(2021年1月21日 情報更新)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年は私たちをとりまく環境が大きく変わった1年でした。生活者の意識も変化し、生活者に提供されるサービスや商品自体も変化しつつあります。
こうした中、Instagramは「EC機能」を強化させる動きを加速させており、EC事業に取り組む企業にとってInstagramの活用は注目すべき施策となっています。
そこで今回は、InstagramがEC化を進めることになった背景から、Instagram×EC施策を効率的に取り組むための5つのポイントについて解説します。
2020年、SNSは生活者にとって購買行動と密接に関係する存在に
2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界中で様々な変化が起きた1年でした。特に、感染症拡大の抑制を目的として、外出自粛、学校・オフィスの閉鎖、実店舗での買い物自粛が推奨されるなど、私たちの生活は大きく変化。
他者と距離を保ち、接触を避ける生活様式が浸透する中で、今まで以上に「EC」を活用した購買行動は生活者に浸透しています。
アライドアーキテクツが行った調査では、新型コロナウイルス感染症の流行によって「食品・日用品などの普段の買い物」において約50%のユーザーが、また「ファッションや美容商品の消費行動」において約45%のユーザーが今後できるだけ通販を利用することに積極的であることが分かりました。
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▶4,000人の消費者データから考える、「ニューノーマル」時代のマーケティングで大切な3つのこと
また、生活者のEC利用の浸透において、スマートフォン起点での買い物が浸透していることは見逃せません。
コロナ禍以前より日本のEC市場は成長を続けていましたが、特にスマートフォン起点での物販がその成長を牽引してきました。経済産業省が2019年に発表した調査によると、2017年から2018年の1年間で、BtoCのECにおけるスマートフォン経由の市場規模は、6,462億円の3兆6552億円(前年比21.5%増)となり、BtoCのEC全体の39.3%という結果でした( ※1)。
このスマートフォン起点でのEC利用の浸透は、主にスマートフォン上で接触されるメディアであるSNSと生活者の購買行動との関係性にも変化をもたらしています。
アライドアーキテクツがインターネットユーザー約2,900名に行った調査では、SNSをきっかけに商品を購入したことがありますか?との問いに対し、主要SNSの全てにおいて半数以上の人が「ある」と回答。特に、Instagramが最も多く、60.7%の回答者が、Instagramの情報をきっかけにECサイトで商品を購入したことがあると答えています。
また、SNSの情報から商品をしり、その場でSNSからECサイトの購入画面を開いて商品を購入する「パルス型」消費行動においても、Instagramが最も多く42.1%でした。
SNSをきっかけとした購買行動や口コミ行動について調べた調査をもとに、その傾向を分析・解説しています。
▶【2020年最新版】5大SNSユーザーによる「SNSをきっかけとした購買行動・口コミ行動調査結果」公開!(Twitter、Instagram、Facebook、LINE、YouTube)
これらの結果からも、SNSはただの情報収集やコミュニケーションの場ではなく、より「消費行動」に密接に関わるメディアへと変化していることがわかります。
同時に、この傾向は特にInstagramにおいて高いと言えます。Instagramは生活者にとってより消費行動に近いSNSプラットフォームになりつつあるのです。
【Instagram×EC化】活用のために企業がおさえておくべきつの5つのポイント
では、実際にEC企業は「購入の場」としてのInstagramをどのように活用していくべきなのでしょうか。ここからは、実際にInstagramをECとして活用するためのポイント5つについて解説していきます。
①ショッピングタグ(Instagramショッピング)の活用
ショッピングタグは、2018年にリリースされた、フィードやストーリーズの投稿に、商品の情報をタグ付けできる機能です。ユーザーは、タグ付けされた商品について、商品の詳細や購入ページへのリンクを見ることができ、Instagramを媒介としたスムーズな商品購入が可能となります。
BARNEYS NEW YORK in Japan(上)とBOTANIST(ボタニスト)(下)。
ショッピングタグを利用するためにはまず、お持ちのアカウントがInstagramショッピングの利用資格があることをこちらのページで確認する必要があります。
利用資格の確認が取れたら、Facebookカタログを準備します。Facebookカタログへは、Facebookのビジネスマネージャーからアクセスが可能。Instagramショッピング投稿に使いたい商品の商品情報をFacebookカタログに追加し、カタログを完成させます。
カタログが準備できたら今度はInstagramのビジネスプロフィールとカタログの紐付けです。カタログマネージャーの利用方法のタブを開き、Instagramショッピングのタブから「プロフィールをリンク」を選べば完了です。
最後に、ショッピングの利用登録です。Instagramアプリの設定画面から、「ビジネス」→「ショッピングに登録」を選び、審査の申請を行ってください。この審査が承認されると設定が完了し、ショッピングタグの利用が可能となります。(※2)。
実際の投稿に商品タグを追加する方法についてはInstagramのヘルプセンターにも詳細がまとまっていますので、運用の際にはあわせてご覧ください。
そして、ショッピング投稿を始めたら広告施策の検討をするのも良いでしょう。
ショッピングタグを利用したショッピング投稿は広告として配信することができます(※3)。ショッピング投稿をフィード広告として配信すれば、狙ったターゲットに対して効率的にショッピング投稿を届けることが可能です。
さらに、2020年の9月からはおすすめの商品やスポットなどを紹介する「まとめ機能」のテストが開始されました(※4)。
このまとめ機能を使えば、Instagramのショッピング機能を利用しているブランドの商品を引用し、まとめ記事を作成することができます。まとめには写真や動画だけでなく商品名や価格も表示され、タップすると商品詳細ページに飛ぶため、まとめを見たユーザーに対して購入への導線を作ることができます。
また、将来的にはクリエイターやパブリッシャーが作成した商品まとめが発見タブ内の機能「Instagramショップ」に掲載されるようになる予定です。
②Instagramショッピングを利用した店舗開設
商品ラインナップが多い場合や、Instagramでの購買促進施策により力をいれていきたい場合は、Instagramショッピングの活用もおすすめです。Instagramショッピングは、ビジネスアカウントやクリエイターアカウントがInstagram上で店舗をもつことができる機能です。 日本ではショッピング投稿と同様に、ユーザーは購入したい商品を選び、外部のWebサイトに遷移して購入することができます。
Instagramショッピングのポイントはカスタマイズ可能な店舗を持つことができること。
例えばコレクションの機能を使えば、商品をテーマ別にまとめてブランドの世界観を表現したり、まとめて見て欲しい商品をユーザーに表示させたりすることができます。
加えて、商品ごとに詳細ページを作ることもでき、商品価格や詳しい説明など商品にまつわる様々な情報を提供することが可能です。
Instagramショッピングの利用には、ショッピングタグ同様に利用条件があります。開設方法については、Instagramのビジネスブログにも掲載してありますので、そちらをご確認ください。
また、2020年10月現在、アメリカではInstagramショッピングにおけるチェックアウト機能の提供が始まっています。チェックアウト機能を使うと、ユーザーはInstagramショップでの買い物を、Instagramアプリから外部サイトへ遷移することなく完了することができ、よりスムーズな購買体験を得ることができます(※5)。
さらに、アメリカではInstagramでのチェックアウト時にFacebook Payで決済できるサービスの提供も開始(※6)。これは、事前にFacebook Payでの支払い方法を設定し、Instagramなどのアプリで簡単かつ安全に決済が行える仕組みです。
この他にも、Instagram上で新商品を発表し、ユーザーにリマインダー設定を促す「商品の発売予定」、クリエイターの投稿に商品をタグ付けさせてそこから購入ページに遷移させる「クリエイターからのショッピング」など、日本ではまた提供されていない機能もたくさんあります。
こうしたユーザーのInstagram上の購買体験価値を高める機能は、今後アメリカ以外の地域でも拡大される予定であり、InstagramのEC化はますます進むとみられます。
③Instagramライブ×ショッピング機能
Instagramにはショッピング投稿のほかにもInstagramショッピング施策の成果をあげるための機能がたくさんあります。Instagramライブの活用もそのひとつ。特にコロナ禍においてオンライン接客のニーズが高まる中、Instagramライブで顧客と交流することは購入意向の向上に効果的な施策です。
ライブ配信を使ったアプローチを行えば、ユーザーに対して商品の使い方や特徴を詳しく説明することができ、ユーザーからの質問に答えることができるなど、効率的に購入意向を高めて行くことができます。また、それだけでなく、こうしたコミュニケーションは、ユーザーとブランドとの関係性を深め、その熱量の醸成にもつながるでしょう。
またライブ配信をアーカイブ化してIGTVに残せば、ショッピングタグを利用して直接動画から購入を促すことができます。
(※)Instagramライブショッピング機能は現時点ではまだ日本では未搭載の機能です。認識に誤りがありましたので、文章を訂正いたしました(2021年3月12日)。
④IGTV、Instagramリール投稿へのショッピングタグの利用
ライブショッピング以外でも、Instagramの動画コンテンツ領域におけるEC化の動きは進んでいます。
まず、Instagramのフィードやストーリーズに長尺の動画を投稿できる機能であるIGTVでは、10月5日から、ショッピング機能が利用できるようになりました(※7)。
これは、ライブショッピング同様に動画内で紹介した商品をタグ付けし、IGTVの動画内にショッピングボタンから商品への購入導線を作るものです。
IGTVは長尺の動画に対応しているフォーマットなので、商品についての詳しい説明やブランドストーリーをしっかり伝えることができます。動画を見せることによってユーザーに対して商品やブランドの理解を促し、納得したうえでの購入体験を提供することができます。
また、8月にリリースされた短尺動画に特化したリールでも、2020年12月からショッピングタグを利用できるようになりました。
様々なエフェクトが利用でき、よりクリエイティビティに溢れた動画を作ることができるリールを使えば、ユーザーの目を引くような商品紹介や商品のインパクトを伝えることもできます。
Instagramリールの概要についてはこちらの記事もぜひチェックしてください。
▶
【Instagramのショートムービー特化機能】Instagramリールとは?
これら動画領域のショッピング機能との連携は、ユーザーのInstagram上で購買体験の楽しさや満足度をあげ、ユーザーにとって購入の場としてのInstagramの価値を高めるものだと言えそうです。
⑤Instagramショップを意識したアカウント運用
そして、ショッピング投稿やInstagram上の店舗など、Instagramショッピング施策で成果をあげていくために意識したいのは「Instagramショップ」の存在です。
Instagramショップは発見タブの中の「ショッピング」を選ぶと表示されるショッピングのまとめページです。各ユーザーごとの興味関心に合わせ、ショッピング投稿やコレクション、商品まとめが表示され、ユーザーは自分に合った新しい商品と出会うことができます。
企業は、自社のアカウントでのショッピング投稿や、店舗のコレクションを充実させることで、Instagramショップを訪れた自分たちの商品と親和性の高い新しい顧客との出会いを作ることができます。
また、Instagramショップを訪れるユーザーはより購買に対するモチベーションが高いユーザーであり、購買につながりやすいという点もポイントでしょう。
こうしたInstagramショップ来訪ユーザーを意識し、日々のショッピング投稿やコレクション、商品まとめなどを充実させたアカウント運用を行うことにより、より高い成果をあげることができるのです。
なお、2020年11月からは、発見タブの中に含まれているInstagramショップのボタンが、ホーム画面に独立して表示されています。
これにより、ユーザーは発見タブを経由せず、直接ホーム画面からInstagramショップにアクセスすることができ、Instagramショッピングを利用するユーザーはますます増加するとみられます。
いかがでしたか?SNSを「商品購入の場」としてとらえる生活者が増えると同時に、Instagramはどんどんそのショッピング機能の充実を測っています。
今後ますます、Instagram上での買い物は生活者にとって馴染みのあるものになってくるとみられ、EC事業にとりくむ企業にとってInstagramのショッピング機能の活用は、重要な施策の1つとなりそうです。
※1)平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)|経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
※2)Instagramショッピングの設定方法|Facebook for Business
※3)Instagram、ショッピング投稿を広告として配信する機能をすベてのビジネスに提供開始|Facebook
※4)Instagram、おすすめの商品やスポットなどを紹介する「まとめ機能」のテストを開始|Facebook
※5)Instagram、Instagramチェックアウト|Instagramヘルプセンター
※6)Facebook Pay is a seamless, secure way to pay on the apps you already use|Facebook
※7)Instagram、IGTVでもショッピングが楽しめるように 今年後半からリールでのテストも開始|Facebook