LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)の定義とは?どうして今「LTV」が注目されているのか。LTVが重要視されている背景や、具体的な算出方法、LTV向上を目的とした施策を成功させるポイントを解説します。
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?用語解説
LTV(LifeTimeValue/ライフタイムバリュー)は、日本語では「顧客生涯価値」と言います。
1人(1社)の顧客と企業が取引を始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)を通じて、その顧客が企業やブランドにもたらす損益を累計して算出したマーケティングの成果指標を指す言葉です。
LTVは、1人(1社)の顧客がある製品や企業に対して付き合っている間に支払う金額合計から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」によって求めることができます。
参考: LTV(顧客生涯価値)を実際に求める方法とは?|@IT情報マネジメント
新規顧客獲得の競争が激化する時代に重要性が増すLTV
新規顧客を獲得するためには、まずは顧客に製品・サービスを認知、理解してもらうことが必要です。しかしその為には、ある程度の広告費(キャンペーン費用やクーポン費を含む)や人的資源の投入が必要となり、そのコストは一般的に、既存顧客を維持するコストよりも5倍ほどかかるとされています。
もちろん、製品やサービスを広く認知させ、「市場シェア」を拡大するため、新規顧客の獲得は必須です。一方で、長期的に見て効率的に利益を上げていくため、一人一人の顧客における、製品やサービスの「顧客シェア」の拡大、つまりLTVを向上させる施策が重要です。
加えて近年、新規顧客獲得施策の一つである広告の市場は、目まぐるしく変化しています。特にデジタル広告市場では、ブラウザによるCookie制限(※1)、広告媒体の掲載基準変更(※2)など、変化の流れが早く、企業はその都度柔軟な対応が求められています。
Cookie(クッキー)規制、IDFA変更についてはこちらの記事で解説をしています。
▶Cookie(クッキー)規制・IDFA変更で何が変わる?アンチトラッキングの概要・影響範囲と今後の対策を解説!
(※1)Cookie制限とは
Webサイトの訪問回数やユーザーIDを保存しておく仕組みであるCokkieのなかで、訪問先サイトのドメインに紐づかずに生成されるサードパーティCokkieは、リターゲティング広告などデジタル広告運用に欠かせないものであった。一方で複数のユーザーのweb上での行動を追跡・特定することが、個人情報保護の観点から問題視され、各ブラウザではその利用を規制する動きを強めている。
(※2)広告掲載基準の変更
ユーザー保護や広告掲載面向上の観点から、各媒体では虚偽や誇張表現が用いられた広告の規制や、それらをが含まれたページの検索順位を下げるなどのアップデートなど行なっている。広告主はこれらの変更をキャッチアップし、広告LPやクリエイティブの見直しなど対応することが必要である。
同時に、2019年のインターネット広告費がテレビ広告費を上回った(※3)ことが物語るとおり、インターネット広告施策に注力する企業は増加。CPCの高騰傾向が続き、新規顧客獲得の競争は激化しています。このように、新規獲得施策自体の難易度があがってきたことも、既存顧客(リピーター、常連客、固定客等)との関係性を重視し、LTVを向上させる施策への注目を高めている要因となっています。
(アライドアーキテクツ社・広告運用実績調べ)
※3)参考:2019年 日本の広告費|株式会社電通
消費者の価値観変化に伴いサブスクリプションモデルが台頭、LTVへの関心が加速
消費者の購買に対する価値観はここ数年で変化してきました。特に購買を通して商品を所有するモノ消費に対し、コト消費、いわゆる体験にお金を払う意識は確実に強くなっています。そしてそのニーズに対応したビジネスモデルやサービスや数多く生まれています。そのひとつとして、商品の所有よりも、便利に利用できることに重点をおき、商品やサービスを利用する権利に顧客がお金を支払うサブスクリプション型のビジネスが成長をしています。その市場規模は2019年時点で1.1兆円まで拡大し、2023年には26%増の1.4兆円にまで成長する見通しです。(※4)このサブスクリプション型ビジネスの台頭も、LTV重視のマーケティング施策への注目を加速させています。
このビジネスの成功には、まず、顧客のサービス継続率を伸ばしていくこと。そして、顧客満足度をあげてクロスセル・アップセルへ繋げることが重要です。この点から、サブスクリプション型ビジネスにおいてLTVはその成果を測るために欠かせない指標なのです。
<サブスクリプションビジネスのマーケティングについて知りたい方はこちら>
▶サブスクリプションビジネスで成果に繋げる、顧客体験の設計とは?【サブスクサミット 2019 イベントレポート】
LTVの具体的な算出方法
LTVの算出方法はいくつかあります。以下はそのなかでも代表的なものです。
①LTV= 1顧客の年間取引額 × 収益率 × 1顧客の継続年数
②LTV= 全顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
③LTV=(売上高-売上原価) ÷ 購入者数
LTVは、本来は1人の顧客ごとに算出していくのが理想です。しかし、実際には1人1人の購買金額と費用を計算するのは難しく、顧客全体をベースにして一人あたりの平均LTVとして求められることが現実的です。
また、いくら売上額が高くても、そのためにかかる費用が大きければ利益にはなりません。よって、厳密には売上ではなく収益率で計算する方がより実態に即したLTVと言えます。
LTVを向上に導く施策のポイントとは
長期的にLTVを向上させるには、顧客との接点を維持して信頼関係を築くことが欠かせません。メールやDMといった従来型CRM施策の他にも、現在はソーシャルメディアを活用した施策も一般的になりつつあります。ソーシャルメディア上では、企業と顧客とがダイレクトに繋がりをもち、双方向性のあるコミュニケーションを行うことができます。これは企業と顧客が相互に理解しあい、継続的にその関係性を深めるのに効果的です。
<ソーシャルメディアを活用して顧客との関係構築に成功した事例はこちら>
▶D2Cは原価度外視の初期投資がカギ。DINETTE尾崎氏が語る新しいコスメブランドの形とは?
また、顧客との関係性を深めるコミュニケーションはオンラインに限りません。スキンケア商品を主力とした通販コスメ大手のマナラ化粧品では、オフラインでの顧客と交流する施策に力をいれています。同社の「1000 Meets Up!」と題した企画では、自社のファン1000人と直接あって話すことを目的とし、1年を通して大小様々な規模のオフラインイベントを開催しました。地道な活動で確実に顧客の熱量を高め、その結びつきを強固なものにしています。
そして、こうした施策の効率を上げるためには、マーケティングを線で捉える視点が求められます。例えば、ミールキットの販売を行なっているオイシックス・ラ・大地では、LTVを効率的に高めていくためにカスタマージャーニーを作成し、顧客がサービスを認知してから定期購入後までの過程を把握。その結果、定期購入の継続には購入前の広告や口コミ、お試しセットなどの体験が重要となることがわかりました。これによって同社では、顧客に対するコミュニケーションのそれぞれの段階における評価指標を正しく設定し、LTVを効率的に向上させる取り組みを行なっています。
この事例に見られるように、顧客は、商品の購入前の広告や口コミ、商品の購入時、その後のコミュニケーションなど様々な体験をします。こうした顧客の体験を一連の流れで把握することで、顧客を包括的に理解し、より効率的なタイミング・内容での施策の実施が可能となるのです。
<もっと詳しい取り組み事例を紹介>
▶大地を守る会・マナラ・VELTRAが語る、変動が激しいデジタル市場で新規獲得施策をどう転換すべきか?【EC×デジマ談義 セミナーレポート/前編】
イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ