツールを選ぶ際は、次の3点が重要な基準になります。
-
1.複数のVOCデータソースを横断して収集できるか
2.「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ」といった状況の要素まで深掘りして抽出できるか
3.SNS等のデータを安定的・継続的に収集できる基盤を持っているか
たとえば、アライドアーキテクツが提供する「Kaname.ax®︎」では、SNS上のデータを安定的・継続的に収集する基盤を持ち、大量のUGC(ユーザー生成コンテンツ)をリアルタイムに近い形で収集・分類することができます。それぞれの分析方法の使い分けと落とし穴については、次回第2回で詳しく解説します。

CEPsと対極にある視点:CExPs(カテゴリーイグジットポイント)
CEPsが「なぜ選ばれるか」を明らかにする視点だとすれば、その対になるのが「なぜ選ばれないか」を明らかにするCExPs(カテゴリーイグジットポイント)です。
これは、購入前の思い込みによる「購入障壁」と、実際に使ってみた後の「体験不満」という2つの軸から、ブランドが選ばれない理由を体系的に可視化する分析視点で、アライドアーキテクツが独自に定義し、Kaname.ax®︎で分析(カテゴリーイグジットポイントリスニング®︎)できるようにしたものです。
カテゴリーイグジットポイントリスニング®︎では、体験不満がどの程度強い感情を伴って語られているかを「感情強度」としてスコア化し、優先的に対応すべき課題を可視化します。CEPsとCExPsを両輪で見ることで、「新しい訴求機会の発見」と「離脱の防止」の両方に、データに基づいた根拠を持たせることができます。
CExPsの詳しい活用方法と事例は、こちらも次回第2回で解説します。
まとめ:CEPsを正しく理解する
- CEPsは「暑いから」のような曖昧なきっかけではなく、「好きなチームを応援している時」のような具体的な生活シーンで捉える
- 具体的であればあるほど、メンタルアベイラビリティ(想起されやすさ)が高まる。あわせてフィジカルアベイラビリティ(手に取りやすさ)も両輪で考える必要がある
- アンケート調査・ソーシャルリスニング・CEPsリスニングにはそれぞれ異なる役割があるが、具体的な利用シーンとしてのCEPsを見つけるには、「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ」といった要素まで構造的に読み解く必要がある
- CEPsの分析方法は複数あり、実務ではAIを活用した分析ツールの活用が広がっている
- CEPsの対概念として、「なぜ選ばれないか」を可視化するCExPsという視点もある(Kaname.ax®︎ならではの分析軸)
よくある質問(FAQ)
Q. CEPsとカテゴリーエントリーポイントは同じ意味ですか?
A. はい、同じ意味です。英語のCategory Entry Pointsを略してCEPsと表記し、個別の一つの利用シーンを指す場合はCEPと表記します。
Q. CEPsリスニング®︎とソーシャルリスニングはどう違いますか?
A. どちらもSNS等のVOCデータを扱いますが、一般的なソーシャルリスニングは言及数や感情の集計が中心です。CEPsリスニング®︎は、一つひとつの投稿を「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ・どんな気持ちになりたいか」といった要素まで含めて構造的に読み解く点が異なり、より具体的な利用シーンの発見につながるアライドアーキテクツ「Kaname.ax®︎」独自の分析方法です。
Q. CEPsとCExPsの違いは何ですか?
A. CEPsは「なぜ選ばれるか」というポジティブな購買・想起のきっかけを指すのに対し、CExPs(カテゴリーイグジットポイント)は「なぜ選ばれないか」という購入障壁・体験不満を指します。両者は対になる分析視点です。
Q. メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの違いは何ですか?
A. メンタルアベイラビリティは「購買を検討する瞬間に、ブランドがどれだけ想起されやすいか」を指し、フィジカルアベイラビリティは「想起された瞬間に、その商品を物理的にどれだけ手に取りやすいか」を指します。CEPsは主にメンタルアベイラビリティを高めるための考え方ですが、実際の購買につなげるにはフィジカルアベイラビリティもあわせて設計する必要があります。
Q. CEPsの分析方法にはどんなものがありますか?
A. SNS・ECレビューなど自然発話データの分析、利用シーンを起点にしたアンケート調査、インタビュー調査、購買・検索データの分析などがあります。詳しい使い分けは次回第2回で解説します。
Q. CEPs分析ツールを選ぶ基準はありますか?
A. 複数のVOCデータソースを横断して収集できるか、「いつ・どこで・誰と・何と一緒に・どんな時に・なぜ」といった状況の要素まで深掘りして抽出できるか、SNS等のデータを安定的・継続的に収集できる基盤を持っているかが重要な基準になります。
Q. VOC(顧客の声)の収集方法にはどんなものがありますか?
A. SNSの投稿、ECサイトのレビュー、アンケート調査、インタビュー、コールセンターへの問い合わせなどが代表的な収集方法です。
次回予告:第2回「CEPsの正しい発見の仕方」
次回は、CEPsを実際にどう発見するのか——SNS上の自然な発話データを使う際の落とし穴や、アンケート調査(アスキング調査)・N1インタビューとの正しい組み合わせ方について、実際の分析事例とあわせて解説します。
CEPsの理論的な背景(メンタルアベイラビリティなど、マーケティング理論としての位置づけ)をより深く知りたい方は、SMMLabの解説記事「カテゴリーエントリーポイント(CEPs)とは?」もあわせてご覧ください。
Kaname.ax®︎でできること
Kaname.ax®︎は、SNSの投稿やECレビューなど、あらゆる顧客の声(VOC)をAIで解析し、CEPsやCExPsのような「コミュニケーションの起点となるインサイト」を発見し続けるデータプラットフォームです。データ収集基盤「echoes」によるX APIとの連携など、安定したデータ収集基盤を土台に、シーン・オケージョン・タイミングまで踏み込んだ分析を行っています。
バスカーのような発見は、特別なブランドだけに起きたものではありません。自社ブランドにも、まだ気づいていない具体的な利用シーンが眠っている可能性があります。
▼Kaname.ax®︎の資料請求・お問い合わせはこちら
https://service.aainc.co.jp/kaname-ax


