ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】

 
こんにちは、SMMLabの藤田です。
今回は、ブロガーコミュニティーで生活者との新しい関係構築を実現されている、株式会社くもん出版 経営企画部 企画チームリーダーの小山衆氏と編集部 絵本・幼児教材チーム 宮本友紀子氏にお話を聞きました。

株式会社くもん出版 小山衆氏・ 宮本友紀子氏
株式会社くもん出版 経営企画部 企画チームリーダーの小山衆氏(右)と編集部 絵本・幼児教材チーム 宮本友紀子氏(左)
 
――まずは御社で取り組まれている広告・マーケティング施策の全体像をおしえていただけますか?
小山:当社の場合、出版社という要素とおもちゃメーカーとしての要素が半分半分となっています。おもちゃメーカーの場合、一般的にはテレビCMや雑誌などへの出稿が多いかと思いますが、当社の場合はほとんど個別の商品に関するプロモーションにコストはかけていないんです。
リスティングやアフィリエイトは、試しにやってみたこともありますが、弊社の商品というのは、本屋さんとかおもちゃ屋さんなど小売店で販売してもらっているため、広告効果の評価としては、結局小売店の支援ということになる。また、自社で通販もやっていますが、近年のネット書店の急速な伸びによって、自社のウェブでやるべきことと売り場の方でやるべきことの、役割が変わってきていると思うんですね。ネット上だけに限るとアマゾンさんの売り場にコストをかけた方が、ダイレクトに効果が出る(笑)
また、以前は自社サイトに来られる方の行動パターンというのは、「店頭で商品を見た、もっと知りたい、じゃあくもんのサイトにいく」という流れだったんですが、今はネット書店で足りない情報がある時に補足的に自社サイトにいらっしゃる方が多い。そうすると自社サイト単体で特定商品にプロモーションコストをかけることは不合理になりつつあるので、自社での広告出稿や特別なSE0は今のところ考えていません。
くもん出版は「KUMON」という大きなブランドの下でやっているビジネスですから、「KUMON」ブランドの価値向上とその伝達という大きな目的があって、その下に個別の商品のプロモーションがある。ですから、くもんグループの根本的な考え方や「KUMONらしさ」を、玩具や書籍といった商品を通して体感していただくということが、我々の役割だと思っています。
 

購入者アンケートから得た気付きを元に、
店頭で伝わらない商品の魅力を伝えるために立ち上げた公式サイト



――2003年に公式サイトを立ち上げられていらっしゃいますが、その目的や位置付けを教えて下さい。2003年の時点で「お客様の声」や「作り手のメッセージ」といったコンテンツを取り入れたのは先進的だったのでは?
小山:2003年に公式サイトを立ち上げたときは、かなりリアルな課題を抱えていたんです。弊社の商品は割と分かり辛い商品が多いため、説明が必要なんです。そういう商品をどのように理解していただこうかという時に、フィールドのメインは店頭ですから、ちゃんと使い方をご説明すれば、手に取っていただけるんじゃないかということだったり、我々はどうしても説得したくなるんだけれども、お客様の声を借りた方がいいのでは? など、店頭で出来ていないことは何かと考えました。
このあたりはご購入いただいたお客様からのアンケートハガキ(購入者ハガキ)から得たことが多いですね。今でも年間3万枚位いただくんですが、それを見ていく中で、我々がこういう風に認識して欲しいということと、お客様の考えていらっしゃることにギャップがあることに気付いたんです。それをどう埋めていくかを考えた時、店頭だけでは多分無理だろう、でも大きなCMを打つというようなこともちょっと考えにくい。じゃあウェブで何か出来ないかということになり、今上がっているようなコンテンツになっていきました。
 
くもん出版 公式サイト
くもん出版 公式サイト:http://www.kumonshuppan.com/
 
小山:公式サイトのコンテンツは大きく分けて、商品自体の理解と、背景に対する理解という二つに分かれていますが、メインは商品理解ですね。現状だとソーシャルとの連携というのがちょっと後手に回ってる感があるんですが、それは最初に作った枠組みが、大きく変化した外部環境にマッチしづらくなってしまったというところで、現在は外部の機能で代替出来るものを活用している状況です。本来的には自社サイトをその中でどういう使い方にしていくか考えるべきなので、最終的には統合も念頭にはおいています。
 

対峙する関係ではなく、子どもを一緒に見守る「同志」としてお客様と繋がる



――購入者ハガキというお話がありましたが、昔から消費者を理解する活動の土壌をお持ちだったのですね?
小山:元々弊社の商品開発は、お子さまに対するモニタリングだったり、お客様のご意見だったりというところを大切にしてきました。もう一つ、玩具に限って言えば、20年近くやってきた百貨店の店頭などでの製品体験イベントから得てきた経験が大きいですね。

株式会社くもん出版 経営企画部 企画チームリーダー 小山衆氏

株式会社くもん出版 経営企画部        企画チームリーダー小山衆氏


製品体験イベントというのは玩具のプロモーションの中では一番大きなウエイトを割いてきた取組みです。接触出来る人数は少ないんですが、非常に深い体験が得られる場ですので、定期的にやってますし、スタッフもみんな経験を積んでいます。
ただ、製品体験イベントは費用対効果を考えてたら出来ない施策。実は弊社のスタッフは「最後買わせる一押し」が決して得意ではありません。それよりも「お子さんスゴいですね」って褒める。褒めるとお母さんは喜ぶじゃないですか。その場で売ることだけが目的ではないんです。いわゆる実演販売と違って、即日売り上げに結びつきにくい。でもありがたいことに会場をお貸し下さっている小売店さんも「くもんさんのイベントはそうだよね」と理解して下さいっています。当日は売れないけども確実にその後の売り上げに繋がっている。だから小売店さんからも評価いただいているんじゃないかと思います。体験イベントをやると、最前列で実際に参加している方は買わないで帰ってしまったりするんですが、不思議と遠巻きにしていらっしゃる方が買っていかれる方が多いんですよね。特にお父さん(笑)
 
――もしかしたらお父さんはお子さんの「出来た!」という瞬間に立ち会うことが難しいから、その姿がみたいのかもしれませんね。くもんさんの玩具がその瞬間を創り出すきっかけになっているのでは?
小山:でもお母さんこそ普段いつも一緒にいるから、お子さんの変化に気付き難くなっているということもあるかもしれませんよ。 0、1、2歳のときは立った、歩いたという分かり易い成長の変化がありますが、3歳を過ぎたあとの知的発達においては、その変化に気付き難くなってしまうのでは? 子どもの変化の瞬間を案外見逃してしまっているのではないでしょうか?
親御さんはお子さんの変化の瞬間に触れた時に気持ちが高ぶるんです。子どもの成長を感じたときの喜び、感動が親御さんの心を開かせるのだと思います。だから我々のコミュニケーションって、「お宅のお子さんはそろそろこんなことが出来るようになっているのではないですか?」というように、変化に気付くきっかけをご提供することだと思うんですよ。
線がまっすぐに引けるようになったとか、“の”の字が書けるようになったとかって、大人から見たらすごく些細なことかもしれませんが、子どもにとっては実はとても大きな進歩なんです。それを親御さんに気付いていただくお手伝いをするのが我々の仕事で、体験会ではその場で気付きの瞬間を創り出せるんです。
お客様の立場になれば分かることですが、だれも“説得されたい”とは思っていない。だから「説明によって認識を変えられる」というのは企業都合の思い込みだと思います。お子さんの変化に気付いたとき、親御さんの『心の窓』が開く。そこで初めて“説明”を受け入れてもらえるようになると考えています。ですから製品体験イベントでは、単にお子さんに製品を使っていただくだけでなく、一緒にいる親御さんに「今、うちの子成長してる」と気付いていただく深い体験が重要で、製品はきっかけにすぎません。
また、お子さんの変化への気付きをご提供することによって、我々はお客様と対峙する関係ではなく、子どもを頂点とした三角の関係で話が出来るようになる。一緒に見守る「同志」としての繋がりが生まれるんです。そうするとそこで買わせる為の一押しなんてしてもしょうがないじゃないですか。その繋がりがもてただけで十分なんです。
ユーザー(子ども)が購入者ではないので、その部分の難しさはあるけれども、変化への気付きをご提供し続けていけば、関係は深くなっていくし、『心の窓』が開いていく。その結果として買っていただけたり、使っていただけたりするものだと信じています。
――選ばれるための記憶になる、ということですか?
小山:そうですね。弊社の製品はどれもオリジナリティーを追求してはいますけれども、真似することは簡単ですよね?パテントが無いものだったらコピーしちゃえばいいことなので、そんなに難しいことではない。実際今、製品開発のサイクルって各社、短くなってきていますから、似たようなものがすぐに出てくる。あとから出てくるものは当然価格も安い。じゃあ、その時にどうやって競争力を維持するかというと、最終的には「選ばれる理由ってなんなんだ」というところに行き着くと思うんです。とことん良い製品を作るのは当然ですが、多分もうクオリティーだけで勝負していけるわけではない。お客様との関係の中において「やっぱりくもんさんと付き合っていたい」「くもんさんのものを使いたい」そういってもらうためにはどうしたらいいかを考えていかなくてはいけないと思っています。
――製品体験イベントですでに「エンゲージメントの醸成」を実現されていたわけですね?
小山:ただ、製品体験イベントの限界として、とにかく接触出来るお客様の数が少ない。1回開催して50組ぐらいで、基本的に土日だけですから、年間に100日ぐらいしかない。全国各地に行けるわけでもないですし、そうするとやっぱり限界がありますよね。深いんだけど、広がりがまだまだ足りない。じゃあ、これをどう広げていくんだというときに、ソーシャルの力というのはもしかしたらなにかあるかもしれない。どうやったらいいかは未だ見えてないですが、そこの可能性は探っていきたいなぁと思っていますね。
 
 

ブログマーケティングで見えた消費者のリアルな姿

 
――2010年からブロガーマーケティングに取組まれていますが、これは製品体験イベントをウェブで再現するというチャレンジのひとつだったのですか?
小山:玩具は大きくわけて、キャラクターものと、弊社が扱っているような知育玩具に分かれています。キャラクターものはシーズンで売り切る必要があるので、結構大きなプロモーションコストをかけますし、やはりTVCMが効果があるのですが、知育玩具は百貨店で淡々と売れていく商品が多く、ロングセラーなので、そんなに大きなプロモーションはかけない商材なんです。ただ、メインユーザー層である3歳から5歳ぐらいを対象にしたメディアが無いため、そもそも商品自体の認知が得られにくいという悩みがあります。妊婦さんや赤ちゃんを対象にした0歳〜2歳のメディアは、雑誌もあるしネットの専門サイトなど一杯あるんですが、不思議なことに3〜5歳向けはないんです。弊社の商品との接触のポイントが店頭に限られてしまっていたため、「知らせる」「知ってもらう」メディアを探していたところで、ブログなら説明が必要な弊社商品を、体験した方に深く紹介していただけるのではと思い、モニプラでの取組みを開始しました。
 
くもん出版 モニプラfansite
くもん出版 fansite:http://monipla.jp/kumonshuppan/
 
小山:最初のうちは単純にブログで紹介してもらえるのが嬉しくて喜んでいただけだったのですが、1年ぐらいやっていく中で、認知を獲得することよりも、消費者の方のリアルな生活が見えてきたことのほうが、興味深くなってきました。我々メーカーは、商品によっては年間100万冊売っているようなものもあるので、それだけの数のお客さまがいるのは分かっていますが、エンドユーザーとの直接の接触は少ないので、お一人お一人の生活は見えてなかったんです。それが、何をどういう風に使ってもらってるかとか、覗き見出来るというか、自然に見えてきたのが非常に面白いなって感じましたね。また、こちらが意図していることが必ずしも伝わってないし、逆にそれを上手く消化して使っていただいているということも感じ、そこから得られるものが色々と大きくなってきて、目的が傾聴とか観察とか、そういう方向にシフトしていきました。今はまだ覗いてみて楽しんでいるだけで、傾聴の段階までいっていないかもしれませんが(笑)
 
宮本:2011年の後半からはその点を意識して、「突撃隣のおもちゃ箱」という、お宅のおもちゃ箱を見せてくださいという企画をやったんですが、もう、リアルなんですよ、これが(笑)もちろん綺麗に整理されている方もいらっしゃいましたが、意外と生活感がたっぷりの光景をみせていただきました。
投稿いただいたブログの写真をチームで見ながら深堀りしたりするんですが、自社の商品の隣にライバル会社の商品が並んでいたりもするわけです。私たちからすると「え?これも持ってるの?」と思うんですが、お客様の心理を考えていくと、私たちメーカーや企業がよく、お客さんをファンにするとか、エンゲージとか言うようなことを、お客さまは考えていないんじゃないかと思うんです。もっと自由に考えていて、ひとつのブランドに縛られたいなんて思ってない。だから先ほどのお母さま方の中では、弊社の商品とライバル社の商品の間に区別なんてない。そういうことを前提に考えていかないと、「私たちはブランドなんです」って思い違いをしてしまう気がするんです。そういう点で突撃企画はすごく楽しみにしています。
その後に実施した絵本をテーマにした企画の時も軽くショックを受けました(笑)「たくさん絵本を持っています」とおっしゃる方が多いのですが、お持ちの絵本は私たち絵本の出版社が思っているような絵本とはちょっと違ったんです。もちろんロングセラーや良い絵本と言われているものを揃えてセンス良く並べている方もいらっしゃったんですが、大多数のご家庭では仕掛けがあったり音が出るような、おもちゃと絵本の中間のような商品が棚の一定割合を占めていたりして、絵本というものをもっと広く捉えられていることが分かりました。よくある「月に何冊絵本を買いますか」というような調査の結果に、「こんなに絵本の需要があるなら、ウチの本ももっと売れても良いはず」だと思っていたのですが、今まで感じていた違和感の正体が分かったような気がしました(笑)
 
――いわゆる「お客様の声」からだけでは分からなかった実態が伝わってきたんですね。
参加された方々の間では、「ウチはこうだけど、お宅はどう?」といった井戸端会議みたいな雰囲気も生まれていたようですね?
宮本:確かに、絵本の企画の時は、参加者の方の間でどうやって収納してるかみたいな会話に発展していましたね。

宮本友紀子氏 編集部 絵本・幼児教材チーム

株式会社くもん出版 編集部 絵本・幼児教材チーム  宮本友紀子氏


――「コミュニティー」が成長してきて、「ここはこういう人たちがこういう話をするための場なんだ」という意図を参加者たちが理解してきたところに、今度はその人達が楽しめる話題のネタを提供しているという感じでしょうか?
宮本:最初は多少「ブログで宣伝してほしい」と思ってたところがあったのですが、だんだん観察することが楽しくなってきて、今は「あの方達が楽しく参加してくれるのはなんでだろう」というステップに入ってきてる気がします。ですから最近の企画は、ファンになってくれている方が面白がって参加出来るテーマは何かを考えています。試して感想を書くだけでなくて、参加するということをすごく意識していますね。
たとえば、色んなイチゴが出てくる可愛い絵本がありまして、それを読んで実際にお子さんとお家でイチゴスイーツを作ってみて下さいってお願いしたところ、本当に美味しそうなスイーツを沢山ご投稿いただきました。読むだけじゃなく、生活に繋げていくことで、お子さんと一緒に楽しむことが出来るという、素敵な絵本の楽しみ方をぜひ実践してみましょうと、上手くご提案出来た企画だったと思います。
 
小山:こうして考えてみると、モニプラに取り組んできたこの2年の間に、ファンの皆さんからとても沢山のことを教えていただいたと思います。生活者とどのような関係を築いていったらいいかと考えた時に、我々にはどうしても「くもん」というブランドがあって、それを説明しなきゃと思っているから、上から目線で「こうですよ、ああですよ」って、説明したり説得したりしてしまいがちですが、多分それではダメなんだと思います。最初はちょっとそんな気持ちもありましたが、だんだん観察するようになり、少しづつ傾聴にもなってきた。多分これもファンの皆さんに教えてもらっていることなんじゃないかと思います。
 
 

ユーザーの正しい理解を助けることで、ブランドの本質がより深く伝わる

 
――コミュニティーが成長していく中で、ブランドや商品の理解が進んで、今やもうファンが協力してくれるまでの段階になってきているんですね。ロイヤリティの高まりも感じられているようですが、今後ファンのみなさんと一緒になにかを作るといった共創的な活動のご予定はありますか?
小山:その可能性もないわけじゃないと思いますね。ただその時に忘れちゃいけないのは、我々が「くもん」の人間だというのは絶対変えられないところで、ただの友達じゃないんですよ。ファンの方達が他の色んな企業や個人とも関係を持つ中で、「くもんの人たちだからこそやって欲しいこと」、「くもんの人とやりたいこと」にきちんと特化していかなきゃいけない。楽しく一緒に仲良くなれれば何をやっても良いという話ではない。だから一緒に何か企画を開発しましょうってことであったとしても、やっぱりそれはくもんらしいものじゃなきゃいけなくて、最後はくもんだからこういうものを出すんですよ、くもんだからこうするんですっていうのがなきゃいけない。「みなさんが多数決で決めました」というような商品では、うちでやる必要はないし、多分最終的にそれは支持されないと思います。
小山衆氏 株式会社くもん出版 経営企画部 企画チームリーダー
――もしかしたらくもん出版が伝えたい「くもんらしさ」では無いかもしれないけれど、ファンが自分たちなりに理解した「くもんらしさ」を逆提案してくれそうな感じがありますね。
小山:その通り、我々よりもお客さんの方が分かってるんです。当たり前ですが、我々はくもんについて色んなことを知ってしまっているから、「くもんてああだよね、こうだよね」と複雑に語ろうとしますが、ブランドってあるレベルを超えると一人歩きをし始めて、企業のものじゃなく見ている人たちが決めるものになってしまってるんですよね、特にソーシャルメディアでは「くもんてこうだよね」って語られてしまう。
弊社でいうと、一般の方はよく、公文式教室をやってる会社と同じ会社だと思っていらっしゃる。そこでついつい我々は、「くもんはくもんだけど、うちは出版社で、おもちゃもやってて〜」って言いたくなるんだけど、違うんです。お客様からすれば、くもんはくもんなんですよ。公文式教室の宿題をやることをよく「くもんする」と言われますが、くもん出版のドリルをやる時も、親子の会話の中では「くもんする」という認識の範疇にある。我々としては、説明は必要なんだけれども、その認識を変えていく必要はなくて、より高めていく方向に力を注ぐべきだろうと。
 
――ユーザーの正しい理解を助けることで、ブランドの本質がより深く伝わるということでしょうか。先ほどからお話を伺っていると、モニプラでのお取り組みは当初の想定とは違った展開になってきているようですね?
小山:そんな気がきますね。モニプラのほうは今、私たちが考えていることとはある意味関係なく、お客様主導で動いているところがあって、もう主導権がユーザーの方に移っているような気がします。場の提供であったり、テーマの提供はしているけれども、我々の理屈はちょっと後付けになってきているかもしれないと思っています。決してそれは、ベクトルがズレている訳ではないので、それで良いと思っているんですけれども。
 

これからのメーカーに必要なのは
「能動的に関与してくれる購買者」以外とどのような関係を築くか

 
――ところで、よくモニターブロガーさんは「商品を買わない」と言われますが、そういった「買わないけどファン」という人たちとのお付き合いをどう考えていらっしゃいますか?メーカーとしては複雑だと思うのですが。
小山:モニプラの面白いところはそこだと思いますよ。これまで、我々メーカーと生活者と言われる人たちの関係性というのは、買ったか買わないかの一つしかなかったんです。もちろん、我々が関係を持てるのは買った人だけですが、でも買った人って少数派ですよね、広い世界で見た時には。また、最初にお話しした購入者(愛読者)ハガキというのは、買った人たちのうちの何%かが送ってくださるものなので、そういう意味では極めて限定的で、「能動的に関与してくれる購買者」という、ある種特殊なお客様だったわけです。ですから、そこだけ見てていいのかなというのがあったんです。お客さまでない人たちとどのような関係を持てるのかというのが、モニプラの面白いところだと思います。だからファンの方達をダイレクトにお客さまにしたいとはあんまり思ってないんです。でも、突撃企画なんかでふたを開けてみると、ちゃんと弊社商品が棚に並んでいて、「あぁ、結構買ってくれてるじゃない」って感じですよ(笑)
宮本:そうですね、現場で担当していると、コアなファンの方々はモニター商品だけじゃなくて、ちゃんと日常的にも使ってくださっているのが分かりますし、しかもかなり信頼を置いて下さっていると感じています。
小山:やっぱりやればやっただけのことが返ってくるので、そこは実際に担当していたら分かるでしょう。お客様のありがたいこと、ファンの人たちのありがたいことで、何かやればかならずフィードバックがある。これは実は、メーカーの立場としてはあまりないことなんですよね。お客さまからのフィードバックって基本的には売り上げでしか見えないんですよ。ハガキというものはあるけれども、リアルタイムで書き込んだコメントに返事が返ってくるというこの感覚はなかなかないですよ。ソーシャルメディアの影響力が大きくなってくる中で、メーカーじゃなきゃ出来ないこと、メーカーがやるべきことはなにかと絞り込むと、多分それはエンドユーザーと直接繋がっていくってことだと思うんですよね。
 
<後半へ続く>
前半は、株式会社くもん出版のウェブ施策の目的とその背景についてお聞きしました。後半は、ソーシャルメディアに対する企業の取組み方について、より具体的な内容についてお聞きしています。後半も、お楽しみに!
 
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プロフィール
小山衆氏
株式会社くもん出版 経営企画部 企画チームリーダー
宮本友紀子氏
株式会社くもん出版 編集部 絵本・幼児教材チーム
くもん出版 公式サイト:http://www.kumonshuppan.com/
くもん出版 fansite:http://monipla.jp/kumonshuppan/
インタビュアー:藤田 和重(アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab)
 
■参考リンク:
国内最大規模の企業ファンサイトモール「モニプラ」
http://socialmedia.monipla.jp/
 
■【企業担当者に聞くSMM最前線】
・株式会社ネクスト 四宮雅樹氏・石川歩氏 :
http://smmlab.jp/?p=8780
・株式会社スカイツアーズ 釜本健太氏 :
http://smmlab.jp/?p=7381
・株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 高橋 淑恵氏:
http://smmlab.jp/?p=5027
・タマホーム株式会社Facebook課 川野和義氏:
http://smmlab.jp/?p=2717
・ハウスウェルネスフーズ株式会社 丸山佳代氏:
http://smmlab.jp/?p=19