連日熱戦が繰り広げられている「ロンドンオリンピック2012」は、「ソーシャリンピック」と言われるほど、様々な場面で「ソーシャルメディア」が活用されています。「ソーシャルテレビ」によって、視聴者が観るだけでなく、参加出来るオリンピックとして盛り上がりを見せていますが、テレビの視聴スタイルが大きく変化し始めたことで、テレビ局やスポンサーとなる企業にはどんな変化が起きているのでしょうか?
こんにちは、SMMLabの藤田です。
テレビを見ながら、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを楽しむ「ソーシャルテレビ」という視聴スタイルは、スマートフォンの普及に伴い徐々に浸透し始めていましたが、今回の「ロンドンオリンピック2012」は、テレビとソーシャルメディアの融合が一気に加速するブレイクポイントになりそうです。そこで今回は、「ソーシャルテレビ」の隆盛によって顕在化してきた、テレビと企業の変化について考えてみます。
視聴者はソーシャルメディアに「つながりの場」を求めている。
電通総研が2012年2月に行った「ロンドンオリンピックへの期待や観戦スタイル」の調査によると、テレビを観ながらソーシャルメディアを利用したいと回答した人は15.7%と、北京オリンピック時が5.5%だったのに対して、約10%も増加していました。
どんな時に書き込みをしたいかという質問では、「勝利の喜びを分かち合いたい時(72.5%)」、「スリリングな試合内容の興奮を伝えたい時(54.9%)」、「選手に応援の気持ちを伝えたい時(41.2%)」と、ソーシャルメディアを活用することで「つながり」という連帯感を求めている回答が多くなっています。
■参考
電通総研「ロンドンオリンピックへの期待や観戦スタイル」
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2012/pdf/2012045-0409.pdf
「ロンドンオリンピック2012」はソーシャルメディアでどのように語られているのか?
ソーシャルテレビの最新情報やデータを発信している「ソーシャルテレビラボ」では、「ロンドンオリンピック2012」について、主にツイッターでの視聴者のつぶやきを収集し、分析しています。
出典:ロンドンオリンピック・ソーシャルTVレポートその2「7/28 開会式(NHK生放送)」http://socialtv-lab.org/?p=25808
開会式は、時差の関係で日本時間28日午前5時からでしたが、NHKの生放送時にTwitterでは、最高で一分間に400近くものツイートが書き込まれています。Mr.ビーン、ベッカムの登場やセレモニーの演出ポイントの他、「猫ひろしどこ?」「日本入場まだ?」「エリザベス女王飽きてる?」などと言った視聴者の「ツッコミ」を元に、会話が盛り上がっている様子が伝わってきます。
このように盛り上がりのポイントを見ると、かつてお茶の間や学校で交わされていたような会話が、ソーシャルメディア上に再現され、まさに「バーチャルお茶の間」として機能し始めていることが分かります。
こうした「ソーシャルテレビ」の盛り上がりは、今まで視聴率という数字でしか知ることが出来なかった視聴者の反応が、ソーシャルメディア上でリアルタイムに詳細を知ることが出来るようになったということであり、テレビ局や企業と視聴者の関係性が変わりつつあることを意味しているのではないでしょうか。
ソーシャルテレビが企業のメディアプロモーションを変化させる
海外では既に、幅広くソーシャルメディアを活用したプロモーションの可能性が広がり始めています。
企業におけるソーシャルメディアの活用状況を分析する英ソーシャジリティでは、ロンドンオリンピックのスポンサーにおけるソーシャルメディアの活用と効果を数値化し、「ザ・ロンドン 2012・ソーシャルスコアボード」としてランキングしています。
出典:http://olympics.sociagility.com/
※2012年8月3日現在
中でもP&Gの「Thank you, Mom」キャンペーンは、YouTubeで公開した企業CMの再生回数が2600万回を超え、母に送るメッセージや写真、動画を投稿できるFacebookの特設ページに、アメリカだけで67万人近いファンを集めるなど、大きな反響を得ています。
http://www.thankyoumom.pg.com/thank-you-mom
一方日本では、まだまだ限られた企業による取り組みに留まっていますが、ソーシャルメディア活用の先進企業として知られるコカ・コーラ社は、Twitterのコカ・コーラ オリンピック応援パーク アカウント(@London_CCPark)において、ソーシャルメディア上で見つけた“オリンピック”や“コカ・コーラ”、“北島康介”選手に関するツイートに、積極的に返信していくという、「ソーシャルレスポンス」に取り組んでいます。
※参考記事
コカ・コーラがオリンピックで始めるLINEのスタンプ活用とソーシャルレスポンス
http://www.advertimes.com/20120725/article77426/
これは企業が今まで以上に積極的に視聴者に関与していく試みであり、今後「ソーシャルテレビ」の連動にも、大いに期待が高まる施策ではないでしょうか?
テレビ局もソーシャルメディア活用を意識しはじめた
テレビとソーシャルメディアの相性の良さは以前より言われてきたことですが、今までは視聴者の「つながりの場」として、テレビ視聴の「受け皿」的に位置づけられていたに過ぎませんでした。しかし、ほぼリアルタイムで視聴者の反応や反響が量的に把握できる様になった上、その量が急激に増大してきたことで、テレビ局にも「顔が見える」ようになった視聴者を意識した番組作りや、新たなコミュニケーションのための「場」を自ら提供する動きが活発になってきています。
こうした背景を元に、ソーシャルメディアを効果的に活用したテレビ番組を表彰する「ソーシャルテレビ・アワード」が創設され、初回となる「ソーシャルテレビ・アワード 2012」が先日7月25日に発表されました。
“番組制作にソーシャルメディア上のユーザーの声を積極的に取り入れている”“番組情報をソーシャルメディアを利用して積極的に発信している”“ソーシャルメディアでのバイラル効果で視聴率獲得に寄与した”“ソーシャルメディア上での話題作りを戦略的に行った”などを基準とした審査で、大賞にはTBSが2012年4月に放送したスペシャルドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~翔』が選ばれました。
受賞式で、番組のプロデューサー今井夏木氏は、「同じスタッフで手掛けた『ケイゾク』が、視聴率は正直あまりよくなかったが、放送後ネットで評判になりブームとなった経験から、今回は番組放送前から予告編などを流してネットで口コミが広がるようにしていた。『SPEC』も最初のテレビシリーズの視聴率は余り奮わなかったが、やはりシリーズ終了後にネットで話題となり、TBSオンデマンドでは歴代1位を記録し、DVDの売上も好調だった。そこで、スペシャルドラマ『SPEC~翔~』では、放送前から戦略的にオンデマンドで予告やメイキングを流したり、Twitterなどで撮影の様子や放送でのリアルタイム解説をつぶやいたほか、スペシャルドラマ放映時にはデータ放送とTwitterを連動させるなど、様々なアプローチで視聴者との交流を図った。」と語りました。
『SPEC』は、この後映画化された『劇場版 SPEC〜天〜』のほか、漫画、ノベライズ、ソーシャルゲームなども大人気となるヒットコンテンツになりました。
テレビ局の「ソーシャルテレビ」への取り組みというと、Twitter活用によるリアルタイム視聴が注目されてきましたが、『SPEC』の成功は、ソーシャルメディアを活用し、時間をかけて熱烈に支持してくれるファンを増やすことで、コンテンツの価値を醸成し、ヒットに育てるという新たな可能性を生み出したと言えるでしょう。
「テレビ」と「パソコン」の関係は「モバイル」を仲介として、余暇時間を取り合う対立構造から、補完しながら同時に楽しむ「トリプルスクリーン」に進化し始めました。リッチコンテンツに高度に対応しうる、「スマホ」や「タブレット」が「モバイル」の主役となることで、今後はコンテンツ視聴だけに留まらず、ショッピングやロケーションビジネスとの連動にも、新たな可能性が生まれるに違いありません。「ソーシャルテレビ」は、視聴スタイルだけでなく、視聴者の「テレビ」への関わり方自体も変化させる、大きなパワーを秘めています。この変化にどうやって対応していくのか、テレビ局や企業は新たなアイディアとチャレンジを求められています。
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