Sparty インタビュー記事
 

パーソナライズシャンプー「MEDULLA」やオーダーメイドスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」など、パーソナライズに特化したD2Cブランドを展開し、急成長を遂げている株式会社Sparty。

同社の急成長を支えたマーケティング戦略とは、一体どのようなものなのでしょうか?Spartyは事業を行なっていく上で「パーソナライズ」をどう定義しているのでしょうか?

今回はそんなSpartyのマーケティング戦略から、「パーソナライズ領域」での事業に込めた思いまで、同社のプロモーション担当 坂口 光氏にお話をうかがいました。

お客様がそれぞれが望む商品を形にする、MEDULLA流パーソナライズとは?

ーまず初めに、御社のブランド「MEDULLA」や坂口様の担当業務についてお聞かせください。

坂口氏:MEDULLAはもともと、弊社の代表の奥様が髪質に合ったシャンプー選びに難しさを感じていたところをヒントに、「ユーザーそれぞれが自分にあったシャンプーが作れたら良い」と考え、生まれたブランドです。

9つの質問から導き出された診断結果をもとに、およそ万通りの組み合わせの中から自分に合った商品を購入することができる、パーソナライズに特化したシャンプー・トリートメントのサブスクリプションサービスとなっています。

弊社の「診断」はスマホ上で簡単に行うことができますので、「スマホの中で完結する美容院」をコンセプトに商品をお届けしています。

  
Sparty 商品
スマホで行う診断結果をもとに自分にあったシャンプー・トリートメントを定期購入できる「MEDULLA」。シンプルで洗練されたボトルデザインも人気。
 

坂口氏:私はマーケティング担当者として「MEDULLAのブランド・商品を広めていく」というミッションを持っており、新規顧客獲得施策をメインの業務としています。
その中でも、サロンや店舗などのオフラインの販売チャネルではなく、ECにおける販売促進を目的としたデジタル施策の担当です。

ーありがとうございます。MEDULLAの大きな特徴である「パーソナライズ」には様々な定義があると思います。例えば商品の選択肢を増やしてそこから選んでもらうという形でも「パーソナライズ」と呼ぶことができると思いますが、御社では「パーソナライズ」をどう定義されているのでしょうか?

坂口氏:MEDULLAの特徴は、診断結果に基づいて「お客様ひとりひとりに合ったシャンプーを作ることができる」という点です。お客様もMEDULLAに対して「より自分にあったものが見つかる」ことを期待していると思いますので、例えばSKU(※1)の上限数などは決めていません

今後も改善を重ね、お客様の望むパーソナライズに対応できるような商品開発・マーケティングに取り組みたいと考えています。

  
Sparty 坂口氏
株式会社Sparty プロモーション担当 坂口 光氏

ー確かに御社の場合は、いくつかのパターンから選択するパーソナライズというより、お客様がより自分にあった商品にカスタマイズできることが特徴ですね。
ちなみに、「マーケティングの担当者」という立場では、御社のような形のパーソナライズと、商品数・在庫数によって顧客の選択肢を増やす形のパーソナライズではどちらの方が戦いやすいと思われますか?

坂口氏:もちろんどちらにもメリットはあると思います。ただ、お客様の満足度を考えた時には、よりお客様個別のニーズに対応できる方がお客様の満足度は高く、そこは結局LTVにも響いてくるのではないでしょうか。そういった意味では、個人的にはよりお客様に深く受け入れてもらえる可能性が高いという点で、我々が取り組んでいる形のパーソナライズの方が良いと思っています。

ー商品開発やマーケティングの難易度が高い分、その後の強固な顧客の満足度につながっていくんですね。

坂口氏:はい。例えば弊社の場合は定期購入の2回目から処方を変えることができます。しかし、お客様が改善を期待して処方を変えた時に「前回の商品と変わらない」と思ってしまえば解約につながります。その点でも処方によって商品に変化が感じられる様な幅を持たせることは大切だと思っています。

(※1)SKUとは:Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位をいいます。同じ商品でもパッケージ、入り数などの違いで区別し、アイテムよりも小さな単位に分類します。(引用:大和物流株式会社・用語集

お客様の「きゃーっ♡」を生み出す、MEDULLAのマーケティングメッセージ

ーこれまでお話を伺っていると、御社にとっては「パーソナライズ」が目的ではなく、「顧客が自分にあったシャンプーを使う」というゴールを達成するための手段だと捉えていると感じました。それを踏まえて御社がコミュニケーション施策設計を行う際には、どんな点を重視されているのでしょうか?

坂口氏:マーケティングに限らずブランド全体において、お客様の弊社に対する期待を維持し続けてもらえるコミュニケーションを心がけています。特に、そこにお客様の「きゃーっ♡」というときめきがあるかどうかを大切にしています(笑)

ー「きゃーっ♡」というのはわかりやすいですね(笑)。
実際に商品を使った時の「きゃーっ♡」という感じは想像できるのですが、獲得の段階でのコミュニケーションではどのように「ときめき」を提供しているのでしょうか?

坂口氏:広告LPから診断ページに進み、質問に答えながら自分にあったシャンプーが作られていく過程は「きゃーっ♡」とときめいていただける要素だと思っています。

MEDULLAが大切にしているのは、お客様がそれぞれもっている「なりたいイメージ」です。お客様の現状のお悩みに対してどうアプローチするかというのももちろんですが、そうしたお悩みの解決より、なりたいイメージに近づく商品だと理解していただくことがお客様の「きゃーっ♡」に繋がると考えています。

ーダイレクトマーケティングにおける顧客体験の多くは、顧客の「課題や悩み」を起点にし、商品でいかにそれを解決できるかというのがポイントであったと思います。それに対してMEDULLAの場合は、マイナスを解決するのではなく商品を使うことでプラスの体験を与えることをゴールにマーケティングを行なっているんですね。

坂口氏:確かにそうですね。MEDULLAは「課題を解決する商品」ではなく「なりたい自分になれる商品」という方がより適していると思います。

  
Sparty MEDULLAの診断ページ
MEDULLAの診断ページでは、髪の状態や今の気分、なりたい髪のイメージなどの質問に答えることで診断結果が現れ、カスタマイズされたシャンプー・トリートメントが処方される。
 

ー「なりたいイメージに近づける商品である」ことを伝えるためには、どういったメッセージの訴求を行なっているのでしょうか?

坂口氏:コミュニケーションを設計する際には「MEDULLAだったらそれを言うかどうか」を基準に考えています
例えばMEDULLAからは「自分のために髪をきれいにする」というメッセージをお伝えしています。ダイレクトのコミュニケーションでよく見られる「モテるために髪をきれいにする」というようなメッセージの方が、獲得がしやすい面もあります。しかしそこを強調することはMEDULLAの世界観やコンセプトとは少しずれてきてしまうと思います。

ー獲得効率よりもブランドの世界観やコンセプトとの整合性を重視しているんですね。

坂口氏:そうですね。ただ弊社の場合、完全にブランド重視で獲得効率を考えていないわけではありません。
とても難しいのですが、例えば「モテる」ということをテーマに訴求する時も、「髪が綺麗になったことでモテた」ならいいけれど「髪が綺麗じゃないからフラれた」というのは違うなと思っています。

あくまでお客様に、商品を使った時に生まれるポジティブな状態をイメージしてもらうことが大切だと思っていますので、訴求メッセージもその基準は守っています。こうした基準のなかで、ギリギリまで獲得を追求していく、というイメージです。

ーそれが顧客体験をポジティブなものにするかどうかというのを大切にしてご判断されているんですね。

坂口氏:はい。また最近は、店舗にいらしたお客様から「この広告を見て来店しました」というお声をいただくことがあります。そのなかには「この広告は少しがっかりしました」という声もあるので、そうした声については都度、そのメッセージが本当にMEDULLAの世界観と合うものだったのかという議論を行うようにしています。

ユーザー数を大幅伸長させたLINE広告のヒントには「顧客の声」があった

ーこうした試行錯誤を繰り返すなかで、昨年からユーザー数もかなり伸びてきていますよね。2020年5月時点では会員が15万人を突破されています。この急激な伸長は、御社の打ち出している「パーソナライズシャンプー」というものが一般的に受け入れられてきた結果とも考えられますが、この伸長を生んだ背景にはどんな施策があったと捉えていらっしゃいますか?

坂口氏:デジタル施策の領域ですと、昨年の秋頃にこれまで行なってきた「オファーテスト」で勝ちパターンが見つかったことが大きいと思っています。その結果をもって大規模に広告費を投下していくことができたので新規獲得数も伸び、事業の伸長にも繋がりました。広告媒体としては特にLINE広告施策が順調でした。

ーLINE広告施策が順調だった理由についてはどうお考えですか?

坂口氏:クリエイティブによるところが1番大きいと思っています。特にこれまでメインとして使っていた自由度の高いパーソナライズ性を訴求するクリエイティブではなく、新しく使用した「香り」を訴求したクリエイティブにはよい反応が得られました。

  
Sparty 坂口氏
株式会社Sparty プロモーション担当 坂口 光氏
 

-「自由度の高いパーソナライズ」の訴求と比べ、「香り」は実際に商品を使った顧客の体験によるところが大きいと思います。この訴求のヒントはどこから得たのですか?

坂口氏:店舗でお客様からいただいたお声は参考にしました。店舗にご来店されるお客様には、実際に店頭で香りを体験したことが後押しとなって購入を決められる方もいらっしゃるり、我々も「香り」が重要な要素なのだと認識することができました。現在は、こうした店舗でのリアルな声をヒントにして、広告をはじめとしたマーケティング施策の改善に取り組んでいます。

ー店舗で吸い上げたお客様の声は具体的にどのような方法でマーケティング施策に反映されているのでしょうか?

坂口氏:弊社ではSlackを活用しています。我々はSlackに「お客様の嬉しい声」というチャンネルがあり、そこには店舗スタッフやカスタマー対応担当者が、日々店頭でいただいたお客様からのフィードバックを投稿しています。また、週1回は店舗やマーケティングの担当者間で情報共有を行うミーティングも実施しています。

「パーソナライズ」を追求するSpartyが目指す、これからの購買体験とは?

ー御社はマス広告にも取り組まれていますが、マス広告にはどういった役割を期待されているのでしょうか?

坂口氏:テレビCMに関しては正直1度試してみたかったというのが本音です(笑)。
テレビの画面上に「スマホで自分にあったシャンプーを注文できる」ブランド体験を伝える映像が流れるという新しさに対して、視聴者がどう反応するのかを見たかったというのがテレビCMを実施した1番大きな理由でした。

テレビCMがCPA的にどうなのかという議論の余地はまだまだありますので、今後方針を検討している段階です。

  
同社が実施したテレビCM「5つの香り」編
 

-なるほど。まだテスト的に実績を見ている段階ということですね。オフラインとデジタル施策の住み分けや、今後の拡大戦略についてはどうお考えでしょうか?

坂口氏:今はデジタル領域での獲得が大きな割合を占めていますが、今後はサロンなどオフライン店舗経由での獲得も増やし、デジタルとオフラインで半々くらいの比率にしていきたいと考えています。

特に店舗でスタッフと共に悩みながら商品を購入されたお客様や、サロンで美容師さんに勧められたお客様はLTVが高いという傾向もあります。
スマホ上で手軽にカスタムメイドできるという体験も作っていきながら、もう1つの軸として「サロンで美容師さんがおすすめしてくれるパーソナライズシャンプー」や「店舗のスタッフと一緒に考えるパーソナライズシャンプー」という体験も増やし、顧客の全体数を伸ばしていくことに力を入れていきたいです。

-ありがとうございます。また、先日発表された、「Sparty Creative Studio」も他社さんにはない動きですよね?

坂口氏:はい。『Sparty Creative Studio』は、企業様向けにパーソナライズドD2Cソリューションのノウハウを提供するために発足した新しい取り組みです。

我々が持つD2Cモデルとパーソナライズの仕組みを世に広く展開することで、社会をより前進させていきたいという思いから、サブスクストアを提供するテモナ社と共同でサービスを開始することになりました。

<『Sparty Creative Studio』に関するリリースはこちら>
Sparty、テモナと、パーソナライズドD2Cソリューションの提供開始

ー御社のもつ「自由度の高いパーソナライズ」の仕組みは、貴社の優位性にもなっていると思っていたので、そのノウハウの提供するということには驚かされました。

坂口氏:そうですね。ただ、弊社には創業当時からゆくゆくはこうした領域でも事業を行なっていきたいという思いがありました。

昨今は生活者の購買行動が変化し、大量生産・大量消費よりも、商品や購入手段、タイミングに至るまで「パーソナライズ」が求められるようになってきたと感じています。

今回の『Sparty Creative Studio』のローンチでは、企業が生活者のパーソナライズに対するニーズに応え、生活者に選ばれる商品を提供できる仕組みの提供を目指しています。そして、企業と生活者の双方が幸せな購買体験・ブランド体験がある社会の実現に少しでも繋げていくことができればと考えています。

また同社では、パーソナライズ体験をより効果的に訴求するために、UGC(※)を活用したマーケティング施策にも注力し、成果をあげています。同社のマーケティングを改善に導くUGC活用のノウハウについてはぜひ以下の記事をご参考ください。
【ポイントはUGCごとの効果検証】パーソナライズに特化したD2Cブランド・MEDULLAに学ぶ、マーケティングの改善につながるUGC活用術

※UGCとは:UGC(User Generated Contents)とは企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを言います。 最近はInstagramなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されています。