2013年は「オムニチャネル時代」到来?!アメリカでは昨年から小売・流通を中心に、「オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing) 」が盛り上がってきています。デジタルとリアルをシームレスにつなぎ、顧客ロイヤルティを獲得・向上させるための顧客接点として、新たに注目されつつある「オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing) 」とは?


こんにちは、SMMLabの藤田です。
先日、2013年のソーシャルメディアマーケティングを考えるキーワードの一つとして「インテグレーション」を上げましたが、「統合」の波はマーケティングだけでなく、小売・流通の現場も大きく変えようとしています。「すべての販売チャネルを統合する」という意味の「オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing) 」は、日本でも今のうちから注目しておいた方がよいテーマだと思います。
 

35/365 (+1) Shopping
“35/365 (+1) Shopping” by Timothy Valentine

 
 

■オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing) とは?

 
実店舗やテレビ、通販サイト、ウェブサイト、DM、ソーシャルメディア、携帯・モバイルデバイスなど無数の販売チャネルを通じて、顧客に最もあう形で買い物体験を再構築する戦略のこと。
スマートフォンやタブレットPCの普及によって、消費者が好きな時に、好きな場所で手軽に買い物を楽しめる環境が急速に整い始めました。そのため小売業者は、消費者の購買行動や嗜好の多様化に対し、様々な販売チャンネルを用意しなくてはならない状況になりました。
2011年に米国の老舗百貨店、Macy’sのテリー・ラングレンCEOは、「オムニチャネル リテーラー」になると宣言。既存店舗のみならず、情報技術・ネット通販に力を入れ、各店舗、ネット通販、物流倉庫を結び、サーチ&リサーチし、顧客の要望するものを探して、お届けする仕組みを作り上げました。
RFID(Radio Frequency Identification:無線ICタグ)を採用することで、店舗と通販の在庫を一元管理し、在庫の無駄を減らすと同時にリアルとネット、どちらにおいても顧客の要望に答えることが可能になりました。その結果、Macy’sの2011年のオンライン販売は40%も成長したということで大変話題となったのです。
2012年の年末商戦時には、オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing)に取り組む企業が急増。ツイート、Facebookのいいね!などの情報と顧客リスト、過去の購買履歴、ポイントカードの会員情報と照らし合わせ、最適なネットでのプロモーションキャンペーンを決定。さらにネットと店舗内の情報を統合、比較分析し、消費者の行動を先読みすることで在庫を管理し、欠品の回数も減らすことで商機を最大化させることに成功したようです。
 
 

■マルチチャネルとはどう違う?

 
従来言われてきたマルチチャネルは、単に販売チャネルを増やした「多角展開」なのに対し、オムニチャネルはすべてを「統合していく」ものであり、複数のチャネルから得られた顧客データを統合し、顧客とのコミュニケーションに活用します。
シングルチャネルからマルチチャネル、オムニチャネルまでのリテイリングの進化は、米国小売業協会(NRF)が発表したMobile Blueprintの資料“Evolution of Customer-Retailer Touch Points”図が分かりやすく表しています。
http://www.nrf.com/modules.php?name=Pages&op=viewlive&sp_id=1323
 
Evolution of Customer-Retailer Touch Points
出典: NRF Mobile Retail INITIATIVE、「Mobile Retailing Blueprint V2.0.0」より引用
 
●シングルチャネル:実店舗
●マルチチャネル:実店舗+カタログ通販+ネット通販
※チャネルが複数になっただけ
●クロスチャネル:ネットで購入→実店舗で受け取り
※顧客は、商品購入や受け取りなどの選択肢がある
●オムニチャネル:実店舗⇔カタログ通販⇔ネット通販
※商品管理、顧客管理がシームレスにできる
 
 

■日本での取り組みは?

 
日本でもスマートフォンやタブレットPCの普及しはじめ、ビッグデータ活用やRFID、NFCといった技術が発達してきたことを受けて、オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing)に取り組み始める企業も出てきています。

東急ハンズショッピングサイト「ハンズネット」

https://hands.net/
 
2012年12月26日にリニューアルした東急ハンズのネット通販サイト「東急ハンズネットストア」では、「店舗での売れ行き」と「店頭在庫」をリアルタイムで表示。さらに会員システムを一元化することで、ネットストアのみならずリアル店舗での買い物履歴も一覧確認が出来、共通に利用できるポイントも付与されます。ユーザーの利便性を高めながら、購買データを統合していくという取り組みが今後、どのように進化していくのか注目です。
 
 

■ソーシャルメディアの果たす役割とは?

 
オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing)は、シームレスで一貫性のある買い物体験を提供することで、「他とは違う」というブランド体験を提供し、ロイヤルティを獲得、ブランド・エクイティを向上させていく取り組みだとも言えます。まずはチャネル、在庫、顧客データを統合するためのシステムや設備を整備することが必要ですが、そこから「パーソナライズ」されたサービスを提供するためには、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアからのデータが不可欠でしょう。ソーシャルメディアのアカウントと自社DBの紐付けが今後ポイントになっていくと考えられます。
 
小売流通業のソーシャルメディア活用というと「ソーシャルコマース」だけを考えがちですが、オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing)のように、リアルとネットの販売チャネルを統合し、”買い物体験”を再構築する段階でソーシャルメディアを要素として上手く取り込むというアプローチが、ソーシャル時代の小売流通に革命的な変化を起こすかもしれません。
 
■参考記事
・3つのキーワードから考える!2013年のソーシャルメディアマーケティング展望http://smmlab.jp/?p=16475
・「ブランド・エクイティ」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!http://smmlab.jp/?p=16490
・【ad:tech東京2012レポート(3)】
ソーシャルとリアルの融合が進むダイレクトマーケティングの今
http://smmlab.jp/?p=14035
・ソーシャルコマースを成功させるための4つのヒント
http://smmlab.jp/?p=6703