オウンドメディアの運営を通じ、顧客との関係構築に成功している日用品大手のライオン株式会社。デジタル戦略の現状や成果、今後の展望などについて、デジタル施策の担当者にうかがいました!

 
「NPS(ネットプロモータースコア)」でKPIが変わった?!デジタルコミュニケーションの新機軸を目指すライオンのオウンドメディア戦略を聞く【前編】
 
ライオンは2014年10月から、生活に関する課題解決をテーマとしたオウンドメディア「Lidea(リディア)」を運営しています。同社が蓄積してきた「くらし」に関わる情報を生かし、生活に役立つコンテンツを発信。顧客とのコミュニケーションの活性化や、エンゲージメント強化を図っているほか、メディアの運営を通じて収集したユーザーデータを商品企画や店頭プロモーションに生かしています。
また、主要ブランドのブランドサイトやSNSアカウントも積極的に運用しており、ブランドの認知拡大や商品の販売促進に役立ててきました。
近年、「Lidea」や一部のブランドサイトの評価指標として、顧客ロイヤルティの指標の一つであるネットプロモータースコア(以下NPS)を本格的に採用。さらに、アンケートで集めた定性的な情報を組み合わせて分析することで、デジタル施策の成果を可視化し、施策の改善へとつなげています。
生活情報メディアやブランドサイトにおける取り組みについて、ライオンの宣伝部デジタルコミュニケーション推進室の内田 佳奈氏と、DMP(データマネジメントプラットフォーム)運営全般をサポートしている株式会社ロックオンの中川 仁氏に話をうかがいました。
 
 

NPSとユーザーデータを統合的に分析

 
藤田:今日はライオン株式会社のデジタル戦略について、お話を聞かせてください。まずは生活情報メディア「Lidea」についてですが、「Lidea」とは、どのようなメディアなのか教えてください。
 
ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 内田 佳奈 氏。WEB解析ベンダーを経て2014年にライオン入社。ライオンの生活情報メディア「Lidea」の運営や、ハンドソープ「キレイキレイ」などを扱うビューティケア事業部のデジタル戦略を担当

ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 内田 佳奈 氏
WEB解析ベンダーを経て2014年にライオン入社
ライオンの生活情報メディア「Lidea」の運営や、ハンドソープ「キレイキレイ」などを扱う
ビューティケア事業部のデジタル戦略を担当

 
内田:「Lidea」は、記事を通じて暮らしに役立つ情報を提供し、人々の生活に関する課題解決をサポートするメディアです。くらしのスペシャリストであるライオンの「暮らしのマイスター」が中心となり、生活に役立つ情報を発信することでユーザーに企業やブランドのことを好きになってもらうことを目指しています。
例えば、衣類に付いたシミが落ちなくて困っている生活者が、「Lidea」の記事を読んで解決できたとします。そのユーザーが、「役に立つメディアの運営元がライオンだから、ライオンの商品を買おうかな」と思っていただけたらメディアとしては成功です。つまり、生活の質を高める手伝いをすることで、ライオンへのロイヤルティを高めていきたいと考えています。
ただし、「Lidea」は商品を販売することが直接的な目的ではありませんから、記事からECサイトにリンクは貼っていません。
 
藤田: 「Lidea」を立ち上げた背景には、どのような戦略があったのでしょうか?
内田:弊社は日用品メーカーということもあり、従来は有名タレントを起用してテレビCMを打つなど、マス広告を中心にマーケティングを行っていました。ただ、これほどデジタルメディアが普及すると、マス広告だけでは生活者とのコミュニケーションに限界があります。
そういった時代背景もあって、会社としてデジタルにも力を入れることになりました。
弊社では元々、家事や健康・美容などの生活課題に関連するサイトがいくつか細分化して存在していたのですが、それらを統合してひとつの生活情報メディアの形で、日用品メーカーとしてのノウハウを生活者に参照しやすくご提供する、という目的がありました。単純なコンテンツマーケティングというよりは、メーカーとしての責任として一次情報を発信するという姿勢です。
中川:私は「Lidea」の構想段階から携わってきたのですが、ユーザーの心を動かすために、メディアを活用していこうというのが「Lidea」を立ち上げた目的のひとつです。
インターネットの普及にともなって、生活者が欲しいもの・必要なものの情報を調べ、比較できる世の中になりました。
いまは、企業がテレビCMで商品を薦めても、以前と比べてユーザーに響きにくくなっています。ライオンさんは、当然そういった変化に気づいていましたから、生活者との新しいコミュニケーションの方法として「Lidea」を活用していこうということになったんです。
 
ライオンが運営する生活情報メディア「Lidea」

ライオンが運営する生活に関する課題解決をテーマとしたオウンドメディア「Lidea(リディア)」

 
藤田:「Lidea」の施策としての評価はどのようにされているのでしょうか?ユーザーのエンゲージメント強化を目的とした場合、成果を可視化しにくいように思いますが。
内田:「Lidea」は単純なコンテンツ施策ではなく、生活者の課題に対し正しい情報を提供するとともに、ライオン自身が生活者をもっと理解するための場所でもありますので、PVやUUといったメディア的な数値だけでは評価していません。
具体的な成果として感じているのは、読まれる記事の傾向から、ドラッグストアなどの店頭で商品を並べる際の工夫や、プロモーションの方法を小売店に提案できるようになったことです。例えば、特定の月や週に「オシャレ着洗い」の記事のアクセス数が跳ねていた場合、そのタイミングに店頭でオシャレ着洗い用の洗剤のプロモーションを強化するなど、これまではシーズン需要しかわからなかったものも、何月の何週目からプロモーションをすべきか明確にわかりますよね。
また、「Lidea」は生活課題を解決するコンテンツを提供していますから、アクセスログを解析すると生活者のニーズが見えてきます。それらのデータを各ブランド部門と共有し、商品開発や広告出稿先の検討にも生かしています。
藤田:ユーザーのインサイトを知るための貴重な情報が「Lidea」には詰まっているんですね。
内田:そうですね。ブランドサイトでは得られない貴重な情報がたくさんあります。
 
藤田:「Lidea」では記事を読んだユーザーのロイヤルティが、どれくらい高まったかを計るためにNPSを活用しているそうですね。
内田:はい。ユーザーのロイヤルティが、施策に応じて上がっているどうかをKPIに設定しています。その際、会員のロイヤルティの変化を可視化する方法の一つとして、NPSを使っています。具体的には、会員をロイヤルティの高さに応じて分類し、いくつかの変数を使って、ロイヤルティの変化を定点観測しています。
藤田:NPSを調査する際に、弊社(アライドアーキテクツ)の「モニプラ」をお使いいただいてるそうですね。
内田:「モニプラ」のアンケートキャンペーン機能を利用して、ユーザーにNPSを聞いていますが、単に点数だけでなく、「『Lidea』で得たノウハウを実践しているか」「ライオン製品を買っているか」といった行動に関することも併せて聞いたり、実際のアクセスログをDMPで紐づけたりしています。ユーザーの行動をスコア化して、そのスコアとNPSを組み合わせて分析することで、ユーザーのロイヤルティを判断しています。
藤田:NPSの点数だけでなく、行動も併せて聞くのは、なぜでしょうか?
内田:点数だけだと、ユーザーがなぜその点数をつけたのか、判断しにくいためです。ユーザーにとって実際に「Lidea」の情報が有用なものだったのか、ライオン製品を買ってくださっているのか、Facebookページに「いいね!」を押しているかなども調べると、NPSのスコアの意味がより明確になります。
「Lidea」は「くらしとココロを彩るようなIdea(=知恵や情報)を共有する」ことなので、サイトに来てくれた人達がどのようなコンテンツや記事を見ると役に立ったと感じてくれたのか?を、ロイヤルティと共に取得・理解し、より役に立つメディアにしていけるようにPDCAを回しています。
 
DMPとモニプラの連携によるNPS分析施策の全体像
 
 

「NPSが高まる行動」を突き止め、その行動を促進する施策を実施

 
藤田:「モニプラ」を使ったNPSのアンケート調査は何回、実施したのでしょうか?
内田:これまで2回実施しました。2016年9月と2017年7月です。それぞれ約2万人のユーザーがアンケートに答えてくださいました。
藤田:調査結果から、どんな示唆が得られましたか?
内田:例えば、「Lidea」にアクセスしているユーザーのうち、洗濯やキッチン、掃除、オーラルなど複数ジャンルの記事を閲覧しているユーザーほど、NPSが高いことが分かりました。また、洗濯方法や掃除方法といったノウハウ系の記事以上に、家事フェスや日南市とのコラボなど、特別企画に触れたユーザーのほうがロイヤルティが高いことも判明しました。生活課題を解決すればファンになってくれるのでは、と考えていた我々にとって、特別企画の重要性を再認識するきっかけでもあったと思います。
 
株式会社ロックオン コーポレート戦略本部 マーケティングプラットフォーム戦略部 部長 中川 仁氏 「Lidea」やブランドサイトなど、ライオンのデジタル戦略におけるDMP全般を支援している

株式会社ロックオン コーポレート戦略本部 マーケティングプラットフォーム戦略部 部長 中川 仁氏
「Lidea」やブランドサイトなど、ライオンのデジタル戦略におけるDMP全般を支援している

 
中川:1回目の調査結果を分析した結果、ロイヤルティに関する気づきが得られ、新たな方針の導きになったこともありました。「Lidea」のユーザーのうち、会員のロイヤルティは非会員よりも高いだろうと仮説を立てていたんですが、実際は会員のスコアが際立って高いわけではなかったんです。
その理由として考えられるのは、会員登録のインセンティブとして、ギフトカードを配っていたことにあると考えました。ギフトカードを配ると会員登録数は増えますが、その会員のロイヤルティが高いとは限らないんですね。ですから、その結果を受けて、生活者の課題解決に役立つようなライオン商品をインセンティブとしてプレゼントしたり、季節ごとの生活者の文脈に沿うような会員登録キャンペーンを展開するように方針転換しました。
 
藤田:方針転換したことで、会員登録したユーザーのロイヤルティは変わりましたか?
内田:いくつかの指標が改善しました。例えば、「Lidea」への再訪率は2〜3倍に上がっています。
藤田:そういったユーザーの実態が見えてくると、会員とのコミュニケーションの方法も変わってきますね。
内田:そうなんです。じつは、この調査結果を受けて、「会員登録の数は、最重要のKPIではない」という認識に変わりました。会員登録の数は、もちろん大事ですが、それに加えてユーザーのLideaへの来訪目的が大事だという方針にKPIが変わったんです。
ですから、今はロイヤルティが高いユーザーの特徴的な行動を抽出し、そうした行動を促すような施策を打つことで、更なるロイヤルティの向上を図っています。「NPSが高まる行動」を突き止めて、そこから逆算して、そういった行動を誘発する施策を行っているということです。
 
藤田: 1回目と2回目の調査結果を比べて、スコア自体に変化は見られましたか?
中川:NPSのスコアは上がりました。スコアが改善した詳しい理由は、分析している最中です。
藤田:スコアが上昇した要因が見えてくると、コンテンツの方向性やサイトの導線設計の指針になりそうですね。
内田:そうですね。2回目の調査結果を踏まえて、さらにユーザーとのコミュニケーションを改善していきたいと考えています。
 
■後編 に続く
 


ライオン株式会社様にご利用いただいたモニプラの活用プラン
「ブランドリフト計測パッケージ」をリリースいたしました!
詳しくはこちら↓
http://www.aainc.co.jp/news-release/2017/01577.html