国内最大級の専門カンファレンス【モバイル&ソーシャルWEEK2012】 2日目の内容をレポートします。


マーケティングに携わる経営層や担当部署の責任者、そしてソーシャルメディアやスマートデバイス向けサービスの開発者、モバイルとソーシャルの提供事業者など、デジタルマーケティング業界のキーパーソンが一堂に会して行われた国内最大級の専門カンファレンス「モバイル&ソーシャル WEEK 2012」。
 
2012年7月24日~26日の3日間にかけて行われた「モバイル&ソーシャル WEEK 2012」で、SMMLabが取材したセッションをレポートしています。今回は第二日目に開催された2つのキーノートの内容をご紹介します。
 

 

Keynote1:「グーグルが考えるマーケティング近未来図 〜スマホ、ソーシャル過半時代は間近に〜」グーグル 代表取締役 有馬 誠 氏


77%がスマホを持って出掛け、63%がモバイル端末からSNSにアクセスすると言われる今、「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」がトレンドとなりつつあります。世界のTOP20のブランドの検索結果のうち、25%がユーザーによって生成されたコンテンツへのリンクであり、消費者の53%がレビューを参考に買物をするというデータもあり、「SoLoMo」は個人としても、ビジネスとしても大きなチャンスとなっています。このトレンドにおいてグーグルが考える新しいマーケティングの姿を、代表取締役の有馬氏が語りました。
グーグル 代表取締役 有馬 誠 氏
有馬氏は「ソーシャル」「ローカル(地域情報)」「モバイル」という3つのトレンドが、マーケティングを大きく変化させていると語りました。

トレンドその1「ソーシャル」

「AKB48」の総選挙はライブ配信の視聴回数が300万回を越え、「ポルノグラフィティ」は2ヶ月で2万人のファンとつながり、「TOYOTA」はリアルタイムビデオチャット「ハングアウト」で、全世界に向けて新コンセプトカーのオンライン発表会を開催することによって、100万人のファンを獲得しました。このように、今までのメディアでは出来なかったユーザー同士、ユーザーと企業の「つながり」がソーシャルによって強化され、これまでのプロモーションとは違ったアプローチが可能になっています。

トレンドその2「ローカル(地域情報)」

「75%が店頭でスマホを使う」「91%がモバイルデバイスでローカル情報にアクセスする」というデータもあるように、ローカル(地域情報)というのはもともとモバイルとの相性がよいものです。「地図」から、「検索」から、「ローカル」から、「Google+」から、様々な入り口から情報にアクセスでき、必ず欲しい答えが見つかります。様々なサービスが有機的に連動することで、ローカル情報がより身近で便利に活用出来るようになるのです。

トレンドその3「モバイル」

スマホの利用率は、日本ではまだ20%と言われていますが、アメリカでは44%、イギリスでは51%、オーストラリアでは52%を超えており、アメリカでは、モバイルデバイスの検索利用頻度を合計するとPCに匹敵するまでになっています。特に家庭内での利用率が高まっているタブレットでは、検索からそのまま決済されることが多いといいます。また、モバイルに最適化されたサイトでは、CTRとコンバージョン数が向上するということも分かっているそうです。
このようなトレンドの中で、ますます簡単・気軽に情報を活用するようになると、人々の行動パターンに大きな変化が生まれます。ソーシャルメディアは個人の発信・共有を増幅させましたが、同時に「友達」というフィルターによって「情報」に信頼感や親近感が付与されることで、広告にも新しい価値を生まれはじめています。「Googleは様々なサービスを有機的につなぎ込むことでユーザーの利便性を高め、ソーシャルメディアをユーザー同士のコミュニケーションの場に限らず、企業であってもユーザーとの新しい関係を築ける場へと進化させたい。」と、有馬氏は語りました。
 
 
 

Keynote2:「ソーシャルメディア時代のプライバシー
〜「個人情報」から「プライバシー」保護へ」


野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 兼
未来創発センター金融・社会システム研究室
上級コンサルタント 小林 慎太郎 氏


スマートフォンやソーシャルメディアの普及とともに、個人に関するデータが日々大量に生成されるようになりました。こうした「ビッグデータ」の活用が注目される反面、データの不正取得を初めとするプライバシー侵害事件が後を絶ちません。ユーザーのネット社会への不安が高まる中で、プライバシー侵害リスクを懸念するあまり、機会損失している国内企業も少なくありません。こうした背景から小林氏は、ソーシャルメディア時代に増えつつある、「プライバシー」をめぐる課題への対処法のポイントを紹介しました。
野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 兼 未来創発センター金融・社会システム研究室 上級コンサルタント 小林 慎太郎 氏
現在、個人情報保護法の対象となるのは、氏名、生年月日その他の記述等により、特定の個人を識別することができる(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)生存する個人に関する情報です。個人情報と非個人情報を区別するポイントは「容易照合性」ですが、昨今三つの環境変化によってこの区別が非常に難しくなっています。
 
1) スマートフォンの普及
⇒行動履歴等の個人に関する情報が大量に自動生成されてネット上を流通
2) Facebook等の普及
⇒本人、友人が書き込んだ個人情報そのものがネット上に増大
3) ビッグデータの台頭
⇒ネット上の大量データを処理することで個人の識別が可能に
 
 
これまでは非個人情報であった行動履歴や統計データなどが、個人情報となりうる可能性が高まり、既存の個人情報保護法ではビッグデータ社会のプライバシー問題に対処することは難しいため、企業は従来の個人情報保護対応の見直しが迫られています。
 
 
欧米諸国ではプライバシーの保護と産業振興の両立を目指し、プライバシー保護法制が大きく見直されている中、日本でも今後対応が求められる三つのポイントがあります。
 
ポイント1. 行動ターゲティング
⇒個人の意向を尊重するメカニズムをどのように構築するか


ポイント2. プロファイリング/個人データ売買
⇒本人の同意に基づかない不正確な人物像の創出をいかに規制するか?


ポイント3. 子どもの保護⇒
子どものSNS利用が普及し、プライバシー侵害やいじめの温床となる懸念が増えている。また、一度拡散してしまった情報が消去出来ない限り、プライバシーや人権が継続的に侵害される危険がある。
 
 
この三つのポイントを踏まえた上で、ビッグデータ社会におけるプライバシー保護を実現させるためのポイントとして、以下の五つを上げました。
 

1)ユーザーの期待に応える初期設定・同意取得の仕組みを用意する


・コンテクスト(脈絡)から、ユーザーが驚かない範囲での情報取得、利用・提供の範囲を評価する。
・評価結果に基づき、プライバシー設定の初期設定への反映、取得への同意場面、簡潔な通知文を用意する。
・日本版“Do Not Track”のような情報システムの判読によるプライバシー設定自動対処の仕組みを導入する。
 

2)発生する可能性があるプライバシー侵害を事前評価してリスクを特定し、
最小化するプライバシーバイデザイン(Privacy-by-Design=PbD)を実施する。

・PbDを実践する手法として、プライバシー影響評価(PIA)を活用する。
・経済的損失リスクを定量把握し、対策コストを見積もる。
 

3)プライバシーポリシーにおける表示事項の適正化を促し、外部機関によって定期的に監査する。

・利用者の46.8%はプライバシーポリシーを読んでおり、メールアドレスを使い分ける等の対応をしている。
 

4)若年層、特に子どものプライバシー保護とリテラシーの向上

・日本の若年層は、EUと比較してオンライン上の個人情報の利用に対する認知度が低く、企業に対する個人情報保護への期待度が高い。
・EUが提唱する「忘却される権利」(一度書き込まれた情報がネット上にデータとして残り続けない)は、若年層のプライバシー保護を中心に対応されるべき。
 

5) 公的な指針やガイドラインの活用

・社会保障・税の番号(マイナンバー)制度では、プライバシー保護に重要な仕組みが誕生予定。
・マイナンバー制度を着実に運用しつつ、個人情報/プライバシー保護へ拡張させる道筋が必要。
・マイナンバー制度で導入される仕組みの着実な導入と拡大を目指す。
 
 
今後は、国際協調を図りつつ、「個人情報」から「プライバシー」の保護へと踏み込んだ対応を推進する覚悟が、官民ともに求められると締め括りました。
 
 
 
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